この面白き世界   作:【時己之千龍】龍時

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第05話 まさかの一日冒険者交代?

 ある日、あまり変わらない日々の生活に何か刺激が欲しいなと龍燕は考えていた。

 

 この世界に来てから龍燕はほとんど変わらない生活を続けている。

 

 まず早朝六時に起床し、鍛練を始める。内容は基本の体術、剣術、歩法術、それから精神力の操作鍛練。それらをギルドの受付が開始する九時まで行う。

 

 九時からはギルドの任務でこの季節は常時出ている『ジャイアント・トード三日以内に五匹討伐』と言うのを行きと帰りも含めて、三十分で達成させる。その時は暁と煉もそれぞれ一匹ずつ討伐する。

 

 そして九時半頃から待ち合わせの十時まで朝食をとる。その時の朝食は先の任で討伐したトードの唐揚げが主食だ。

 

 

 

 

 今日もいつもの朝の流れで皆と合流し、皆も朝食を終え、また何らかの討伐任務を探しに行くかと話していた。そこでカズマが他の冒険者に声を掛けられ、流れが変わった。それにより、カズマがキレ気味だった。

 

「強いヤツらにおんぶに抱っこで楽しみやがって。俺と代わってくれよ兄ちゃん達よ!」

 

 その言葉に完全にキレたカズマが男に掴み上げようとしたのを、龍燕が腕を掴んで止めた。

 

「待てカズマ、面白い話じゃないか?この者が冒険者である俺とカズマの代わりになり、それで楽しめるのかやってみようじゃないか」

 

 龍燕の話にカズマは大きく頷いた。

 

「それはいいな!一日交換しよう!」

「他の者達もそれで構わないか?」

 

 アクア、めぐみん、ダクネスはたまにはと頷く。相手側も構わないと首を縦に振った。

 

 

 

 

 交代し、ゴブリン狩りの任務を受けて龍燕一行は山に向かっていた。それから目的地に向かいながら自己紹介もやっていく。

 

 指揮をとっていたのは『クルセイダー』のテイラー。後方支援の『ウィザード』リーン。それから『アーチャー』のキース。そしてカズマが言い、龍燕の番が来た。

 

「俺は灼煉院龍燕だ。龍燕と呼んでくれ。『冒険者』であるが、俺に合うのがなかったからそう名乗っている。向こうでは指揮をしていた」

「「「え?」」」

 

 テイラーとリーン、キースが龍燕に足を止め振り返り、驚いた顔を見せた。

 

「お前がリーダーだったのか?」

「ええと、そうだが……あ、向こうは大丈夫だろうか?考えてみると指揮をするのがいないな……。まぁ何とかなるか」

 

 肯定した後すぐに仲間の心配を始めた。

 

「そういえば、指揮をするのは龍燕かな?それともテイラーさん?」

「それは……!気配がする、草の影にしゃがめ!」

 

 龍燕の声に一斉に草の影に隠れる。

 

「何の気配なんだ?」

「向こう30mにそこそこ強い気配が近づいている。一様こちらの気配を遮断しよう」

 

 龍燕から炎が溢れ、皆を包み込む。

 

「これは?」

「詠唱も無しに……?」

「こんなの見たこともない?」

「音はそれほど抑えられないから通り過ぎるまでなるべく立てないように頼む」

 

 龍燕は小声で皆に注意を促し、カズマとテイラー達は頷いた。

 

 そして十五分程その場を耐え、やっと移動を再開した。

 

「まさか『初心者殺し』に出くわすとはな……」

「あれがそうだったのか。一戦しても良かったな」

 

 龍燕の言葉に皆がマジかよ!?とさらに驚いた。

 

 その後ゴブリンの群れを見つけた。が予想外な事が起きた。

 

「うそだろっ?!ゴブリンなんて十匹前後の筈なのに」

「うむ……三十くらいか」

 

 驚き迷うテイラー達に対し、龍燕とカズマだけは平然としていた。

 

「くっ気づかれた」

 

 ゴブリン達が一斉に構えを取り、攻撃体制に入っていく。

 

「ちと、皆では数が多いかな?皆一点に固まれ」

 

 何をする気だと三人は思ったが、カズマが素早く動いたのと初心者殺しに出くわした時の龍燕の技を思い出し、三人はカズマに続いて固まった。固まったのを確認した龍燕は小太刀を武己から両腰に差した状態で出すと一気にゴブリン達の方へ駆けた。

 

「二連・百烈斬(ヒャクレツザン)」

 

 一瞬でゴブリンの最後側につき二刀の小太刀を納刀した。同時にゴブリン達は細切れになって散った。

 

「ゴブリン討伐、完了した」

 

 カズマは今日も凄いなと軽く拍手をした。他の三人は何が起きたのか、認識するのに数秒掛かった。そして理解した三人は声を上げ龍燕に駆け寄った。

 

「本当に駆け出しの冒険者かよ」

「初めて見る剣だけど、本当は名高い剣士じゃないの?」

「こんな楽なゴブリン討伐聞いたことないよ」

 

 そうかと龍燕は笑顔で頷いた。

 

 

 

 

 帰り道は行きよりも賑やかだった。

 

「……ん、ほぅ気づいたか。それとも待っていたか」

「何が?」

 

 足を止めた龍燕の言葉にテイラーが聞く。皆も振り返り首をかしげる。敵感知系のスキルでカズマは気づいて声を上げた。

 

「……あれってさっきの初心者殺し?」

「えっ……」

「マジかよ?!」

「龍燕さん!さっきみたいに気配を遮断するやつ、かけてよ」

 

 リーンが慌てて龍燕に言いながら近くの茂みに身を隠す。

 

「もう遅い。完全に奴はこちらを捉えている」

 

 そう言いながら初心者殺しがいる方を見つめ、龍燕は笑みを浮かべていた。この世界に来てから大した強さの相手と会えず、戦えずいたため龍燕は退屈していたが、今は『初心者殺しはどのくらい強いか?』とある意味期待し、ワクワクとさせていた。

 

「龍燕さん、マジでやる気かよ?!」

「……マジでやりそうな顔してるよこの人!」

「こんなの正気じゃないって?!」

 

 テイラーとキースはカズマの後ろで少し震えていた。リーンに関しては頭を抱えながら踞っている。すると龍燕はリーンの頭を優しく撫でてやる。

 

「よく見ていろ。二人もな」

 

 リーンの頭から手を離すと、初心者殺しに向けゆっくりと龍燕は歩き出す。初心者殺しもゆっくりと龍燕に近づく。

 

 そして互いが一mと迫った時、初心者殺しが口を大きく開き、龍燕に飛び掛かった。それを龍燕は顎に固打を突き上げる。初心者殺しは跳ね返り、宙を一回転して着地するとすぐに前足の爪を龍燕に振り落とす。しかし掌打と固打で弾かせ、肘打を初心者殺しの首元に叩き込んだ。さすがの初心者殺しも苦しそうに咳き込んだ。

 

「嘘……だろ?初心者殺しが押されてない?」

「夢を見ているのかな?」

「……凄い」

 

 三人はそれぞれに言葉を漏らす。カズマは龍燕なら簡単かもしれないなと、初心者殺しの攻撃を軽くあしらう姿を見ながら冷静にいた。

 

 龍燕は少し考えた後、両腕を軽く広げた。

 

「さぁ来い」

 

 初心者殺しは地を蹴り、口を再び大きく開け、龍燕の首筋に噛みついた。

 

「「「「?!」」」」

 

 これにはカズマも驚いた。初心者殺しがガリガリと何度もかじりつく、がそれをやめて距離を取った。さらに驚いたのは龍燕にも初心者殺しにも血がついていなかった。

 

「お前の負けのようだな」

 

 龍燕の発言に、初心者殺しは小さく吠えて立ち去った。

 

「さて終わった。んーまぁそこそこ強かったかな」

 

 そこそこ満足感を得た龍燕は笑顔を浮かべながら皆に振り返る。皆はぽかんとしていたがテイラーから「規格外過ぎだよ」と言葉を漏らし、キースも似たように笑っていた。リーンは目を輝かせながら「私、パーティー変えようかな?」とか言い始めていた。

 

 

 

 

 帰りの途中、木陰で休憩を始めた。

 

「なぁ龍燕ってさ。本当に冒険者なのか?それにしては規格外過ぎな技量を持っているけど」

「ん、本当だ。ほら、これは嘘をつかないっていうとか言っていたな」

 

 テイラーの問いに龍燕はカードを渡した。

 

「確かに冒険者だが……」

 

 渡されたカードを見たテイラーが驚いた顔を浮かべ、カードを持つ手を震わせていた。それを見たリーンとキース横から覗き見て声を上げた。

 

「まさか……これってどう見ても冒険者のステータスじゃないよ?!」

「一体どんな鍛え方したらこうなるんだ?」

「多分身体的の基礎は家系からだと思う。後は修行かな。日々の鍛練を欠かさずにやっている」

 

 三人は龍燕の言葉にそれで本当にこんなステータスになるの?と疑う顔を見せた。

 

「五才の時から十才までを師匠であり、曾祖父と修行の旅に出ていた。その時に基本となる精神力の使い方や、代々受け継がれてきた眞炎流という流派の基礎をを学んだんだ。そして十才からは人に戦い方を教える戦闘技術教導官の資格を取って教導活動をやっていた。その後には国の切り札と言える部隊の指揮を行っていた」

 

 龍燕の言う簡単に纏められた経歴に皆はどこか別の国の名のある家系の者の生まれだったんだなと思った。

 

「代々受け継がれてきた流派というなら、曾祖父さんもそこでは名の知れた人なんだろうね」

「名の知れた、か。曾祖父は……元国主だった。今は俺の父上が現国主…あ」

 

 龍燕は少し話しすぎたかと口に手を置いた。

 

「えっ、それって……」

「まさか龍燕って?」

「王子様って事?」

 

 三人は驚きの声を上げ、カズマは驚きのあまり声すら出ていなかった。

 

「何で王子様がこんなところに?」

「まさかお忍びで?」

「これも修行の旅ってやつ?」

「いや、そうだな……さっき部隊の指揮を行っていたと言っただろう?活動内容が遺跡の遺失物の封印、保護を行う内容なんだ。誤って入ってしまった人達に害が及ばないようにやそれがきっかけで周りにも被害が出ないようにする、といった。そこでミスをしてしまい、仲間を庇って俺だけが見知らぬこの土地へ跳ばされてしまった。ここの場所もわからないから俺のいた国がどこに、どれだけ離れているかもわからないと言う感じかな」

 

 三人はその龍燕の内容に声すら出せないほど驚いていた。実際には全く違うが、殺されたとかと言ったら何故生きているんっだとかになりそうだったからだ。そしてリーンが口を開く。

 

「それから、家族にも会ってないんだよね?国の方も大丈夫、なのかな?」

「国の方は……候補者は二位以下たくさんいるから大丈夫だと思う。けど……それよりも、娘達が気掛かりだ。近くにいてやれない、護ることさえ……できない。二人に、護ってやるって約束したのに……これじゃ嘘になってしまったな」

 

 龍燕は若いのに娘がいる、というのに四人は驚いたが、それ以上に龍燕が娘を護ることさえできないと強くいう言葉に完全に言葉を失ってしまった。

 

「あ、すまないな、場を暗くしてしまって」

「いえ……」

「きっと帰れますよ、きっと信じていれば娘さん達にも会えますよ。また、護ることも出来ます。強く信じていれば、きっと!」

 

 リーンが龍燕の手を取り、訴えた。

 

「あ、ええと……そうだな。諦めないよ、ありがとうなリーン」

 

 礼を言うに龍燕に、リーンは衝動的にも自分がやってしまったことに恥ずかしくなり、顔を赤く染め俯いてしまった。

 

「さて、長話となってしまったが帰ろうか。たぶん向こうは終わっているだろうからな」

 

 立ち上がりながらいう龍燕に、皆もそうですねと続けて立ち上がる。

 

「皆、一瞬ばかりだが眞炎流の歩法術を体験させよう。俺の身体に触れてくれ」

 

 そう言って龍燕は左手を皆に向け差し出す。皆はどんなものだろうと龍燕の手や腕に触れる。

 

「技の名は瞬間移動だ」

 

 その言葉を言った次の瞬間、景色が一変し、町の門近くの外壁に変わっていた。

 

「すげぇ……転移系の魔法みたいだ」

「剣術、体術……それにこんな力まで使えるなんて、龍燕は本当に凄いよ」

「けどカードのスキルの欄には載ってない」

「多分、瞬間移動は高等系の物だから最初に初級系の物から順に覚えないと出てこないんだろうな。または代々受け継がれてきた流派とかは特殊で出てこないや鍛練が必要とかがあるのかもしれないな」

 

 龍燕の予想に四人は後者はあり得そうだと頷いた。

 

「じゃ、ギルドに達成を伝えに行こうか」

 

 皆は龍燕に続いた。

 

 

 

 

「大丈夫……と聞くのも可哀想か?」

 

 龍燕達が戻ってから約一時間が経った後、丁度夕方頃にめぐみんたちが帰ってきた。めぐみんは泣いているアクアにおんぶしてもらい、ボロボロで気絶している?ダクネスは今朝の冒険者におんぶしてもらっていた。めぐみんは魔力切れと予想はついたが、ダクネスは一体何があったのか。

 

「ええと……龍燕さん、交代したまま定着しませんか?」

「なんでそんなこと言うんだよ!」

 

 リーンの言葉に冒険者が声を上げる。

 

「ええと……ま、まぁわかっただろう?今朝お前が言った、おんぶに抱っこは間違えとだとな?俺はそれでもめぐみんやダクネス、アクア達とこのまま隊を組みたいと思っている。それぞれ磨けば輝けると思うからな。もちろんカズマもな」

 

 めぐみん達は嬉しそうに笑った。冒険者の方はよく分からないようだったが。リーンは少し残念そうな顔を浮かべていた。

 

「リーン、そんな残念そうな顔を浮かべるな。別れじゃないんだ。また皆で一緒に任務をやろう。今日は楽しかったしな、俺の奢りだ」

 

 龍燕の言葉に皆が嬉しそうに声を上げた。

 

 

 

 

 

 

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