Infinite Sky:R   作:ショウゴ

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読者の皆様、お待たせいたしました。最新話が出来たので更新します。
色々と考えた結果、一部設定を原作から変更させていただいています。
具体的な部分は今回の本編を読んでいただければわかるので、まずは本編をどうぞ。


13  渡日準備

「セシリア。すごい今さらな質問を一つしていいか?」

 

特殊兵装の使用訓練が終わり、シャワーや着替えなどの身支度を整え終えた後で迎えの車を待つセシリアと休憩室で雑談をしていた最中にふと疑問を感じたので、その答えを知っている可能性が高いセシリアに訊いてみる事にした。

 

「今さらな質問、ですか? いったいなんでしょう?」

 

セシリアは小首をかしげながらどういった疑問かを尋ねてきたので、気になった内容を口にする。

 

「ああ。セシリアが受けた正規の入学試験の時に、他国の代表候補生の人達がどの程度いたのか気になったんだ。偶然とはいえ、その国の代表候補生の人は今後俺達男性IS操縦者との接触を目的にIS学園に編入してくる他の国の代表候補生の人たちより接触する機会が多くなると思うから、覚えるだけ覚えておこうと思ったんだよ」

 

今のところ、俺と一夏の2名のみが確認されている男性IS操縦者に接触しようと考えている国家は相当数に及ぶ事は想像に難くない。

 

そして俺と一夏がIS学園に入学する事は既に公表されているので、気の早い国は早速自国の代表候補生を編入という形でIS学園に送り込もうとしているのも容易に想像がつく。

 

そんな中で一歩先に俺たちに接触してくる可能性のある国がどこか把握しておけば、ある程度対策を練る事も出来るはずだ。

 

「なるほど。確かに今さらな質問ではありますが、接触機会が増える国を把握しておくのは重要ですからね」

 

既に1ヶ月以上前の出来事なので、質問を聞いたセシリアも納得した表情でそう言った。

 

「そういうこと。手間をかけるが、教えてもらえると助かるよ」

「わたくしとしてもIS学園におけるライバルの再確認になるので、アルが気にする必要はありませんわ。――さて、入学試験の時にいた他国の代表候補生についてですが、わたくしが把握しているのは一人だけですね。今年の一月に中国で発表された第三世代機・甲龍(シェンロン)の専属操縦者、凰鈴音(ファン・リンイン)。アルも名前くらいは聞いた事があるのではなくて?」

 

セシリアから聞かされた名前は、現在登録されている中国の代表候補生の中で人気を集めつつある人物のものだった。

 

「ああ。確かに聞いたことはあるけど、俺が知ってるのは使用機体のスペックについてが主で、操縦者個人については顔と名前以外は近・中距離戦をメインにした戦闘スタイルだって事しか知らないぞ。何か逸話もあるらしいけど、そっちの方は調べてないし」

 

俺は男性IS操縦者として世間を騒がせる前からISに関して色々と調べていたし、その事を通じてISを好きになったが、その原動力は束さんと再開した時に話のタネにするためなので、調べる事柄としてはそれぞれの国が造った機体の性能とデザイン、それを動かすプログラム郡に偏っており、操縦者に対しては顔と名前と大まかな戦闘スタイルを調べるくらいで、それ以外のプロフィールに関しては殆ど調べた事がなかったりする。

 

「あら、そうなのですか? アルの事ですから、機体だけでなく操縦者についても詳しく調べていると思ったのですが」

「生憎、各代表候補生の細かなプロフィールやエピソードについては知らない事の方が圧倒的に多いよ」

 

意外そうに呟くセシリアに対して、自身の知識に偏りがある事を正直に話す。

 

「代表候補生の詳細プロフィールなどを調べてないのは、何か理由があるのですか? わたくしと模擬戦をした時の事を顧みると、何かしらの意図がある気がするのですが」

「残念だけど、その考えは大ハズレ。代表候補生として芸能活動も行っているセシリアを侮辱するわけじゃないから怒らずに聞いてほしいんだけど、俺が今までその手のデータを調べなかったのは単純に今まで国家代表や代表候補生を含めたIS操縦者の人達をアイドルとして見た事がなくて、個人プロフィールや印象的なエピソードについても調べる気が起きなかっただけだよ」

 

真剣な表情で問いかけてきたセシリアに対して、注意を促してからそう答える。

 

「代表候補生をアイドルとして見た事がないと言うのなら、今までアルはどういった目線でIS操縦者を見ていたのか教えていただけませんこと?」

「俺個人の見解を言わせてもらうなら、特殊な装備を使う武芸者かな?」

 

俺の言葉を聞いたセシリアは声に若干の苛立ちを込めながら再度質問をしてきたので、怒りを治めてもらうためにも正直に自分の考えを話す。

 

「ISを機動させる前の話になるけど、当時の俺が一番身近に感じていたIS操縦者って、ブリュンヒルデの織斑千冬さんなんだよ。理由としては、日本に住んでいた頃に散々お世話になったから。――ここまではいいよな?」

「ええ。アルの経歴を考えれば自然ですから、疑問はありませんわ」

「実を言うとイギリスに引っ越した後は千冬さん達と連絡を取っていなかったから、第一回モンド・グロッソ絡みのニュースが報道されるまで千冬さんが日本の国家代表を務めていた事を知らなかったんだよ。知人がいつの間にか有名人になっていたから、どんな事をしたのか調べようと思ったんだ。初めて国家代表について調べたのはこの時だな。――もっとも、第一回大会当時は今ほどISが世間に浸透していなかった事もあってネット上で検索可能なIS関係の情報もあまり多くなかったから、ISの基礎知識と千冬さん個人の戦績くらいしか調べられなかったんだけどな」

 

第一回モンド・グロッソが行われたのは4年前なので束さんも失踪しておらず、本格的にISへ興味を持つ前の事だったので、必要最低限の情報しか調べていない。

 

「当然千冬さん以外の国家代表についての情報もそこまで多くなかったし、その頃は国家代表や代表候補生の人達もアイドル活動はしていなかった事もあって一般的なIS操縦者についての基準もわからずじまいだったから、日本に住んでいた頃に付き合いのあった千冬さんが俺の中でのIS操縦者の基準になったんだ。おまけに、俺が日本に住んでいた時は千冬さんに師事する形で篠ノ之流を修めていたから、個人的には千冬さんイコール武芸の師匠って認識なんだ。その師匠と互角に戦える人が国家代表の中にいる事は二度行われたモンド・グロッソで知ってるから、IS操縦者に対して特殊な装備を使う武芸者っていう一般的とは言い難い認識を持っているわけ」

 

マイノリティな認識をしている自覚はあるが、この認識が根底にあるおかげでISスーツを着た女性を見ても感覚的には剣道着や柔道着などの道着を着ているのと同じなので、今まで一度たりとも性的な目を向けた事がなかったりする。

 

「おまけに国家代表や代表候補生ってIS操縦者の中でも技量の高い人達の集まりだから、高い技量を持っている事に対する敬意の方が強くてアイドル視する事そのものが失礼な気がしてしょうがないんだよ。個人プロフィールやエピソードについて殆ど知らないのも、プライベートな事柄を調べるのが失礼だと思うからだしな」

「――なるほど。そういった事情でしたら、納得せざるを得ませんね」

 

一通りの説明を終えると、セシリアは一度ため息をついてからそう言った。

 

その声には先ほどの苛立ちは微塵も感じられなかったので、本当に納得してくれたようだ。

 

「わたくしからもアルに確認しておきたい事があるのですが、よろしいかしら?」

「ああ。俺に答えられる事なら構わないけど、どういった内容か聞かせてもらえるか?」

「おせっかいな質問になってしまうかもしれませんが、アルは渡日の準備は進んでいるのですか? 日本への移動や時差への対応を考えると、猶予はそれほど残っていないと思うのですが」

 

確かにセシリアの言う通り、日本への移動や時差の適応などを考えると日数的な猶予はそれほど残っていないが、ちょっとした事情から持っていける荷物はそこまで多くないので、あまり問題なかったりする。

 

「確かに日数的な猶予は少ないけど、心配には及ばないよ。持っていく私物に関しては服と趣味関係の映像ディスク程度に抑えておいたし、それも後はトランクとボストンバックに詰めるだけの状態になっているから、遅くとも今夜には管理官に連絡できると思うぞ」

 

3日前IS学園から俺宛に届いた授業に関する各種テキストと制服を除けば、持っていく物は私服とモンド・グロッソの映像ディスクくらいだ。

 

「そもそも俺の場合、渡日直後にIS学園の学生寮へ入寮するのは無理だって言われたから、しばらくはホテル暮らしになるからな」

 

同じ日に管理官から入寮に関する調整が難航している連絡を貰ったので渡日後は新学期が始まるまではホテルで暮さなければならないし、新学期が始まってからも入寮準備が整うまではそれを続けなければならない。

 

私物が少ない理由の一つは、ホテルに持ち込む荷物の量を減らす意味もあるのだ。

 

「前年度まではまぎれもなく女子寮だったのですから、無理もありませんわ。アルや織斑一夏さんの入学に伴って、寮の使用規則の更新を筆頭に調整しなければならない事柄は山のようにありそうですもの」

「実際そうらしいぞ。この間IS学園から俺宛に新学期に使う物がまとめて送られてきたんだけど、その中に入っていた必読書類には各施設の細かな使用規則については現在調整中って記載されてたからな。調整が終わる時期も未定だからこっちから持ってく物は必要最低限にしておいて、足りない物は入寮前に買い揃えるつもりだ」

 

学園側も色々と準備をしなければならない以上、俺や一夏が入寮できるようになるまで最短でも1ヶ月はかかるのではないかと予想している。

 

「俺の方はそんな感じだけど、セシリアの方はどうなんだ?」

 

セシリアも女性なのでこの手の事柄については決めるのに時間がかかるとは思うが、俺と違って試験結果が1ヶ月以上前に出ている事を考えると終わっているのが自然な気がする。

 

「わたくしの準備ですか? 持っていく物はほぼ決めたのですが、なにぶん日本で生活するのは初めてなので本当に決めた物でいいのか不安な部分もあるのです。できることなら日本で過ごした経験を持つアルの意見を(うかが)いたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

そんな風に考えていたが、この言葉を聞く限りだと持っていく荷物を決めきれていないようだ。

 

「それは一向に構わないけど、服の選定は個人のセンスによる部分もあるから参考意見程度に考えてくれよ?」

 

協力する事に抵抗はないが、選択権を全てこちらに委ねられると責任重大すぎるので、一言予防線を張ってから申し出を受ける。

 

「服?……ち、違います!! わたくしが伺いたいのは、寮に持っていく家具についてです!! 勘違いなさらないでくださいな!!」

 

持っていく私服に関する意見が欲しいのだと思っていたが、どうやらそれは俺の早とちりだったらしく、セシリアは顔を真っ赤に染めながら俺の勘違いを指摘してきた。

 

「そ、そうか。勘違いしてすまなかった。――とにかく、家具についてだな。具体的には何を持っていくつもりなんだ?」

「まず、ベッドと鏡台は必須なので確実に持っていくつもりですわ。テーブルと椅子、ティーセットも特注の物を用意してあるのでそれを持ちこむつもりです。あとは照明の付け替えと壁紙の張り替えを予定していますわ。付け替える照明と壁紙の選定も済んでいるので、アルには今挙げた物以外で必要な物を教えていただきたいのです。それらは写真も撮影してきたので、実際に見ていただく事も出来ますわ」

 

セシリアは真剣な表情で入寮時の荷物を教えてくれた後、ハンドバックの中から通信端末を取り出すと、僅かに操作した後でデスクの上に置いた。

 

「そういうことなら、まずは写真を見せてもらうな」

 

話を聞いただけでいくつかの荷物は不要に思えたのだが、早計かもしれないので一言断りを入れてから持っていく予定の家具の写真を見せてもらう事にする。

 

写真に写っていた家具類は一つ一つが非常に格式高く、高級ホテルで使用されていたとしてもなんらおかしくない品物である事は家具に詳しくない俺の目で見てもわかったが、それ故に日本での寮生活に適している物ではないと判断せざるを得ない。

 

「……念の為に確認しておくけど、今挙げた物以外は今のところ日本に持っていくつもりはないんだな?」

「ええ。今挙げた物以外で持っていく物があるとすれば、アルが日本で過ごす上で必要になると予想した物を手配するくらいですわ」

 

ここまでの高級家具をサラっとそろえた事に対して頭を抱えたくなってくるが、その衝動を必死に押し殺して通信端末を返却しながら他に持っていく予定の物がないかを確認したところ、後は俺の意見を取り入れた物を手配するだけのようだ。

 

「わかった。俺個人の意見を言わせてもらうなら、追加で荷物を手配する必要はない。むしろ持っていく家具を減らすべきだと思う」

「家具を減らす、ですか? 理由を聞かせていただいてもよろしくて?」

 

心底不思議そうな表情でセシリアは問いかけてくるので、その理由を説明していく。

 

「ああ。大前提としてIS学園は世界に唯一存在する公的なIS操縦者育成機関だ。その特性上世界中から生徒が集まってくるけど、施設そのものの出資を日本が行っている関係で細かなルールはきっちり決まっている日本的な部分が多いだろ?」

「ええ。学園から送付された事前資料を見る限り、かなり厳粛なルールが敷かれている事は理解していますわ」

「その日本的な部分っていうのは、IS学園内の学生寮にも当てはまるはずだ。俺も通った事がないから的外れになっているかもしれないけど、ああいった寮で暮らしながら学校に通う場合、寮内での生活も学習の一環になっている可能性がある。おまけに今年のIS学園には俺と一夏っつー特大のイレギュラーが入学する事になるから、色々な問題が発生しづらいように寮生には一定以上の協調性が求められると思う。その事を考えると、入寮時に持ち込む私物の種類と量で新入生がどの程度の協調性を持っているかを量っている部分があるかもしれない。その場合、ルームメイトのプライベートスペースを侵害する可能性がある物を持ち込んだり、大量の私物を持ち込むと確実に先生達から目をつけられると思う。先生達の評価を多少なりとも良くするなら持ち込む私物の量を抑えめにしておくか、予めルームメイトと共有できる物を持ち込んだ方がいいと思う」

 

寮生活に絡む先生方の思惑はすべて想像だが、今年のIS学園の事情を考えるとあながち間違いではないはずだ。

 

「なるほど。そういった事情でしたら、荷物を減らした方がよいのかもしれませんね」

「じゃあ、細かい部分を詰めていこう。まずティーセットは候補の中だと一番小さいし、予めルームメイトの分も用意しておけば共有も容易だから問題ないだろうが、ベッド・照明・壁紙の3つは確実にやめておいた方がいいな。これだけ大掛かりな物を持ち込むと確実にルームメイトのプライベートスペースを侵害する事になるから、それだけで協調性のない証になる」

 

セシリアも俺の説明を聞いて納得してくれたので、減らす家具について具体的な話をしていく。

 

「確かに先ほどアルが言った点を考慮すると、その3つはやめておいた方がよさそうですね。では鏡台とテーブル、椅子はどうでしょう? 鏡台はメイクに必須ですし、テーブルと椅子もティータイムには必須なので、出来る事なら持っていきたいのですが」

「俺の方には寮に関する資料が入っていなかったから、その3つに関しては実物の大きさと寮の部屋の広さによるとしか言えないな。寮の部屋が広くて実物がそこまで大きくないなら持ち込んでも大丈夫だろうけど、実物が大きかったらやめておいた方が無難だろうな」

 

資料そのものに目を通していないので学生寮の部屋の広さについては把握しておらず、大きいのがわかりきっているベッドや照明を除くと持っていくべきかどうかの判断がつかないのだ。

 

「元々学園の部屋で使う事を前提に設計されているので、ルームメイトとなる方のプライベートスペースは侵害しないはずですわ。それに今気づいたのですが、この3つの物は全てルームメイトの方との共有が容易なので、アルの言った視点で考えればプラスに働くのではないでしょうか?」

 

確かに鏡台はお互いにメイクをする時に共有する事が可能だし、テーブルと椅子のセットも主にルームメイトと一緒にお茶をする時に使うだろうから、実質的には共有を前提にしていると言っていい。その上でルームメイトのプライベートスペースを侵害しないなら、持ち込んでも問題はないだろう。

 

「そう言われればそうだな。そういう事なら持っていっても大丈夫だと思うぞ」

 

セシリアの指摘を聞いて初めてのその点に気づかされたので、その3つを持ち込む事については反対する理由がなかった。

 

「では、この3つも持っていく事に致しますわ」

「じゃあ、これで家具についてはひと段落だな。他に意見を出した方がいい物はあるか? あるようだったら相談に乗るぞ」

「家具を除けば持ち込む私物は服と化粧品が主ですから、御心配には及びませんわ。気遣っていただきありがとうございます、アル」

 

どうやら他に相談事はないらしく、いらぬ気遣いだったようだ。

 

「家具以外にも何か困った事があったら気軽に連絡してくれ。出来る限りのアドバイスはさせてもらう」

「そういうアルもISについて不明な事があったら気軽に言ってくださいね。しっかりと補足説明をさせていただきますから」

 

 

♪~~

 

 

セシリアがそう言った直後、短めのアラーム音が聞こえてきた。

 

「わたくしの端末のようですね。確認させていただいてもよろしくて?」

「ああ、構わないぞ」

 

セシリアは一言俺に断ってから端末を取り出し、画面を確認し始める。

 

「……どうやら迎えが来たようなので、話はここまでにしておきましょう」

 

先ほどのアラームは迎えの到着を知らせた物らしく、セシリアは端末を再びバックにしまいながらそう言ってきた。

 

「わかった。大丈夫だとは思うけど、帰る時は気をつけてな」

「ええ。それでは失礼いたしますわ。ごきげんよう、アル」

「おう。お疲れさん」

 

お互いに挨拶を交わし合い、休憩室を出ていくセシリアを見送る。

 

「――さて、俺も帰る準備を始めるか」

 

休憩室の入り口付近に人の気配がない事を確認した後、そんな風に独り言を呟きながら帰宅準備の為に個人研究室へ向かう。

 

研究室で帰宅準備を終える頃には職員の人達の定時の時間が迫っているのでそのままエントランスに移動し、定時のチャイムが鳴るのを待ってから母さんと合流し、そのまま帰宅。

 

夕食の準備などの家事を一通りこなした後、渡日の為の荷物をトランクとボストンバックに詰めていく。

 

荷物の量がそこまで多くないので詰め込み作業は比較的短時間で済ませる事が出来た為、作業終了直後に管理官へ連絡する。

 

 

プルルルル…………プルルルル…………

 

 

『もしもし』

「夜分遅くに失礼します、管理官。今、お電話大丈夫でしょうか?」

『ええ、大丈夫です。用件は何でしょうか?』

「用件は渡日準備の完了報告です。夜分に連絡するのもどうかと思ったのですが、以前の話し合いの際に準備が出来たら連絡するように仰っていたのでこうして連絡させていただきました。ご迷惑でしたか?」

 

電話をするには不適切な時間帯に差し掛かりつつあるので明日の朝一番に報告する事も考えたのだが、それはそれで管理官の仕事が増えそうなので失礼を承知で連絡を入れさせてもらった。

 

『いえ、こちらとしても特別便の準備などがあるので問題ありません。それに先ほどオルコット代表候補生からもあなたと同様の報告を受けたので、すぐにでも詳細な渡日計画を構築しなければいけません。具体的な日程については後日連絡をする形となりますが、よろしいですね?』

「わかりました。連絡をお待ちしています」

『では、また後日』

「はい、失礼しました」

 

一言挨拶をしてから通話を終了する。

 

やるべき事もやったのでその後は身支度を整えて就寝したのだが、翌日の昼過ぎには管理官から渡日の具体的な日程とその際の諸注意についての通達を受けた。

 

それによると今回の渡日は事前に聞いていた通り特別便のジャンボジェットを利用するのだが、特別入学試験の時と違って俺・セシリア・サラ先輩の3人で同乗する形になるようだ。

 

それ以外の部分で違いがあるとすれば客室内の業務全てを身元のはっきりしているセシリアの家に勤めるメイドさん達が執り行う事くらいで、その他の部分は特別入学試験の時と変わらないらしい。

 

移動その物は日本でのインタビュー対応や時差への適応などを考慮した結果、新学期が始まる3日前の3月29日に行う事が決まった。

 

そして渡日までの残り日数が確定した事により多少は融通のきく中学時代の学習を一時的に中断。そのかわりに代表候補生としての訓練を優先して行い、IS学園入学後に不測の事態に巻き込まれた場合に備えておく。

 

それと同時に今後への備えとして現段階でIS学園へ生徒を編入させてきそうな国家と、その場合に編入されてくる可能性が高い代表候補生のプロフィールが添付されたファイルも受け取る。

 

当然と言うべきかデータに記載されていた編入が予想される代表候補生は俺と同年代の人が殆どで、その中でも高確率で代表候補生を編入させてくると考えられたのは大半が第3世代機の実用化に成功している国家だった。

 

おそらくは第3世代機の実働データをIS学園で蒐集する傍らで男性IS操縦者と接触し、自国へ引き入れようとしているのだろう。

 

つまり、IS学園入学後は他の国の第3世代機を相手にした模擬戦を行う可能性があるという事だ。

 

その点を考慮すると今の俺では技量が足りない可能性が高いので特殊兵装使用訓練の訓練内容に基礎機動の復習も織り込んでもらい、新学期開始までひたすら操縦技量の習熟に努める。

 

そうして各種鍛錬を行っていると通っていた中学から卒業の手続きが終わったと連絡が入ったので、中学へ向かって半年早い卒業式を行う。

 

これでIS学園入学に伴う諸問題は全て解決されたので憂うことなくIS学園へ通う事が出来るようになったのだが、そんな風に過ごしているとあっという間に移動日が前日に迫っていた為、1日かけてスカイ・ブレードのオーバーホールを行い、機体の調子を万全にして新学期に備えておく。

 

なお、かなり詰込み気味に行った特殊兵装の使用訓練だが経過その物は順調と言ってよく、使い方そのものがシンプル――使用法を端的に言えば長大・大出力のビームサーベルを対戦相手に当てるだけなので、その為の剣の振るい方を覚えればいい分、操作が複雑なビットに比べれば使いやすい部類に入る――な第二特殊兵装のライジングブレードに関しては使用時のコツがわかってきたので、特殊兵装使用訓練の陣頭指揮を取っているサラ先輩から訓練最終日に『実戦で使用しても問題ない』判断されたが、ビットに関してはいまだに使用前の精神集中に15秒程度の時間をかける必要がある為、実戦投入に関してはしばらく先になると判断せざるを得なかった。

 

無論セシリアの訓練合流当初から比較すれば着実に進歩してはいるのだが、まだタメが長いので現時点では対戦相手に余程の隙がなければ実戦で使う事はまず無理だろう。

 

こちらに関してはIS学園入学後も使用訓練を続け、タメの時間を少しずつ短くしていくしかない。

 

そうして全ての準備が整ったため特別入学試験の時と同じ厳戒態勢の下、俺達3人は渡日。来るべき新学期を迎える事になるのだった。




そんなわけで、今回はここまで。
最後の部分はかなり駆け足気味になってしまいましたが、原作開始前のエピソードは今回で終了です。
今回ちょっと触れましたが原作から設定を変更し、鈴ちゃんは普通にIS学園の入学試験を受けています。彼女の心情に関しては次回の更新で鈴ちゃんのエピソードを挟むつもりなので、そちらで詳しく描写させてもらいます。
一夏サイドのヒロインもまだ募集しているので、『このヒロインとくっつけてほしい』という意見がありましたらユーザーページの活動報告欄にフォームを作っておくので、そちらへ書き込んでください。
プロットの都合などもあるので、一夏サイドのヒロイン募集期限は原作エピソードの2話目が更新されるまでとさせてください。
予定では鈴サイドを書いた後に一夏サイドのプロローグを書き、その後で原作開始となるので、募集期限が迫ったら再び通知させていただきます。
なるべく早い更新を心がけますが、気長にお待ちいただけるとありがたいです。
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