幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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第97話 高難度ボス戦(幸運)

 無の境地で突っ立っていたボス部屋。締め切られた扉の向こう側から、盛大なクラッシュ音が聞こえた。多分、さっきまで凄まじい勢いで登ってきていたセナ達だろう。

 

「やっとだよ、ボスとして戦えるの……」

 

 そうボヤきつつ、ボーってしていたせいで鈍っていた身体をほぐすべく準備運動を開始する。バキバキと身体を鳴らしながら、セナ達が来る前までの散々な結果を思い出す。

 

 9層の【死界】は良い。あそこをそうやすやすと突破させる気は無かったし、他の極振りに倣ってある程度俺のところまで来れるプレイヤーを選別するつもりだった。

 8層の【研究所】もまだ良い。あそこはちょっと、朧を活躍させるべくかなり頑張った階層だから。

 

 だけどなんだ、他の階層での挑戦者の散々な結果は。主に6層から7層に進む階段。ちゃんと金は置いてけって言ってるのに、何故かそこそこの割合で持ったまま進む人がいるのだ。それでレアモンスターに圧殺されて、クレーム付けてくるってこの、この……

 

 まあいいや、理解しようとしない人のことは忘れよう。

 

 まあ一部そんなのもいるが、攻略サイトに色々情報が纏められて5層以降に進む人が増えてきて、俺としても満足ではある。というかぶっちゃけ極振りサイドとしては、攻略してもらわないと色々とアイテム貰えないし。だから本音としては、8〜9層で死にまくってほしい。

 

 そんなことを思いつつ準備運動を終えると、タイミングよく扉が開き始めた。そうして入ってくるであろうセナたちを待とうとし──

 

「っと、危ない危ない」

 

 突然の狙撃を障壁で防御した。ゲーム内でという前置詞がつくけど、最近拳銃の弾くらいなら余裕で見切れる様になってきて困る。まあ、どこぞのゲームみたいなバレットラインがない以上、自力で見切らないと死ぬだけなのだが。

 

「一応こっちにも、ボス戦前に説明する必要がある話があるんだから、あんまりこういうのはやめて欲しいな」

「いやぁ、真顔で防いどいて言うことじゃないよ、ユキくん」

 

 そんなことを言いながら、セナを先頭によく知る3人が扉から現れた。セナと、藜さんと、れーちゃんか。初戦には十分すぎる相手だ。

 

「それで? ボス戦前にする説明って?」

 

 油断なく武装を構えるみんなを見つつ、頷き運営から説明しろと言われていたことを指を立てながら説明する。

 

「1つ。まず10層到達おめでとう。もしここで負けても、次からは10層をスタート地点に設定できるから頑張れ」

 

 露骨にムッとされたけど気にしない。

 

「2つ。ボスは一戦ごとにステータスとアイテムがリセットされるから、一戦で倒すよう頑張って」

 

 更にムッとされたけど、運営側の仕様なんだから俺は悪くない。

 

「3つ。通常のボス戦と同様、挑戦者側が使用したアイテムは消えるけど、装備の耐久値は戦闘後全回復するから安心して壊して欲しい」

 

 そうでもなきゃ、俺はともかくアキさんやにゃしいさんを始めとした廃火力勢は相手にできない。あの人たちの攻撃を食らったら、基本1発で装備全壊確実である。

 

「4つ。ボス部屋にいるボスは、この話が終わってから5カウントのあと開始されるバトルじゃないと倒せない。それ以外のダンジョン内なら倒せるけど、基本的には翡翠さんくらいだと思う」

「えぇ……出歩いてるんだ……」

「掲示板に色々書いてあるから、後で見てみると良いと思うよ」

 

 ちょくちょくエゴサーチみたいなことをしてみている結果、1番面白いダンジョン攻略スレは翡翠さんの塔だった。食べてもらって幸せとか、消化されたいとか、自分の味は○○だったとか、俺はスープになりたいとか、正気を失った言葉が延々と続く有様には恐怖を覚える。それでいて質問すると恐ろしい精度の答えが返ってくるからまた怖い。

 

 まあそれはそれとして。

 

 いい加減、待たせるのはやめてバトルを始めるべきだろう。俺だって戦いたいし、向こうもその気で来てるのだから悪い。

 

「そして最後に。もし他の極振りの人たちに挑むとしたらの話だけど……俺は、極振りの中じゃ最弱だから。相性とかはあるだろうけど」

 

 そう言って俺は、両手を広げコートを翻す。

 その開始の合図に従って双方の間に5と大きな数字が現れ、カウントを始める。それに合わせて俺も簡易ポーチを全開にし、いつでも爆竹を投げつけられるように準備し──

 

「上等!」

 

 セナのそんな掛け声と共に、戦闘が始まった。

 

 

 頭上に掲げられていたカウントがゼロになったと同時に、私と藜ちゃんは地を勢いよく蹴った。ユキくんのAglの数値は、最後に見たときには10。対して私も藜ちゃんも数値は1200を超えている。単純計算で120倍の速さだ。これならば、いくらユキくんであろうとどうとでも出来る。そう、思った瞬間だった。

 

「ッ!?」

 

 私の行く先に、狙い澄ましたように爆弾が転がり込んで来た。それを回避した先にも、爆竹は飛来し、それをさらに回避した先が突然爆発した。

 

「きゃっ」

 

 その衝撃に吹き飛ばされ、空中で体勢を整えながらHPゲージを見ると……満タンで3500を超えていたHPが一気に2000台にまで落ちていた。

 

「うっそ」

 

 壁に足をつけ衝撃を吸収していると、ユキくんの背後から藜ちゃんが飛び込んでいくのが見えた。けれどその突撃は、数瞬だけ出現した障壁が完璧に防御してしまう。更にはカウンターとして8個の爆竹が投げつけられ、藜ちゃんは大きく後退することになる。

 更にれーちゃんの方を見れば、魔法を使おうとする度に文字通り目の前で炎や氷、雷や風が弾けて上手く魔法を行使することができないようだ。

 

 このメンバーの中で確実に最遅であるのにこの処理速度、正直化け物みたいに感じてしまう。同時にこんな相手が今まで味方にいてくれたことに感謝しつつ、ユキくんよりも強いという極振りに俄然興味が湧いて来た。

 

「来て、コン!」

「ニクス!」

 

 だからこそ、最初からもう出し惜しみは無しだ。

 藜ちゃんと顔を見合わせて、互いのペットを呼び出す。そのまま私は憑依を、藜ちゃんは合体を行い能力を上昇。

 

「合わせて!」

「はい!」

 

 再度の突撃を敢行した。

 まだ速度の足らない私は3体の分身を引き連れて。藜ちゃんは、今まで見たこともない、6つのビットを浮かせペットが憑依した槍も浮かせた徒手空拳の状態でユキくんに向け疾る。

 

「甘い」

 

 次の瞬間、私はいつのまにか地面に転がっていた。分身も同様で、何をされたのかが分からないままゴロゴロと地面を転がっていく。そんな中藜ちゃんは飛行することで転倒を免れたようで、殆ど棒立ちに近いユキくんにあと少しで触れられる距離まで接近に成功していた。

 

「《チャンバー》!」

 

 そしてその一言と共に、周囲に浮かぶ槍が射出された。炭酸飲料のペットボトルを開けた音を何倍にもした様な音が響き、ユキくんに向けて時間差で6槍が飛ぶ。

 

「《障壁》《減退》」

 

 しかし、それは瞬間的に出現した5枚の障壁と1枚の紋章で、呆気なく全てが止められた。確か紋章の展開時間は0.3秒だったっけ。頭のおかしい絶技だ、ユキくんは人間を辞めてるんじゃないかとさえ思える。

 

「まだ、です!」

 

 そこで捻りを入れた最後の槍が飛び、今度は10枚の障壁がそれを止め……先端から衝撃波が放たれる。それと同時に舞い散る羽根のエフェクトが、一斉にユキくんに降りかかる。

 

「危なっ」

 

 けれど、そう呟いたユキくんは何個かの爆弾を足元で爆破させ、なんとその場を無傷で乗り越えた。やっぱり私の幼馴染は人間辞めてしまったようだ。

 

「でも」

 

 何もさせないように集中力をれーちゃんに割き、目の前の藜ちゃんの猛攻にも意識を割いて防御している。そんな今なら、私だってきっといけるはず。そう思って分身と自分の計8丁の銃剣で、円形に走りながらユキくんに狙いを定める。

 

「だめ、です!」

 

 巧みに槍を繰り、自分の四肢でユキくんを打撃せんと戦っていた藜ちゃんがそう忠告を私に飛ばした。しかし、もう遅い。引き金にかけた指は引かれ、トリガーは引き絞られる。そして──私達が持っていた銃剣が、全て同時に暴発した。

 

「いった!」

 

 実際は痛くないのだが、ついそんな言葉を口走り愛銃を手放してしまう。ユキくんのニヤついた顔が目に入り、イラッとしながらもダンジョン入口の看板に書いてあったことを思い出す。

 

 非推奨武器 : 銃火器

 

 なるほど確かにその通りだし、この分だとランさんはもしかしたら役立たずになってしまう未来が見えた。銃を使おうとしたら絶対に暴発させるとか、どんな集中力と神経があれば出来るのか。

 

「それなら!」

 

 1人増えた分身と同時に、コンの力を使って火球を作り出す。1人3つの計18個、バスケットボール程の火球をユキくんに向かって撃ち放った。

 

「まだまだ」

 

 爆竹を大量にばら撒きながら、青い色の付いた障壁が火球を迎え撃った。ジュッとまるで水に激突したような音を立て、段々と火球は萎んで小さくなっていく。

 

「《加速》」

 

 そのことに目を見開いた瞬間、分身と私本体。そしてれーちゃんと藜ちゃんに向けて、それぞれ10個の爆弾が超高速で投げつけられた。

 

「《空蝉》!」

「くッ」

 

 分身体の分までは間に合わなかったが、私本体はスキルで回避。藜ちゃんも、ビットと槍をクロスして爆破をある程度防いでいた。けれど、視界の端に映っていたれーちゃんのHPゲージが、一気に0に落ちる。

 即座に復活したが、直後、起き攻めのように飛ばされていた爆弾が再度そのHPゲージを爆破した。これでもう、残るは私と藜ちゃんの2人だけ。

 

「固定ダメージ6000を突破してくるとか……えぇ……」

 

 困惑しきったユキくんの声に、こっちがちょっと理解が追いつかなくなる。どーゆーことだー! 固定ダメージ6000ってー!

 内心フシャーと毛を逆立てるイメージでユキくんを睨みつけていると、こちらの内心を見透かしたかのようにユキくんは語り始めた。

 

「ゲーム内で本職の花火師の人に知り合ってね。爆竹の威力が固定ダメージ200まで増加したんだよ。それがこの腕装備で50%強化されて300に。爆破卿の称号効果で600に。クリーンヒットしないと最大ダメはでないけど、それでも俺には十分過ぎる火力だよ」

 

 そう言って笑うユキくんの両手には、8つの爆弾が火がついた状態で握られている。確かに、私の通常攻撃は4桁ダメージだけど、そんな威力の固定ダメはちょっと壊れてると思う。無制限に分身してる私が言えたもんじゃないけど。

 

「まあ、普通に避けられるから安心でしょ」

 

 なんてことを言いながら、延々とユキくんが爆弾を投げつけ始めた。至る所で上がる爆音、何故かカラフルになっている爆炎、サーカス染みた不思議空間の中、HPが3割を切った藜ちゃんが飛び出した。

 

「頼み、ます!」

 

 そして再度の超接近戦を挑みながら……一瞬だけこっちに目を向けた。何をして欲しいのか、短い付き合いだがそれはよく分かった。

 

「はいはい!」

 

 大声で返事して、火球を乱射しながら分身を全てステルス状態で突撃させる。更に装備の触手でユキくんの周囲に足場を生み出し、全力で跳ぶ。

 前後上下左右斜め、立体的な空間をステルス状態のまま縦横無尽に動き回る分身。そこに藜ちゃんが加わり、私も加わり、直立不動だったユキくんを何とか動かすことに成功する。そうして集中が乱れてしまえばきっと……

 

「やっぱり、これくらいならまだ余裕かな」

 

 そんな淡い希望を打ち砕くように、大爆発が起きた。全てを吹き飛ばすそれは無慈悲にHPを削り飛ばし、私のHPも1割を下回った。HPが減少していた藜ちゃんは、もろに攻撃を受けことでHPを全損し……

 

「取り、ました!」

「こふっ」

 

 ペットのニクスの効果で復活し、その腕をユキくんの胸に突き立てていた。一瞬で0になるユキくんのHP、これで私達の勝──

 

「なんてね。残念ながら、あと12回は復活するんだ」

 

 そんなユキくんの言葉とともに、再度部屋が大爆発を起こし、ユキくんのHPごと私達を吹き飛ばした。

 

 




爆発祭
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