FATER   作:知咲

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 真っ暗で何も見えない世界を一人で歩く雪。彼女はなにを目指して歩くのか。


友達

「智さん大丈夫ですか」 

 菜々は智のいる部屋のドアの前に立っていた。

「うん」

 智は弱々しい声で返事をした。

 菜々はホッとした。声が聞こえるということはまだ彼女が生きているという事だからだ。しかし、今の状態の変える手段は思いついていなかった。

 

「どうだった智は?」

「全く変化無し」

 シノは大きく溜め息をついた。

「今回の件は相当のダメージがあったからね。暴走してたとはいえ私達を殺そうとしたんだから距離は空けると思ってたけどそれにしても長すぎよ」

「仕方ないよ。自分が魔王だって知らされたんだから」

「それもそうだけど。いつまでああするつもりなの?」

 シノは怒ってたいた。

「シノ落ち着いて。今私達は何もすることが出来ないの。出来るのは彼女を信じるだけだよ」

「そんなの分かってるよ!!」

 そう言ってシノは部屋を出ていった。

 確かに今私達は何もすることが出来ない。ドアを開けようとしても開かない。壊そうとしても一瞬で直ってしまう。多分智が誰も入らせないために能力を使っているのだ。

「すまないな。パートナーの俺すらも何も出来なくて」

 キーホルダーになっていたクロが猫の姿になった。彼も例外なく智の部屋に入れないのだ。

「あいつはどんな困難でも打ち破った奴だ。だからきっと」

「まるでクロは昔から智さんを知ってるみたいだね」

「ま、まあな。俺とあいつはパートナーなんだからな」

 胸を張ってクロ言った。

 

 真っ暗い空間の中智は座っていた。たまに菜々の声が聞こえるだけのただなんにもない空間だった。

「そなたはなぜそうなったんだ?」

 誰かが私に話しかけてきた。

「誰?」

「誰と言われても私も分からない」

「そうなんだ。で私に何か用があるの」

「特にない。ただ一つ聞きたいことがあってな」

 誰かは智の後ろを見た。そこには微かな光がこぼれていた。

「いつまでここにいるつもりなんだ?」

「いつまでか・・・。多分ずっとだよ」

「なぜ?あの光の先にはそなたを呼ぶ声がするのに?」

 誰かは首を傾げて智に尋ねた。

「駄目だよ。また、私の力が暴走するかもしれない」

「ふーんそうか。なら、ここにいればいい。全てを飲み込み包み込む闇の世界で」

 (闇の世界か)

 智は自嘲しながら思った。今の自分にはぴったりなところだと。

 

「智はまだ出てこないの?」

「はい。まだ出てくる様子はありません」

「そう。一体どうすればいいのかしら」

 茜音先生は困った顔をした。

「それじゃあ、天使の力使って智を部屋から出すことは出来ないの?」

 綾香は手を挙げて茜音先生に尋ねた。

「出来るかもしれないけど限りなく無理ね」

「無理なの!?」

 さすがにこの反応にはみんなが驚いた。

「あの部屋は今小さい規模だけど闇の世界ができてるの。天使の力は光の力。闇の力と光の力は干渉が難しいの」

「そうなんだ」

「それに、例えあの扉を開けれたとしても彼女の心の扉が開いたとは限らないわ」

「それじゃあ、本当に打つ手なしね」

「はー」と皆は溜息をした。

 その時、「バタン」というドアの閉まる音がした。

「あれ?誰かドアを開けた?」

 しかし、ここには智以外が集まっていて他にこの部屋を知る人はいないはずだった。しかし、一人だけ忘れられていた。

 

(本当に何も無いの?あんなに元気だった智さんが)

 雪は真相を確かめる為に茜音先生を探していた。しかし、職員室も何処の教室を探しても居なかった。

(じゃあ、あそこしかない)

 そう思って雪はめったに生徒や先生が通らない廊下に向かい一つのドアの前に立った。

 雪はゆっくりとドアを開けた。

「すみませー・・・」

「それじゃあ、天使の力を使って智を部屋から出すことは出来ないの?」

「えっ!?」

 雪はその場で固まった。

 そうして、今の智の状況を知ってしまった。そうして、なぜ菜々さん達がドアに触らないように言われたか。そして、どうしていつも辛そうな顔をしているか知った。

 雪はゆっくりとドア閉め、走っていった。

 

 雪は智の部屋に立っていた。ドアのノブに手をかけた。

そして、ドアノブをひねって、ドアを開けた。

「開いた」

 雪はちょっと笑顔になった。そう、雪は誰も開けられないドアを開けたのだ。

「智さん」

 恐る恐るドアの中を覗いた。

「えっ!?なにこれ」

 そこに広がるのは暗闇だった。

「ここに智さんが」

 怖い気持ちを抑えながら雪は一本また一歩踏み出していった。

 

「ここは何処。空気が重い。何も見えない。本当にここに智さんはいるの」

 辺りを見回しながら雪は進んでいった。

「この暗闇・・・まるであの時の私がいたところみたい」

 だんだん雪の気持ちまで暗くなっていった。

 

(なんで髪を白に染めてるの?それ可愛いと思ってるの?)

「違うの私の髪は元々白いのよ」

(じゃあ、白髪なんだ。おばあちゃんなんだぁ)

 そうして、周りを囲んで皆がバカにしてくる。

「なんで、なんで私は普通なのに」

 雪は闇に呑まれようとしていた。

 その時、

「お前ら何やってんだ」

 そこには一人の男子が立っていた。

「何って、こいつが調子乗ってるからこれ以上調子に乗らないようにしてんのよ邪魔しないで」

「黙れ」

 そう言った瞬間周りの人達は動かなくなった。

「大丈夫?」

 男子は手を差し出した。

「ありがとう」

 雪はその手をとった。

 

「ハッ!」

 気がつくと雪はその場に立って泣いていた。

「なんで、あれを見たの?」  

 その時、

「ついて来て」

 どこからともなく声が聞こえた。

「だ、誰?」

「彼の所に来たいんでしょ。こっち」

 すると、闇の中から一つの小さな光の粒が見えた。

 雪は意を決してその光についていった。

 

 

「な!?なぜ彼女が!」

 智の部屋を探っていた茜音先生は急に立ち上がって驚いた。

「どうしたんですか」

 急に大きな声を出した茜音先生に菜々が尋ねた。

「智の部屋に・・・・・雪さんが入ってる」

「「な!!」」

 部屋にいた彼女たちは驚いた。

「私達も行くわよ」

 そうして彼女たちも智の部屋にむかった。

 

 光の粒を追っていた雪だったが光は急に止まった。そして、そこにいたのは

「智さん?」

 そこには俯いた智がいた。

「ん?雪さんどうしてここに」

 智は雪の方を見た。

「智さんを呼びに来たんです」

「なんでなの?」

「智さんを待ってる人がいるからです」

「そんなことないよ。わたしはここにいなくちゃいけないんだ」

「なんでなんですか?」 

「わたしの力は闇、この力は魔王の力なんだよ」

「だからどうしたんですか」

「この力は仲間を傷つける。そして、いつかは・・・」

 智は泣いていた。

「だから、私はここに居る。誰もいない闇の世界で終わりたい」

「それは智さんの独りよがりじゃないですか」

「うるさい!雪には何が分かるの」

「だって智さんの言う仲間達は智さんがここから出てきてくれるように頑張っている。それなのに智さんはそれを拒否している。だから・・」

「そんな事分かるってるよ!」

 雪の声を遮るように智は叫んだ。

「ああ、そうよ、私は怖いの。私はいつか魔王になってしまうかもしれない。仲間たちを傷つけるかもしれない。だから怖いの、それに何にも思わなくなる私が」

「そんなことないですよ。そうならない為に仲間がいるんですよ。そして、友達が」

 俯いて泣く智の手を雪は握った。あの頃の自分が泣いていた彼を慰めるように。ニッコリと笑って、

「だから行きましょ。仲間の所に」

「一つ聞いてもいい?彼女達は私の事怒ってない?」

 俯いていた顔をあげて涙目ながら雪に尋ねた。

「怒ってますよ。いつまで経っても引きこもる智さんにですけど。だから」

 雪はニコッと笑って智の手を引っ張って友を立たせてた。

「はやくここから出て謝りにいきますよ」

 そう言って雪と智は光に向かって歩き始めた。

「そなたはいくのか」

 何かが智に話しかけてきた。

「ああ、私を待ってくれている仲間達がいるからね。そういう君はどうするの」 

「ここも確かに居心地がいい。でも、そなたに興味を持った。あとからそっちにいくとするよ」

「そう、待っているよ」

「もう少しですよ智さん」

「そういえばどうして雪さんは私を助けてくれたの?」

「そんなの簡単ですよ。だって、友達じゃないですか」

「そうなんだ。ありがとう。雪さん」

「それで提案があるんです」

「提案?」

「友達なのにさん付けは息苦しいじゃないですか」

「そうだね。分かったよ雪ちゃん」

 智はニコッと笑う。

「ありがとう。智ちゃん」

 雪もニコッと笑った。

 

「ドアが開いている」

 智の部屋の前に菜々達はいた。

「この先が闇の世界なの」

 真っ暗で何も見えないドアの先を見て息を飲んだ。

「でもここに智はいるのよね」

 そういって皆は足を踏み入れようとしたとき、

「待って誰かが来る」

 それを茜音は止めた。

 皆は目を凝らして中を見た。すると、二人の人影が見てた。その人影はだんだんハッキリしてきて、そこには雪と智がいた。

「「智さん」」

 皆は涙目になりながら智の名前言った。

「ごめん。みんな迷惑かけて」

 智は頭を下げた。

「ほんと、迷惑をかけて。もうこんなことしないで下さい」

 菜々はそう言って抱きついた。

「そうよ。私はいいけどお姉ちゃんを傷つけたら許さないからね」

 シノは笑いながら言った。

「分かったよ。気を付けるよ」

 そうして、全員が揃って夏休みを過ごせるようになった。

 

「ありがとうね。雪さん」

「いえ、私はただ説得しただけです」

「でも、こんな危険なこともうしないで。まずは私か誰かに相談してね」

「はい。すみません」

 そういって頭をさげた。

(彼女はやっぱり恐ろしい存在ね)

 天使はそう思ったのだった。

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