幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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第114話 火薬 × 紅茶 = ?

 お互いにアクセル全開のスタートダッシュ。俺の方はタイヤが、向こうは履帯が勢いよく回転し、揃って鉄砲玉のように飛び出した。

 

「うっそ!?」

 

 最初の数秒は拮抗したものの、すぐに俺は追い抜かされ前方を取られてしまった。マシンの基本性能は、どうやら向こうが上回っているらしい。ターボを使えば追いつけないこともないだろうけど、多分向こうもそれくらいは搭載しているだろう。

 一体マシンに幾ら注ぎ込んだのか……後で気になるから聞こう。

 

「《ラピッドファイア》!」

「《障壁》」

 

 素直に感心していると、身を捻ってシルカシェンさんがこちらに銃口を向けてきた。その引き金が引かれる前に、いつもの癖で銃口を障壁で塞いだ。先輩方の話によると、あのセンタさんと互角に撃ち合っていたというので、念の為50枚。

 

 結果、48枚まで銃弾が喰らい破ったところで、決して散ることのない鉄の華が咲いた。

 

「ガァッ!?」

 

 どうやらゲームシステム的に作られたライフルではなく、ハンドメイド品であったらしい。市販品と違い爆発し腕ごと吹き飛ぶのではなく、砲身部分だけが華が咲くように裂けていた。あれなら換装して再使用できそうだ。

 HPも、どうやら3割くらい持っていかれているようだ。俺の場合、愛銃が暴発したら即死するのに……

 

 というわけで、諸々の感情を込めて爆破を開始した。

 

「イヤッッホォォォオオォオウ!!」

 

 最近、ストレスが溜まりに溜まっていたからだろう。抑圧されていた感情を燃やし尽くすように、思わず歓声を上げてしまった。

 

 運転を愛車に完全に任せ、両手で爆竹を投擲する。今回は愛車にも積んであるので、このデュエルに限っては実質残弾無限。戦場の外周を走りながらする爆破は、速度も乗ってるし久し振りに快感だ。

 

「くっ、本職はここまで……!?」

 

 何か言ってるみたいだけど聞こえない。

 ああ、今なら懐かしきガトリング・オーガの気持ちがわかる。固定値の乱れ打ちほど楽しいものはない。香る火薬の芳香、耳に轟く炸裂音、最近は大仕事とかで忘れかけていたけれど、俺のUPOの原点はやっぱりここにある。

 

「なーにが紅茶ガンギマリだ、それならこちとら火薬ガンギマリじゃい!! FoFoo!!」

 

 平原を炎上させながら、捕まったら終わりのデッドヒートが始まった。なに、どうせ装備は壊れても元に戻る設定にしてあるんだ。燃え上がっていこう!!

 

「後で一緒にパンジャン作りましょうよパンジャン!」

「イかれてる……!」

「こんな感じでどうですかねぇ!?」

 

 障壁で車輪、軸を再現しつつ、爆竹をしこたま積んで作った仮想パンジャンを突撃させる。ロケット推進の代わりに加速の紋章で進むそれは、急造だった所為かすぐに転倒して大爆発を引き起こした。

 

「ああクソッ、無駄に再現度が高い!」

「Yeah!」

 

 紅茶ガンギマリ勢から、造形だけはOKサインが出た。ということは、これをベースにちゃんとパンジャンを製作するのもありかもしれない。ネタ抜きで、基本動けない俺からすると自走式の爆弾って嬉しいし。

 

「ワンチャン、火薬から燃料精製できるか……?」

 

 ユニーク装備なら、きっとそれくらいの無茶は応えてくれるだろう。つまりパンジャンドラムや、それ以降の兵器……ミサイルとかも作れるかもしれない。ここら辺は、あの飛行機乗りの人たちに話を付けてみないとだけど。

 

「ふむ……これから毎日、ノルマンディー?」

「何故そうなった!」

「全然分からない。俺は、フィーリングで爆破をしてる」

 

 ノリと勢い、あとテンション。何をもって爆破の対象にするかは、基本的には楽しいか否かでしかない。現に、ほぼ全ての街を爆破してる俺も第2と第5は爆破してないし。6と7は後で吹き飛ばす予定だから問題ナッシン。

 

「くそッ、火薬キマってる相手に話が通じるわけがなかった!」

「それを言うなら、紅茶キマってるそっちもでしょう? あ、どうぞスターゲイジーボムです」

 

 パイ状にしたプラスチック爆弾に信管を刺し、空を見上げるように爆竹を刺した代物を投擲した。紋章で加速したから、間違いなく正確に奴の手元に届くことだろう。

 そう思っていたのに、向こうは大きくハンドルを切って避けてしまった。むぅ、折角凝って作ったのに。食べ物を無駄にするなんて許せない、郷土料理のパイだってのに……待てよ。パイ、パイだよなこれ……

 

「どーもシルカシェンさーん、知ってるでしょう~?

 ユキでございます。

 おい、パ イ 食 わ ね ぇ か」

「本物なら、検討するのだがね!!」

 

 よっし。人生で一度は言ってみたいセリフが言えた。無論スターゲイジーボムを投げるのは辞めない。思った以上に火力にも期待できるしこれ。

 

「ハッハッハ、なら本物のマーマイトもプレゼントぉ!」

 

 この前偶然ドロップしたけど、使い道がなくて……あとその、食えなくてアイテム欄の肥やしになってるやつ。サルミアッキは特に問題なくいけたんだけどなぁ……

 

 早々に向こうの攻撃手段を潰せたからか、少しはこんな風に遊ぶ時間ができた。この間に、藜さんが色々と決着をつけてくれると良いんだけど。

 

 

「あっちはあっちで始まりましたし、こっちも始めましょう元ギルマス」

 

 辺り一面を爆破しながらレースをするキチガイ共を横目に見つつ、継ぎ接ぎの格好の少女が、ゆったりとしたローブに身を包み長い杖を持った男性にそう告げた。なお杖は、ユキの持つ物と違って明らかに強そうな逸品だ。

 

「これまで散々ボクを追い回してきたツケ、熨斗つけて返してやりますよ!! 自分から何処か良いところを見つけてって言ったくせに!」

 

 ユキたちには煽る為に言っていなかったが、元はと言えば脱退騒ぎはそんな話だったのだ。それが、いざ脱退したとなると追いかけて復帰を強要してきた。結局、ブチ切れ案件なのは間違いない。

 

「はは……サブマス4号じゃ、権力的に止められなくてね」

「はい? サブマス4号?」

 

 肩を竦めて答えた男性に、カオルは頭に疑問符を浮かべて答えた。それもそうだろう、何故なら諸悪の根源と思っていた相手が実はその下っ端になっていたのだから。

 

「いつの間に格下げされたんです?」

「今のギルマスに、タイマン挑まれて負けちゃってね……いやぁ、流石に魔法耐性ガッチガチの剣士はキツかった」

 

 朗らかに笑う元ギルマスのスタイルは、見ての通りガチガチの後衛。しかも魔法使いである。前衛が抜かれた際の対策として最低限の近接戦は出来るが、決して本職には及ぶことはない。そんな相手に全力でメタった前衛が突っ込めば、さもありなんという話だった。

 

「ということは、これまでボクを追い回してきたのは現ギルマスですか?」

「まあ、止められなかった俺も悪いけどね。1・2・5番目のサブマスが無理矢理に進めててね……俺は反対したし、あそこのは途中から傍観派になったけど、まあ大勢は変えられなかった」

「ボクが抜けてから、そんなことなってたんですか……」

 

 うわぁと、気の毒そうな顔でカオルは言った。ギルドマスターの交代でギルド全体の方針が変わる、なんてことはよくあることだ。それが良い方向に向くかはともかく。

 

「ということは、元ギルマスはボクと戦う理由がない……?」

「基本的にはまあ、そうなるね」

 

 首を傾げたカオルに対し、元ギルマスも頷いて答える。ギルド全員が動員された為仕方なく参加しているが、実際戦う理由がないのだ。だがそれも、基本的にはである。

 

「とは言え、勝利条件的には戦う理由になるね」

「ですねぇ。でも、なんか燃えないとい──にゃあ!?」

 

 不満げなカオルに、突如飛来した黒い針状の魔法が飛来した。危なげなくそれは切り捨てられたものの、突如行われた攻撃に批難の声を上げた。

 

「い、今の流れはもうちょっと、名乗りとかしてから戦いますよねぇ!?」

「こうした方が、カオルにやる気を出してもらうには手っ取り早いと思ってね」

「いや、確かにそうですけどねぇ!?」

「それに」

 

 カオルの言葉を遮って、元ギルマスは言葉を続ける。

 

「個人的に、カオルと決着は付けておきたかったからね。1ゲーマーとしては、降参なんて論外だし」

「それは、確かにそうですけど……ぶっちゃけ夜のボク、装備的にも元ギルマスの天敵ですよ?」

 

 称号効果での夜間強化は、昼にクソ雑魚になる代わりに倍率は高い。それによる単純な高ステータスの暴力と、攻防一体の抜刀術は単純に強い。それに加えて魔法や装備ギミックまであり、それを使いこなしているのだから相当である。

 昼はクソ雑魚で、プレイヤー自体もポンコツだが。夜は頭も回るのだ、夜は。どうあがいてもポンコツだが。

 

「それならもう、対策は練ってあるから大丈夫」

「へ?」

 

 再度飛来した針を切り捨てながら、カオルは首を傾げた。何故なら、先程切り捨てたものと合わせて微量だがHPが減っていたのだから。

 

「この前のイベントで、あそこのユキに挑んだ時に思い知ってね。やっぱり、固定値は正義だなって」

「へ?」

 

 次いで射出された5本の針を避け──ることができず、連続で直撃する。減ったHPは先程までの攻撃を含めて7%程。微々たる数字だが、無視できない減少値でもあった。

 

「寧ろあの件で、元々の魔法から召喚魔法に切り替える算段がついてね。さあ、削りあいといこうか!」

 

 誰も説明する人間がいないが、それは《血の杭》という名の初級魔法。消費MPは20、威力は固定で50(クリティカル時70)ダメージの必中攻撃で、与えたダメージの半分HPとMPを回復させる魔法だった。

 普通なら精々数本が同時発動の限界で、回復手段としか認識されてない魔法。しかしそれを、連射する為の能力が備わっていたらどうなるか?

 

「……あの、元ギルマス。もしかして、ですけど。ボクが知ってる頃より、対人性能爆上がりしてません?」

「当然」

 

 そんな言葉に合わせて、視界いっぱいに出現する黒い針。一応、必中魔法の対策として相殺はあるが、極振り(キチガイ)共でもなければ捌き切れない量だった。

 

「お、お、お、やったりますよコンチクショー!!」

 

 こうしてこちらでも、固定値の暴力に走った者と一撃の火力を求めた者の、遥か昔から続くバトルが始まった。

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