その日は夏休み初日ということもあり、久々にゆっくりと寝ていた。
何か胸の辺りに違和感を感じて私は目を覚ました。
「お、やっと目が覚めたか」
「はぁ?」
私の胸に乗っていたのは見たことのない小さな少女だった。その光景に私は理解出来なかった。
「え?えぇぇぇぇ!?」
「と、智さん?何があったんですか」
頭の上に少女をのせている智を見て菜々は不思議そうに尋ねた。
「えっとぉ、朝起きたら居たの」
「そういうこと。よろしく」
少女は片手をあげて挨拶をした。
「どうしたのお姉ちゃん智君になにかあっ」
菜々の後ろからひょこっと出てきて智の姿を見て固まった。
「まさか、智君にそんな趣味があったなんて・・」
悲しい目で私を見ながらシノは部屋に戻ろうしていった。
「か、勘違いしないで。せ、説明聞いてー」
その後、なんとかシノの勘違いも解くことができた。
「今、茜音先生学校にいないって」
職員室に茜音先生がいないか奈々が確認してきてくれたが珍しく居なかった。
「そうかぁ、ありがとう奈々」
「じゃあ、天使抜きでこの子が何者か考えるしかないわね」
そう言って咲夜は腕を組んで悩んでいた。
「ごめんね、私がなにも思い出すことができないから」
「まあ気にしなくてもいいよ。それより、今どこまで思い出すことができるの?」
「んー?あんまり、でも、ちょっとだけ」
「どんな事なの教えて」
「私、昔誰かと一緒に戦っていたの」
「戦っていた!?誰と」
「ごめん・・・そこまでは思い出せない」
「そうかぁ、じゃあ、他に方法はないのかなぁ?」
五人は頭を抱えていた。
「そうだ!猫達に聞いてみればいいんじゃないの!」
珍しく綾香がグッドアイディアを思い付いた。
「そうね。ねぇ、シャルいる?」
「はい、ここに居ます」
咲夜の後ろから一匹のペルシャ猫が現れた。
「この猫って」
「そういえば初対面だったわね。この子はシャル。私と契約した天使の猫よ」
「皆様はじめましてシャルです。以後お見知りおきを」
「は、はあ。よろしく」
「ねぇシャル。この子の事何か知らない?」
智の頭に乗っていた少女を持ち上げてシャルの目の前に持ってきた。シャルはジーと彼女をみた。
「すみません。何もわかりません。というかこの子は何なんですか?」
「何なのかといわれても私も分からない」
どや顔をしながら彼女は言い切った。
「あはは、実はこの子が昔誰かと一緒に戦っているって言ったんだ。だから、天使かもしれないと思ったんだ」
「そうですか。それなら他のネコも力になれないとおもいます」
「「えっ??」」
「確かに私は咲夜さんと契約した天使の使いです。でも、私はその天使を見たことがありません」
「えっ??」
予想外の答えに五人は固まった。
「私達は天使の力を込められた石を貴女達が使いやくするため、また、貴女達のサポートをするために存在するんです」
「そうなの、じゃあ、やっぱり天使を待つしか方法は無いわね」
そう言って持っていた彼女を元の位置の私の頭に乗せた。
「ふぁ~。よく寝た。あれ?どうして秘密基地にきてんだ?」
キーホルダーから戻ったクロは顔を洗いながら智を見上げて目を見開いた。
それと同時に秘密基地のドアを開けて茜音先生が入ってきた。
「ごめんね。いったい何が・・・・」
秘密基地に帰ってきた天使も智を見て固まった。
「な、なんでルシファーがここにいるんだ!」
クロは誰も名前を知らなかった彼女の名前を叫んだ。
「そうか、私の名前はルシファーだったのか」
謎が解けたのでルシファーは機嫌が良くなっていた。
「んで、どうしてここにいるんだよ」
「ん?どうしてかぁ?しいて言えば彼女が私を呼んだからかな」
そう言って、わたしを指差した。
「そういや、あの時話しかけてきたのはルシファーなのか」
「そう、そして智が出ていった所から私も出てきたんだ」
「はぁー、まさかあんたが出てくるとは思わなかったよ」
「その言い方、私の事知っているのか」
「知ってるが契約する前は知らん」
「私もクロと一緒です」
茜音もクロに合わせるように言った。
当てにしていた2人だったがそこまでの情報はもっていなかった。
「待ってください」
話に首を突っ込んだのはシロだった。
「なぜ、クロはルシファーと会ったことがあるんですか?普通は会うことはないはずでは?」
シロの質問は当然だった。クロの言っていることはシロ達ネコからしたら普通の事ではないからだ。
「そのー。えっとぉー?」
クロはどう答えたらいいか分からずに目をそらした。
「それは私が答えます」
クロの代役として茜音が出てきた。
「彼女は普通の天使とは違います。実際に記憶にも障害があるのです。そのような不安定な状態だったのでクロに手伝ってもらったのです」
「でも、どうしてそこまで無理をして契約したの?安全を取るなら普通はそんなとしないとおもうけど」
綾香は不思議そうに尋ねた。
「それはどうしても智との相性がいい天使が彼女だけだったのよ。相性が、悪ければ全く力が出せないのよ」
「それはその通りだけど・・・」
シャルは口ごもりながら引っ込んだ。
「相性ねぇー」
私は頭の上に乗る天使を見た。すると彼女と目が合った。
「そういう事ならしょうがないよね。これからよろしくね。えっとぉー」
「そういやまだ名前言ってなかったね。私は智よ」
「なるほど、智ね。よろしく智」
そうして、彼女の記憶を今後も思い出す手伝いもすることになった。
「まさか、こんなに早くにあいつが出てくるなんてなぁ」
今日の出来事にクロはベランダで頭を悩ませていた。
「何を考えているの」
そこにルシファーがやって来た。
「別にどうでもいいことだけど」
「そうなのね。てっきりわたしは私をどうにかするのに頭を悩ませていると思ったわ」
「・・・・・」
「そもそも貴方がここにいるのが不思議なのよ」
「どこがだよ」
「貴方達のようなネコは天使と魔王にしか仕えない。まして、光の力と闇の力をもった存在するはずのない中途半端の存在。つまり堕天使に普通、ネコは仕えないはずよ。ねぇ、貴方は本当は誰のネコなの?」
「・・・・」
クロは何も答えなかった。
「無言が答えね。じゃあ、簡単に聞くわ。貴方は味方なの敵なの?」
「今は味方だ」
「今は・・・ね。じゃあ、私の事教えてくれる?本当は知ってるんでしょ」
「今は言えない」
「そう、じゃあ、いつか教えてよね。クロ」
そう言ってルシファーは部屋に戻った。
「相変わらずの勘だよ。敵でも味方でも怖いわ」
そう言ってクロも部屋に戻った。
(知ってるさ、何もかもを。あんたの黒く染まるきっかけもな)