幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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第90話 高難度ダンジョン(幸運)

 最初に動いたのは、狼に跨る紫水晶の騎士だった。小規模な魔法の暴発を引き起こし、槍を突き出しつつ狼の背から飛翔したのだ。騎乗しているという利を自ら捨てるかの如き突飛な行動に、全員の行動が一瞬だけ遅れた。狼も目を丸くしている。

 セナのスキルも間に合わず、自身の回避すら間に合わない筈の後衛への急襲。残り僅かで双槍によりつららとれーちゃんが刺し貫かれんとした瞬間、赤銅色がその間に割って入った。

 

『ぐっ、コイツ……』

 

 クロスした両腕を貫かれたランのHPが、一気に4割まで減少した。ヴォルケインを纏い、付喪神型ペットのサポートも万全で、防御姿勢を取っていたのにだ。普通のボスであればあり得ないそんなダメージに、パーティが騒然とする。そして同時に、ユキという極振りに接し続けていたギルドの面々は直感した。

 

 このボスは、ステータスがかなり特化している。それこそ極振りに近いくらいに。

 

 突撃からワンテンポ遅れてセナのスキルが発動し、紫水晶の騎士のターゲットが切り替わった。そうして放たれる双槍の乱舞を、ワザとギリギリのタイミングでセナは回避していく。

 

「みんな跳んで!」

 

 そんな中、つららの忠告がボス部屋に響き渡った。それに数瞬遅れて狼の遠吠えが轟き、ボス部屋の全てが凍りついた。決してスケートリンクとは違う、凸凹としてたり氷柱が突き出たりする氷のフィールド。そんな場所を、我が意を得たりと狼が駆け出した。

 

「させない、です!」

 

 その狼の横っ腹に、連続して槍が突き込まれた。滑る場所での攻撃故最大威力ではないが、クリティカルなクリーンヒット。しかし、ボスの減ったHPは1割程度だった。

 

「硬い、です、ね」

 

 後衛2人からのバフが間に合い、藜が反撃の爪撃を回避した。舌打ちしながら下がりつつ、自身をターゲットした狼をなんとかあしらっていく。

 

「あっ、ぶな!」

 

 空中に逃げ凍結を避けたセナに向けて双槍が放たれるが、【無貌の衣】の効果で生成した触手を使い回避。ペットと融合しつつ、返す刀で炎を纏った双銃剣をボスに叩きつけた。

 

「やった……!?」

 

 その攻撃で減少したHPは3割。あり得ない減り方だが特化しているなら納得出来る、なんて思った時のことだった。セナの銀の尻尾に、数個の紫水晶の結晶が生えた。そしてそれにより、最大HPが5%減少した。

 バランサーにしていた尻尾に余計な重さが加えられ、跳び回っていたセナのバランスが崩れ氷の舞台に墜落した。そのままゴロゴロと転がりながら、氷霧の向こうから追撃してきた騎士の攻撃を回避する。

 

『ィィィィング!!』

 

 追撃がない。そのことを確認して、セナが飛び起きつつスキルを使う直前だった。よく分からない奇声を挙げた紫水晶の騎士が持つ槍を中心に、氷に閉ざされた部屋が紫水晶に閉ざされた部屋に変化した。

 

 それに伴い煌めく紫の光が舞い始め、全員に先程セナに発生した症状。状態異常【結晶寄生】が付与される。効果は最大HPの減少と余計な重量の増加。それは後衛にとってはあまり気にするような効果ではないが、前衛として接近戦を行うプレイヤーにとっては致命的だった。

 

「くっ」

「面倒、です。ビット!」

 

 2度目の結晶寄生で左腕が使い物にならなくなり、セナは防戦一方となってしまった。掌に寄生した結晶のせいで片腕で槍を振るわざるを得なくなった藜も、ビットでの攻撃に攻め手を変化させたが、構えた槍から放つ衝撃波含めイマイチ攻撃の威力が足りていない。

 

 挙げ句の果てに減ったはずの騎士のHPが、MPがゴッソリと消えた代わりに再生しているではないか。そのMPも、狼のMPが減少する代わりに回復していっている。

 

「チッ」

 

 舌打ちしながら、水晶に侵食され機能不全を起こしかけているヴォルケインを動かし、ランがガトリングガンを乱射していく。確実に直撃し減っていくボスのHPだがその減少幅は決して大きなものではなく、現状は一言ジリ貧と言える。

 

 自己再生能力を持った騎士型ボスが、防御が低い代わりに高い攻撃力と高速移動が両立しており、最大HPを減らす状態異常をばら撒く。

 攻撃力は低いが高い防御力を持った狼型ボスが、フィールド環境を変更し相手を妨害しつつ、騎士型を回復させる。

 

 極振りが作ったに相応しいいやらしいボスだが、本当にこれだけだろうか? あのユキが、一切ボスに爆破を絡めないなんてことがあるだろうか? いいやない。そんなことがある訳がない。なにせ、アレは、白昼堂々とビルを爆破したり、ビルを打ち上げて爆破したり、森を爆破して消しとばすような奴なのだ。爆破がないなんてことは、決してあり得ない。

 

 

 そんな予感を裏付けるように、お互いの相手から一旦距離をとったボスは最初の騎乗形態へと変化した。そして騎士が双槍を交差して天に掲げ、キィンという高い音が鳴った。

 反響し、増幅され、部屋の全てと共鳴していくその音が、紫水晶を輝かせていく。そしてそれが引き起こすだろうことに気づき、回避手段を持たない藜が後退する。

 

「《アイスバリア》!」

「ん」

 

 逆に回避手段を確保しているセナが吶喊する中、つららとれーちゃんが4人を取り囲むように防壁を発生させた。直後、部屋の壁や各自に寄生した結晶が全て大爆発を引き起こした。

 

 爆散

 

 崩壊

 

 煌めき

 

 ガラスが砕け散るような大音声と共に紫の破片が乱れ舞い、まるで紫色の嵐のように何もかもを削り取っていく。防壁の外にいたら、全員が致命傷を負ったことは想像に難くない。だから防壁の中で起こったことは、幾分かマシとして受け入れるしかなかった。

 

 全員に寄生していた結晶が外と同様砕け散り舞い踊り、防壁の中はまるで手榴弾でも爆発したかの如き状態へと陥った。幸いにして18歳以下のプレイヤーが過半数を占めていたためグロい描写の発生はなかったが、それでも鎧の一種であるヴォルケインを纏うラン以外のHPは危険域(レッドゾーン)へと落ちていた。

 

「ん!」

 

 れーちゃんの魔法による回復と、各自のアイテムによる回復が行われる中、耐久限界を超えた防壁がカシャンと儚く砕け散った。

 

「この瞬間を、待っていたんだ!!」

 

 紫水晶の破片がデータへ還元されていく中、セナのそんな叫びがボス部屋に響く。スキルによる3回の絶対回避の権限も使い切ったセナだが、延々と回避を続けたおかげでバフは全開。先程までとは格段に違う速度で、7人が紫水晶の騎士へ向けて突撃した。

 

「舞姫・炎!」

 

 そうして放たれる、セナの最大火力の攻撃。直前に触手で狼の動きを止められ、大技直後の硬直でロクに回避行動を取れない紫水晶の騎士には、それを回避する方法は存在しなかった。直撃を受け、凄まじい速さで騎士のHPは減少していく。その勢いはとどまるところを知らず、遂に0へ辿り着きその身体を砕けさせた。

 

 してやったりと笑みを浮かべるセナとは対照的に、わふぅと狼は悲しげに鳴いた。それに合わせて再び部屋の凍結が始まるが……大切な相棒を欠いたボスに、彼女らを止めることは出来なかった。

 

 

 congratulations!の文字と勝利のファンファーレが鳴り響く中、経験値やD、ドロップ品の表示が大量に流れていく。

 

「いえーい!」

 

 ハイタッチして喜ぶ中、入り口とは反対側の何もなかったはずの壁に、豪奢な扉が出現した。けれどその扉は開くことなく、その口を閉ざしている。代わりに扉の前には聖書台のようなものが存在しており、文字を入力するためのキーボードが浮かび上がっていた。

 それは五十音表そのままの並びをしており、それと五十音表からは離れた場所に、空白・濁点・半濁点のボタンが存在していた。

 

 事前情報通りの光景に、全員が武器を仕舞い入力台に近づいていく。そしてと一定の距離まで近づいた時、入力台との間に文字群が出現した。

 

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        《ヒント》

 

       てとてをつなぎ

       よぞらをみあげ

       ながれるほしは

       たてからよこへ

       てんとてんとが

       ことばをつむぎ

       よつえのまなこ

       まことをうつす

 

 ※第6層への扉はパスワード式です。これより先はモンスターの出現はありませんので、上記のヒントを元にひらがな7文字の答えを入力台で入力してください。

 ==============================

 

 全員が文字を読みきった辺りの時間で、ガコンという音が鳴り右横の壁に通路が出現した。

 

「それじゃあ行こっか!」

 

 薄暗いその通路に向けて、セナが先頭に立って進んでいく。幸いにして通路はそこまで長くはなく、すぐに小さな円形の小部屋に出た。

 

「ん!」

「どうした? れー」

「ん!」

 

 その部屋の状態に初めに気がついたのは、ランに肩車してもらっていたれーちゃんだった。しきりにれーちゃんが天井を指差すので見上げれば、そこには満天の星空が広がっていた。

 

「また、凄い作り込みだよね……」

「こんなの、作ってたから、前半が、コピペに、なってたり?」

「ありえるわね……」

「ん」

「そうだな……入口のレリーフといい、馬鹿なんじゃないか?」

 

 自然の夜空と何ら変わりないような、けれど実際には存在しない綺麗だがその筋の人が見れば気持ちの悪い空。そこには、一際大きく11個の星が光り輝いていた。

 部屋の中心には、ご丁寧に足の向きが描かれたパネルが存在しており、そこから見上げた星の並びはこのような感じだった。

 

 ・・  ・・・

 ・   ・

・・  ・・

 

 それは有名などの星座にも該当しない、奇妙な星辰だった。

 

「誰かわかる?」

 

 セナが問いかけるが、全員が首を横に振った。未だ誰も答えが分かっていない謎は伊達ではなかった。誰にも分からないまま、とりあえずスクリーンショットだけは確保して次の部屋へと進んでいく。

 

 少ししてたどり着いた部屋も、1つ前の部屋と全く同じ構造をしていた。ただし、星の並びだけが違う。

 

 ・・  ・ ・

 ・・  ・・・

・・  ・・

 

 誰もが疑問に思いながら、次の部屋へと進んでいく。そこもまた、星の並びだけが違っていた。

 

 ・・  ・・

 ・ ・ ・

・・  ・・

 

 次も、

 

 ・・・ ・ ・

 ・   ・・・

・・  ・・

 

 その次も、

 

 ・・・ ・・

 ・   ・・

・・  ・・

 

 次の次も、

 

 ・・  ・ ・

 ・・  ・・・

・・  ・・

 

 そのまた次も、

 

 ・・  ・・・

 ・ ・ ・ ・

・・  ・・

 

 さらに次も、

 

 ・・  ・・

 ・・  ・・・

・・  ・・

 

 更にまた先も、

 

 ・・  ・・

 ・ ・ ・・

・・  ・・

 

 その次も、

 

 ・・・ ・ ・

 ・   ・・・

・・  ・・

 

 次の次も、

 

 ・・  ・・

 ・・  ・

・・  ・・

 

 次の次の次も、

 

 ・・  ・・・

 ・ ・ ・・・

・・  ・・

 

 次の次の次の次も、

 

 ・・・ ・ ・

 ・   ・・・

・・  ・・

 

 計13の全く同じ構造で、夜空だけの違う部屋が続き、最初のボス部屋へと戻ってきた。ボス討伐までは快調だった全員の顔は、当然のように曇っていた。何せ延々と同じような部屋を巡らされた挙句、何も分からないのだ。

 

「なにか分かった人ーー!」

 

 大の字になって転がりセナが声を上げるが、返事は一切ない。嫌な沈黙が続くこと10分、セナがガバリと起き上がって叫んだ。

 

「もうやだぁ……お家帰るぅ……」

「さんせーい」

 

 弱々しいそんな返事が上がり、順調だったはずの探索は中断となったのだった。

 




ユキ : ログアウト中

-追記-
文章整形で「点」が「三点リーダ」になってると多分解けないです
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