この面白き世界   作:【時己之千龍】龍時

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第02話 始まりの町

 

「町、だな」

「あぁ、異世界の……町だ!」

 

 和真が物凄く嬉しそうに、これからを楽しみそうに声を上げた。一方の龍燕は静かだが、内心これからが楽しみでいっぱいだった。しかし、二人に挟まれて立っている女神のアクアは、身体を震わせ涙を流していた。

 

「ん…アクア、大丈夫か?」

 

 アクアの様子に気づいた龍燕が声を掛ける。

 

「う……うわあぁ」

「うお?!」

 

 突然声をかけた龍燕にアクアは飛び付き、肩を揺さぶった。

 

「お、落ち着け?」

「早く魔王を倒してよ!倒しなさいよ!あなたなら、あなたの力なら余裕でしょっ!今すぐにぃ~!」

「泣きながら言われても……なぁ」

 

 さすがの龍燕も困った。こんな面白そうな世界、早く終わらせるのはしたくない。

 

「とりあえずギルドに行こう」

「ギルド?」

「きっとある。そこで冒険者で登録して、今日は宿まで見つける」

 

 和真が先程と違い、何故か自信満々に言った。

 

「それで女神。ギルドはどこにある?」

「へぇ?知らないわよそんなこと」

「知らないそうだ。まぁ適当に歩いて見つけよう。当分はこの町で暮らしそうだからな、道を覚えるのにもいい」

 

 龍燕の言葉に和真は確かにそうだなと返し、ギルドを探すところから始めた。

 

 

 

 

 十分程辺りを歩き、町の中央でギルドの建物を見つけた。

 

「ここがギルドか。他に比べて高いな」

 

 三人は中に入る。そして最初に目に入るのは食堂だった。

 

「いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いているお席へどうぞー!」

 

 短髪赤毛の女給が愛想よく迎える。

 

「奥か。行こう」

 

 受付に付き、受付嬢に声を書ける。

 

「すまないが、冒険者の登録がしたく参った」

「登録ですね?登録手数料が一人、千エリス」

「登録、手数料……か」

 

 龍燕は後ろの二人を見る。和真は首を振り、アクアも同じく。

 

「私もないわよ」

「ない、か。すまない、出直そう」

 

 三人は食堂側のテーブルの一つに座った。

 

「作戦会議だ、と言っても……俺は買い取りをしてくれるところを探し、金を得てくる」

「買い取り?あ、そうか。龍燕は私物があったんだったな。頼みます」

「この世界の価値がどのくらいになるかわからないためどのくらい貯まるかわからないから、二人も考えて資金を集めてくれ」

 

 龍燕の言葉に二人はわかったと頷いた。

 

 

 

 

 解散してから一時間後。再度食堂に皆が集合した。

 

「揃ったな。二人はどうだった?」

 

 そう言いながら龍燕は向かいの席に座る。

 

「四千エリスを手にいれた」

「ほう、凄いな。で、アクアはどうしたんだ?かなり暗いが」

「女神と信じてくれず、その上注意されたんだよ」

 

 本人の代わりに和真が答え、龍燕はそうだったのかと小さく返した。

 

「俺は細かいのもあるが、十万くらいになった」

「「十万?!」」

 

 二人は揃えて声を上げて立ち上がった。

 

「どうしてそんなに?」

「なにか価値あるのを売ったのか?」

「そうだな、自作の着物を一式売った」

「じ、自作って、裁縫できるんだな」

「あぁ。他にも料理とかもできる。機会があればご馳走するよ。さぁ改めて行こうか」

 

 龍燕は立ち上がり、三人で受付へ向かった。

 

 

 

 

「ではこのカードに、氏名、才、身長、体重を記載してください」

 

 三人は受付嬢からカードを貰い、それぞれ記入していく。

 

 そして順にカードが光り、細かい数値が現れた。

 

「佐藤和真さん。全体的に平均ですね」

「へ、平均ですか?」

「あ、幸運値が高いですね。でも幸運は冒険者では役に立ちませんが……商人が良さそうですが?」

「冒険者で……お願いします」

 

 和真は泣きそうな顔で答えた。龍燕はそんな和真の肩に手を置き、運も役に立つよと言って励ます。

 

「次は私ね」

「アクアさんです、ね?……って、これは凄いです!知力と幸運はかなり低いですが、全体的に平均より上です!これならなんでもなれますよ」

「え、何々?わたし凄いの?」

「はい凄いですよ!」

「そうなの?なら私はアークプリーストになるわ」

「アークプリーストですね?あらゆる回復魔法と支援魔法を使いこなし、前衛に出ても問題ない強さを誇る万能職ですよ!では、アークプリースト……っと。冒険者ギルドへようこそアクア様。スタッフ一同、今後の活躍を期待します!」

 

 受付嬢と他役員達、それから他の冒険者達からも拍手などが上がった。

 

「さて、次は俺の番だな」

「シャクレンイン・シエンさんですね。ええっと……ん、これは……え、嘘……」

「ん、どうした?まさか低いのか?」

 

 受付嬢の驚きように龍燕が不安になって聞く。

 

「アクア様よりも遥かに凄いです。幸運は平均ですが、他はかなり高いです!それにユニークスキルをお持ちなんですね」

 

 ユニークスキル?と龍燕は初めて聞く言葉に復唱した。

 

「貴方だけのスキルです。操炎者(ソウエンシャ)と書いてあります」

「操炎者、か」

 

 自分に相応しいと龍燕は思った。

 

「それでシエン様、職は何になさいます?上級職でも、何でもなれますよ」

 

 受付嬢の言葉に、和真が龍燕の後ろで「何で俺だけ下級なんだ……」と膝をついてしまった。

 

「職か……今まで考えたこともなかったな。これは後から変えられるのか?」

「できますよ」

「では和真と同じ冒険者で頼む」

「冒険者ですね、わかりました」

 

 職も決まり、三人はクエスト板へ向かった。

 

「ほう、色々あるな」

「ジャイアントトードにしよう。ジャイアントの意味は忘れたけど、トードは確か蛙だし、そんなに難易度の高いクエストじゃないと思う」

 

 和真がクエストの紙を手に取りながら言った。

 

「よし、それにしようか」

 

 受付へクエストを受けに行った。

 

 

 

 

「うわあぁぁぁーっ!」

 

 丘の下で和真が蛙に追われていた。確かに蛙である。蛙であるが……ジャイアントトードは巨大な蛙であった。

 

「ちょっと待て?!こんなん倒せるのかーっ!」

 

 蛙の口から出る舌から必死に避けながら和真は全力で動く。

 

「プークスクス!必死で超ウケるんですけど!」

 

 今のところ安全圏となっている丘の上で、アクアは爆笑し、声を上げていた。

 

「コラー駄神!笑ってないで助けろ!龍燕も強いんだろ?何で呑気に酒のんでんだよ?!」

「ん、あ……平和だなぁて。それに風や日差しも気持ちいいくらいだったから」

 

 和真の言葉に龍燕は思ったことをそのまま言う。

 

「どんな理由だよそれ?」

 

 龍燕もアクアの隣で座り、酒をグビグビと呑んでいた。

 

「仕方ないわね。力を貸したげるっ!その代わり今度は私を「そこ、危ないぞ?」へ?あ……」

 

 振り返ったアクアは、目立ち過ぎたために頭からパクリと蛙の口に呑まれた。蛙の口元から垂れ出ているアクアの足がピクピクと動いていた。

 

 

 

 

「このパーティーには力が足りない!あっても龍燕は酒を呑んで見てるだけだったし」

「見てるだけって、アクアを食らった蛙はきっちり丸焼きにしただろう?」

「びくっ」

 

 和真の言葉に龍燕は反論し、アクアは思い出したのか身体を震わせた。あの時龍燕はアクアを咥えた蛙を、蛙だけを丸焼きにして、次に和真を追いかけていた蛙も丸焼きにし、小太刀を取り出したかと思えば瞬時に解体して武己というのにしまっていた。

 

「とりあえずパーティーメンバーを増やす!」

「まぁ賑やかになるのはいいな」

「私が募集の紙を書くわ!」 

 

 アクアが受付の方へ走っていった。

 

「大丈夫かな……あの駄神」

「駄神と呼ぶのは可哀想だと思うが」

「出してきたわよ」

「早かったな」

 

 アクアは自信満々にすぐに来るわと二人にいい放つ。

 

 それから二時間。三人は水を飲みながらパーティー候補者が来るのを待つ。

 

「何で来ないのよ!」

 

 アクアは突然テーブルを叩いた。

 

「まだそんなに時間は経ってないだろ?てか何て書いてきたんだよ」

「うぅ……それは……」

 

 アクアは書いて貼ってきた募集の紙の、条件を話した。

 

「条件が上級者に限るって……」

「条件を少し下げた方がいいんじゃないか?…ん」

「すみません」

 

 条件を変更した方がいいと話していると三人は声を掛けられた。

 

「まさか、パーティーに入りたく来たのか?」

 

 龍燕が声をかけてきた杖を持つ少女に聞く。

 

「はいそうです」

「ふむ。では座って、名と職種を教えてくれ」

 

 すると龍燕の言葉に、劇でも始まったかのような動きや台詞をめぐみんは言い始め

た。

 

「最上級職!アークウィザードを生業とし、放つ必殺魔法は山をも崩し、岩をも砕くっ!紅魔族随一の魔法使い!その名は……めぐみん!」

 

 ピシッと決めのポーズをとるめぐみん。

 

「冷やかしならお帰りください」

「冷やかしちがわい!」

 

 和真が嫌そうに言い放ち、めぐみんは即否定した。

 

「まぁカードを確認すればわか……ん、どうした?」

 

 めぐみんが力なく膝を付いた。

 

「……す、すいませんが、何か食べ物をくれませんか?……もう三日も……食べてないんです」

「なに?それは可哀想だな」

 

 龍燕はメニュー本をめぐみんに手渡した。

 

「ほら好きなのを選べ。採用するかはそのあと、さっき言っていた爆裂魔法を見てみたい」

「ありがとうございます。わかりました」

 

 めぐみんは席についてメニュー本を開いき、龍燕のおごりで食べさせた。

 

 

 

 

 龍燕達はめぐみんを連れて再び蛙のいる草原に来た。

 

「では目標は何ですか?」

「目標は」

 

 龍燕は一人、距離をおいた。

 

「俺だ、俺に当ててみろ。その爆裂魔法ってのはどのくらいの威力があるのか『直に』見てみたい」

「ちょ死んじゃいますよそれ?!」

 

 龍燕の予想外の言葉にめぐみんが声を上げる。和真も何言ってんだと思っていたがすぐに前世の死に様や蛙を丸焼きにしたのを思い出して考えが変わった。

 

「…龍燕なら大丈夫なんじゃねぇの?てか蛙が出てきたぞ?!」

「ん?気にするな、適当に二人で相手をしていろ。走り込みも鍛えるのにいいからな。とりあえずめぐみん、一発撃ってみろ」

「ええと……どうなっても知りませんからね」

 

 そう言うとめぐみんは深呼吸をして、集中し始めた。

 

「これが、人類が行える中で最も威力がある攻撃手段。……これこそが究極の攻撃魔法です」

 

 めぐみんの杖先に光が灯る。そして龍燕の方にも、足元や頭上に数円の魔法陣が空間上に描かれ、眩しいばかりに輝きを増していった。

 

「エクスプロージョン!」

 

 呪文を唱え、完成した魔法……爆裂魔法を龍燕とその周辺を飲み込み、爆発させた。

 

 爆発は地面を、龍燕を中心に円を描くように掘り下げられていた。

 

「ほう、凄いな」

 

 龍燕は着ていた胴着や羽織が土埃で汚れながらも怪我一つなく、宙に浮いていた。正確には掘り下げられる前の位置からまったく動いていない。

 

「えっ?全力で放ったのに無傷な…ん、ですか?」

 

 めぐみんは驚きの言葉を言いながら前に倒れた。

 

「ん、めぐみん。どうした?」

「爆裂魔法は…一日に一発しか、撃てないんです」

「……じゃあ撃つとそうなると?」

「はい……あ、近くで蛙が出てきたみたいです」

 

 めぐみんは蛙が出てきたのを確認したようだが指一つ動かせないようだった。

 

「近くで蛙が出てくるなんて予想外です。すみませんが助け……」

 

 めぐみんは蛙に呑まれた。蛙の口元から足がピクピクと動いている。

 

「あー本当に動けないのか」

 

 龍燕は冗談だよな?と見ていたが本当だったようだ。瞬動で蛙に近づき、その腹に烈掌を放った。その衝撃に蛙はめぐみんを吐き出し、龍燕は受け止めた。

 

「大丈夫だったか?・・・・・・いや、すまん。蛙にしゃぶられたのに大丈夫と聞くのもおかしいよな」

「……蛙って、生臭いけど結構温いんですね」

「……いらん知識だな。まぁ奴が俺を食うんじゃない、俺が奴を食うんだ」

 

 そう言うと龍燕は地を足で強く踏む。そして蛙の足元から火山華という火炎放射にも似た炎の技が吹き出て飲み込んだ。受けた蛙は焼き蛙になった。

 

「これでよし、と」

「おぉ!貴方も上級職だったんですか?呪文とか全く聞こえませんでしたが!」

「いや、よくわからなかったから冒険者を選んだ。後から変えられると言っていたからな。これは俺の家系に代々、魂に刻まれて伝わっている神能(チカラ)だ」

「凄いですね」

 

 龍燕は辺りを見渡した。

 

「あ、またか」

 

 アクアが蛙に頭からまた口に含まれ、足をピクピクと垂らしていた。その前で和真が必死になまくら剣(龍燕から見て)を振るっていた。

 

「さて行くか」

 

 龍燕は動けないめぐみんをお姫様抱っこのまま、和真の方へ向かった。

 

「和真、そのなまくら剣じゃ無理そうだな」

「わかってんなら手伝え!てかそいつを抱えながら戦えるのか?」

「問題ない。火螢(ヒケイ)」

 

 龍燕の身体から桜の花弁に似た炎が溢れ、宙を舞った。

 

「百鬼火獣」

 

 宙を舞っていた炎が集まり、人の形をしたのが一体、蛙の周りに現れた。百鬼火獣は百鬼の通り百体まで炎の分身を作ることが出来る。

 

「うわぁすげぇ?!使えるならさっさと使ってくれよ」

「使うかどうかは俺が決める」

 

 そして蛙は真正面から攻められた。

 

 

 

 

 夕方。討伐クエスト、ジャイアントトード計五匹の討伐を終え(全て龍燕が丸焼きにした)、ギルドへ報告に向かっていた。

 

 めぐみんは草原からずっと動けず、龍燕におぶってもらっていた。

 

「生臭いよぅ……生臭いよぅ……」

 

 アクアは龍燕に助けてもらってからもずっと泣いていた。龍燕に滑り気のある液はどうにかしてもらったが、服やらについてしまった臭いまでは取れなかった。臭いを浄化するというのは経験がなかったため、龍燕はもっと修行が必要だなと思っていた。

 

「あともう少しでギルドだ。だから我慢してくれよ」

「……うん……」

 

 和真に背でアクアは頷く。このやり取りは何度目になるかはもうわからないほどになる。

 

「よしついたな。めぐみん、もうそろそろ歩けないか?アクアと一緒に風呂に入ってくるといい」

「はい……ありがとうございました。けど…」

 

 めぐみんは龍燕の背から降り、自分の足で立つ。そして手渡しで500エリスを渡す。

 

「えと、これは?」

「風呂代と飲み物代、その二人分だ。どのくらいするか分からないが、多分足りるだろう。クエストの報酬は別で等分分け。次に採用か不採用かだが」

「は、はい!」

 

 めぐみんの杖を握る手にぎゅっと力が入る。

 

「採用とする」

「本当ですか?」

 

 龍燕の言葉に一人、え?嘘だろ?と驚く奴がいたが無視して話を続けた。

 

「うむ。あの爆裂魔法は極めればさらによいものになると思うしな。中々だった。まぁ一日に一発だけしか撃てないというのは驚いたがな。でも採用は採用だ」

「うっ……うわぁぁ」

「お?」

 

 突然めぐみんは泣き出し、龍燕に抱きついた。

 

「私の、爆裂魔法を見て……一発しか撃てないってわかっても……なかまに入れてくれたの……シエンだけでしたぁ!本当に……本当に……ありがどうございまずぅ!」

「そうか」

 

 龍燕は優しくめぐみんの頭を撫でてやった。 

 

「とりあえず、風邪をひかない内に風呂に入ってこい。俺達も報告を済ませたら風呂に入りにいくから、食堂で待ち合わせしよう」

「わかりました!」

 

 めぐみんは涙を拭いて、アクアの手を引きながら大衆浴場へ駆けていった。

 

「さぁて俺達も早く済まして風呂に行こう。臭いが取れなくなるかもしれんからな」

「……はい」

 

 二人はギルドの受付に向かった。

 

 

 

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