Infinite Sky:R   作:ショウゴ

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きりがいいところまで書けたので、投稿します。
字数としては前2話の半分程度ですが、ご了承いただけると助かります。
なお、ISのデザインについてはメディアファクトリー版ではなく、オーバーラップ版のものを採用しています。
そのことを前提として、本編をお読みください。


03 模擬戦対策

オルコットさんからの提案を了承して彼女と模擬戦を行う事が決まって数時間が経過し、現在夜の8時過ぎ。

 

「あ゛~、疲れた」

 

俺は疲労困憊になりながら、勉強部屋として使っている母さんの個人研究室に戻ってきたところだ。

 

そうなった理由は簡単、気力・体力共にかなり消耗したからだ。

 

オルコットさんが去った後、母さんに模擬戦の詳細な日時を報告すると共に、量産機を起動させられるか試してみたい事、模擬戦対策としてオルコットさんの専用機であるブルー・ティアーズの詳細なスペックデータ、並びに記録映像の閲覧許可が欲しい事を伝えたところ、多分の呆れがこもった声で残っている各種調整作業を出来る限り急ぎ、研究所に併設されている小型アリーナに量産機も準備しておくし、ティアーズの各種データの閲覧も許可すると言ってくれた。

 

それらの言葉は裏を返せば一定の成果を期待されているという事なので早速アリーナへ向かい、用意されていたイギリス製第2世代量産機・メイルシュトロームに触れたところ、メイルシュトロームは普通に起動してくれた為、懸念事項の一つである訓練時間の短さはある程度解消された。

 

ただし、ISスーツを着ていない状態で機体を運用しているので、コーチ役を買って出てくれた研究員の人が言うにはレスポンスに僅かながら遅れがある状態のようだ。

 

もっとも、明日にはISスーツも完成するので多少反応が遅れる事には目をつぶり、研究所の駐車場前でインタビューが始まるのを待ちわびている各国報道陣を相手にする事になる夕方まで基礎機動の習熟を目的としてアリーナの中を長時間飛び回った為、この時点で肉体的な疲労が溜まっていた。

 

しかもその状態で各国報道陣のインタビューに答えていったので気疲れも溜まっていき、この日の報道陣が解散する頃には精神的・肉体的な疲労はピークに達していた。

 

その後、疲れた体を引きずって一度帰宅し、模擬戦対策の一環として自宅に保管しているモンド・グロッソの映像ディスクを回収。そのままベッドに潜りこんで爆睡したい衝動を振り払って研究所に戻り、休憩も兼ねて所内の食堂でゆっくり夕食を取ってきたところだ。

 

可能ならばこのまま眠ってしまいたいところだが、模擬戦の対策をしなければならない為、寝落ち対策として簡易キッチンスペースで手早くコーヒーを淹れる。

 

(……最初に模擬戦での戦術を考えておくとするか)

 

『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』という言葉もあるので、コーヒーを飲みながら自分自身と相手の情報を整理する事から始める。

 

これから世話になる自分の専用機であるスカイ・ブレードの詳細スペックに関しては、ここ3日の間に行っていたISの基礎学習と同時進行で覚えた。

 

スカイ・ブレードは第3世代型近接格闘用ISに分類される機体で、近接格闘戦におけるビットの有用性調査と特殊兵装を複数搭載した場合の影響を調査する事を目的として製造された機体だ。

 

その製造目的通り、スカイ・ブレードは特殊兵装を2つ搭載している点が他の第3世代機との最大の違いになっている。

 

一つはイギリス製第3世代機の標準特殊兵装であるビットを搭載しているが、このビットもBTビームをサーベル状に展開して突撃させるソードビットとなっている点がブルー・ティアーズとの相違点だ。

 

ただ、未だに実験機の側面が強い第3世代機なので技術的にも未熟な部分が多く、ビットのコントロールを行う場合はそちらに意識を集中しなければならない為、『操縦者が近接戦闘をしかけている間にビットを死角から攻撃させる』といった事は出来ないようだ。

 

もう一つの特殊兵装というのがかなり無茶な代物で、兵装名《ライジングブレード》。

 

発動時点で残っている武装用エネルギーを全て消費する事でスカイ・ブレードの初期装備(プリセット)であるバスタードソード《スカイ・ブレード》から長大・高出力のBTビームサーベルを発生させ、その威力によって対戦相手のシールドエネルギーを削りきるという、色々な意味で凄まじい特殊兵装だ。

 

当然使いどころを間違えればその時点でガス欠となり、後は倒されるのを待つだけになってしまうので、今のところはよほどのピンチにならなければ使うつもりはない。

 

(ライジングブレードもソードビットも使用訓練をしている時間はないから、3日後の模擬戦では戦術に組み込まない方が無難だな)

 

なにせ基礎機動を覚えきれるかどうかすら微妙なところなので、一度も使った事のない特殊兵装類はあてにしない方がいい。

 

幸い、斬撃・銃撃といった基本的な攻撃動作の反動制御は機体側にオートで行わせる事も可能なので、普通に飛びながら近接戦闘や銃撃戦を繰り広げる事に関してはそこまで問題はない。

 

中・遠距離用の攻撃兵装としてBTビームと実弾を切り替える方式のサブマシンガンも搭載されているので、3日後の模擬戦は近接戦用のバスタードソードとサブマシンガンを上手く使っていくとしよう。

 

それにオルコットさんに話したのは『武術経験がある事』だけで、それが世界最強(ブリュンヒルデ)の修めている流派、篠ノ之流だという事までは知らないはずなので、千冬さんの動きをトレースすれば多少なりとも奇襲になると思いたい。

 

そうしてオルコットさんが精神的に動揺している間に速攻を仕掛け、シールドエネルギーと攻撃手段を出来る限り奪っておきたいところだ。

 

(全部が全部上手くいくわけないだろうけど、基本方針としてはこんなところかな?)

 

無論、相手は代表候補生なので素人の俺がいくら傾向と対策を練ったところで力技で突破される可能性は嫌でも付きまとうが、無策で挑むよりは遥かにマシだ。

 

後は模擬戦相手であるオルコットさんの専用機であるブルー・ティアーズの詳細スペックを覚え、彼女が模擬戦時にどういった行動を取るか調べ、その傾向と対策を考えておくくらいだろう。

 

(まずはブルー・ティアーズのスペックを頭に叩き込むとするか)

 

基本方針が決まったので研究室に備え付けてあるPCの元へ向かい、教えられたパスワードを使用して、ひとまずブルー・ティアーズの詳細スペックデータにアクセスする。

 

スペックデータの頭の部分に書かれている設計思想によれば、ブルー・ティアーズは第3世代機の中でもイメージ・インターフェースを利用した精神感応性多目的(マルチプル)エネルギーの理論証明用実験機として製作されており、理論上は最大稼働状態になれば発射したビームの機動を操縦者の意思で曲げる事すら可能だと考えられているようだ。

 

(曲がるビームってのは反則だと思うのは俺だけか?……でも、この書き方だと実際にBTビームが曲がった事はないって解釈でいいんだよな?)

 

模擬戦の映像データを見てみない事にはわからないが、最悪そういった回避不可能攻撃が来る事も想定しておいた方がいいだろう。

 

続きの部分にはブルー・ティアーズに搭載されている特殊兵装であるビットについて書かれており、『小型無人機動砲台(ビット)の実装には成功したものの、構成している技術には未熟な部分も存在している。その影響でビットのコントロールにはかなりの集中力が求められる為、コマンドを送っている時に操縦者がビットと同時に攻撃を行う事は今のところ出来ない』と書いてあった。

 

(ここらへんはスカイ・ブレードと同じ仕様なんだな。勝負の決め手にはならないけど、ビットとライフルの同時攻撃が来ないだけよしとしよう)

 

ビット関連の注意事項が書いてあるページの次からは搭載武装の一覧と武装の詳細スペックが記述されているので、そのページを読み進めていく。

 

ブルー・ティアーズに搭載されている武装は3つ。

 

主武装であるBTビームライフルの『スターライトmkⅢ』と遠距離攻撃型特殊兵装の小型無人機動砲台(ビット)『ブルー・ティアーズ』、近接格闘用のショートブレード『インターセプター』が搭載されており、ビットの内訳はBTビームビット4機と非固定浮遊部位(アンロックユニット)兼用のミサイルビット2機の計6機構成になっている。

 

データに記載されている設計思想と搭載武装に近接戦闘装備が一つしかない事を考慮すると、中・遠距離からビットとライフルを使った連続攻撃によって相手を近づかせずに倒す事を前提として造られているのだろう。

 

それは近距離よりも内側に入りこんでしまえばブルー・ティアーズの機体特性をある程度殺せる事を意味しているが、ド素人の俺が3日後の模擬戦で実際にブルー・ティアーズへ肉薄する事ができるのかが最大の問題点だ。

 

(近づく方法……近づく方法……すぐには思い浮かばんな。いったん保留にしよう)

 

メモ帳ファイルを表示して、そこにブルー・ティアーズへ肉薄する方法を考えるように書いておく。

 

(後はオルコットさんの模擬戦での行動の傾向を調べたいところだけど、その前に一通り映像をチェックして重要そうな場面をピックアップおくか)

 

スペックデータをいったん閉じた後、オルコットさんの模擬戦映像のデータを表示させる。

 

「1、2、3……20個か。結構多いな」

 

データフォルダの中には20個の映像ファイルが入っていた。

 

まずは様子見を兼ねて記録された日時が一番古い半年前のファイルを開き、ブルー・ティアーズの実際の動きを見てみる事にする。

 

開始の合図を受けて早々に4つのビームビットが非固定浮遊部位(アンロックユニット)を兼ねたミサイルビットからパージされ、対戦相手であるメイルシュトロームをビットで取り囲むと四方八方からタイミングをずらしてBTビームが発射される。

 

メイルシュトローム側はその攻撃を回避しようとするが、回避先を読んでいたオルコットさんがBTライフルでの狙撃を行って足を止めさせ、再度ビットでの全方位攻撃が行われる。

 

ライフルの攻撃を受け止めるので精いっぱいだったメイルシュトロームはビットからの攻撃を回避できずに直撃を貰い、シールドエネルギーをかなり減らされたようだ。

 

(ライフルとビットの同時攻撃こそないけど、手数そのものは相当多いぞ、これ)

 

映像の中のブルー・ティアーズはライフルとビットが同時に火を吹く場面こそないが、全方位から襲いかかってくる4機のビームビットとオルコットさん本人の持つライフルを状況により的確に使い分けて相手を追い詰めていた。

 

メイルシュトロームの全身から機能を停止した事を現す白煙が上がったのはそれから5分後の事で、試合時間そのものは8分50秒とかなり短かった。

 

しかも10分以内に相手を撃墜しておきながらオルコットさんの表情はさほど変わらず、当然の事と割り切っているようだった。

 

「うわぁ……。続き、見たくねえなぁ……」

 

一つ目のファイルを見終わり、つい独り言を漏らしてしまう。

 

なにせ一番古い半年前の記録でこの機動だ。日付が近いものになれば当然機体の稼働時間も増える訳で、その分動きも洗練されていくのは目に見えている。

 

その事を考えると、3日後の模擬戦では何も出来ずにビットとライフルでボコボコにされる未来しか考えられない。

 

「……けど、面談でああまででかい口きいたからなぁ。一撃くらいぶち込まないとマジで愛想を尽かされるだろうし、頑張るしかないか」

 

幸いといっていいのか、ブルー・ティアーズのビームビットは自律稼働用大型コンデンサーの部分に番号が振ってある為、それぞれのビットの動きを把握する事自体はそこまで難しくない。

 

後は映像を何度も見て、どのビットがどの角度から攻撃を加えてくるか統計を取り、そこからオルコットさんの取ってくるであろう戦術を予想、対応した戦術を考えるしか方法はないだろう。

 

「時間もないし、何としてでも今夜中にビットの統計取りまでは終わらせとくか。……最悪徹夜だな、こりゃ」

 

なにせデータの量は半年分にも及ぶので、時間がかかるのは間違いない。

 

明日の訓練が辛くなってしまうがこの際少々の無茶には目をつぶり、俺はもう一度映像ファイルを再生するのだった。




そんなわけで、今回はここまで。
前回の予告で模擬戦まで進めるとか言っておきながら、そこまで進みませんでした。
次回は本当に模擬戦にいけると思います。
もしかしたら改訂前のストーリー開始時点に追いつくまではこれくらいの文章量になってしまうかもしれませんが、ご了承いただけると嬉しいです。
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