幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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色々な感想をもらったので、色々なキャラに色々なものが生えました。やったねたえちゃん、1話増えるよ!

あ、活動報告の方でちょいとアンケートしてます


第110話 家・出 ②

 晩御飯を食べ終われば、もうやることは特に何も無い。いつもなら部屋に戻ってUPOにログインするのだが、今日はもうログインはしないと決めている。

 因みに風呂は、空さんが別にそのままでいいとのことだったのでそのまま入ってきた。匂いとか色々と、非常に気まずかったのは言うまでもない。その後も、並んで歯磨きをするなんて奇妙な感覚だったけど、歯磨きは予備の歯ブラシを渡すことで恙無く終わった。

 

 あとは洗濯するくらいしかやることがないけど、この天気で洗濯機を回しても部屋干しにしかならないし、そもそも洗うのは空さんが自分でやりたいだろう。

 

「あの、ユキさん、ちょっといい、です、か?」

「はい? 良いですけど……どうかしました?」

 

 テレビを惰性で聴きながらどうするか悩んでいると、空さんがそう声を掛けてきた。風呂から上がってきた辺りから、明らかに勉強しているみたいだったから触れないでおいたのだけど。

 因みにノートと筆箱は、普通に空さんのバッグに入っていたものだ。VRギアと一緒にビニール袋に包まれていた。失礼だから表紙くらいしか見ていないけど、クラスと出席番号に名前が書いてあったから学校関連のものだろうとは思う。

 

「この問題、ちょっと、わからなくて」

 

 空さんは隣に座って、その手に持ったスマホの画面を見せてくれた。そこに表示されていたのは、俺も去年まで習っていた数学の問題集の一部。内容は仇敵『長方形の辺上を動く点P』であった。……貴様、乗り越えたと思ったらこんなところに。

 

「あー……これって、実際は三角形が形を変えてるだけなので、1回気づいちゃえば早いと思います」

「……なるほど、です」

 

 UPOで空間認識能力なんてものを使っている以上、1回気づいてしまえば割とどうとでもなる。あのスキルをガンガン使うようになってから、急激に理数系と暗記系の科目の点数が上がった俺が言うんだから間違いない。

 

「そういえば、空さんって今年受験でしたっけ?」

「はい。模試は、A判定、ですし、推薦も、貰いました、けど」

 

 思っていた以上に、空さんの頭は良かったらしい。確実に同じ頃の俺より頭がいいのは間違いない。

 

「マジですか。本当にすごいですね。俺なんかB〜C判定で一般入試でしたよ?」

「そうでも、ない、です、よ? 覚えちゃえば、じょじゅつ系以外、楽です」

 

 そう言う空さんは、どこか嬉しそうな雰囲気を纏っていた。何やらスマホの画面に文字を書き込んでるみたいだけど、楽しそうに画面を滑る指先を見ればそれは明らかだった。いや、そんなのに気づく俺はどうかしてるのでは。

 

「そうですか。でも、それだけ結果が出てるなら、もう少し気を抜いても良いんじゃないですか? 時折UPO内でもやってるの見ますし」

 

 俺自身もよく利用しているのだが、時間が2倍に加速されているUPOはそういう作業にめっぽう相性がいいのだ。噂に聞くVRオフィスとやらは、加速倍率がもっと高いらしいから重宝されることだろう。

 

「いいえ。ちゃんと、続けてこその、勉強、です」

「ほんと、偉いと思います」

 

 最近どの教科でも80〜90点を叩き出せるようになったけど、基本的に俺のサボりがちな勉強スタイルは変わってないし。授業をしっかり受け取ったノートを改めて書き写すのと、直前までの暗記なんて方法は教えられるわけがない。

 

「それと、もし合格、できたら、よろしく、です」

 

 確かにここら辺にある高校は、そんなに多くないから可能性はあった。けどそっかぁ……空さんがうちの高校くるのかぁ。どうしよう、絶対荒れる。胃も一緒に。

 

「先輩」

「うぇっ!?」

 

 耳元で囁かれ、なんか変な声が出た。そんな俺の反応を見て楽しそうに笑いながら、空さんは勉強に戻っていった。

 

 そのままカリカリと、ペンの走る音が聞こえること約10分。それなりの時間になってきた頃、ペンの置かれる音とノートの閉じられる音が聞こえた。どうやら勉強は終わったらしい。話しかけるなら今のタイミングがベストだろう。

 

「そういえば、寝る場所どうします?」

「えっ?」

「いつもなら来客用の布団があるんですけど、今ちょっと使えなくて……」

 

 布団カバーが洗濯中だったけど、この雨のせいで乾いてないのだ。それと取り込んであった洗濯物を干してあるせいで、来客用の部屋も使えない始末。空さんが来ることを想定してなかったから、仕方ないっちゃ仕方ないことなのだけど。

 

「それで使えるベッドが、俺の部屋あるのと両親の部屋にあるのの2つだけでして……」

「なら、ユキさんの、部屋のがいい、です」

「了解です。2階に登ればすぐ分かると思うので、自由に使っていいですよ。でも、箪笥はあんまり弄らないでくださいね」

 

 返ってきた予想通りの答えに、そうなるかと納得して返事をした。親の布団とか、ねぇ? 必然的に俺の部屋に入ることになるけど……まあ、やましいものは何もないし問題ないだろう。

 唯一問題なのは、しまってた筈の服が消えたり増えたりするうえ、何故か沙織の服が入ってる奇妙な箪笥くらいのものだ。かなり昔だけど、おもちゃの手錠が出てきたときは腰を抜かした記憶がある。

 

「むぅ、私、そんなこと、しない、です」

「そこらへんは信じてますけど、一応言っておこうかなって」

 

 そうだった。よく色々やらかしていく沙織とは違うのだった。咄嗟に取り繕いはしたけど、多分アウトな気がする。治ってきてると思ってたのに、まだ基準が随分とズレてることが嫌に実感できる。

 

「本当に、何も、聞かないで、くれるん、です、ね」

「最初に言った通り、話したくなったらで良いですよ」

 

 そう自戒していた俺に、目を伏せて空さんがそう言った。でも最初から言っている通り、事情を追求する気はない。とは言っても、冷静に考えて余り長くは匿えない。どれだけ手を尽くしても、数日から1週間が限界だろう。だからそれまでには話してくれると嬉しいし、色々と助かる。こんな不安を煽ること、口に出したりはしないが。

 

「ありがとう、です。気持ちの、整理が、出来たら、話します、から」

「無理は、しないでくださいね」

 

 無理をしたら、俺みたいな羽目になる。珍しく沙織がずっと沈黙を保ってくれている、あの事件のときみたいに。

 

「大丈夫、です。でも、今日は、先に失礼、しますね」

「分かりました。おやすみなさい」

「おやすみ、です」

 

 そうして空さんは、扉を開けリビングを出て行った。階段の軋む音は聞こえたし、多分問題ないだろう。ベッドは……この前シーツも毛布も干したばっかりだし、変な匂いとかしてないよね?

 

「大丈夫だと信じよう、うん」

 

 唐突に過ぎった不安をなんとか握り潰し、先程からずっと文字を打ち込んでいたスマホをスリープ状態に戻した。報告書っぽい形式になっちゃったけど、急遽書いた日記としては及第点だろう。ようは何時ごろ何があったのかが知れれば良いんだし。

 

「寝る……にしても、もう少し後かな」

 

 自分の部屋を提供してる以上ベッドは親のものしか無いけど、ぶっちゃけ俺も親の部屋で寝たくはない。毛布は諦めて親のを引っ張り出してきたので、リビングで寝るつもりだ。

 それはそれとして、やっておきたいことが少し出て来たのだ。

 

「明日の学校……どうしよう」

 

 1日仮病で休むくらいは出来るけど、その場合沙織にも先生方にも迷惑かけることになる。かといって一応家を預かるものとして、空さんを1人にするのもアレだし……

 

 どうしようかと思いつつ台所へ向かっていると、ポケットの中の携帯が震えた。誰だろうかと開けば、受信したのはタイミングよく学校の一斉メール送信だった。その内容は、明日休校にしますよとのこと。上辺程度の付き合いしかないクラスメイトは知らないけど、沙織はきっと小躍りする勢いで喜んでることだろう。……あっ、本当に連絡きた。

 

「明日はゆっくりするとして……」

 

 沙織に返信を打ち、返しながら、空いてるもう片方の手で冷蔵庫の扉を開く。割と中身はまだ残ってる。明日ゆっくりと出来るというなら、朝ご飯を少し凝ってみるのもありだろう。

 

「折角、誰かに食べてもらうんだし」

 

 いつものコピペみたいな、目玉焼きor卵焼き&ベーコンorハムを出すわけにもいくまい。同じように、残った米を炒めたチャーハンとか、残り物をレンチンしただけの物もなんかやだ。うーん、悩ましい。

 あぁ、いや待て。まだ別の可能性もある。そもそも朝ご飯を食べないとか、軽く済ませたいとかいうタイプもいる筈だ。偶に時間がないときに世話になる、シリアル派も忘れてはいけない。

 

「……聞いておくべきだったかも」

 

 沙織の場合はもう慣れたから問題ないが、寝ている女の子の部屋に後から男が入っていくなんて、そういう関係か変態の所業だ。信頼度ガタ落ち(推定)の今、そんなことをしたら即座にポリスメンが飛んでくる。

 

「時間あるんだし、飾り切り……うん、アリだ」

 

 とりあえず軽いサラダなら、シリアル派と飯抜き派以外にならフィットする。うんよしそれで行こう。

 

 主菜を考えていなかった為、俺は翌朝頭を抱える羽目になるのだか、それはまだ未来の話。

 

 

 自由に使っていいと言われた友樹さんの部屋は、普段の様子からは想像もつかない寂しさを感じさせる場所だった。

 部屋の中にあるものといえば、机にパソコン、本棚、服の積んである小さめの箪笥、そしてベッドと側に置かれたVRギアくらいのもの。カレンダーも時計も、この部屋には見当たらなかった。でも、

 

「友樹さんの、匂いがします」

 

 私の匂いともセナさんの匂いとも違う、男の人の匂い。お祖父ちゃんの以外嫌いなはずのそれなのに、今感じてるこれは不思議と嫌じゃなかった。

 

「ふふっ」

 

 ちょっとだけ浮き足立ったような気分で、なんとなく机の方に行ってみた。卓上には使い込んでそうなノートパソコンが置いてあるだけで、他のものは本当に何もない。失礼だから見ないけど、多分教科書とかは引き出しの中にあるんだと思う。

 あんまり触れて欲しくないと言ってた箪笥は、綺麗に畳まれた着替えが積み上がっていた。箪笥の引き出しには夏や春物でもしまってあるのかもしれない。

 次に見た本棚には、ぎっしりと物が詰まっていた。上段から中段にはライトノベルと言われる種類の本が沢山あり、下段には少量の漫画と爆破○○とか力学○○という表紙の本が数冊。無機質に感じる部屋の中で、ここだけはパッと見て趣味に染まっていた。

 

「ふわぁ……」

 

 一通り見て回ってからベッドに腰掛ける。すると何故か、急に眠気が顔を出してきた。今日は、今まで考えたこともないほど疲れた。殆ど衝動的に家を飛び出して、電車に乗って逃げて、友樹さんのところに逃げ込んで。迷惑を、かけて。

 

「うぅ……」

 

 明日には、事情を話さないと。そんな考えは、私の頭が枕に沈んだ時に崩れ去った。今なら、少女漫画とかで見るヒロインの行動がよく分かった。これは、すごい。

 毛布を被ってみれば、暖かさと一緒にその感覚はグッと増した。でもその感覚を堪能する前に、疲れ切っていた私は眠りに落ちてしまったのだった。

 




感想でエロ同人エロ同人言われるから書いてみたものがあったけど、ユキの理性の城塞を築き崩せなかったのでボツになりました。冷静に考えて何を書いてるんだ私は



※この主人公は、第2回イベントで藜に膝枕されたり実質同衾したりしてます

※幼馴染がアップを始めました

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