この作品は、にじファンに掲載していた『Infinite Sky』の大幅な改訂版になります。
もっとも、改訂前からは物語のスタート地点を変えているので、序盤はほぼ新作となっています。
改訂前をご存知の方は独自展開などを覚えているかもしれませんが、新規の読者様の為に独自展開のネタばれは遠慮していただけると助かります。
誤字・脱字・誤用がありましたら、感想欄で教えていただけるとありがたいです。
長くなりましたが、以上を前書きのあいさつとさせていただきます。
それでは、本編をどうぞ。
某年2月中旬。日英ハーフの俺、アルバート・ウィルソンが『それ』に気安く触れたのは、男が触ったところで起動させる事はできないと言われていたからだ。
触れた物の名はインフィニット・ストラトス。それぞれの単語の頭文字をとってISの通称で呼ばれているマルチフォーム・スーツの事だ。
約10年前に当時10代の女性科学者・篠ノ之束博士によって発表されたISには様々な特徴がある。
並程度の身体能力でしかない人物だろうとISを纏うだけで超人と形容していいほどの動きを可能とするだけの『パワーサポート能力』に加えて、操縦者保護の目的で常時展開されている『シールドバリア』を備え、仮にシールドバリアを破壊されたとしても操縦者を重傷から保護する『絶対防御』と呼ばれる安全装置が存在するため、操縦者の安全保護はかなりのモノになっている。
さらに、人型でありながら慣性を制御する事で飛行を可能とする『PIC』や搭載されているIS用の武装を
それ故にISが発表された当初はどの国も篠ノ之博士の言葉を信じようとしなかったが、1ヵ月後に起こった国際的大事件をISが解決した事によってその性能を世に知らしめる事になった。
その事件と言うのは日本を攻撃可能な世界各国のミサイルの発射システムが何者かによってハッキングを受けて一斉に起動、実際に2341発ものミサイルが発射されてしまったという事件だった。
もっとも、発射されたミサイルはその全てがIS第1号機の『白騎士』によって全機破壊された事によって日本消滅の危機は去る事になった。
だが、それは見かたを変えれば敵対した時に確実な驚異になるという事であり、当時の各国上層部は国際条約を無視して日本に向かって各種偵察機や当時最新鋭の戦闘機を飛ばして白騎士の鹵獲、それが不可能なようなら撃墜命令を出したが、どの国も命令を遂行出来なかった。
その理由は、『ISが篠ノ之博士の発表通りの性能を有していた』からだった。
白騎士と相対した偵察機・戦闘機は全機パイロットの生命を奪う事無く無力化させられ、巡洋艦や空母も白騎士からの攻撃で戦闘能力を喪失。
負傷者こそ出したものの死者を一人も出さずにそれだけの事をやってのけた後、目視と監視衛星による追跡を完全に振り切って姿を消した白騎士の圧倒的な性能は、ISを発表した時に開発者の篠ノ之束博士が述べた言葉どおりのものであり、嘘や誇張は一切含まれていなかった。
この国際的大事件は発表されたIS1号機の機体名を取って『白騎士事件』と呼ばれるようになり、それによって証明されたISのスペックの高さに世界各国の上層部はあっという間に魅了されたが、ISはどういうわけか女性にしか動かす事ができなかった。
もっとも、その欠陥とも呼べる点を差し引いたとしてもISを兵器として見た場合の『力』は凄まじいものだった事もあり、世界各国の上層部はISを兵器として扱うようになった。
その事実は開発者の篠ノ之博士からすれば許容できるものではなかったらしく、博士は各国上層部への報復の意味を込めてなのか、ISにとっての心臓であり頭脳でもあるコアユニットの作成方法を開示せず、コアも467個という極少数を作成した時点で行方をくらませてしまい、ISそのものが兵器として扱うには心許ないものとなってしまった。
当然のことながら篠ノ之博士が行方不明になる以前から世界各国で多くの科学者によってコアの複製は試みられていたが、構造そのものが完全にブラックボックス化されていた事もあり、上手くいかない状態だった。
不幸中の幸いと言うべきか、IS発表時に各国上層部にはISの基礎構造理論を記したものが配布されていたし、白騎士事件の映像を用いてISの解析とリバース・エンジニアリングが行われていたので各国のIS開発が滞る事は回避されたが、超兵器ともいえるISコアの絶対数が減る事を恐れた各国政府の上層部は話し合いの場を設けざるを得なかった。
国連の本部で行われた会議の結果、最終的には国際的IS運用協定『アラスカ条約』が締結、ISの軍事利用は禁止とされると同時にISの情報開示と共有・研究・訓練用の超国家機関『IS学園』の設立も決定された。
その際、『開発者が日本人なのだから、運営費はそっちで工面しろよ』という某国の発言によってIS学園の運営資金だけは日本が負担することとなってしまったのは皮肉としか言いようがない。
当然これだけの高性能パワードスーツを各国上層部が遊ばせておくわけもなく、アラスカ条約の締結と同時に各国の威信をかけて3年に一度ISを用いた世界大会『モンド・グロッソ』が開催される事が決定。早速各国で各種法整備や機体の開発が進められていった。
『モンド・グロッソ』の開催決定は世界各国でISの開発競争を激化させ、それと同時に各国の上層部は操縦者としての資質を持つ女性を優遇する政策を実施していった結果、世間一般の男性の社会的価値は相対的に減少。世代によっては『女性=偉い』という極端な考えをする女性を生む事になってしまった。
負の側面を生む結果となってしまったが、第一回『モンド・グロッソ』は世界中に中継されて大いに盛り上がり、十代後半から二十代の美少女・美女達が天地を問わず縦横無尽に飛翔する姿は性別を問わずに人々を魅了。世間の関心を集めると同時に、『成り立ちが少々特殊なスポーツ』という社会的な立ち位置を得る事に成功した。
去年開催された第二回モンド・グロッソも前回大会同様の盛り上がりを見せたのだが、各国は既に第3回モンド・グロッソへの準備を進めていた。
具体的には第二回モンド・グロッソ終了直後に以前から開発が進められていた『イメージ・インターフェース』が完成した事によって、世界各国のIS系企業の研究所では、それまで得たIS開発のノウハウと『モンド・グロッソ』で得た国家代表同士の戦闘データを合わせ、特殊兵装を実装した第3世代機の制作が本格化している。
新世代技術を他国より早く量産可能な体制へ持っていければ国際的にも有利になるため、どの国も第3世代実験機の開発に躍起になる中、一歩抜きんでる事に成功したのは俺の住んでいる国、イギリスだった。
特殊なビーム発生機構を搭載し、イメージインターフェースを用いて使用者の意思に従って攻撃を行う
第二回モンド・グロッソ終了から半年後に完成したブルー・ティアーズは、高起動状態になれば理論上は発射されたビームを操縦者の意のままに操ることも可能と言われており、俺の母、アリス・ウィルソンもブルー・ティアーズの製作にかかわっている。
俺が触れたのはそのブルー・ティアーズの姉妹機で、機体名はスカイ・ブレード。イギリス製第3世代機の中でも数日前に完成したばかりの最新鋭機だ。
その最新鋭機に男の俺が触れる機会があった理由は結構単純なものだ。
順を追って説明すると、俺の母親はイギリス最大手のIS企業の研究所で研究主任をしており、研究が忙しい時にはそれなりの頻度で深夜遅くまでの勤務、ないしは研究所への泊まり込みになる。
我が家は母子家庭ため、そういった時は母親からの連絡を受けて俺が夜食の弁当を作り、泊まり込みになってもいいように翌日の着替えと共に研究所に持っていくのが通例となっているのだ。
今夜も母さんから泊まり込みの連絡を受けたのだが、いつもと違う点が一つだけあった。
それは、泊まり込みの連絡をしてきた母さんからしばらくの間は研究所内に入る際のボディチェックなどが厳しくなる事を伝えられた点だ。
ISは軍事機密の塊なので、研究員にもある程度の守秘義務が課せられている。
その為俺も詳しい事情は聞かずにボディチェックの件を了承し、いつものように弁当を作った後に明日の分の着替えを持って研究所へ向かう事にした。
そこそこ高い頻度で研究所に通っているので普段ならば警備員の人達はボディチェックなどをある程度簡略化してくれるのだが、今日は連絡があった通り来所理由の質問やボディチェックなどが厳しくなっており、研究所の敷地内に入るまでそれなりに時間を取られる事になったが、それが済んでからはいつもどおりに研究所に入ってすぐにある総合受付でゲスト用のIDカードを受け取り、研究主任クラスの人達が個人用に持っている研究室のある棟に向かう。
母の個人研究室の扉の前に立つと、インターホンのスイッチを押す。
「母さん、弁当と着替え持ってきたよ」
『ああ、ありがとう。今開けるからちょっと待ってちょうだい』
インターホンで室内にいる母さんに向かってそう言いながら少し待つと、圧縮空気の抜ける音と共に扉が開く。
「ありがとう、アル」
「いつもの事だから気にしてないよ」
弁当と着替えの入ったバックを入り口近くのデスクに置きながらそう答える。
「そう言ってくれると助かるわ。それと、しばらくの間は残業が多くなると思うから今日みたいにお弁当を持ってきてもらう事が多くなると思うの。警備の人達には話を通しておくけど、ボディチェックとかがいつもより厳しくなるのは覚悟しておいて」
「了解」
理由はわからないが、研究している物がモノだけに警備は厳重にせざるを得ないのだろう。少々面倒だが、納得するしかない。
「あと、ひとつ質問していい?」
「どうかしたの?」
「部屋に入ってからずっと気になってたんだけど、奥にあるISって新型機?」
珍しい事に、個人用研究室の奥に移動式のハンガーユニットがあり、そこには今まで見たことのないデザインの真新しいISがセットされていた。
「ええ、そうよ。ロールアウトしたばかりの新型、『スカイ・ブレード』。念のためにここに運んで、システムのチェックしていたの」
「触っていい?」
「ええ、いいわよ。……それにしても、アルも珍しいわね。男でISそのものが好きって」
半ば呆れながら母さんが許可をくれたので、部屋の奥に向かいながら返事をする。
「女性専用ってのが悔しいけど、どの国で造られた機体だろうとアーマーのデザインはかっこいいし、それを抜きにしても今あるISはどれも元をたどれば束さんが造った白騎士に行き着くからね」
ISの基礎理論を構築し、今や伝説となった『白騎士』を独力で造り上げた篠ノ之博士とは俺が日本に住んでいた頃に交流があった。
さらに言うと、俺は『篠ノ之博士が顔と名前を完全に一致して覚えており、身内扱いしている』数少ない人物の一人だった。
もっとも、篠ノ之博士が失踪してからは一切連絡は取れていない事を考えるとほとんど意味がないので、この事を教えているのはイギリスに引っ越してきてから出来た親友だけだし、束さんと仲良くなった方法があまり褒められた方法ではない事もあって、そいつにすら『篠ノ之博士とちょっとしたコネがある』としか言っていない。
俺がISそのものが好きなのも、博士の失踪を知った直後から『再会した時に話のタネになるだろう』と思った事を切っ掛けとしており、現在に至るまで、ネットで一般に公表されている部分に限られるが、世界各国でどういったISが開発されているのか色々と調べている。
その甲斐あって『アマチュアとしては』という但し書きがつくものの、ISについてそれなりに詳しくなっているので、最近はISの技術者を目指すのもいいのではないかと考えていたりする。
当然ISを起動させる為の第一原則である『操縦者は女性でなければならない』点は理解していたので、本当に軽い気持ちでスカイブルーに染められた真新しい装甲に触れた。
キィン
その瞬間に澄んだ金属音が聞こえ、視界がホワイトアウトするのと同時に頭の中にISを動かす為に必要な知識が流れ込んでくる。
その知識郡は長い年月をかけて学習していった事柄のようにすんなりと理解・把握していき、知識の奔流が収まり始めた頃には本当にISを動かす事が出来そうな気さえしてきた。
《よろしくね》
その奔流が完全に止むと同時に、目の前から聞き覚えのない女の子の声が響いてきた。
(……ああ、よろしく)
目の前にいるであろう声の主の姿は視界のホワイトアウトが続いていたので見る事ができなかったが、その子を拒絶する気は全く起きず、返事をすると白一色だった視界が色を取り戻しながら一気に広がっていった。
「……………うそ…」
原因不明の視界のホワイトアウトから回復すると、目を見開きながら驚きの表情を浮かべて俺を見上げる母さんの姿があった。
「母さん、どうかした?」
何をそんなに驚いているのか不思議に思いながら母さんに近づくと、母さんは呆然とした声色でこう言った。
「アル……IS、動かせるの?」
「へ?」
その言葉を聞いて自分の姿を見下ろしてみると視界の隅には機体パラメータと武装用エネルギー並びにシールドエネルギーの残量が小さく表示されているし、両手にはマニピュレーターが装着されている。
両足にはレッグアーマーが装着された状態で床から数センチ浮かんでいたし、ISアーマーで拘束されている胸と腰の周辺は圧迫感があった。
「起動はしてるみたいだけど……動くのか?」
そんなことを言いながらISアーマーに覆われた右手を開こうとすると右のマニピュレーターの五指が俺の意思に従って開き、右手を閉じようとするとマニピュレーターも拳を作る。
同じように左のマニピュレーターも動かそうとすると、俺の意識に従って何度も握ったり閉じたりを繰り返す。
試しに高度の上昇を念じると浮遊感がさらに強まり、あっという間に部屋の天井近くまで浮かび上がる事ができた。
空中に浮かび上がったまま、今もって鍛錬を続けている篠ノ之流という古流武術の型をいくつか行い、機体が過不足なく俺の動きに従ってくれることを確認してから高度を落とす。
「……うん、何の問題もなく動かせる。ただ、胸と腰の部分がキツイかな?」
「……本来女性用なんだから当たり前でしょ」
一通りの確認を終えてからそう告げると、母さんは声に多分の呆れを含ませながらそう言った。
「それもそうだ。……それより、これからどうすればいい? 男でIS動かしたってなると、大騒ぎにしかならないと思うんだけど」
『男はISを動かせない』という事実があったからこそどの国も10年という時間をかけて女性優遇制度を導入していき、多少歪ながら表面上は平和な世界を築く事が出来たのだ。その前提を崩す存在が現れたとなれば、世界の混乱は10年前の比ではないだろう。
「そこらへんの対策も含めて、今から上と話し合ってくるわ。アルは一度装着を解除して、この部屋で大人しく待ってなさい。何かあったら内線で連絡するから。いいわね」
母さんはそれだけ言うと俺の返事を聞かずに研究室から出て行ったので、ISを纏ったままハンガーユニットに近づき、着装解除を念じる。
操縦者側からの着想解除コマンドを受けた事で腕部と脚部のISアーマーや胸部と腰部のロックが次々に解除されていき、半ば飛び降りるようにしながらISから離れる。
操縦者が不在になった事でPICも自動的に停止し、それを感知したハンガーユニットが自動的に動いて各部のISアーマーを保持していき、『スカイ・ブレード』は数分前と同じ無人状態となった。
(マジでこれからどうなるんだろ? モルモット扱いだけは遠慮してもらいたいところだけど、事情が事情だけに難しそうだよなぁ……)
理由は不明ながら『ISを起動させる事ができた』というのは嬉しく思ったが、それ以上にこの先襲いかかってくるであろう面倒事をどう対処するか考えざるを得なかった。
(気は進まないけど、いざとなった時の最終手段として束さんや千冬さんの名前を出して、最低限の人権と衣食住は確保させてもらう事にするか?)
日本に住んでいた頃の話になるが、俺は前述の篠ノ之博士だけでなく、モンド・グロッソの総合優勝者を意味する『ブリュンヒルデ』と名高いIS操縦者の織斑千冬さんとも親交があった。
もっとも、束さんや千冬さんとは直接知り合ったわけではなく、千冬さんの実弟である織斑一夏と束さんの実妹である篠ノ之箒さんと同じ小学校の同クラスに所属していた事を切っ掛けに、紆余曲折を経て二人と知り合ったのだが。
たった一人でこの世界を根本から作り変えてしまった天才科学者・篠ノ之束博士と、モンド・グロッソを含めた公式戦無敗の実績を持つ織斑千冬の名はイギリスを含めた各国政府の上層部に知れ渡っている可能性はかなり高い。
モルモット扱いを回避しようとするならば、この二人に対する個人的なコネクションがある事を利用させてもらうしかないだろう。
特に束さんの影がちらつけば、どこの国だろうとぞんざいな扱いはしてこないと思いたい。
正直こういった権力や後ろ盾を利用した脅しのような真似はしたくないが、背に腹はかえられない。
二人には迷惑をかける可能性が高いが、何とかして二人に連絡を取って事情を説明して後ろ盾になる事を了承してもらい、事後承諾になってしまった事については謝り倒して許してもらうしかないだろう。
(個人的な方針としてはこんなところか。)
他力本願
(……もう一回機体に触って動かせるか確かめてみたいけど、待ってれば自然と装着できるだろうから我慢しよう)
簡単な来客にも対応できるように部屋に備え付けのソファに座って母さんからの連絡を待っている間に、自分の身に起こった事が偶然なのか確かめたくなる気持ちと一ISマニアとしてもう一度自力でISを動かしてみたい衝動が湧き上がってくるが、一度だけとはいえ『男でISを動かした』という事実がある限りもう一度ISに触れる機会はやってくると思い、自制する。
(あとはISを動かせた原因だよな。時間つぶしも兼ねて、今まで何したかちょっと思い出してみるか)
その代わりと言っては変かもしれないが、何故ISを起動させる事が出来たのかは自分でも気になるので、ISの歴史を含めて思い出す事にした。
◆◇◆ ◆◇◆
ある程度時間をかけてISの歴史と今夜の一連の行動を一通り思い出してみるが、ISを動かせるようになる原因になりそうな物は『俺が束さんと交流があった』事くらいしかない。
しかもそれすら7年も昔の出来事であり、束さんが未だに俺に興味を持っていると仮定しても、ISを動かせるようにする理由が見当たらないので原因とするには疑問が残る。
(そーやって考えると、マジでISを動かせた理由がわからんぞ……)
プルルルル…………プルルルル…………
自分なりに頭をひねってISを起動させる事が出来た理由を考えていると、デスクに備え付けの内線電話が鳴り始めた。
「はい、もしもし」
『アル、聞こえる? 今から私を含めた研究員数名でそっちに行って、あなたがISを動かせたのが偶然か否か一度確かめる事になったわ。いろいろと調べる事になるから、今夜は研究所に泊まり込みになると思っておいて』
「わかったよ」
『5分以内にはそっちにつくと思うわ。確認作業の結果に係わらず、最終的にはアルの事をマスコミに公表することになるかもしれないって事は覚えておいてちょうだい』
「了解。大人しく待ってる事にするよ」
内線に出ると、母さんが話し合いで決まった事を簡潔に説明してきた。こうなった以上は覚悟を決めるしかないのでその
実験の結果だけを言えばあの後もスカイ・ブレードは俺が乗り込むと他のISと同じように起動、ISとしての機能を十全に発揮し、それは何度装着と解除を繰り返したとしても変わらなかった。
その事実は俺に本格的なISの操縦適性があることを意味しており、同時にこの一件が母さん達研究員の間で処理できる範囲を超えているという事でもあった。
そのため起動実験からさほど時間をおかずに研究所のスポンサーに話が飛び、母さん達の報告を受けただけで半信半疑だったスポンサーの前でもスカイ・ブレードの装着・起動・解除を繰り返し見せることになった。
男の俺が目の前でISを起動させた事はスポンサー側としても予想外の代物だったらしく、この件はスポンサーでも処理しきれないと判断された為、今度は政府に話が飛び、今までテレビのニュース番組でしか見た事がない政治家の人たちと直接顔を合わせる事になり、彼らの前でも同じようにスカイ・ブレードの装着・起動・解除を見せた。
政治家の人達は俺がISを起動させて空を飛ぶ姿を見て一同に驚愕の表情を見せたが、即座に表情を引き締めて話し合いを始め、その結果として俺がISを起動させた事は世間に公表される事が決定。早速朝のニュースで国内外を問わずに報道される事になったのだが、世間の注目を一身に集める事はなかった。
理由は簡単。イギリスで俺の事を報道するのとほぼ同じタイミングで、日本政府が『自国の男でISを起動させた人物がいる』事を報道したからなのだが、そのニュースを聞いた時は俺も驚かされた。
何故なら、報道された『日本でISを起動させた男』というのが前述した千冬さんの実弟・織斑一夏だったからだ。
そのニュースを聞いた直後、一夏に連絡を取りたい衝動に駆られたが、色々な意味でタイミングが悪すぎた。
なにせ一夏がISを起動させたニュースを見たのは研究所の食堂で朝食を食べ終わり、今後の身の振り方を決める為に政治家の人達と話をしようと研究所の会議室に向かう直前だったのでプライベートな事は後回しにせざるを得ず、話し合いが終わった後は研究所前で待ち構えていたマスコミの人達からのインタビューに答えるので手いっぱいになってしまった為、帰宅した頃には一夏に連絡を取ろうという考えはすっぽりと頭の中から抜け落ちていた。
インタビューを終えて帰宅した時には貫徹を筆頭に慣れない事をした疲れでそのまま爆睡してしまい、目が覚めた時にはすっかり日が暮れていた。
なお、政治家の人達との話し合いを行った結果、俺が起動させたIS、スカイ・ブレードは『これから俺の身辺に現れるであろう各国のスパイや特殊部隊への自衛手段』と『男がISを動かし続けた場合にコアにどういった反応が現れるか』を観察する為に俺の専用機――様々な理由で特定個人用に調整し、占有状態で使用されている機体を指す。ISは動力であるコアの絶対数が少ないので、通常ならば専用機を得るというのはエリート揃いのIS操縦者の中でも一層優秀である事の証明と言い換えてもいい。――となる事が決定、スカイ・ブレードの調整作業や詳しいISの操縦方法のレクチャーは明日から始める事になった。
それと同時に専用機の全面バックアップをする為にイギリス所属の代表候補生になる事が決定したことに加え、各国からの干渉を最低限に抑える事を目的として、現在IS学園に対して特例の入学試験を行ってもらえるように交渉中との事だ。
それに関連して一般教養として中学で行う残り半年分の勉強を約1ヶ月半で覚えきらなければならなくなった――イギリスの学校は原則として9月始まりなので、今のままだと約半年分の単位が足りていない――が、そこは頑張るしかない。
こうして俺は一般人から一転して時の人である男性IS操縦者の片割れとなったのだが、それはこれから起きる様々な事件の始まりでしかない事は全く気付かなかった。
今回はここまでとなります。オリ主のヒロインであるセシリアが出てきていませんが、次回には出せるのでお待ちいただけると助かります。
ストックは次の話の分だけの状態なので、しばらくは不定期の更新になりますが、IS学園入学後は改訂前のストックがあるのである程度更新速度が上がると思います。
それと一夏のヒロインに関しては未定となっていますので、『一夏と誰々をくっつけてほしい』という要望などがありましたら、ユーザーページの活動報告欄にフォームを作っておくので、そちらへ書き込んでください。
書き込みがなければ、改訂前のアンケートに準拠した形で一夏×鈴で行かせていただくと思います。