最近はモチベーションが思うように上がらず、執筆完了までかなりの時間がかかるようになってしまいました。
何かモチベーションを回復させるような方法をご存じの方がおりましたら、教えていただけると助かります。
ちょっと愚痴っぽくなってしまいましたが、本編をどうぞ。
あたし、
具体的に言えば、『親権を持つ母親に金銭的負担と心配をかけることなく、日本に住む異性の幼馴染である織斑一夏の近くで暮らす為』だ。
あたしは小学校5年の頭から中学2年の終わりまで日本で暮らしていたのだが、1年ほど前に両親の離婚前のゴタゴタに絡んで中国に戻ってきた。
離婚調停の結果、あたしの親権は母さんが獲得。その後母さんと二人暮らしを始めたのだが、一夏への想いを現在進行形で引きずっているあたしは、可能な限り早く日本へ戻りたかった。
日本に住んでいた頃から一夏の事を想っていたのを知っていた母さんはあたしが日本へ戻りたがっている事も気づいていたが、再度日本へ移住できるだけの財産は持ち合わせていなかった為、そのまま中国で暮らさざるを得なかった。
母さんとの二人暮らしを始めたあたしは日本への移住手段がないかを調べるようになったが、親子二人が真っ当な方法で移住するのは母子家庭の収入ではまず不可能なものばかりだった。
そんな嫌な現実を突きつけられる中、母さんは自分の都合であたしを想い人の下から無理やり引き離してしまった事を心苦しく思っていたため、あたしだけでも日本へ移住させる方法がないかを調べてくれていた。
あたし一人を移住させるならいくつかの方法があったが、殆どの方法は金銭面での負担が大きい物だった為、選ぶに選べなかった。
母さんは金銭的負担については気にするなと言ってくれたが、あたしとしても母さんに余計な負担を強いるつもりはなかった。
なにせ一夏があたしの事を覚えているかどうかを別にすれば、普通に就職できる年齢になるまで待った後、自力で移住費用を稼ぐという手もあったのだ。
その事を加味すればあたしが考えている事は単なる我儘でしかないのは明白なので、金銭的負担が大きい物を選ぶのはどうしてもできなかった。
ただ、一夏に会いたい気持ちがある事も事実なので、悩みに悩んだ末に選んだのは『IS操縦者募集の一環として政府が行っているIS簡易操縦適性試験を受け、代表候補生となってIS学園の入学を目指す』という達成するのは困難極まりない上に3年という期限付きだが、金銭的負担はそこまで高くない物だった。
移住方法を決めるまではISに興味がなかったので本当に最低限の事しか知らなかったが、代表候補生を目指す以上はISについて詳しく知っておかなければならない為、ISに関する知識を学ぶ傍らで簡易操縦適性試験の申し込みを行う。
ここでISへの適正そのものがなかったら他の移住手段に切り替えるしかなかったのだが、試験の結果は実質的な最高評価であるA判定だった為、政府関係者から直接代表候補生への勧誘を受けるうれしい誤算が起きてくれた。
IS操縦者になった目的が目的なので、あたしはその話を即座に了承。保護者である母さんもあたしの代表候補生就任を承諾してくれたので、自分でも驚くほどスムーズに目標へ近づいていった。
代表候補生の就任後はひたすらISに関する知識を詰め込み、オーバーワークにならないように細心の注意を払いながら操縦訓練を繰り返した結果、元々持ち合わせていたISの操縦適性が開花。中国内で第3世代型ISの実用化に成功し、操縦者の選定試験が行われる頃には完成したばかりの第3世代機の専属操縦者候補に名を連ねる事が出来る程度の実力を持ち合わせる事が出来た。
代表候補生の中でも選りすぐりの人員ばかりが集められていたので選抜試験は苦戦させられる事になったが、なんとか他の候補生達を倒す事に成功し、あたしは甲龍の専属操縦者となった。
専属操縦者が決定したので甲龍の存在は世間に公表され、それなりに派手なパフォーマンスを行った。
もっとも甲龍は第3世代機量産を目的とした実験機としての側面を持つので、各種データを蓄積させる必要がある。
だが、自国内でその手のデータを収集するとアラスカ条約によって収集データの公表義務が発生する為、蓄積したデータを独占したければ『どこの国にも属さないIS研究を目的とした超国家機関』としての面を持つIS学園に向かう必要があった。
そのため世界中のマスコミへ甲龍を公表した後、管理官を通じて政府からIS学園の入学試験受験を打診された。
あたしの目的はIS学園への入学なので打診を拒否する理由はなく、即座に了承。確実に合格する為、受験勉強に明け暮れた。
機体の調整も入念に行い、万全の態勢で入学試験に挑んだのだが、試験当日に大きな問題が発生してしまった。
その問題というのが実技試験の会場に別の学校の入学試験会場と間違えた男子が入ってきてしまい、受験生が入室してきたと勘違いした試験官がその男子にISの装着を促したため、指示に従った男子が安置されていたISに触れたところ、理由は不明ながらISが起動してしまった事だ。
問題が起こった事で現場にいたIS学園の教師陣一同でISを起動させた男子から事情聴取や各種簡易検査を行わざるを得なくなってしまった為、実技試験は一時的に中断。その男子の簡易検査と事情聴取の終了後に試験を再開する形となった。
この情報は実技試験の最中に受験生が呼ばれなくなり、試験が突如として中断してしまった理由を説明する為にIS学園の教諭陣から受験生全員に通達されたのだが、内容が内容だけにIS学園または日本政府からこの件についての公式発表があるまでは口外無用の注意も受ける事になった。
あたしの実技試験の順番は最序盤の2番目だったので先生方から通達を受けた時には試験そのものが終わっていた為、他の受験生の試験が終わるまで待機していればよかったのは不幸中の幸いと言っていいのかもしれない。
もっとも影響その物がないわけではなく、試験その物が一時的に中断されていたので事前に通達されていた試験終了時刻を大幅にオーバーする事にもなった。
その結果、受験生達が解散を言い渡されたのは夜もかなり遅い時間になっていたので、あたしを含めた海外からの受験生はその日の内に日本を出発する事が困難になってしまっており、もう一晩日本に滞在せざるを得なかった為、試験会場付近のホテルへ案内される事となった。
海外からの受験生一同はホテルへ到着すると学園側が用意してくれた替えの下着とルームキーを受け取り宛がわれた部屋へと向かったのだが、代表候補生だからなのか、あたしに宛がわれた部屋は他の海外受験組から少し離れた場所にある一人部屋だった。
その頃にはIS学園から各国政府へ連絡が回っていたらしく、部屋について通信端末を確認したところ、管理官から帰国後に延長滞在時の報告書を提出する旨を伝えるメールが届いていた。
なお、食事に関しては控室での待機中に済ませていたので、寝る以外にする事があるとすれば部屋に備え付けのシャワーで汗を流すくらいだろう。
コンコンコン
そんな風に思っていたのだが、来客を示すノックの音が室内に響いた。
「はーい」
多少なりとも疲れてはいるが、居留守を使うほどではないので返事をしながら覗き穴を見て来客者を確認すると、仕立てのいい女性用スーツが目に入った。
「久しぶりだな、鈴。突然で悪いがお前に話がある。中に入れろ」
次いで聞こえてきたのは懐かしいながらここで聞くとは思っていなかった人物の声だった。
「ち、千冬さん!? いったいどうしたんですか!?」
声の主は織斑千冬。世間的には
「話があると言っただろう。他の客の迷惑になるからさっさとドアを開けてほしいんだがな?」
「はっ、はい!! わかりました!!」
呆れが含まれた声色で催促がきたので、怒られる前にあたしは慌てて鍵とドアロックを外し、扉を開く。
「突然押し掛けてすまんな」
千冬さんは部屋の中に入ってあたしが扉を閉めた事を確認すると、一言謝罪をしてきた。
「控室で十分休んでいたので来る事そのものは構わないんですが、理由を訊いても大丈夫ですか? あ、座ってください」
正直言ってこの人の事は苦手なのだが、無碍に扱うわけにもいかないので、来客用のソファへの着席を促しながら用件を訊いてみる。
「ああ。今日の受験中に起こった騒動に絡んでお前に頼みたい事ができたんでな。その交渉に来た」
千冬さんはソファに座りながら用件を告げたが、その内容は要領を得ないものだった。
「今日の騒動って、男子がISを動かしたってやつですよね? あたしには関係ないはずですけど……」
あたしも千冬さんの対面に座り、念のために今日の騒動についての確認を取る。
男子がISを起動させた事実そのものは驚くべき事だとは思うが、千冬さんが直々にあたしの下へ訪れてまで頼みたい事柄というのが想像できない。
「その『ISを動かした男子』が一夏だと言ってもか?」
「は?…………一夏って……ええぇーっ!?」
教えられた情報はにわかには信じがたいものだったが、超がつくほどの現実主義者である千冬さんの口から伝えられている以上、一夏は本当にISを動かしてしまったのだろう。
「防音がしっかりしているから外に漏れる事はないとはいえ、もう少し声量を落とせ馬鹿者。うるさくてかなわん」
「あっ……。すみません、つい」
「お前が大声を出したくなるのもわからんではないからこれ以上はとやかく言わんが、既に一夏がISを動かしてしまった事は既に日本政府に通達が済んでいるから、明日の朝にでも世界中に向けてこの事実は報道される事になるだろう」
「……それ、遠くない内に一夏の下に世界中のマスコミが押し寄せる事になりませんか?」
『ISは女性にしか動かす事が出来ない』という前提を覆したのだから、世界中から注目される事になるのは容易に想像できてしまう。
「私もマスコミ各社に根回しをするつもりだが、取材全てをシャットアウトするのは不可能だからな。そうなるのは避けられんだろう」
あたしがその点を指摘すると、あっさりその事を認めた。立場相応の権力を持ち合わせている千冬さんだが、世界中のマスコミ全てを抑え込めるだけの力はさすがに持ち合わせていないようだ。
「頼み事というのは、その取材量を減らす為に一夏の存在が公表された後、幼馴染である事を宣伝して中国をはじめとしたアジア圏内のマスコミの目を少しでも引きつけてもらいたい。頼めるか、鈴?」
千冬さんの言う通り、一夏の存在が公表された後にあたしとの関係を
なにせ現役の専用機持ち代表候補生が公表されたばかりの男性IS操縦者と親しかったのだ。いい意味でも悪い意味でも記者の想像を掻き立てるのは目に見えている。
そうなればあたしの下にも自然とマスコミが押し寄せる事になるので、相対的に一夏の下に訪れるマスコミの数も減少する。
訪れるマスコミが少なければ千冬さんも根回しをしやすくなるだろうし、取材の量も減るので、結果として一夏の負担も多少は軽減されるだろう。
「……それは構わないんですが、一夏にはインタビューであたし達の間柄に関してマスコミの誤解を招くような答え方をさせないように言い聞かせておいてくださいね。マスコミを誤解させると、お互い面倒な事になるのは目に見えてますから」
そのため依頼を引き受ける事に異存はないのだが、代表候補生として動くようになってからはマスコミの怖さも多少は理解できるようになったので、あたしたちの関係について一夏に釘を刺しておいてもらえるように頼んでおく。
「そんなことは言われんでも徹底させるから安心しろ。少なくとも、お前が不利になるような事は言わせんよ」
もっとも千冬さんからすればあたしの懸念はお見通しだったらく、頼もしい一言を貰う事が出来た。
あたしは本気で一夏が好きなので、捏造や曲解の末の報道とはいえその手の話題を出されると否定しづらいのだ。
「そうしてもらえると助かります」
「頼んでいるのはこちらだからな、これくらいの配慮は当たり前だ。それと報道陣に公開する一夏の個人情報に関してだが、私があいつの姉である事以外はお前が代表候補生として公開している個人プロフィールと同程度の量に抑えておいてくれ」
あたしが公開しているのは顔と名前以外だと生年月日と趣味程度なので、その程度までは公開していいという事だろう。
「わかりました」
「最後に報酬についてだが、何かリクエストはあるか? 頼みを聞いてくれるのだから、できる限りの物は手配するぞ?」
「…………それ、今言わないとダメですか? 正直な事を言わせてもらうと、すぐには思い浮かばないんですが」
少しばかり考えてみたが、この場で考え付いたモノはどれも千冬さんの手を煩わせる事無く手に入るモノばかりなので報酬として指定するにはもったいない為、保留が利くか訊いてみる。
「それは別に構わんが、そうなると手配に相当時間がかかるぞ。少なくとも新学期が始まるまでは忙しくなるのは目に見えているからな。お前の報酬の手配までは手が回らなくなる可能性が高い。それでもいいなら、この場は保留としておくが?」
「それで構いません」
今は報酬その物を決める時間が欲しいので千冬さんからの提案を受け入れ、手配が遅くなる事を承知した上で具体的な報酬については決めないでおく。
「わかった。今は具体的に何が欲しいか訊かんが、欲しい物が決まったら私のプライベート用端末に連絡を入れろ。時間はかかるだろうが手配しておく。端末の番号に関しては昔と一緒だ」
あたしが日本に住んでいた頃は一夏と一緒に過ごす事が多かったため、一夏に万が一の事態が起こった時に即座に保護者である千冬さんと連絡が取れるようにプライベート用端末の番号を教えられていたのだが、どうやらその時から番号は変えていないらしい。
「わかりました、決まったら端末に連絡を入れさせてもらいます。これ、今のあたしのプライベートアドレスです」
あたしの方は住む国がそもそも違うので通信端末も変更せざるを得なかった為、新しいプライベート用端末のアドレスをメモに書いて千冬さんに渡す。
「そうしろ。――話はこれで終わりだ。明日以降に備えてゆっくり休んでくれ」
そう言って千冬さんはメモを受け取ってから席を立ったので、あたしは見送りの為に後についていく。
「ええ。しばらく忙しくなりそうなんで、そうさせてもらいます」
「ああ。それじゃあな」
「はい。千冬さんもお元気で」
最後に軽く挨拶を交わし合ってから、千冬さんは部屋を出ていった。
見送りをした時には時刻も日付変更まで残り少なくなっていたので、あたしはそのままシャワーを浴びる準備を始め、シャワーを浴びた後は早々に就寝。翌日からの忙しさに備える事にした。
事前に千冬さんから聞かされていた通り、一夏がISを起動させた事は翌朝のニュースで大々的に報じられたのだが、イギリスでも一夏と同じように男子がISを起動させたというニュースが報じられた為、あたしを含めた海外からの受験生一同は色々な意味で驚かされる事となった。
それはあたしも例外ではなく、一夏以外に男性IS操縦者がいた事に驚かされた。
個人的には『一夏以外の男性IS操縦者』というのがどういった人物なのか気になったのだが、出国手続きなどを円滑に行う為に早めにホテルを出発しなければならなかったのでゆっくりニュースを見ている暇はなかったため、とりあえず『イギリスにも男性IS操縦者がいる』事だけを覚えておき、帰国準備を進めた後にホテルを出発。空港で各種手続きを行い、日本を出国した。
そうして当初の予定からすれば半日以上遅れる形で中国に帰国。待ち構えていた報道陣にはあたしと一夏の関係を、管理官を始めとした政府関係者達には報道陣たちに話した内容に加えて千冬さんと個人的な付き合いがある事を告白したところ大いに驚かれ、質問が殺到。千冬さんの目論見通り中国並びにアジア圏内の目を一身に集める事に成功し、取材などを受けて慌ただしく動いている内に入試の結果が届いた。
試験の結果は筆記・実技共に問題なく、文句なしの合格。4月からは個人的目標である日本で暮らす事が出来るようになった。
あたしが努力しているところを一番近くで見ていた母さんは我が事のように喜んでくれたし、あたし自身もそれなりに苦労したので感激はひとしおだった。
それからは一夏絡みの案件で増えた取材をこなしながら渡日の準備を進め、入寮手続きに余裕を持たせるため、新学期開始1週間前に渡日する事にした。
その頃になると、一夏だけでなくもう一人の男性IS操縦者であるアルバート・ウィルソンもIS学園へ通う事が決まっていた為、政府上層部からは『在学期間中に無理に二人を引き抜こうとする必要はないが、念のために中国に対する心象が悪くなるような行動は起こさないでくれ』と釘を刺された。
あたし個人としては一夏に不快な思いをさせる気はさらさらないし、アルバート・ウィルソンに対しても向こうから無礼な真似をしてこなければ悪し様に扱うつもりはないので上層部の懸念はほとんど意味がないのだが、二人の存在に絡んで何か問題が起こってからでは遅いというのも理解できるので、上層部の意向には従っておくつもりだ。
渡日後は直接IS学園へ向かい、入寮手続きを行う。
入寮時に受けた説明によるとIS学園の寮は生徒二人に一つの部屋が宛がわれ、ルームメイトは原則的に同じクラスとなっている。
もっとも新入生の入寮は個人の事情や国籍が絡むので、新学期開始前の数日に限るとルームメイトがおらず実質的には一人部屋の状態になるのはよくある事らしく、あたしのルームメイトも入寮前だった。
そんな事情があってルームメイトこそ不在なものの、ひさしぶりに休みらしい休みを過ごす事が出来るようになったので、本国にいた時には忙しくて決める事が出来ていなかった千冬さんとの約束の報酬を何にするか調べながら、新学期開始までの数日を過ごす事にした。
そんなわけで、今回は丸々1話使っての鈴ちゃんサイドのお話でした。
独自設定の嵐ですが、ご了承いただけると助かります。
一夏サイドのヒロイン募集も継続中なので、要望のある方は活動報告のフォームを利用してコメントをお願いします。
次回は一夏サイドの話をやる予定です。モチベーションの関係でまた時間が空いてしまうかもしれませんが、ご容赦いただけるとありがたいです。