幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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第85話 夏休みは明けて

 夏祭りオフ会が終わり、夏休みが明けて9月に入った。

 それはつまり自由にゲームが出来る時間が減るということ。ちょっと問題はあったがダンジョンを完成させて満足していた俺はともかく、学校で沙織は不満げな雰囲気をずっと放出していた。

 

 新学期が始まってから、それも原因となって幾つかリアルで変わったことがあった。

 

 1つは、その沙織と俺の態度が原因で、倦怠期だどうのと双方からかわれるようになったこと。真偽は本人から違うのにと相談されたので間違いない。正直言ってクソ迷惑な行為だった。

 

 2つ目は、男子のグループに体育館裏とかいう古きテンプレに則った場所に呼び出されたこと。彼ら曰く罪状は『瀬名さんという彼女がいるのに他の女子と夏祭りデートを楽しんでいた死ね二股クズ野郎』とのこと。

 彼女じゃないし全員の合意の上での話だったのだが説明するほどの義理もないし、1発殴らせろ君のパンチが怖かったくらいしかなかった。勝手に内ゲバ始めてくれたから楽に逃げられたし。

 

 最後に、1、2のことが原因で担任に呼び出された。結果としては……うん、教師ってやっぱりクソだなって。こっちの言い分なんて一切聞かずに、某ゲームの聖人みたいに強制冤罪()使ってくるし。

 

 まあ、そんな俺のクソみたいなリアル事情はどうでもいい。

 

 それよりも、月が変わったことでゲームの方にも1つ新たな告知があった。そう、俺含め極振りが作っていたダンジョンが関係する、あのイベントだ。

 

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【予告】超高難度イベント 開催!

 

 『十の王冠、不敗の巨塔』

 

【開催期間】

 イベント開催期間 9/3(日)〜9/17(日)

 

【イベント概要】

 別次元に繋がる、10個の迷宮(ダンジョン)が出現した。

 まるで何かの戴冠を祝福するかの如く、円を描いて並び立ち、天を貫く十の巨塔。

 それぞれが計10層の構造をしており、煌めく最上階には恐らく相当な宝が安置されていると思われる。当然、道中にはこれまでにない困難が待ち受けているだろう。

 各自、自分が得意である塔を登り、財宝を手に入れよう!

 

【イベント参加条件】

 第2の街に到達したプレイヤーのみ

 

【イベント詳細】

 このイベントは特別サーバー(体感時間3倍)で行われます。

 特別サーバーのため、サーバー内から通常ネットに接続することは出来ません。

 また、このイベントはあくまで超高難度イベントです。無理して参加する必要はありません。

 本イベントのダンジョンは、運営が制作した物が1つ、運営が依頼した極振りが制作した物が9つとなっています。

 また運営塔を除き、ダンジョンのボスは極振りプレイヤーが担当しています。担当プレイヤーがログインしていない場合は、クエスト『虚構舞踏会』と同様の再現NPCがボスを担当します。

 

 ダンジョン入り口には、各ダンジョン推奨スキル及び運営のテストプレイによる攻略タイム(ボス部屋前まで)が掲示される予定です。ぜひ参考にしてください。

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 この告知が掲載された時の、掲示板の阿鼻叫喚具合は正直見ていて楽しかった。というか、現在進行形で阿鼻叫喚の地獄絵図なので見ていて楽しい。

 

「暇だ……」

 

 俺が今何故こんな話をしているのかというと、その一言に尽きた。そう、

 誰も! ボス部屋に! 辿り着かないのである!!

 

 それはそれで報酬が増えるので嬉しいのだが、クッッッッソ暇なのである。お陰でデイリービル爆破が、1本から3本に増えてしまった。序でにスキルの成長を目指して練習もしているのだが、時間が余って仕方がなかった。

 

 というわけで。

 

「ん」

「はいはい」

「ん!」

「了解」

 

 そんなわけで俺は今、ギルドに戻って給仕兼調理役としてせっせと働いていた。もしボス部屋に誰かが到達したら呼び戻されるらしいし、安心してギルドで働くことが出来る。

 

「それにしても、れーちゃんは行かなくて良いの? イベント」

「ん」

「ああ、レベルがあっても実戦経験はあんまりないからってこと?」

「ん!」

「そっかー」

 

 まあ、よくよく考えたら確かにそうだ。俺やセナたちと違って、れーちゃんのレベル上げの方法の大半はアイテム作成によるボーナスだという。俺以外のダンジョンがどんなもんなのかは知らないが、超高難度と銘打ってる以上キツイものだったのかもしれない。

 

「でも、普段回復役の俺がいないし、サポート役のれーちゃんもいないとなると……ちょっと辛くない?」

「んー……」

 

 問いかけてみると、確かにそうだけど……といった感じの意思が返ってきた。俺のダンジョンみたく、予算不足で1〜4階層がデフォルトそのままでもない限り、補助も回復もなしじゃ辛いところがあるだろう。

 

「というかずっと気になってたんだけど、俺が来る前って回復役いた?」

「ん! ん。ん……」

「れーちゃんがやってたんだ。でも俺が来てやる必要が無くなったし、つららお姉ちゃんみたいに攻撃を始めたと」

 

 中々難儀なものだ。というか、れーちゃんが補助役に復帰してくれれば、俺が尋常じゃなく頑張る必要がない気がしてきた。

 

「俺はイベントの都合上いけないけど……行ってあげたら? れーちゃんは。多分みんな喜んでくれるよ?」

「んーん」

「その時使ってた武器がもう無いから、行きたくても無理?」

「ん」

 

 どうやらそれが、れーちゃんが今ギルドに留まっている理由のようだった。その少し寂しそうな目を、どうにか出来る手段があるのに無視することは出来なかった。

 

「だったら、俺の部屋に中身が空の最高級の魔導書が何冊か余ってるから、あれ使っていいよ」

「ん?」

「大切なギルドの仲間の為だし、その気になればまたいつかゲット出来るだろうしね。あと、正直誰もボス部屋にたどり着かなくて暇で暇で……」

「ん!」

 

 ぴょんぴょんとして楽しそうなれーちゃんを見ると、身銭を切ったのは間違いじゃなかったと信じられる。そしてれーちゃんは、指を3本立ててから去って行った。

 3冊貰うなのか、3分で作るなのかは分からないが、いつも装備を作ってもらったりしている分の恩返しだ。だから、お店は俺とNPCの人だけでやれるし楽しんで来てほしいと思う。

 

「というわけで、料理以外出来ないので他をよろしくお願いしますね」

「了承しました。なお、爆発物を取り扱う行為は非推奨です。以上」

「ハハハ、使うわけないじゃないですか」

 

 別にれーちゃんが泣かされたりするような事態が発生しない限り、店の中で爆弾を取り出したりなんてしない。まあ、ユニーク装備の6個はどうしようもないから外気に晒されてるけど。

 

「虚偽答弁の可能性大。以上」

「……爆破しますよ?」

「ヒッ」

「嘘に決まってるじゃないですかやだー」

 

 そのまま笑ってみるが、シンと静まり返った店の空気に虚しく響くだけで終わってしまった。むぅ、ちょっとしたジョークのつもりだったのだが。

 けどこれも、有名税というやつなのだろう。その渾名が爆破卿なのだし、甘んじて受け入れる他ないということか。であれば、とことんやるのも良いだろう。

 

「俺としても、楽しく食べて行って貰うのは嬉しいことです。

 しかし、規律が全てだ。最低限のマナーさえ守れない奴は、罰を受ける」

 

 火の付いていないフィリピン爆竹を手で遊ばせつつ、お客さんに向けてそう言った。空気が一気にピリピリとして緊張状態になって来た。話を聞いてくれるのはありがたいことだ。

 

「ま、皆さんはこの前れーちゃんを泣かした人がどうなったか見てるはずですし、そうそう変なことはしませんよね。OK?」

 

 ズドンという幻聴が聞こえた気がしたが、まあそんなものは気のせいな筈だ。単なる映画の見過ぎだろう。……最近幻聴が多いし、今日からちゃんと寝よ。

 

「それにしても」

 

 料理と給仕を1人である程度賄いながら、ボスとしてダンジョンを確認できるウィンドウを開く。

 

 それによると、現在中ボス部屋である第5層を突破したプレイヤーは3人のみ。その人たちも第7層でまごついているようで、本命の8層に到達することは出来ていないようだった。

 

「暇だなぁ……」

 

 折角だからと思って第7層を、強い奴弱い奴入り混じってはいるけれどレアモンスターしか出ない階層にしたのは間違いだっただろうか。運営のテストプレイの人たちからは、1番分かりやすいし楽って言われてたから大丈夫だと思ったのだけれど。

 

 因みにそのテストプレイチームは、第8層のトラップ地帯でイラつきが限界に達して、第9層にさりげなく実装されてる【死界】を見て死んだ目になっていた。そんでもって待ち構えている俺を見て、口から魂が抜けていた。お疲れ様としか言いようがない。

 

「ん!」

「ああ、れーちゃん。行ってらっしゃい」

 

 普段持っているものと違って、白と緑の魔導書を抱えたれーちゃんがこっちに手を振ってくれていた。それに手を振って行ってらっしゃいを返し、特設サーバーに転送されるのを見送った。

 

 あ、さっきまで第7層にあった反応が1つを除きロストしてる。レアモンスターの暴力に勝てなかったようだ。このままじゃ暫く俺の出番も朧の出番もなさそうだし、もっと頑張って欲しい。

 諦めんなよ、諦めんなよお前! どうしてそこでやめるんだそこで!もう少し頑張ってみろよ! ダメダメダメダメ諦め(ry

 

「……ダメか」

 

 どこぞの太陽神式声援を送ろうとした直後、呆気なく反応はロストしてしまっていた。確かに、パーティで勝てなかった相手に単独で勝てるわけないよね普通。

 

「はぁ……」

 

 大きくため息を吐きながら、魔導書を操作して作業は続ける。

 実際のところ、アキさんのダンジョン以外は極振り全員が暇している状況なのだ。全部のダンジョンに、プレイヤーからの苦情が出ているのを確認したし。

 

 また暇だと口にしようとした時、ピロンと何かのメッセージを受信した。差出人はにゃしいさんで、内容は……花火作りましょう。火薬はお前持ちな! とのこと。なにそれ楽しそう。

 

「それじゃあ俺も用事が出来ましたんで、よろしくお願いしますね」

「了解しました。以上」

「早く何処かへ行ってください。以上」

 

 無表情でそんなこと言われると、微妙に傷つくような傷つかないような……まあ正直どうでもいいか。けれどこれで暫くは、暇をいい感じに潰せそうだ。

 

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