幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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数日書いてなかったから筆が、進まぬ……


第99話 高難度ボス戦(幸運)③

 即座に復活しながら衝撃波の来た方向を探知、上方からと判断して空を見上げ……若干の後悔をした。中天に燦々と輝く太陽を背に、6本の銃剣ビットと槍を携え藜さんが急降下して来る。どこか天使的な雰囲気を感じる藜さんの攻撃は、逆光でかなり見づらい為普通であれば成功するであろう。普通であれば。

 

「やぁっ!!」

「《被害を逸らす》」

 

 迫り来る6連撃と3連撃に対し手をピンと突き出し、3回殺されたことで解放された1つの魔法を発動する。《被害を逸らす》、それは特定のクトゥルフ系の魔導書を装備している者のみ発動可能な魔法。その効果は、非常に簡単に言えば『相応のMPを支払って攻撃を逸らして無力化する』というもの。

 

「残念」

 

 極振りの攻撃であれば全MPを支払っても死ぬけれど、普通のプレイヤー相手であればその効果は十全に発揮される。連撃が悉く逸れ地面に突き刺さり、藜さん本人も降下の勢いをそのままに逸らされていく。

 同時、9個になった魔導書を総動員して陣を描きもう1つの魔法を発動させた。

 

「《ナーク=ティトの障壁》」

 

 システムの都合上100mから10mに変わっているそれを、れーちゃんに対して発動した。これを簡単に説明すれば、『MPとSANを消費して発動できる非常に頑丈な結界。壊すには相当な力が必要』だろうか。

 視界の端のSAN値が8減少してMPもかなり減ったけど、これで暫く藜さんだけに集中できる。あとUPOでは、本人が使う呪文の代償として減った場合一時的発狂はしないらしい。

 

「やぁっ!」

 

 7本の槍をそれぞれ5枚の障壁で逸らしつつ、突撃して来た藜さんも加速・減退・障壁の3種の紋章で逸らして通過させる。その間に1冊魔導書を手に取って再び投擲。今度は部屋が猛吹雪に包まれた。

 残機が4まで下がらないと【新月】も【偃月】も解放されないから瞬間火力はちょっと不足気味だけど、それでも爆弾があるからほぼ問題ない。

 

「そーれっ!」

 

 迷いなく飛来してきたビットを障壁で止めつつ、藜さんの反応がある地点に20個ほどの爆弾を投擲する。それらは加速の紋章に乗って一直線に飛んでいくものと、幸運にも吹雪に乗って弧を描く軌道の爆弾に分かれ、逃げ場を塞いで爆破を引き起こす。

 今まで挑んで来たパーティの奴らならこれで終わりだ。けれど今戦っている相手は違う。自画自賛だがトップギルドの、それもメインアタッカーだ。

 

「緩い、です!」

 

 当然、この程度で終わる訳がない。さらに追加で言うのであれば、ビットというある種異常な装備を使いこなせる程【空間認識能力】のスキルを使えているのだ。むしろこれ位で倒れたら、それこそ興醒めである。

 3次元的なジグザグ軌道で爆風を全て回避して行く藜さんに若干の感動すら覚えつつ、ならばと爆弾を倍プッシュする。これで戦闘開始から使った爆弾は既に2スタック。これで残る爆弾……正確にはフィリピン爆竹改の数は8スタック。他の種類のはまだまだあるが、出来れば使い切る前に決着をつけたいところだ。

 

「なら、これで」

 

 そう言って俺は、左腰の簡易ポーチを取り外して爆弾と共に投擲した。当然それは躱されたが、小さな爆発と共にポーチが耐久限界で消滅する。

 

「なっ!?」

 

 そして、容れ物が壊れたことにより、正常なシステムの動作に従い中身が溢れ出た。

 吹雪の視界を埋め尽くす茶色。片方だけなので4スタックの、数に直すと396個の爆弾が爆発するように出現し……最初の爆弾の残り火で着火する。

 

 連鎖、連鎖、連鎖に連鎖が繋がりその全てが着火し、吹雪ごと何もかもを吹き飛ばす爆風として顕現する。自分が死ぬガラスの砕ける音を耳にしながらその光景を見て、満足しつつ蘇生する。

 

「残り残機9。結果はこんな感じか」

 

 蘇生後を狙って突き出された槍を、障壁で止めながらそう呟いた。今回の藜さんはどうやってか蘇生なしに生き残ったみたいだけど、1回蘇ることを知っていれば警戒は怠ったりしない。そして知っていれば対処出来る。

 生き残ったのは多分、今燃え尽きたように消えたお札が関係していると見た。一定以下の被ダメを無力化する系の使い捨てアイテムだったりして。

 

「油断、ですね」

 

 舞い降りてくるダメージ判定のある羽根と突き出され続ける槍、その2つを防ぎながら、考え事をしつつ軽く儀式魔法の為のステップを踏んでると、笑いながら藜さんがそんなことを言ってきた。

 確かに考えすぎだと反省していると、周りにビットの反応が出現した。その内3つは壊れかけのようで、目の前の攻撃と羽根よりは危険度が低いと判定する。無論それでも死ぬのでちゃんと防壁は振り分けて──防壁を突き抜けてきたビットに貫かれて死亡した。

 

「なるほど、そういう」

 

 障壁はちゃんと相殺できる分は展開していたしあり得ない。そう思い蘇生までの僅かな時間で確認すれば、至って簡単な仕掛けで障壁は突破されたことが分かった。

 ビットを壊れかけのビットで叩いて加速させたのだ。かっとばせホームラン的な感じで。それで2倍くらいまで強化して突き破ったらしい。

 

「でも、それが分かれば」

 

 倍の障壁で止められる。そう思って展開した障壁ごと貫かれた。なんというか、回転していたような気がする。

 

「私の攻撃のダメージで、止められる、なら、普段の、倍の速度で、2倍! 普段かけない回転を、かけることで、さらに倍!」

 

 復活直後、速度がさらに上がったビットに貫かれて死亡した。

 

「そして、銃撃で、さらに加速して倍、です!」

 

 そう、それはまさかのウォーズマン理論だった。

 

 最後のビットが砕け散り、打ち出された3つもボロボロになって使えなくなった。けれどその代わりに残機を3つも持っていくなんて、中々侮れない。まあ、折角だからって事で残機を減らした面もあるけど。

 

「残り残機6、か」

 

 とりあえず周囲一帯を爆破して、藜さんに距離を取らせる。よし、これで必殺技その2を使う準備が整った。残り残機6で解放されるのはペット、そして現時点でもう制限されていた障壁の枚数は限界まで使用できるようになっている。

 

「来て、朧」

『了』

 

 蜂の巣状の紋章を突き破り、呼び掛けに答えて朧が出現した。8層に蜂の分隊を残し本体だけで現れた朧は、久し振りに呼んだからか嬉しそうに周りを旋回し始めた。

 

「今更、増えたところで!」

「折角だから、日の目を見なくなるかもしれない必殺技を、使おうと思いましてね!」

 

 藜さんを障壁で誘導しつつ加速して吹き飛ばし、体勢を取り戻すまでの間に朧を左腕に留める。そしてポーズを決めて、一言。

 

「変、身!」

『HENSHIN』

 

 そうして、装備を切り替える。蜂の巣状の紋章を作り出しつつ、今までの装備から装備をあの呪い装備へ変身する。全部変えると【死界】が出てしまうからそれは除いている。

 

「キャストオフ」

『Cast off』

 

 更に朧に向きを変えてもらって、軽く爆風でカッコつけながら紋章を吹き飛ばして演出する。今となっては遥か昔のライダーだけど、なんだかんだ結構好きなのだ。だから、朧と練習して完成させたこれは、紛れもなく俺の必殺技である。

 

「くっ」

 

 空中で障壁の叩きつけを受け、僅かに藜さんの体勢が乱れた。これでもうワンアクション時間が稼げる。本当は最初から全部省略できるけど、そこは様式美ということで。

 

『Change WASP』

 

 しかもザビーも嫌いじゃないし、ホッパー系も好きだからどう転んでも役得である。朧がいなくなると考えると、それはそれで寂しいが。そんなことを言いながら、分身した朧が四肢と背中にしがみついたのを感じた。これで、準備は完全に整った。

 

「クロックアップ」

『Clock UP!』

 

 そして、世界は加速する。クロックアップしたライダーフォームは、人間を遥かに超えた速度で活動出来るのだ(大嘘)以下は、吹き飛ばされた藜が壁に激突するまでの時間での出来事である(本当)

 

 まあ実際は自分に200枚分の《加速》を使いつつ、相手に100枚分の《減退》を使う事でなんとかクロックアップ(偽)しているのだが。しかも自分ではこの速度を制御できないから、四肢と背中の朧に全部動きと攻撃を任せる残念仕様だったりする。

 

 そんなことを考えているうちに、ゆっくりと動く藜さんに(朧が)拳を打ち込んでいく。1発、2発、3発、4発……与ダメは0に等しいが、確殺出来る域になるまで状態異常を重ねがけしていく。一応、パンチは顔と胸は除いているから安心だ。

 

 そして計20回移動速度減少、最大HP・MP減少を重ねがけしたのち一旦動きを止めて左手を振りかぶる。

 

「ライダースティング」

『Rider Sting!』

 

 タキオン粒子とか難しい原理は何もなく、拳の接触直前に増殖した朧が自爆する事でこの必殺技は完成する。大爆発により俺と藜さん双方のHPが0になり、同じタイミングで復活する。けれど状態異常の差で、生き残っている朧の方が早く動き自爆。残り残機5の時点で全滅と相成った。

 

「9.8秒、それが……えっと」

 

 お前ではないし……まあいいか。

 

「絶望までのタイムだ。なんちゃって」

 

 最後にそうかっこよくポーズを決めたところで、装備とステータスが全て戦闘前の状態に戻った。やっぱりれーちゃんは、ポーチ大爆発の時にHPが0になっていたらしい。

 

 それにしても、だ。最後の方は必殺技を使いたいが為にやられた部分もあったけど、これはもしかしたら次はもしかするかもしれない。あんまりにも早く負けるのは先輩方に申し訳ないけど、倒して貰いたいのも事実だし。

 

「結構手の内をバラした事だし、次はどう攻めてくるやら」

 

 願わくば、俺を最初に倒すのがうちのギルドでありますように。幸運また上げられるし。

 




因みにこのクロックアップ擬き、消費に回復が追いついてないので10秒くらいしか保ちません。
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