FATER   作:知咲

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 綾香の前に一人の少女が現れる。そして、彼女が友久を見た瞬間、彼女の運命はまた、動き出す。凍りついた歯車が。


氷の少女Ⅰ

 今日もまた一人でディアブロスを倒した。また、この前のようになるのは嫌で早めに帰ろうとしたが、予想外の客が現れたのだった。

「やぁ、ビビりちゃん。元気してる?」

「?、誰?」

 綾香は頚を傾げた。

「ど、どういう事なんですか!?」

あまりに現実的離れした光景にミケはついていけなかった。

「誰って、そんな冷たいこと言わないでよ。見て分かるでしょ。津田綾香よ」

 もう一人の綾香はニヤッと笑った。

「あれあれ?どうしたの?私はそんな静かな人間じゃないわよ。どうかしたの」

「あなたこそ、どうして昔のままなの。魔王を倒した時の代償があるは」

「代償?」ミケは綾香の言動に頚を傾げた。

「何言ってるの?魔王なんて倒してないけど」

「・・・・は?」

普段表情を現わさない綾香が驚いた。

「私は魔王に倒されたのよ。そして、今は・・・」

そう言ってもう一人の綾香は手を胸に当てた。すると、彼女の姿が変わった。

「魔王を支える一人になったわ」

「それで、私をここで消すために来たの?」

「いいえ、ただ会いに来ただけよ。あんたみたいなビビりとは戦うつもりはないわよ」

そう言って屋根に座った。

「ビビり?どういうこと」

「簡単よ。大事なものを失った事をなかったことにして一人氷の中で隠れて。それがビビりなのよ」

「うるさい」

そう言って綾香氷の剣で切ろうとしたがもう一人の綾香はもういなかった。

「じゃあねぇ」最後にもう一人の綾香はそう言った。

「違う」

「大丈夫ですか綾香さん」

邪魔にならないように小さくなっていたミケが元の姿に戻って綾香に聞いた。

「ええ、戻るわよ」

転身を解いた綾香はいつものように何気ない顔になっていた。氷の中の少女を除いて。

 

「これは代償。だから私はここにいるの」

氷の壁に片手を当て綾香は立っていた。

「仕方ないことだった。だから」

綾香は泣いていた。その声は氷の壁に阻まれ外に出ることはなかった。

 そんな彼女を氷の向こうから冷たい目で見ている綾香がいた。

 

「それでなんで私を呼び出したの天使」

「この前、智ちゃん達とケンカしたんでしょ」  

「私は一人で魔王を倒したの。だから、他の人なんて必要ないって言っただけよ」

「それで大きな物を失ったのに?」

「・・・・・・・」

痛いところをつかれたのか一瞬綾香は黙った。

「確かにそうよ。でも、もう失うことはない。だって、私に感情はないのだから」

「そうだけど、もう昔みたいに一人じゃないの。仲間がいるの」

その時、秘密基地のドアをノックする音がした。

「すみません。ちょっと遅れてしまいました」

と友久が部屋に入ってきた。そう、よりによって今日は友久だったのだ。

 友久を見た瞬間綾香は目を見開いた。

「ヤバい。友久逃げて」

茜音は叫んだ。だが遅かった。

 綾香は友久を蹴り飛ばした。

「ぐはっ。な、何をするんだ綾香」

壁に叩きつけられた友久は口から少し血が出ていた。

「こちらのセリフよ。なぜここにいる魔王!!」

「魔王?何言ってんだ。俺は友久だ」

「だからよ」

いつの間にか彼女は転身していた。氷の剣で貫こうとした。

「あら、おいたは駄目よ綾香」

綾香と友久の間に咲夜が立っていた。

「茜音今よ」

「ありがと咲夜」

そう言って茜音は何かを投げた。

綾香と咲夜の間に来た瞬間光だして二人は消えた。

「こんにちは。ってどうしたんですか。こんなにめちゃくちゃになって、って友久さん血が」

「大丈夫だ。それより」

友久は茜音を見た。

「さっき逃げてって言ったよな。つまり、俺が襲われるのがわかっていたんだよな。一体どういう事なのか説明してくれるよ」

「あなたが転身していなかったのは予想外だったのよ。こうなったら仕方がないわ」

そう言って茜音は椅子に座った。

「三人共ちゃんと聞きなさい。今から話すのは綾香の過去よ」

そうして綾香過去が明らかになる。悲しく冷たい話が。

 

「なんで貴女は邪魔をするの。彼を倒せばこの世界は救われるのよ」

 彼女の周りから冷たい空気が溢れでていた。

「彼は仲間なの。なぜ殺そうとしたの」

「簡単よ。彼が魔王なのよ」

「貴女、彼を覚えているの?」

「ええ、彼は私の彼氏でそして、倒す敵だったわ」

「そうなの。彼は魔王じゃないわ。私の彼氏よ」

そうして譲れない戦いの幕が切って落とされた。

 

「あっちゃぁー、よりにもよって家に落ちちゃったよ」

家を見下ろしながら困った様子の綾香だった。

「でも、空き家だったからよかったよ」

と地面に降りて家を見た。ディアブロスはもう消失していた。

「あいたた。まさかこんなことになるなんて」

「えっ?」

「ん?」

 綾香と友久は目があった。これが二人の初めての出会いだった。

 

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