極振りの1人、Int極振りのにゃしいが創造したダンジョンは、極振りしているステータスが
何故ならば、そのダンジョンは底である1階層、中ボス部屋である5階層、にゃしい本人の待つ10階層を除き、ダンジョン製作を放棄したと思える完全な吹き抜けになっているのだから。
1階層から4階層は、完全なる吹き抜け
上層へ登っていくための通路は壁に設置されており、プレイヤーは各自その入り組んだ通路を登っていくことになる。敵の平均レベルは40ほどであまり強くないが、爆発か爆裂する武器を持った機械か、そういう攻撃をしてくるモンスターのみとなっている。壁を駆け上がってく中でそれ食らったら、2階層以上の高度だと確実に1階層にまで落ちて死亡する。仕掛けられている罠も、プレイヤーの移動を阻害するものか、爆発してプレイヤーを空中に投げ出すものばかり。
ボス層まで飛んでいけば簡単なんじゃないか。そう言ってペットと空に飛んで行ったプレイヤーは、モンスターの集中砲火にあって墜落した。このことから、空を飛んで上昇した場合ヘイトが急上昇することがわかった。
5階層は中ボス部屋
後方に伸びる長い角、口外に露出した鋭い牙、そして赤い鬣を持つ頭部が特徴の、四足歩行で翼を持つドラゴン。ぶっちゃけ某ゲームの某古龍と極めて似通っている。が、商標的な問題で各部大きく印象変更が加えられていたりする。
にゃしい曰く「
6階層から9階層までも、完全なる吹き抜け
基本的には1階層〜4階層と変わらない。しかし壁の通路は銃のライフリングのように設置されており、敵のレベルも55まで上昇してAIの行動は非常にいやらしくなっている。
最大の特徴が、にゃしい本人がこのフロアのギミックを担当していること。AIの場合は一切発生しないが、フロア全てを焼き尽くすエクスプロージョンが発生するのだ。ぶっちゃけこれでモンスターもギミックも焼失するので、これが一番の難関と言って差し支えないだろう。
にゃしいの気分次第で、30秒に1回から5分に1回のペースで爆裂する。申し訳程度の退避スペースはあるものの、にゃしいのテンションが上がってくると大抵次の退避スペースには間に合わない。ので、基本的にはAIがボスを担当しているときに攻略することが、攻略サイトでは推奨されている。
しかし、だ。そんなダンジョン(本人入り)に挑もうとするのであれば、方法はないこともない。爆裂を20発撃った後に、爽快感からかは知らないが5分ほどインターバルが空くのだ。その隙に塔を登っていくのであれば、本人と相見えることも不可能ではない、かもしれない。
◇
「急げ急げ! もう次の爆裂まで時間がないぞ!」
「Go Go Go Go!!」
にゃしい塔8F相当。そんな場所で、数名のプレイヤーが声を張り上げていた。その理由は叫ばれている通り。早く移動しなければ、つい先ほどまでダンジョンを焼いていた爆裂が再び発生するから。そう、今この場にいるパーティは、にゃしい本人に挑もうとしているのだ。
「了解っす。掴まっててくださいっす!」
「敵の動きは、いざとなったら僕が止める!」
爆裂ではなくバイクのエンジン音が鳴り響き、僅かなインターバルを使って2つのパーティが塔を駆け上がっていく。
攻略しているのは、リシテアを筆頭とするレン塔に登っていないギルド【モトラッド艦隊UPO支部】の面々と、同じくアークを筆頭とするギルド【空色の雨】の合同部隊。その中でも、何らかの理由でIntを上昇させんとしている面々だった。
2パーティ12人の彼ら彼女らは、機動力を補うために総じて2人乗り。アクセルも全快。マキシマムドライブはしていないが、全てを振り切るように塔を駆け上がっていく。唸りを上げるエンジン、轟く排気音、ついでに数名の悲鳴。モンスターもギミックも全てが爆裂により蒸発した今、彼らを止めるものは何一つ残っていなかった。
そうして、彼らが辿り着いた10層のボス部屋。そこには、にゃしいが作ったなんて欠片も思えない不思議な光景が広がっていた。
構造的には、単純な円柱状の広い空間。けれどその壁は全て、ギッシリと本が収められた本棚となっていた。
この空間の所々には光源と思われるランプや、浮遊する光が舞っており、柔らかな光で照らし出している。
極め付けの特徴は、空の見える天井間際に浮かぶ立方体。壁面と同様本棚となっているそれは、くるくると向きを変えつつ回転していた。
「くっふっふ、よくぞここまできましたね! 挑戦者の諸君!」
そしてその直下で、精一杯の大きな声でにゃしいが声をあげた。
右手に長杖を持ち、左手を魔女っ子的な三角帽にかけている。眼帯を付けていない眼をギラギラと輝かせ、頬を紅潮させ、笑みを浮かべているその姿は、何かがキマっているようにしか見えない。どう考えても爆裂ですありがとうございました。
「我が名はにゃしい!!! 極振り随一の
そんな宣言と同時、登ってきたプレイヤー群とにゃしいの間に10のカウントが現れた。同時ににゃしいのペットである、翼の生えた巨大な黒猫が直衛として出現する。
「全員散開! 加速をつけて吹き飛ばすぞ!」
「「「了解!!」」」
1度目じゃないのに変わらないにゃしいのテンションに辟易としながらも、各プレイヤーがアクセル全開でバイクをかっ飛ばし始めた。どうせ固まっていても、開幕の爆裂(小)で全滅する。であればこそ、最速の波状攻撃が不意打ちが最も有効手段と判断されていた。
「さあ、矮小なる挑戦者たちよ。我が究極の爆裂にひれ伏すが良い!!」
戦闘は、そんなにゃしいの芝居がかった厨二セリフとともに始まった。台詞とともに放たれた爆裂(小)によって、壁面には焦げ一つ残さずバイクが1台蒸発したのだ。
「予定通りっす!」
「総員、一斉射!!」
しかし、そんなこと知ったことかと5台の疾走するバイクから攻撃が放たれた。炎、氷、雷、水を始めとした様々な属性の魔法。銃弾や弓矢などの射撃。ガチ勢と言われるプレイヤーであろうと、無傷では切り抜けられない破壊のカーテン。
「ふっ、甘いですね。極振りたる者、全体攻撃程度、軽く捩伏せられるのですよ!!!」
そんなにゃしいの言葉とともに広がった爆炎が、その全てを相殺して焼き尽くした。それは、なんてことないただの防御魔法。ただし、10倍を超える出力差で相性の悪さすら覆す力技だった。
「吹き飛べぇ!」
馬鹿げた火力の防御魔法にも、その単純さゆえの欠点が数個ある。1つは、展開すれば視界がふさがれること。もう1つは、強度を求めた結果展開時間が少ないこと。
つまりタイミングを見計らえば、ユキほど精密でない防御のため誰でも突破が可能なのだった。それを数度の挑戦で理解したプレイヤーが、バイクに乗って特攻した。
何せ、一撃当てれば勝ちなのだ。刺し違えてでも倒すことが出来れば、それでパーティとしては勝利なのだから。
「にゃぁ」
けれど、その突撃は控えていたにゃしいのペットによって阻まれた。羽の生えた巨大な黒猫による一撃が、バイクを大きく弾き飛ばして主人を守る。
ユキのように本体がみみっちい火力しかない代わりにペットが高火力なタイプと違い、本人の火力が突き抜けているからこその防御専門のペット。それがにゃしいのペットであるキメラキャット、みゅいみゅいの役割だった。
「ありがとうございますよ、みゅいみゅい。
では私も、なんか勝手に負けてくれやがった同志の弔いのために、1発大きな爆裂をするとしましょう!」
そして、そんな都合の良い理由をこじつけて、大きくマントを翻らせてにゃしいが動き始める。
「まずは、チョロチョロ動くバイクが邪魔ですね……《星火燎原》!」
瞬間、部屋全体が燃え上がった。にゃしいが使ったのは『時間経過で魔法威力が上がる状態を自身に付与する。序でに威力はInt依存のダメージフィールドを展開する』魔法。それによってボス部屋は紅蓮の炎に包まれた。
「バイクが……! 悪いっすね」
その炎によって、一瞬にしてバイクのタイヤがバースト。燃料タンクに引火してスクラップと化した。乗り手の誰もがクラッシュに巻き込まれることなく脱出したのは流石と言うべきか。
「まだだ! あと60秒、まだチャンスはある!」
「諦めるのはまだ早いっすよ!」
だがそれでも、攻撃は届かない。炎熱のカーテンの向こう側にいるにゃしいに届く前に、燃え盛る炎が全てを焼却してしまう。
加えて、展開されているダメージフィールドも問題だった。スキルとしての上限まで届いているその火力は1000。プレイヤー側のステータスに応じて多少の減衰はあるものの、確実に挑戦者側の時間をすり減らしていた。
「そうです、我が爆裂を受ける前に負けるなんて、神が許しても私が許しません!」
挑戦者側の攻撃の悉くを焼却しながら、炎の中心でにゃしいは叫ぶ。そして不敵な笑みを浮かべながら、幾層にも重なった魔法陣を展開しながら詠唱を始めた。
「黒より黒く闇より暗き漆黒に、我が深紅の混淆を望みたもう。抑止の輪より外れ、天秤の理を破却し、七天を須らく焼き尽くさん」
足元に1つ、頭上に1つ、胴の周りに1つ。計3つの魔法陣を起点として、外周部に新たな魔法陣が綴られていく。
10人の挑戦者の放つ攻撃なんて知るかとばかりに、目を瞑ったにゃしいは1人炎の中で自身の最大を放つ準備を続けていく。
「創世の火を灯せ、さすれば不死の象徴たる光が、無明の闇を駆逐せん。遍くモノを灰燼へ帰し、尊き銀河をも焼却せよ!」
そう詠唱が一区切りつけられた時、にゃしいが懐から取り出した毒々しい液体が入った注射器を、己の首に突き刺した。中身を注入しきったアイテムが消えると同時、HP・MPが急速に減少し、にゃしいのステータスアイコンに髑髏のマークが点灯した。
「第零術式起動、代償確認、火力上限の撤廃を確認。さあまだまだ行きますよ! MPリチャージ、そして全てを爆裂に!!」
それは、にゃしいが選択した必殺技。『HP・MPを強制的に1にする事で、次の攻撃のダメージ上限を撤廃し、MPをつぎ込めば突き込むほど火力を上昇させる』『使用時、MPをMAXまでチャージする』2種類。つまり、爆裂の威力を上昇させることしか考えていない物だった。
因みに詠唱も厨二がかった台詞も、本来ならば必要のないものである。でも本人がカッコいいと思ってるから必須の要件なのだ!
「さあ、見るがいい。レイド戦の時より遥かに上昇し、高みに踏み入れた我が爆裂を!!」
完成した積層魔法陣が、火の粉を散らして光り輝く。ここまできてしまえば、もう攻撃も間に合わない。万が一を狙って攻撃を続けてこそいるが、挑戦者側の心は諦めで一致していた。
「もっとです。もっと輝いて! 私の自慢の爆裂!!
エクスプロージョン・バァァァァスト!!」
そうしているうちに、魔法は完成した。
爆発する炎。熱。衝撃。紅蓮の焔が世界を舐め、渦巻いてどこまでも広がっていく。ボス部屋を焼却し、階下にまで進出した焔が何もかもを燃やし尽くし、反射して帰ってきた焔が再度ボス部屋を焼き尽くした。
純粋な極振りが放った一撃は、その程度ではまだとまらない。調度品を焼き尽くし、本棚を灰にして、ボス部屋に留まった爆裂はどうなるか。蟠り溜め込まれたエネルギーはどうなるか。
答えは簡単。潰れて流れて溢れ出る。
外から見ていたプレイヤー曰く、溢れ出た爆炎はまるで火山が大噴火を起こしたようだったという。