まず、更新が大幅に遅れた事をお詫びさせてください。更新が遅れてしまった理由はあとがきにまとめて書いておきますので、ご一読していただけると幸いです。
それに絡んで、いつもに比べて文章量が短くなってしまっています。ご了承ください。
それでは本編をどうぞ。
IS学園第3アリーナは現在、男性IS操縦者の特別入学試験を実施している最中なので、無用の混乱を避ける為に生徒の立ち入りが禁止されている状態だ。
だが、教員の立ち入りに関しては生徒の立ち入りと比べれば多少緩く、試験担当兼模擬戦相手の真耶以外の教員に『その時アリーナ内に入る正当な理由』が存在すれば、入場が許可されていた。
千冬はIS学園における自身の立場である『緊急事態における指揮役』の権限を利用し、事前に『男性IS操縦者を狙った襲撃などの問題が発生した場合に備え、即座に指示が出来るようアリーナ内に待機しておきたい』と学園上層部に具申していた。
上層部も男性IS操縦者の希少性と、学園敷地内でアルバートに対する襲撃が起こった際に負う事になるであろう責任の重さを考え、千冬の申し出を了承した。
その結果、千冬は午前中の授業が終了した直後から第3アリーナのBピットにあるオペレーションルームに籠っていた。
もっとも、千冬個人からすれば学園上層部に言った事は可能性として発生しうる状況を建前として利用した形であり、実際は『7年ぶりに会う弟子がどの程度の実力を持っているのか直接目にして確かめておきたい』というのが本音だった。
当然何かしらの問題が発生した時には即座に動くつもりなので上層部に説明した事も間違いではないのだが、比率としては3:7でアルバートの力量確認の方に比重が傾いていた。
『それでは織斑先生、アルバート君に通信を入れますね』
「ああ。頼むぞ、山田君」
階下のカタパルトでは学園に配備されているフランス製第2世代量産機《ラファール・リヴァイヴ》を纏った真耶が
「さて、アルバート。お前がこの7年間何をしていたか、見極めさせてもらうぞ」
アルが弟の一夏と同じように剣を置いてその腕を錆びつかせたのか、それともイギリスでも一人で鍛錬を続けていたのかが千冬個人としての今から行われる模擬戦での最も気になる部分であり、模擬戦の結果そのものはそこまで気にしていなかったりする。
そんな事を考えている内に通信を終えた真耶がカタパルトに乗ってアリーナ・ステージへと飛び立っていき、僅かに遅れてアルバートもアリーナ・ステージに飛び込んでくる。
『では、これより実技試験を行います。この
『武装は展開しておいても大丈夫でしょうか?』
『開始の合図があるまで発砲などをしなければ大丈夫ですよ』
『わかりました』
アリーナ・ステージの空中で最後の質疑応答が行われ、試合開始前に武装の展開が許可されると、アルバートは多少悩んだ表情をした後で刀身長が1.8メートル程のバスタードソードを展開し、剣を両手持ちにする。
真耶もラファール・リヴァイヴに
二人の中間にある三角柱型立体映像のカウントも残り5カウントで0になる為、模擬戦の始まりはすぐそこまで迫っていた。
ビィーッ!!
立体映像のカウントが0になり、アリーナ・ステージ内にビープ音が鳴り響くとともに模擬戦が始まる。
開始の合図と共に真耶は後方に下がりながらアサルトライフルを構えようとし、アルバートはブーストを最大出力で噴かせて距離を取ろうとする真耶に肉薄し、彼女の構えているアサルトライフル目掛けてバスタードソードを右から切り上げる。
『ふっ!!』
『っ!?』
真耶はその斬撃を身体をひねる事でアサルトライフルを守り、同時に左腕部のハードポイントにセットしておいた大型物理シールドで斬撃を防ぎにかかる。
ガギィッ!!
『きゃっ!!』
『ぐっ!?』
だが、かなりの勢いがついていた斬撃はそのまま大型シールドに襲い掛かり、金属同士がぶつかり合う不協和音をアリーナに鳴り響かせながら刀身の幅の1割程がシールドに食い込んでいた。
『……まさかいきなり武器を壊しに来るとは思いませんでした。やりますね、アルバート君』
『大容量
アルバートは食い込んだ刀身をシールドから外しながらそう言うが、真耶からすれば篠ノ之流という下地の存在があったとしても、ISの操縦訓練を始めて2週間程度でここまで鋭い斬撃を放つ事が出来るという点で十分驚異的だった。
「……あいつめ、やるじゃないか」
それはオペレーションルームで観戦している千冬も同じであり、気付かぬ内に独り言を漏らすほどだったが、千冬が驚いている理由はアルバートが篠ノ之流の基本武装である日本刀とは振り方の全く違うバスタードソードであれだけ鋭い斬撃を放った事に対してだった。
日本刀と西洋剣は刀身の形状そのものが違うので運用方法も全くの別物となっている為、日本刀を十全に扱える人物がいたとしても、その人物が西洋剣を扱える可能性はかなり低い。
だが、アルバートは日本刀を扱うような振り方で刀身をシールドに食い込ませるほどの斬撃を放っている為、この7年の間にかなり器用になった事だけは確かだった。
『さあ、仕切り直しと行きましょう。今度は、こちらから行きますよ!!』
アルバートが物理シールドから刀身を外し終わると二人は10メートル程距離を取って双方が再び構えを取ると、真耶はそう言いながら後方へ退かずにその場でアサルトライフルを連射し始める。
『うおっ、とっ、とおぉっ!?』
先制される形になったアルバートも回避行動を取り始めるが、攻撃の3割程は回避しきる事が出来ずにくらってしまい、シールドエネルギーを削られる。
『ちいっ!! 削られた分は削り返す!!』
アサルトライフルの連射を回避する動きを千冬の回避機動のトレースに切り替えながらアルバートはバスタードソードを左手での片手持ちに持ち替えると、空いた右手にサブマシンガンを展開、真耶に向けて射撃を開始する。
真耶はIS学園の教員になる前は日本の代表候補生に選考された事もあるので、アルバートの射撃を全弾回避する事も可能だったが、この模擬戦はあくまでもアルバートの現段階での操縦資質を見る事を第一としている為、初心者のつたない射撃でもしっかりと回避機動を読めばヒットさせられる程度に精度を落として回避行動を取る。
『くっ!!』
放たれた銃弾の半数は真耶が回避する直前ないしは1~2秒前までいた場所を通り過ぎていったが、4割は真耶の姿を的確にとらえ、完全に的外れな場所へ飛んでいったのは全体の1割程度だった。
操縦訓練を開始して2週間程度である事を考えると、アルバートはPICを自動制御モードで使用している可能性は高く、今後PICのマニュアル制御が出来るだけの技量を身に付ける事が出来るのならば、射撃精度が向上するのは間違いないだろう。
『そう簡単には、やられません!!』
アルバートの現在の射撃精度を考えるとこのままジリ貧になってしまうと判断した真耶はアサルトライフルを格納し、即座に近接戦用ブレードを展開。最大出力でブーストを行う事で自ら距離を詰め、近接格闘戦を仕掛ける。
『それは、こっちの台詞ですよ!!』
アルバートも真耶の意図を理解してサブマシンガンを格納し、剣を両手持ちに持ち替えながら再び最大出力でブーストして真耶に肉薄、先制攻撃を仕掛けようとする。
ギィン!!
お互いのブレードがぶつかり合い、本格的な近接戦闘が始まる。
真耶は左手側から来る斬撃に対しては物理シールドで防御し、右手側から来る斬撃はブレードを使って捌く。
対するアルバートは体捌きで回避するか、剣の腹の部分を使って斬撃を受け流す。
お互い全ての斬撃を捌ききることは不可能なので、少しずつ攻撃をくらっていき、シールドエネルギーは刻一刻と減少していくのだが、二人のシールドエネルギー残量はほぼ同量となっており、残存シールド量だけで見れば拮抗している状態だった。
これには理由があり、真耶の場合は左腕の大型物理シールドで攻撃を受ける事が出来るので防御面では有利なのだが、近接戦用ブレードの攻撃力を決める刀身重量と強度においてはバスタードソードに劣る為、どうしても手数を当てていく必要がある。
それに対してアルバートの場合はシールドの類がないので攻撃の回避・防御に専念せざるを得ず、反撃のチャンスこそ少ないが、その数少ないチャンスに重量と強度で勝るバスタードソードの斬撃をきっちりと当てている為、真耶のシールドエネルギーをより多く減らす事に成功し、結果として二人のシールドエネルギー残量はほぼ同量を残しているのだった。
だが、それもシールドエネルギー残量だけを見た場合の話であり、武装の損耗度を加味すると真耶の方が不利な状態だった。
何故ならアルバートのバスタードソードはよほど頑丈に作られているからか刀身に傷やへこみが一切ないにも拘らず、真耶のブレードは既に刀身の所々にへこみや欠けが出来ており、いつ使用不能になってもおかしくない状況だからだ。
当然真耶もその事には気づいており、タイミングを見計らってアルバートから距離を取ろうとするものの、そのたびにアルバートが肉薄して距離を離させずに近接戦を続行する為、離れるに離れられない状態に陥っていた。
『このまま勝たせてもらいますよ、山田先生!!』
『そうはいきませんよ、アルバート君!!』
アルバートがそう言いながら右薙ぎを放つと、真耶はそれに合わせるように身体をひねり、左腕部の大型シールドを構える。
ガッ、ギャァン!!
『うおぉっ!?』
そうしてバスタードソードがシールドの装甲に触れた途端、装甲部分が弾け飛び、その勢いに押されてアルバートは盛大に体勢を崩してしまう。
真耶はその間に距離を取るとぼろぼろのブレードを格納、連射式グレネードランチャーを展開し、グレネードを2発発射する。
『げっ!?』
全方位視界接続でグレネードが迫ってきている事を察知したアルバートだが、体勢を立て直している最中だった為、グレネードから逃れる事は難しかった。
ドンッ、ドォン!!
『ぬおぉぉっ!?』
ISアーマーに着弾すると同時に起爆し、ちょうど爆発範囲に入っていたもう一発のグレネードも連鎖的に爆発。グレネード2発分の爆発エネルギーによって残っていたシールドエネルギーを一瞬で0にされ、アルバートは機体から白煙をあげながらアリーナ・ステージの地面に墜落していくのだった。
そんなわけで、今回はここまで。次回は後始末関係のエピソードを行います。感想で質問のあった事柄に関しても、次回の更新で触れようと思います。
そして、前書きで触れた更新が遅れた理由ですが、今回のエピソードの執筆前に今後の為にプロットを考えていたのですが、ここ2週間ほどは猛烈な暑さだったためろくに頭が働かず、執筆に集中できなかった事もあり、時間がかかってしまいました。
私の部屋には冷房がないので扇風機でしのぐしかなく、それもこの暑さで焼け石に水状態だったので更新が遅くなってしまいました。
今後もこのような事が起こりうると思いますが、その時は気長に更新をお待ちいただけると幸いです。