「彼は彼氏だったんでしょ。なら、どうして倒す必要があったの」
「決まってる。彼が魔王だからよ」
鍔迫り合いのなか二人は話していた。
「だから何よ!!」
咲夜は持っている鎌に力をさらに込めて綾香を押し込んだ。
「あんたは本当にそれで良かったの。自分の気持ちより世界の方が大丈夫だっていうの」
「さあ、私も分からない。だって私は魔王の封印と引き換えに感情を失ったんだから」
咲夜はこの事を聞いてようやく繋がった。
「だからそんなつまらない目をしてるのね」
咲夜は鼻で笑った。
「なにがおかしいの」
「私は死ぬギリギリまで感情を持っていなっかの。そして、ここにきてまた失ったわ。でも私はまた思い出した。たった一ヵ月の感情さえ戻ったのにあなたはまだなのね」
「だから私は封い」
「そんな簡単に感情は消えない!無くしてる振りをしてるの」
「ち、違う。私は私は」
一瞬綾香が二重に見えた。綾香は頭を押さえてうなっていた。
「これはあと少しってとこかしら」
(後は彼が来るだけ)
「違う違う。私は封印されたの」
氷の中の綾香は縮こまっていた。
「出ようと思っても出ることが出来ないの!!」
氷の壁を叩きながら叫んでいた。
さっきまでの綾香と違い予測が難しい攻撃になんとか咲夜は耐えていた。だが、明らかに押されていた。
(やっぱりあれを使うしか)
その時
「もうやめろ二人共」
そこに友久がやって来た。
「遅いわよバカ・・・」
咲夜はニヤッと笑った。
「魔王が何のようだ」
咲夜にはもう意識はなかった。
「魔王じゃない。俺は友久だ」
「だから言ってるじゃない。友久だから魔王なのよ」
そう言って綾香は友久に突っ込んでいった。
「お前が勝手に決めんじゃねぇ!」
友久の叫びに綾香は動きを止めた。
「俺は魔王になんてならない。俺はヒーローになる。そう約束したんだ」
「そんなのあり得ない。だってだって」
一歩ずつ綾香は後退りし始めた。
「今よ。今ならあれが効くはずよ」
「分かった」
そう言って友久は力を使った。
「なんなんだこの氷」
目の前には大きな氷の壁があった。
すると、どこからともなく泣き声が聞こえた。声のする方を見ると氷の向こうでうずくまっている少女がいた。
「綾香なのか」
俺の声が聞こえたのか、ビクッと肩を震わせ恐る恐るこっちを見た。
「どうして友久がここに」
「お前こそなんなんだこの氷の壁は」
「これは私の心を封印してる壁なの。これが有る限り私はここから出れない。ずっと心ない私が私として生きていくだけだから」
「なんで諦めてんだよ。出たくないのかよ」
そう言って友久は氷を叩き始めた。
「無理よ、私だって試した。でも、その氷は傷付いていな」
「そんなのやってみなくちゃいけないだろ」
そう言って氷を叩く。
「なんで、何でなのよ。私と貴方は赤の他人そんなに頑張らなくても」
「違う仲間だろ、俺はお前にちゃんと生きて欲しいんだよ」
「はっ」
綾香は息を飲んだ。そうして、彼の最後の言葉を思い出した。
二人は長い長いキスをした。綾香は我慢できず泣いてしまっていた。
凍りつきながら彼は悲しそうな顔をしていた。
「ごめんな綾香。こんな辛いことをさせてしまって」
「仕方ないよ。これが私の使命なんだから」
しかし、彼女の目からは涙が溢れていた。
「最後に一つ頼みたいんだ」
「何?」
「お前は、お前だけはちゃんと生きてくれ」
綾香は何も言わずに泣きながら頷いた。
友久は笑ったそうして氷漬けになった。
(彼がいない世界なんて辛いよ)
そうして彼女も郡の中に閉じ込められた。
「そうだ。私約束したんだ」
(なんで忘れてたんだ)
そう思いながら彼女もまた氷をたたく。
(ちがう、忘れてたんじゃないんだ。忘れたことにしてたんだ。彼がいないことを認められなくて嫌で。でも)
彼女はもう心を決めていた。
「覚悟は決めたの」
横からもう一人の綾香の声が聞こえた。ずっと、私が傷つくことから守ってくれていた優しい綾香が。
「うん。決めた」
「なら、もうその氷は壊せるわ」
「ありがとう。守ってくれて」
「いいわ。貴女はもう守ってくれる仲間がいるから」
そう言って友久の方を見た。
「本当にありがとう」
そう言って氷を叩いた。今までの固さが嘘のようにヒビが入った。そして、氷の壁は大きな音をたてて壊れた。
「まさか、友久が助けに来るなんてね」
そう言って綾香は友久にだきついた。
「やったのね。友久」
「なんとかね。というより」
ふたりが綾香を見ると泣いていた。
「もう、どこにもいかないでね」
そう言いながらもまだ涙は溢れていた。
「良かった。友久君は無事だって」
「ということは」
「そう、綾香を助けることが出来たわ」
「良かったぁー」
菜々はホッとした。
「あな達も行ってあげなよ」
「そうしようか。行こ姉ちゃん」
「分かった」
そうして部屋には茜音だけになった。はずだった。
いつの間にか一人の男がいた。
「久しぶりだね。天使」
男は天使の後ろからそう言った。
「なんで、ここにいるの魔王」
茜音は後ろを見ずにそう答えた。
「大丈夫何もしないよ。ただ宣戦布告しにきただけだよ」
そうして、男は姿を消した。次の瞬間、茜音の前に立っていた。
「ようやく目が覚めたんだ。それに、そちらもイレギュラーがいるけど揃ったからね」
そう言って魔王は一歩ずつ近づいていった。
「俺達は理想のためにお前達を倒し、世界を終わらせる。天使」
「あなたの理想を阻止します。私と彼女達で。魔王」
そう言って天使も一歩ずつ近づいていく。
二人は顔が触れるギリギリまで近づいて互いの顔を睨んだ。そして、
キスをした。