クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~ 作:ヒビキ7991
~アルゼナル 襲撃跡~
ドラゴンの襲撃があった日の翌日、アルゼナルは朝から大忙しだった。ジャスミンは所属不明機の謎の攻撃によって破壊された場所に穴を掘り、そこにドラゴンの遺体を集めた。
ジャスミン
「まさか、ドラゴンが直接アルゼナルを
襲撃しに来るとはね・・・。」
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~デッキ~
一方、司令部ではパメラ、ヒカル、オリビエの三人が瓦礫の撤去と装置の復旧作業。整備班は生き残ったパラメイルのフルメンテナンス。マギーと医療班は負傷者の搬送と手当、そして遺体の回収。そしてジルはサリアとヴィヴィアンを除くパラメイル第一中隊のメンバーと、生き残ったメイルライダーをデッキに集めた。
ジル
「生き残ったのはこれだけか・・・。指揮経験者は?」
ヒルダ・ゾーラ
「・・・」
ヒルダとゾーラは静かに右手を上げた。
ジル
「現時刻をもって、パラメイル部隊を再編成する。暫定隊長ゾーラ。暫定複隊長ヒルダ。パラメイル隊は部隊編成の後、警戒体制に入れ。」
「「イエス・マム!」」
パラメイル隊は敬礼をし、その場を離れた。だが、アンジュ・天馬・モモカの三人はその場を離れなかった。
ジル
(全て壊して作り直すか・・・。)
アンジュ
「ねえ。」
ジル
「ん?」
アンジュ
「私と天馬の謹慎、終わったのよね?」
ジル
「ああ。」
天馬
「じゃあ、約束通り全て話していただけますか?」
ジル
「・・・いいだろう。お前達には随分と世話になったからな。ただし、侍女は無しだ。」
モモカ
「あうぅ~…」
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~ヴィヴィアンとサリアの部屋~
一方、ヴィヴィアンは自分のハンモックでぐっすり眠っていた。
ブチッ! ドサッ!
ヴィヴィアン
「いったぁ~…」
ハンモックを支えてるロープが切れ、ヴィヴィアンはコンクリートの床の上に落ち、その拍子に目を覚ました。
ヴィヴィアン
「あれ、落ちてる?」
ふと窓の外を見ると、外には青空が広がっていた。
ヴィヴィアン
「うわ!寝過ごシング!」
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~露天風呂~
アンジュ・天馬・ジルは水着に着替え、露天風呂に浸かっていた。
天馬
「何でお風呂に?」
ジル
「秘密の話はさらけ出してするものさ。それで、何処から聞きたい?」
アンジュ
「最初から。ドラゴンとあの女、パラメイルとお母様の歌、あなたとタスクの関係、全部よ。」
ジル
「・・・昔々、あるとこに神様がいました。」
アンジュ
「えっ?」
ジルは突然昔話を始めた。
ジル
「神様は繰り返される戦争とボロボロになった地球に、うんざりしていました。」
天馬
「何の話ですか?」
ジル
「何って、最初から全部だ。長々と説明するより、こうやって話した方が聞く方も楽だろ?」
天馬
「は、はぁ…」
ジル
「続けるぞ?
平和、友愛、平等。口先では美辞麗句を歌いながらも、人間の歴史は戦争と憎悪と差別の繰り返しです・・・。
それが人間の本質。このままでは、世界は滅んでしまいます。そこで神様は、新しく作ることにしたのです。新しい人類を。争いを好まない穏やかな人間。あらゆる物を思考で自在にコントロール出来る高度情報化テクノロジー、マナ。
あらゆる争いが消え、あらゆる望みが叶い、あらゆる物を手にすることのできる理想郷が完成したのです。あとは、新たな人類の発展を見守るだけ・・・のはずでしたが…」
天馬
「でしたが?」
ジル
「生まれてくるんです。何度システムを作り直しても、マナの使えない女性の赤ん坊が・・・。古い遺伝子を持った突然変異が・・・。
突然変異の発生は、人々の不安を掻き立てました。ですが、神様はこの突然変異を利用することにしたのです。
"彼女達は世界を拒絶し破壊しようとする反社会的な化け物、ノーマである"という情報を植え付けたのです。世界はノーマに対処するため絆を強め、人々も差別できる存在がいることに安堵し、安定しました。
生贄、犠牲、必要悪・・・言い方は何だって構いません。私達は世界を安定させるため、差別させるためだけに作られた存在なのです・・・。」
アンジュ
「・・・バカバカしい。よくもまぁ、そんな話を思い付いたわね。」
ジル
「昔、本人に聞いたからな。」
天馬
「本人って、その神様ですか?」
ジル
「まあな。ただ正直に言うなら、神様的存在と言うのが妥当だろう。」
アンジュ
「で、続きあるんでしょ?」
ジル
「そう急かすな・・・。
こうしてマナの世界は安定し、繁栄の歴史が始まるはずでした。しかし、それを許さない者達がいました。」
天馬
「許さない者達?」
ジル
「それはかつて"黄金の国"と呼ばれたアジアの島国、日本の民。そして突然世界から追放されたマナの使えない古い人類の生き残り、《古の民》。
日本の民はノーマを否定する世界に対し、人間とノーマが共存できる社会を作ろうとしました。しかし、世界はそれを許してはくれませんでした。
そこで日本の民は、世界中から逃亡してきたノーマの受け入れを全面的に行い、マナを持つ他国の人間の来港を規制し、マナによって動く乗り物や機械等の導入を全面的に拒絶し、その時は既に見放されていた石油等の地下資源と電気を主流としたテクノロジーを再開発し、マナ社会の中で唯一マナのテクノロジーを持たない独立国になったのです。」
天馬
「そうだったのか・・・。」
ジル
「一方、古の民は自分達の居場所を取り戻すため何度も神様に挑みました。長きにわたる戦いの末、彼らはついに手に入れたのです。
神の兵器、《ラグナメイル》。破壊と想像を司る機械の天使。パラメイルの原型となった絶体兵器だ。」
アンジュ
「それが、ヴィルキス…」
ジル
「・・・これで神様と同等に戦える。古の民はそう思いヴィルキスに乗り込んだ。だが、彼らにヴィルキスは使えなかった・・・。
鍵がかかっていたんだ。虫けらごときが使えないようにな。」
天馬
「だから、サリアさんが乗ったときヴィルキスは本来の性能を発揮しなかったのか。」
ジル
「生き残った仲間はあと僅か。古の民は滅びを待つだけでだった・・・。
そんな時だ。世界の果てに送られたノーマが、パラメイルに乗ってドラゴンと戦わされていると知ったのは。彼らはアルゼナルに向かい、そして出会った。古の民とノーマ、捨てられた二つの人類が。彼らは手を組み、ヴィルキスの鍵を開く者の出現に備えた・・・。
そしてついに、鍵を開く者が現れた。その者の名は、《アレクトラ・マリアフォン・レーベンへルツ》。王族から生まれた、初めてのノーマだ。」
天馬
「アレクトラ・マリアフォン・レーベンへルツ?」
アンジュ
「聞いたことがある。確か、ガリア帝国の第一皇女よ。でも、確か10歳で病死したって・・・。」
ジル
「お前と同じだ。ノーマだってバレたのさ・・・。
アルゼナルに放り込まれ自暴自棄になっていたアレクトラだったが、彼女の高貴な血と皇族の指輪が、ヴィルキスの鍵を開いた。
彼女の元に、多くの仲間が集まった。ヴィルキスを守る騎士、ヴィルキスを直す甲冑士、医者、武器屋。そして始まったんだ。捨てられた者達の逆襲、リベルタスが。」
天馬
「リベルタス?」
アンジュ
「"自由"を意味するラテン語よ。ローマ神話における自由の女神、"リーベルタース"から来てると言われてるわ。」
天馬
「自由を求める戦いってことですね。」
ジル
「ああ。地獄のドン底で、私は仲間達と使命を得た。この作り物の世界を壊すという使命を。だが、私には足りなかった・・・。
そして、全て吹っ飛んでしまった。指輪も仲間も、右腕も・・・。だが、死んでいった仲間達のためにも、リベルタスを終わらせる訳にはいかない。
そこにアンジュ、天馬、お前達が現れたんだ。」
アンジュ・天馬
「っ?」
ジル
「ヴィルキスの最後の鍵は開いた。アンジュ、天馬、お前が壊すんだ。あの歌と化身の力でこの世界を。」
アンジュ
「私を生かしたのは、そのリベルタスのため…」
ジル
「その通り。お前には強くなって貰わなければならなかったからな…」
アンジュは自分の左手の指輪に目を向け、アンジュと天馬は互いを見つめ頷いた。
天馬
「・・・悪いですけど、答えはノーです。さっきの話が全部本当だったとしても、自分の道は、自分で決めます!」
ジル
「っ!?」
アンジュ
「それがどんなに崇高な使命であっても、自分で見て、自分で考えて、自分で決める。誰かにやらされるのは御免なの!」
ジル
「では、リベルタスには参加しないと?」
アンジュ
「・・・好きなの。ドラゴンを倒して稼いで好きなものを買う、今の暮らし・・・。」
天馬
「・・・ん?」
突然、天馬が気づいた。
天馬
「そういえばさっきの話、ドラゴンが出てきてないですけど・・・。」
ジル
「フッ。」
ジルは待ってたかの様に微笑んだ。
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~居住区~
その頃、ヴィヴィアンは部屋を後にし居住区の通路を歩いていた。が、どういう訳か目線がいつもより高い。
ヴィヴィアン
「なんか背が伸びた気がする。成長期かな?」
すると、前方にイライラしているエマを見つけた。
エマ
「もうっ、何で繋がらないの!?」
ヴィヴィアン
「お、エマ監察官さんだ。おーい!」
エマはヴィヴィアンの呼び声に気付き足を止めビクリとする。そして恐る恐る後ろを向いた。
エマ
「え・・・エマ監察官だあああああ!!」
エマは叫び、気を失い倒れた。
ヴィヴィアン
「あわわ…大丈夫?」
ヴィヴィアンはエマに自分の手を伸ばす。が、見えているのはドラゴンの手。
ヴィヴィアン
「えっ?な、なんじゃこりゃ!?」
ヴィヴィアンはふと近くにある鏡を見る。すると、鏡にはスクゥナー級ドラゴンと化した自分が写っていた。
ヴィヴィアン
「これアタシ!?」
「何、今の?」
すると、その場にパメラ、ヒカル、オリビエがやって来た。
パメラ、ヒカル、オリビエ
「っ!!きゃあああああああ!!」
ヴィヴィアン
「うわあああああああ!!」
パメラ達はヴィヴィアンの悲鳴をあげ、ヴィヴィアンは叫びながら逃げていった。
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~臨時指令部~
数分後、パラメイル隊が臨時指令部に集結した。
ゾーラ
「ロザリー、クリス、ココ、ミランダはアタシと共に居住区。アンジュ、ヒルダ、天馬、剣城は整備デッキ。エルシャはサリアを牢屋から出して、神童、信助、霧野と共にジャスミンモールを捜索。残りはここに残って周辺の警備だ。」
「「イエス・マム!」」
信助
「あの、ヴィヴィアンさんの姿が見えないのですが…」
エルシャ
「それが、部屋にも居なかったのよ。」
ゾーラ
「ドラゴンに食われていなきゃいいが…」
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~食堂~
一方、ドラゴンの姿になったヴィヴィアンは食堂にやって来た。
ヴィヴィアン
(お腹空いたなぁ… うぅ、何でこんなことに…)
すると、近くで良い匂いがした。匂いを辿ると、厨房にカレーの入った鍋が置かれていた。
ヴィヴィアン
(やったー、カレーだ!)
ヴィヴィアンはすかさず鍋の取っ手を持つ。すると、鍋が物凄い音をたてて潰れてしまった。
ヴィヴィアン
(ありゃ、おっかしいなぁ?って、おかしいのはアタシだ・・・。)
ガンッ!
ヴィヴィアン
(うわっ!?)
突然、鍋に銃弾が当たった。銃弾の飛んできた方向を見ると、サリア達がライフルを向けていた。
ヴィヴィアン
(サリア!エルシャ!信助!神童!霧野!)
バーン! バーン!
サリア達はヴィヴィアンに向けて容赦なく銃を発砲。ヴィヴィアンは慌ててその場から走り出した。
信助
「待って!」
霧野
「信助!?」
信助はダッシュでヴィヴィアンを追いかけ、ジャンプしヴィヴィアンの背中に飛び乗った。ヴィヴィアンは信助を乗せたままアルゼナルの外へと出た。
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~グラウンド~
一方、アンジュと天馬はグラウンドにいた。すると、崖の下から信助とドラゴン化したヴィヴィアンが現れた。
アンジュ
「いた!」
信助
「うわあああああああ!!」
アンジュはヴィヴィアンにライフルを向けて構える。すると、ヴィヴィアンが突然変な鳴き声をし始めた。
天馬
「これって・・・?」
アンジュ
「死になさい、ドラゴン!」
天馬
「ちょっと待って!」
アンジュ
「えっ?」
アンジュは天馬に呼び止められ銃を下ろした。
天馬
「~♪」
すると、天馬が突然永遠語りを歌い始めた。
アンジュ
「ちょっと、何のつもり?」
天馬
「よく聞いてください、あのドラゴンの鳴き声を。」
アンジュ
「鳴き声?」
天馬
「~♪」
アンジュはヴィヴィアンの鳴き声を聞く。すると、ヴィヴィアンの鳴き声が永遠語りに似ている事に気がついた。
天馬・アンジュ
「~♪」
アンジュは天馬に合わせて永遠語りを歌い始める。すると、二人は微かにヴィヴィアンを感じた。
天馬・アンジュ
(!?)
天馬・アンジュ・ヴィヴィアンは歌い続け、ヴィヴィアンは二人の前に下り立った。
ヒルダ
「いたぞ!」
そこへ、ヒルダ達とサリア達が現れた。一同はライフルをヴィヴィアンに向け構える。
アンジュ
「・・・。」
アンジュはヴィヴィアンの頭をそっと触る。すると、ヴィヴィアンが急に白い煙になった。
信助
「うわあ!」
ドサッ
信助は突然ヴィヴィアンが煙になり地面に落ちた。そして、煙の中から人形のヴィヴィアンが姿を現した。
ヴィヴィアン
「ここでクイズです。人間なのにドラゴンなのって、なーんだ?」
アンジュ・天馬・信助
「っ!?」
ヴィヴィアン
「あ、違うか。ドラゴンなのに人間?あれれ?訳分かんない・・・。」
ヴィヴィアンは泣き出した。
アンジュ
「私達は分かったよ、ヴィヴィアンだって。」
天馬
「お帰りなさい、ヴィヴィアンさん。」
アンジュと天馬はヴィヴィアンを優しく抱きしめた。
プスッ
ヴィヴィアン
「あ・・・ 。」
すると突然、マギーがヴィヴィアンに薬を射ちヴィヴィアンを眠らせた。その場に居合わせた一同は突然の出来事に仰天していた。
信助
「何だったの、今の・・・。」
モモカ
「アンジュリーゼ様・・・。」
ヒルダ
「なあ、今の見たか?」
剣城
「まるで、ドラゴンからヴィヴィアンさんが出てきたみたいでした・・・。」
マギーはヴィヴィアンを抱いてその場を離れ、天馬とアンジュはジャスミンがドラゴンの死体を片付けている襲撃後を見下ろした。
天馬
「人間なのにドラゴン。ドラゴンなのに人間・・・・・・まさか!?」
アンジュ
「天馬、あなたもそう思う?」
天馬
「ええ、直接確かめなきゃ!」
天馬とアンジュは斜面を滑り降り、ジャスミンのもとへと向かった。
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~襲撃跡~
襲撃跡に着くと、ジャスミンは集めた死体にガソリンを撒いていた。
バルカン
「ワンッ!ワンッ!」
バルカンがアンジュと天馬に気付き吠え、ジャスミンもアンジュと天馬に気がついた。
天馬
「ジャスミンさん、待って!」
ジャスミン
「危ないから来るんじゃないよ!」
ジャスミンは穴の中に火のついたライターを投げ入れ死体を燃やした。アンジュと天馬は炎に包まれた穴の中を見る。
アンジュ・天馬
「・・・!?」
そこで二人が見たものとは・・・。
To Be Continued…
~次回予告~
ジュリオ
「まったく、とんだ不運だ。初めて台詞付きで登場したと思ったら喋ったのはほんの少し… 顔に傷は負うし、おまけに本編通りなら次回以降は出番が無い…
あああ~ムシャクシャする!こうなったのも全部ノーマのせいだ!こうなれば出番が無くなる前に、アルゼナルのノーマどもに殴り込みをかけてやる!」
リィザ
「次回、《皇帝の落日》。お楽しみに。」
ジュリオ
「こらリィザ!勝手に締めるな!」