幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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第91話 高難度ダンジョン(幸運)②

 ビルを花火にして遊んでいたことでレベリングなどが出来ないストレスを発散して、ログアウトしてから数時間。手抜き晩御飯を作っていると、珍しく携帯に着信があった。かけてきたのは沙織のようで、珍しいなと思いつつもスピーカーモードにして電話を取った。

 

「もしもし?」

『とーくんの変態』

「えぇ……?」

 

 開口一番告げられたそんな言葉に、思わず困惑の声が出た。なんか最近、沙織にこう言わせるほどの酷いことをしただろうか? 花火ルがバレた? いや、でもあれは沙織たちはダンジョンに潜ってた筈だし……どうするべきか悩んでいると、こうなった原因はすぐに沙織の口から語られた。

 

『なにあのボスと暗号! あんなの検索エンジン使えない状態で解けって、無茶も甚だしいんだけど!?』

「どうどう」

 

 今にも押し掛けてきそうな語調の沙織を宥めつつ、怒りように納得する。きっと点字のアレでも引き当てたのだろう。シャークトゥルフ戦で学んだことを生かすべく練習中の点字を使ったあれは、他のクロスワードや数独と違って完全にオンライン前提のものだったのだ。

 

『エレベーターで点字見て、そこからスクリーンショット見て、取り敢えず点字だってことは分かったけどさぁ……』

「ごめんごめん。アレはこっちもちょっと想定外でね……元々オンライン前提で考えてたのに、提出していざ話を聞いてみれば検索エンジン使用不可だとか言われて」

 

 あれは本当に困った。だからどうにかしようと似たような問題を抱えていたザイルさんと一緒に掛け合ったけど、『やめてくれ極振り、大幅な仕様変更は私に効く。ほんと、マジでやめてお願いだから……死んじゃうから……』との返信を貰って、ヒントを改造するだけしか出来なかった裏話があったりする。

 

「因みに答えはわかった?」

『ううん。数字までは分かったけど。だから、ちょっとヒント教えてくれないかなーって』

「そこまで行けば多分大丈夫だし、攻略サイト以上のことは言えないかなぁ」

 

 一応口止めはされてるのだ。プレイヤー間で判明している情報以上のことを、俺は口にすることができない。誰にでも分かるようなというか、かなり分かりやすく元のヒントから改変もしてるんだし。

 

『むぅ……』

「そう言われても……それに、出題者から答え聞くとか、ちょっと謎解きとしてはアレじゃない?」

『そうだけどさー』

 

 ポスポスと電話越しに聞こえる音から、足をバタバタさせているのが用意に想像することができた。でもまあ、ここで諦められるのもなんか寂しいし……

 

「じゃあ、問題とは関係ないけど1つだけ」

『なに!』

 

 まあこれくらいなら、攻略サイトに乗ってる情報となんら変わりないしモチベーションも上がってくれるかもしれない。そんな情報を選別して口にした。

 

「次の階層は、噂通りの場所だから結構美味しいと思うよ。それに、面倒な仕掛けはこれからないし、全員で力を合わせれば多分ボス部屋までは来れる筈だし」

 

 面倒な仕掛けはないが、罠がないとは一言も言ってないから問題ない。それにあの攻略方法を見るに、【すてら☆あーく】の足止めは結構厳しいんじゃないかと思うのだ。容量喰いの【死界】だって、藜さんの装備が……というか、装備の効果があれば脅威度は半分以下になる。

 

「だから、1番のりを楽しみに待ってるよ」

 

 実際のところ、今日確認した限りでの最高到達階層はまだ7層である為、最初に俺のところまで到達するのが【すてら☆あーく】の可能性は極めて高いのだ。だって他の奴ら、たかがレアモンスター程度に負けてるし。俺も勝てないとか言っちゃいけない。

 

『分かった!』

「まだ誰も来てないからボーナス関連は全部残ってるし、俺に勝てたら総取りかもね」

『やってやるぞー!』

 

 そんな元気な返事と笑い声が聞こえるから、発破はかけられたとみて良さそうだ。自分のギルドと戦ってどうなるかというのは分からないが、切り札を切れば良い勝負にはなる筈だ。刀、銃、そのどっちもが知られてるけど、最後のアレだけはまだ誰も知らないのだから。

 

 それじゃあ、幼馴染のよしみとして最後に1つ忠告しておこう。

 

「ボスは倒したらしいから、次はちゃんと5層スタートできるだろうけど……1つだけ忠告」

『なに?』

「ダンジョン入口の立札、ちゃんと見たほうが良いよ」

 

 あそこにはちゃんと、細やかな攻略法も書いてあるのだ。具体的には、『天候対策必須』と『ボス戦は銃火器非推奨』の2文が。それが出来ていなければ、そもそもボス部屋まで辿り着けないし来ても圧勝する自信がある。

 

『そう? よく分かんないけど分かった!』

「はいはい、それじゃあね」

『おやすみー』

「おやすみ」

 

 そうして通話が終わり、茹でていた冷やし中華の麺をザルにあけつつ、はぁ……と大きなため息を吐いた。

 

「ボスのモチーフ、バレなくて良かった……」

 

 モチーフが2人だとバレたら、正直また街を爆破でもしないと羞恥心が抑えられない。というかそもそも、あのボス部屋自体答えも含めて【すてら☆あーく】関係の内容が多かったからなぁ……

 

「よっと」

 

 そんなことを思いながら、麺をしっかりと締め、適当に具材を盛り付け通話の切れている携帯をポッケに突っ込んだ。

 

「さて、晩飯晩飯」

 

 沙織と話してたせいか微妙にぶり返した寂しさを振り払うように、テレビの音だけが虚しく響くリビングに俺は帰っていくのだった。

 

 

『ボスのモチーフ、バレなくて良かった……』

 

 電話を切る直前大きな音に紛れて聞こえたその声に、ベッドの上でジタバタしていた沙織の動きは止まっていた。それもその筈、紫水晶の騎士と超近距離で戦い続けていたセナには心当たりがあったのだ。

 

 全身を覆う鎧で分かり難かったが、紫水晶の騎士は実際の性別は兎も角女性型。そして槍を持ち、結晶を感染させるオールレンジ攻撃を持ち、防御力は低く高機動。思えば、背丈だって似ている。つまり……

 

「藜ちゃん?」

 

 紫水晶の騎士は、極めて藜に似ていると言わざるを得ない。

 であれば、白銀の狼は誰がモチーフなのか。防御役で、回復ができ、機動力も高く、信頼されている。そこから導き出される答えは、遺憾ながら1つしかない。幼馴染としての直感も交わり、出た答えというのは──

 

「……私?」

 

 その答えに辿り着いた瞬間、沙織の頬が若干朱に染まり口元がにやけた。何だかんだそっけない対応をされることが多いが、実はちゃんと意識されてる事実が本人のいない場所で勝手に暴かれた。自分だけじゃないというのはちょっと不満だがそれはそれ。脈なしではないのだ、押せばいける。

 

「えへへぇ……」

 

 枕に顔を埋め、恥ずかしさを隠すように足をジタバタさせる。

 一度そう考えてしまえば、ボス部屋の関連性は連想ゲームのように簡単に繋がっていった。狼が凍らせてくるのはつららが元、MPのシェアは多分れーちゃんが元、ランさんは紫水晶の騎士が行なっていたスラスターを吹かすような移動方法だろうか。視点が変わればなんと単純なことか。

 

「なら、もしかして!」

 

 そこまで自ギルドが関係しているのであれば、暗号にも何か関係性があるのかもしれない。そう思うのは当然だった。

 

「えーと、確かこれがこうで……」

 

 謎の星座のスクリーンショットを点字に当てはめ訳していくと、その数字は13・20・51・30・32・20・54・28・52・30・21・57・30の計13個。正確には1と3、2と0といった感じだが、この並びで正解なのだろうということは半ば確信している。

 

 相変わらずなにも分からないが、ふと頭の中に入力キーボードが思い浮かんできた。確かあれは五十音表そのままの配列だった。それを念頭において改めて数字を見ると、あることに気がついた。並ぶ13の数字は、一の位が0〜8まであるにも関わらず、十の位は1〜5までしかない。

 そしてヒントにあった『ながれるほしはたてからよこへ』の文。カチリと、頭の中で歯車が噛み合った様な音がした。

 

「これをこうして……」

 

 五十音表の『あ』を1として、あいうえおの順に1〜5の数字を、あかさたな〜の順に1〜10の数字を割り振る。そして数字に当てはまる部分を読むと……

 

「さ・お・く・と・し・い?」

 

 全く意味のわからない文字列が出現した。しかし、文字が出現したのだ。方法は間違っていない。そこで改めてヒントを見ると、変に強調されたみあげの文字が目に入る。

 

「みあげ……とーくんが考えそうなこと……」

 

 ぐぬぬと唸りながら天井を見上げ、ユキが行なっていたビルを打ち上げ花火にした打ち上げ花火ルの幻影を垣間見つつ、その衝撃映像のお陰か何かが頭の中で弾けた。

 

「みあげ……上を見る……繰り上げ?」

 

 サムズアップするユキの幻影が自爆とともに消え去りお星様となる。そんな中、沙織は点字から訳した数字を1つ繰り上げて、先程と同じように五十音表に当てはめていく。

 そうすると数字は、14・21・52・31・33・21・55・29・53・31・22・58・31となり、対応する文字は……

 

「た・い・こ・う・す・い・の・り・そ・う・き・よ・う?」

 

 文としては成立しているが、なにを指し示しているのかよく分からないものが出現した。けれど、後半の文字は辛うじて読むことができる。

 

「たいこうすいの理想郷……理想郷……たいこうすいだし、大洪水?」

 

 即ち『大洪水の理想郷』。それに加え、よつえのまなこやその他のヒントを踏まえて考えれば、出てくる答えは2通りで、同じ文字数の同じ物を指し示す。『のあのはこぶね(ノアの方舟)』か『のあず あーく(Noah's Ark)』、答えはこのどちらか又は両方だ。ギルド名である【すてら☆あーく】は雑に訳せば星の方舟、謎解きの答えにもギルドが思いっきり関わっていたのだ!!

 

「いやったぁ!」

 

 ネットを駆使して暴いた暗号の答えは、どこか胸の内に清々しい達成感を与えてくれた。けれど、これは誰かに態々教えたくないと思える。けれどそれでは答えの確認が出来ない。なら、答えがあるなら出題者に叩きつけてしまえばいい。

 そうと決まれば話は早い。投げ飛ばしそうだったスマートフォンを引き戻し、リダイヤルしてユキへの電話を繋げる。

 

「もしもしとーくん、なぞなぞの答えわかったよ!」

『うっそ、こんな短時間で? さっき俺何か言っちゃった……?』

「ううん、ちょっととーくんと話してたら閃いたの!」

 

 心配そうなユキにそう声をかけ、言葉を一旦打ち切って乱れていた息を整える。

 

『答えは?』

「ノアの箱舟か、空白も一文字ならNoah's Ark!」

『おお、本当に正解してる』

「やった!」

 

 どちらとまでは明言していないが、正答であることが分かり沙織が小さくガッツポーズを決める。苦労して導き出した答えが当たっていた、それ程嬉しいことはない。逆に外れていれば紙を破り捨てたくなること請け合いだ。

 

「じゃあさじゃあさ、当てられたから今度一緒にお出掛けしようよとーくん!」

『いや、暗号解いただけだし……うん、まあいっか。特に何か予定があるわけでもないし』

 

 渋々というか、まあ沙織とならいいかといった感じの雰囲気での返事に、再び小さなガッツポーズを沙織は決める。恋する乙女は貪欲なのだ。墓地からカードを5枚回収して2枚ドローするくらい。

 

「じゃあ今度の日曜……はまだイベント期間だったっけ」

『だね。一応いなくても大丈夫らしいけど、戦ってみたいし籠るかな』

「じゃあ、その次の週末で!」

『了解』

 

 そして、ナチュラルにデートの約束をしながら夜は更けていくのだった。

 




ユキの電話帳
・父
・母
・祖母(母方)
・祖父(母方)
・祖母(父方)
・祖父(父方)
・沙織
・沙織母
・藜

           以上!!
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