この面白き世界   作:【時己之千龍】龍時

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第08話 VS冬将軍

 少女を蘇生して数日。龍燕は少女からのお願いで養子にする事に決まった。また少女から名前も貰いたいと言われたため、以前元の世界で養子として迎えた『逢理(アイリ)』と『忍武(シノブ)の名を合わして似せた『紫織(シオリ)』という名をあげた。また服等は煉と暁と同じくらいだったため、二人の予備の胴着などを分け与えた。

 

「シエンって冒険者をやっているの?」

「ああ。他のスキルっていうのができると言われてな、それを選んだ」

「そうなんだ」

 

 紫織は身体に慣れ始め、目を覚ましてからわずか三時間ほどで話のもすんなりと交わせるようになり、体も三日目辺りから動けるようになっていた。その慣れの早さには龍燕も、顔には出してはいないものの内心驚いていた。

 

「シエン、私も冒険者になりたい。いいかな?」

「なれるんじゃないかな?俺は反対しないし、冒険者ギルドで大丈夫ならいいと思う」

「ホント?じゃあ今から行こ!」

 

 立ち上がった紫織が龍燕の手を引っ張る。

 

「わかったから引っ張るな」

 

 龍燕と紫織は皆がいる、一階の暖炉のある部屋に入った。

 

「皆、これからクエストを受けに行かないか?それからその帰りに蓄えを買いに」

「あ、わたしも行きます」

「蓄えか。俺も行くよ」

 

 皆で行くことが決まり、準備を始めた。

 

 

 

 

 ギルドで紫織の登録を済ませ、紫織の初クエストには何か簡単なものをと探し、皆のオススメで雪精討伐に決まった。また外は寒いため羽織った者の適温を感知し、温度を自動調整して温めたりや冷ましたりと便利な羽織を、龍燕は紫織用に急いで作ったのをあげた。

 

「か、かなり雪が積もっているな」

 

 カズマが辺りを眺めながら言う。

 

「凄くきれい!」

「紫織、寒くないか?」

「うん、大丈夫。シエンに貰ったこの羽織のおかげだよ」

「ですね」

 

 紫織の言葉にめぐみんが同意する。めぐみんには少し大きいが龍燕の予備を貸している。またその羽織は紫織と同じ機能を持つものだ。龍燕は体質的に合わないこともあり、あまりつけてはいない。羽織っていても機能を停止していることが多い。

 

「あ、なんか浮いてる」

 

 紫織が指差す先を皆が見る。

 

「あれが雪精だ」

 

 ダクネスの言葉に龍燕が頷く。

 

「紫織、これを貸す」

 

 龍燕が紫織に小太刀を一振り渡す。

 

「これは小太刀という刀だ。俺が持っている小太刀の中で軽い方だから紫織でも、両手でやれば使えると思う。それで雪精を、最初は型とか気にせずに当ててみろ」

「う、うん!」

 

 受け取った紫織に刀の差し方を教え、それから簡単に振り方を教えた。

 

「よし、様になってきたな。行ってこい」

「うん。えい!」

 

 てい、たあ、と雪精に向け刀を振るう紫織を龍燕は見つつ、近くの雪精を一振りで数体を斬り消していく。数が中々多いため、杖を振っていためぐみんが龍燕に言う。

 

「シエン!爆裂魔法で一掃してもいいですか?」

「そうだな、一回そうしようか。雪崩が起こる可能性があるから、皆俺のところに集まれ」

 

 龍燕の指示で皆が集まり、めぐみんが呪文を唱え撃ち放つ。

 

「エクスプロージョン!」

 

 かなりの広範囲爆発で雪精の大半を倒した。同時に龍燕の予想通りに雪崩が発生して、龍燕が炎壁を前面に張って防いだ。

 

「雪崩も龍燕の前には効きませんね」

「龍燕なら…自然災害も微々たるモノなんだな。まぁ、助かるけど」

「炎の壁に当たったところの一部は溶けているな」

「皆は特に怪我はなさ、ん…この気配は何だ?」

 

 龍燕は急速に近づく妙な気配に気づいた。しかもこの世界に来て初めてな程の強い気配だ。

 

「シエンどうし…あ、あれは!」

 

 アクアが何かを見て、その声に皆も視線を追って見ている先を見る。さらに少し吹雪いてきた。

 

「やはり来たか!」

「知っているのか?」

 

 ダクネスもアクアと同じく知っているようだった。

 

「シエン、カズマ。何故他に人がこのクエストを受けないのか教えてあげる」

 

 吹雪く先に人影が見えた。その人影はゆっくりとこちらに向かってくる。

 

「カズマ、日本に住んでいたあなたなら、ニュースとかで見て知っているかも知れないわ。この時期になると訪れる冬の風物詩……」

 

 人影は近くまで来たため姿がわかった。見た目は冬の字を入れた兜に鎧。さらに羽織を羽織った姿の人と気づく。

 

「殺された同胞を討たんとする『雪精の主』……そう、冬将軍の到来よ」

 

 近づいてきた冬将軍は居合いで、一番近かったカズマを襲うもダクネスが庇う。ギィンと音を立ててダクネスの剣は刀身の根元から見事に斬り落とされた。

 

「わわっ?!私の剣が!?」

「ダクネス!カズマ!紫織!さがれ!」

「シ、シエ…っ」

 

 紫織は自分の目の前で腰溜めに構える冬将軍に身体を震わせた。もうだめだと紫織は目を強く閉じた。

 

「……貴様、俺の娘に斬りかかろうとしたな?」

 

 声に気づいた紫織が目を開けた。そして自分を龍燕が庇い、腕で刀を受け止めていたことに気づいた。

 

「シエン!」

 

 刀を受け止めた左腕から鮮血が足元の雪へポタリと落ちる。

 

「貴様が、冬将軍だかなんだかは関係ない。貴様は大切な娘や仲間に斬りつけ、傷を負わそうとした」

 

 そう言うと龍燕は右手で、冬将軍のいまだ龍燕の左手に当たっている刀を掴み取り、刀身を蒸発させた。冬将軍は後ろに跳ねて距離を取る。

 

「貴様は……絶対に許さん」

 

 殺気とともに言葉を言い放ったと同時に、龍燕は秘奥義を開放させた。熾煉之瞳(シレンノヒトミ)熾煉之双翼(シレンノソウヨク)熾煉之羽織(シレンノハオリ)で目は燃え盛る炎のような紅の煌きを放ち、髪も紅炎の如く輝きと火花を辺りに放ち、羽織が紅の炎で生成され、背には二対大小の紅炎の翼が構成された。さらには全身が紅の炎に包まれる。

 

「天上火中結界」

 

 空が暗くなり、周囲の離れたところが燃えているような空間に変わった。

 

万鬼重城(マキジュウキ)

 

 龍燕の炎で出来た翼がばさりと大きく広がり、そこから炎で出来た分身が出現し冬将軍を囲むように広がった。冬将軍は辺りを見回しそれが驚いたようにも見えた。これはもう過剰すぎだろうとカズマは驚き、同時に龍燕一人で魔王を倒せるんじゃないか?と思った。

 

「皆は一ヶ所に集まっていてくれ。紫織もな。動き出したら、相性からして十秒くらいで終わる」

 

 紫織は頷いて皆のところへ下がった。

 分身体が一斉に動き出した時、生成した槍を振るって最後の抵抗とばかりに斬り消していた冬将軍だったが、次第にかなりの攻撃を受けていき、龍燕が言った十秒きっかりで蒸発した。その戦った周辺の雪は蒸発し、地面の土が冬将軍のいたところを中心に約十m程むき出しになっていた。またその辺りだけ気持ち気温が上昇していた。

 

「凄い…龍燕が倒しちゃいましたよ。それも一人で……」

「誰も倒せなかった冬将軍をやるとは…しかもあの炎の分身も凄かったな」

 

 めぐみんやダクネスが驚きの声を上げている。カズマとアクアも驚いていた。

 

「龍燕!」

 

 紫織が龍燕に抱きつく。

 

「龍燕、腕は大丈夫?」

「腕?あ、ああ大丈夫だ。お前が無事だったならな。それにこのくらいの傷ならすぐ治る」

 

 そう言うと龍燕は腕に癒し火をかけて傷を癒す。皮膚が少し切れた程度だったため、ほとんど一瞬で傷が塞がり完治した。

 

「まぁ傷自体も深く見えたかもしれないが、実際は俺の腕に当たったところの刃は蒸発して消えていたから、軽く皮膚表面が斬れただで筋肉とかまではいっていない」

「そ…そうだったんだ。龍燕は頑丈で強いんだね」

「これも毎日欠かさずに鍛練をやっているからだな」

 

 龍燕達は雪精もある程度倒し終えていたためそのまま帰還した。その際、雪精討伐数の確認で冒険者カードを受付に渡し、龍燕のカードに雪精以外にも冬将軍に1がついていたため大騒ぎとなった。

 

 

 

 

 

 

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