1ヶ月半近く放置していて誠に申し訳ありませんでした。
モチベーションの低下と執筆のスランプが重なり、それが解消してきたところに急な寒暖の差で何度か体調を崩してしまい、執筆にあてる時間が取れなかったため時間がかかってしまいました。
何とかペースを上げたいところですが、まだ少しスランプ気味なので次の更新も時間がかかるかもしれません。
それでは、本編をどうぞ。
特別入学試験から時間は流れて、日付は既に3月中旬。そろそろ試験から2週間が経つので、近いうちに管理官から合否の通達が行われるはずだ。
本音を言えば早く結果を知りたいが、その結果次第で政府も今後の俺の扱いを決めるはずなので、こちらから管理官に連絡して結果を催促するわけにもいかないし、中学へ登校しようにも、学校側から『卒業の準備は進めておくので、生徒達に無用な混乱を起こさせない為に登校するのは遠慮してほしい』と釘を刺されてしまった為、今できる事をこなすしかない。
具体的には特別入試前まで行っていた未学習部分の勉強やISの操縦訓練だけでなく、『専用機持ちの代表候補生』としての様々な訓練も始める事にした。
専用機持ちは自身に宛がわれた専用機の性能を十全に発揮させる事も求められるが、それと同時にいかなる状況でも冷静に行動する事を求められる。
その為、ありとあらゆる事態へ対応できるように多種多様なスキルを身につけている事が殆どの様だ。
それは原因不明ながらISを起動させ、スカイ・ブレードという専用機を得た俺も例外ではなく、特別入試が終わった次の日から、それまで行っていた未学習部分の勉強と機体の操縦訓練だけでなく、専用機持ちとして様々な訓練も始める事にした。
元々、篠ノ之流という武術を修めていたので肉体面は基礎体力の向上に努め、精神や頭脳面では様々な状況を想定した作戦立案方法を学んだり、一般人を装ったテロリストなどの見分け方を学んだりと、学習すべき事柄は多岐にわたる。
身近で非常事態が発生した時の事を考えるとどれも覚えておくべきなので、それらの事柄を一つずつ覚えていく。
もっとも、特別入試に合格してIS学園に入学する事になった場合を考えると中学の未学習部分の勉強を怠るわけにもいかないので、ここ最近の生活サイクルとしては起床後朝食準備などの最低限の家事を済ませてから研究所に向かい、午前中は母さんの個人研究室で中学での未学習部分の勉強やISの歴史と構造学などの座学を行い、午後は研究所のアリーナで機体の操縦訓練を行うか、専用機持ちとしての各種訓練を行うかのどちらかだ。
特別入試の前は訓練終了後に研究所前で待ち構えている各国報道陣へのインタビューに答えていたが、ISを起動させてから2週間近くぶっ続けでインタビューを行った事で満足したのか、かなりの数の報道陣は既に帰国している。
その為、最近の研究所前は俺がISを起動させる前の静けさを取り戻しているし、インタビューを希望する報道陣の数そのものが減っているのでマスコミへの対応時間も自然と短くなり、その分だけ訓練に時間を割けるようになった点は助かっている。
それが終われば研究所の定時時刻ギリギリになっている事が殆どなので、常用している母さんの個人研究室に戻って帰宅準備を始める。
特別入試の前は機体の調整などで忙しかった事もあって研究員の人達は残業をしていたが、特別入試という大きなヤマを越えた事で業務体系も通常の状態に戻り、研究でよほど忙しい時でない限りは殆どの人が定時で退所するようになったので、俺もそれに倣って定時で帰宅するようにしている。
帰宅してからは夕食作りを済ませた後に朝出来なかった家事をこなし、その日のノルマとして設定した勉強が終わっていなければその分の勉強を片づけ、ノルマ分の勉強が終わっている場合は休憩がてらネットで配信されているISの試合映像や、公開されている機体や武装のスペックを見て時間を潰し、適度な時間になってから入浴などの就寝準備を始め、日付が変わる前に就寝するのが最近の生活スタイルだ。
♪~~♪~~~~♪~~
そういった理由で今日も朝から研究所の母さんの個人研究室で未学習部分の勉強を進めていると、一段落ついた頃に携帯端末が着信メロディを奏で始めたのでディスプレイを見て誰からの着信か確認すると、そこには特別入試の後で連絡先を交換した管理官の番号が表示されていた。
「お待たせしました、管理官。どういったご用でしょうか?」
管理官を待たせるわけにもいかないので、すぐに通話に出る。
時期が時期なのでまず間違いなく特別入試の結果通知だとは思うが、念の為にどういった用件か確認しておく。
『おはようございます、ウィルソン代表候補生。IS学園から先日の特別入学試験の結果が届きました。直接内容を伝えようと思うので、現在地を教えてください』
「現在地はいつものように研究所の母さんの個人研究室ですけど……、何故、今すぐに試験結果を教えてもらえないか質問しても大丈夫でしょうか?」
試験結果の通達だけなら、今この場で教えた方が手間がかからないはずなので、理由を問いかけてみる。
『ええ、大丈夫です。実を言うと、今まで政府側の意向であなたに伏せていた情報があるのです。あなたが初めてISを起動させた時から政府官僚の間でその情報を伝えるか否かを話し合っていたのですが、今回の特別入試の合否通知の内容を見て再度話し合いが行われた結果、あなたにも直接その情報を伝えておくべきと判断された為、試験結果と一緒にその情報を伝えようと思い、現在位置を訊いた形になります。理解していただけましたか?』
「はい、理解できました。今、勉強もひと段落ついたところなので、このままここで待っている事にします」
《IS起動後1ヶ月経ってようやく知らされる情報》というのが引っ掛かるが、この場で訊けない以上は待つしかない。
『そうしていただけると、こちらとしても助かります。――それと、伝える情報に絡んで代表候補生を一名随伴させています。後ほどオルコット代表候補生も連絡を入れてそちらに向かわせるつもりなので、覚えておいてください』
「わかりました。お待ちしています、管理官」
『では、後ほどお会いしましょう』
管理官の挨拶を聞いて通話を終え、俺は話をする時に備えてお茶の準備を始める為、簡易キッチンスペースに向かう。
プルルルル…………プルルルル…………
ケトルに水を入れて加熱を開始し、お湯が沸くのを待っていると内線がかかってきたので、受話器を取る。
「はい、もしもし」
『ああ、アル。今話しても大丈夫かしら?』
「大丈夫だけど、何か問題でも起こった?」
ISを起動させた直後で機体の調整が終わっていない時はそれなりに共同研究室からの内線がかかってきたが、機体調整が終わってからは内線がかかってくる事は殆どなかったので、俺に関係する何かしらの問題が起こったのか尋ねてみる。
『そういう訳じゃないわ。今、管理官から来所の連絡があったのよ。あなたに話がある事は伝えてあるって言っていたから、大方自分でお茶の準備してるでしょ? それはこっちでやっておくから、少しでも休んでおきなさい。あなたにとってはそれなりにヘビーな話になると思うから。いいわね?』
だが、予想は大きく外れてこれからの予定に関連した連絡だった。
「……わかった。休んでおくよ」
母さんはの声色はかなり真剣なので了承せざるを得ないし、俺にとってはヘビーな話というのが気になるが、後で管理官から聞く事になるはずなので詳しい内容は聞かないでおく。
『そうしなさい。あと、今回の件に絡んで私も今やっている作業と一通りの指示が終わったらそっちに行くわ。覚えておいてちょうだい』
「母さんも? ――了解」
研究者である母さんも顔を出すという事は、機体かISそのものの理論に関係する事柄についての話の可能性が高い。かなり重要な事柄が伝えられる事だけは確かだろう。
『それじゃあ、また後で』
母さんは最後にそう言って内線を切ったので、俺も受話器を置いた後、ケトルの加熱を中止し、念の為に教わったばかりの判別技術を使って室内に盗聴器や隠しカメラが仕掛けられていないかを調べておく。
ビィーッ
そうして30分程過ごし、見つけられる範囲で盗聴器などが仕掛けられていない事を確認した直後に来客を告げるブザーが室内に鳴り響いたので、内心驚きながら内線の受話器を取る。
『ごきげんよう、アル。扉のロックを解除していただいてもよろしくて?』
「ああ。すぐ開けるよ、セシリア」
返事をするのとほぼ同時に扉のロックを解除し、圧縮空気の抜ける音と共にセシリアが室内に入ってくる。
「失礼いたしますわ。――直接お会いするのは2週間ぶりになりますわね。お元気でしたか、アル?」
「まあね。そっちこそ元気そうで何よりだよ、セシリア」
セシリアとは特別入試後にメールアドレスなどを交換しあったので、お互いそれなりの頻度で連絡を取ってはいたものの、実機の操縦訓練などは予定が合わなかったので、直接顔を合わせるのは2週間ぶりだった。
「それはなによりですわ。――知っているとは思いますが、先程管理官からわたくし達の今後について話があるという事で研究所へ来るよう言われたのですが、アルはどういった話しをするか聞いておりますか?」
「俺が聞いたのはさわりの部分だけだよ。俺が初めてISを起動させた時から政府の人達が話し合っていた情報がある事、今回の特別入試の結果に合わせてその情報を伝えると決まった事、それ絡みで代表候補生の人が一人と母さんが来る事くらいかな? 母さんからは俺にとってはそれなりにヘビーな話になるとも言われたけど」
隠す必要もないので素直に管理官と話をしていた時の事を言うと、セシリアは思案顔のままこう言った。
「管理官から直接話を聞かなければ詳細な部分は不明ですが、重要な案件である事だけは確かなようですわね」
「やっぱりセシリアもそう思うよな。ただ、そんな重要な案件が特別入試の結果と一緒に知らされるって、何かやばい事の前触れとしか思えないんだけど」
代表候補生が随伴している時点で望み薄だが、杞憂である事を願いたい。
「それは実際に話を聞かなければ解りませんから、今は管理官が到着するのを待ちましょう。アル」
「そうするしかないか。セシリアも座って」
「ええ。失礼いたしますわ」
プルルルル…………プルルルル…………
そうしてセシリアの言葉に同意しながら応接用のソファに向かおうとすると、再び内線がかかってくる。
「悪い、セシリア。内線に出てくるから、先に座って待っていてくれるか?」
「構いませんわ」
セシリアに一言かけて断りを入れ、急いでデスクに戻って内線に出る。
「はい、もしもし」
『ああ、アル? 作業がひど段落したから、今からそっちに行くわ。扉のロックはこっちで開けるから、勝手に扉が開いても驚かないでね』
個人用研究室はその名の通り研究主任クラスの人達が自分の研究を進める為の場所なので、最新技術の雛型や最新技術そのものが眠っている場所と言い換えてもいい。
それ故にかなり強固なセキリュティが施されており、室外側から個人用研究室に入ろうとする場合、所員IDを利用した生体認証機構の開放、部屋の使用者ごとに登録された顔造形・虹彩・静脈・動脈を始めとした各種生体認証をパスしないと研究室の扉が開かないようになっている為、一度研究室の使用者が入室してしまえば第三者が入室するのに一番手間がかからない方法は室内にいる使用者に連絡を取り、内側からロックを解除してもらうのが一番手っ取り早い。
当然一般の人達からの干渉も最小限に抑える事が出来るので、男性IS操縦者を保護したい政府の人達だけでなく、男性IS操縦者になった事で本格的なIS関係の勉強に集中できる環境が欲しかった俺にとっても有用だからだ。
IS関係の勉強と並行して所員の人達と連携していかなければならなかったスカイ・ブレードの初期調整が終わった後もこの部屋を利用しているのは、そういった理由があったりする。
「了解」
『それじゃあね』
内線をかけてきた母さんの言葉を了承し、受話器を置いてソファで待っていたセシリアの対面に座る。
「お待たせ、セシリア」
「通話時間そのものがかなり短かったですから、気にしておりませんわ。この短時間で何を話していたか、内容を訊いてもよろしくって?」
「ああ。作業がひと段落ついたから、こっちに来るっていう連絡だよ。多分5分以内には来ると思う。室内からロックを解除するのが一番入室するのに手間がかからないだけで、外部からロックを解除する方法がないわけじゃないからその内にブザーが鳴って勝手に扉が開くと思うけど、その時はセシリアも驚かないでいてくれると助かる」
「かしこまりましたわ」
「ありがと。――」
セシリアからの問いに簡潔な答えを返すと了承してくれたので、そのまま母さんが来るまで適当な話題で雑談を始める。
ビィーッ
5分程話をしていると、再び来客を告げるブザーが鳴り響いた。
「――。あ、来客だ。多分母さんだと思ううけど、一応確認してきていいか?」
時間的に母さんが来たのだとは思うが、管理官と随伴の代表候補生の人が来た可能性もあるので、内線を取りに行く為に一言セシリアに断りを入れる。
「構いませんわ」
「ありがとう」
一言お礼を言ってからデスクへ向かい、受話器を取って内線のディスプレイを確認すると認証作業中の母さんの姿が映ったので、そのまま受話器を置いてソファに戻る。
「予想通り母さんだった。認証作業してる最中だったから、すぐにでも入ってくると思う」
「そうなると、後は管理官と随伴の方が到着するのを待つだけになりますわね」
セシリアがそう言うと同時に自動扉が開き、白衣姿の母さんが入室してきた。
「アル、入るわよー」
「お帰り、母さん」
「ごきげんよう、アリス博士。お先に失礼していますわ」
「あら、セシリアちゃんも到着してたのね。……なら、後は管理官達が来るのを待つだけか。二人は座って待ってなさい。今、お茶を持ってきてもらうわ」
俺とセシリアが声をかけると母さんは若干驚いた顔でそう言い、内線をかける為にデスクの方へ移動していく。
「お気遣いありがとうございます、博士」
「ありがと、母さん」
「私も休憩したかったついでだから、気にしなくていいわ」
俺達が礼を言うと母さんはそう言いながら受話器を持ちあげ、内線をかけ始める。
「それじゃあ、俺達は座って待ってるか」
「そうですわね。先程の話も途中ですし、続きを聞かせてくださいな」
「悪いけど、それは後にしてちょうだい。今、受付から管理官達が到着したって連絡が来たわ」
その姿を見て俺達は雑談を再開しようとしたところ、母さんが管理官達が到着した事を教えてくれた。
「先に言っておくけど、今から話す内容は国家機密クラスの重要情報だから、他言無用よ。関係者の間にも緘口令が敷かれているから、そのつもりで聞いてちょうだい」
「っ!?」
それと同時に伝えられた内容は、これから話されるであろう情報の重さを如実に物語っていた。
「かしこまりましたわ」
「……了解」
こうなったら覚悟を決めるしかないので了承を伝え、同時に重要情報を聞く気構えをして管理官と随伴者が入室するのを待つ事にした。
そんなわけで、今回はここまで。次回は会話メインになると思います。
これからもこういった亀更新になる事があるかもしれませんが、その時は気長にお待ちいただけると助かります。