GW中に一回も投稿しないのはどうかと思い投稿
飽きるほどにウサギを倒し、長杖を振り回し、最後にセナにフィールド引き回しのうえレア泥ランニングの刑に処された俺は、なんだかんだ言いつつ翌日も『UPO』にログインしていた。帰宅部だから土日は実に自由である。
「評判に偽りなしってね」
そんなことを呟きながら、俺は相も変わらず綺麗な中世風の街を歩いていく。
今日の目的はバトルじゃない、買い物だ。昨日の出来事のお陰で、ちゃっかり所持金は20,000Dを超えている。だから少しは装備を整えようと思うのだ。【スキル】は値が張るらしいから後回しだけど。
「けどまあ、このまま正道を走るのは何か違うんだよな…」
言葉で言い表すのは難しいが、正道装備で全身を固めるなんてことは、何処か違う気がするのだ。
そんなことを考えながら、NPCが経営していると思しき装備屋を素通りする。そして、その奥に存在した裏路地への道を覗き込んだ。こういう場所になら†闇の売人†みたいな人がいても……
「なんだ坊主? ここはお前みたいな奴が来る場所じゃねえ、帰んな」
「ビンゴっ」
暗がりに座り込み、フードを目深に被った人物から声をかけられ、俺は小さくガッツポーズを取る。広げられたマットの上には様々な小物が乱雑に置かれており、声が男か女かわからないようになってるのも非常にナイスだ。プレイヤーかNPCかは知らないが。
「いえ、一応俺は買い物に来ました。何か面白いもの…できれば装備品なんかありませんか?」
「はっ、俺みたいな奴から物を買おうなんて風変わりな奴だな。だがいいだろう、そんなお前にオススメの品がある」
そう言って浮浪者風の…名前はザイルというらしい…人が、アイテム化されて陳列されている茶色のコートを指差した。フードも付いてていい感じに思える。
【試作トラベルコート 改二】
Vit +10
Min +7
全天候ダメージ無効
耐久値 500/500
名前に突っ込みは入れないぞ…試作なのに改二とか凄い違和感だけど突っ込まないぞ…
そう自分を抑え込む俺に、胡散臭い笑みを浮かべてザイルさんが説明をしてくる。
「こいつはある職人が『どんな環境でも快適な旅を』というテーマで製作したコートだ。当初の目的であった丈夫で快適という点は達成したが、代わりに性能が著しく低下した欠陥品だな」
「買いで」
「ははっ、気前がいいなあんちゃん。5,000Dだ、払えるか?」
「勿論」
多少財布に痛いが、これくらいなら問題はない。即座に購入を決定した。装備してみると黒いジャケットもセットで装備され、コートの若干草臥れた感じがいい味を出している。これは掘り出し物ですわ。
「ならこっちはどうだ? 同じ職人が製作したブーツでーー」
「買いで。ついでに他の部分もあるならそれも」
ザイルさんが勧めてきたメンズの黒い編み上げブーツ、その隣に置かれた黒いズボン、これ見よがしに置かれている指ぬきグローブ、明らかにセットとして纏めてあるそれらを纏めて購入する。軽く12,000Dほど吹き飛んだけどまあ良しとする。
惜しむらくは、うさぎのしっぽとの見た目の相性が絶望的なことくらいだろう。
「悩んでるあんちゃんに朗報だ。俺は一応その手の技術に精通していてな、装飾品を透明化できる。システムの都合上、装飾品以外はできないがな」
「なん…だと…」
なんて素晴らしい能力だろうか。一も二もなく頷きたいけれど、ついさっき張り切ってセット買いをしたせいで残金が心許ない。こんなことになるなら、もっと値切…金策しておけばよかった。そしてこんなタイミングで提案してくるってことは、この人が製作者のプレイヤーだろう。
「そうだな…10個纏めて1,000Dでどうだ?」
「お願いします」
即答してしっぽを全て手渡す。手持ちが1,000Dになるけど、まあなんとかなるだろう。
時間がかかるだろうことを見越して目の前に座り込むと、フードの奥から肉食獣のような金色の目がこちらを睨みつけてきた。
「俺、何かしました?」
「いいや、ただ有名人の顔を拝んでおきたかっただけだ」
「有名人?」
まだ始めて1日目が終わったくらいなのに?
「一番人口の多い街であんな大立ち回りをして、夜中にあんな惨い行為をされてたんだ。不思議じゃないだろう?」
「あっはい」
言われてみればネタは沢山あった。けれど、1日でそこまで情報が広まるっていうのは驚きだ。何か掲示板にでも晒されてたのだろうか?
「そら、できたぞ」
そんな俺の思考を遮るように、何も載っていない
「はい、確かに。それではまたいつか」
立ち上がり、頭を下げてお礼を言う。さてと、今日は暫く金策に耽るかな…そう思い踏み出した俺に声がかかった。
「まあ待てや、あんちゃん」
「あれ、まだ何か…っと」
振り向いた俺に向かって飛んできた光を反射する何かを、どうにか右手でキャッチする。すぐにその感触が消えたことから、恐らく飛んできたのはアイテムだと思われる。
「えっと、今のなんですか?」
「見たところ、頭装備は決まってないだろ? 先輩からの贈り物ってやつだ」
僅かに見える口元がニヤッと笑っている、とても怪しい。懐疑的な目を向けつつアイテム欄を開くと、増えていたアイテムの名前は【幸運の耳飾り】怪しい、とても怪しい。
「何が、目的なんです?」
「ただの親切心だ。気にするな」
そう言ったザイルさんは徐に立ち上がり、腰に吊っていた何かを勢いよく引き抜いた。それは鞭。しかもそれは、先端が蛇の頭になってる明らかにヤバ気な物だった。
無謀だってことはわかり切っているけれど、こちらも長杖を取り出して臨戦態勢をとる。裏路地ファイト…多分頭部を破壊されたら失格で、街がリングだろう。
「またいつか逢おう、俺たちの後輩よ」
そう宣言しつつ振るわれた鞭の軌跡が複雑怪奇な紋様を描き、次の瞬間カッと閃光を放った。あっ、駄目だこれ死んだと早々に勝負を諦めたのだが、いつまでたっても死に戻りの感覚が訪れない。
「ええー…」
決してアイヌ語ではない。
疑問を解消するため目を開けると、そこではザイルさんやその周囲に置かれていた商品類が、跡形もなく消え去っていた。
「まあ、いいか」
こっちは特に被害を受けてない、向こうはなんだか楽しそう、だったらまあいいやと思う。けれど気が抜けたままなのもアレなので、腹を両手で叩き気持ちを切り替える。
「とりあえず貰い物を装備――って、何これ?」
金策するのにもLukは高い方がきっといい、そう思いメニューを開くと、フレンド欄の右上に②という数が付いていた。装備は後回しにしてそちらを開いてみる。
「ちゃっかりフレンド申請来てる…だと」
通知の理由の片方は、先程まで話をしていたザイルさんからのフレンド申請だった。特に断る理由もないので、普通に承認しておく。まさかセナ以外にフレンドができるとは……
しみじみとそう思いつつ、もう片方の通知…セナからのメッセージを開く。そこに書かれていたのは、嬉しいけど絶望的なニュースだった。
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《セナ》
再来週の月曜から、大型のイベントが始まるんだって!
詳しくは公式ページを見てねってしか言えないけど、参加条件が第2の街に到達だからファイト!
手伝いたかったけど、部活とかで忙しいからごめんね。
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つまりこれは、自分1人でボスを倒して次の街へ進めということだった。パーティを組めばいい? 初対面の極振りなんて極大の地雷を受け入れてくれる人なんて、常識的に考えているわけないだろ。
だからこその単騎。幸いボスはデカイ猪らしいし、作戦次第でどうにかなるだろう……多分、きっと、メイビー。不安な考えはこの際置いておくとして、そうなればやることはただ一つ。
「お店の人いますかー?」
全力で金策に走るに限る。
初心者装備じゃない杖、あるかわからないけど固定ダメージを与えるアイテム、MPを回復するアイテム、あればいいな状態異常にするアイテム。全部を揃えるとなると、とんでもない出費になるだろう。
「ここからここまで、全部売却で」
どうせプレイヤーメイドなんて作ってもらえないだろうし、アイテム欄の肥やしになるだけのただの素材アイテムを売却する。
一番良さげな長杖を購入し、その足で俺はボスがいるフィールド……始まりの街の北へと向かうのだった。1on1なら多分死なないだろうしね、最高難度に挑んでもなんとかなるでしょ。
ちゃっかり登場する鞭使いの人でした。
※HP・MP・Luk以外はほぼ飾りです
Name : ユキ
称号 : 詐欺師
Lv 10
HP 500/500
MP 475/475
Str : 0(7) Dex : 0(8)
Vit : 0(24) Agl : 0(10)
Int : 0(15)Luk : 290(884)
Min :0(8)
《スキル》
【幸運強化(中)】
Luk上昇 10%
【長杖術(中)】
「長杖」装備時、魔法のリキャストタイムを10%カット
耐久値減少を半減
【投擲】【付与魔法】【愚者の幸運】
( )内は、装備・スキルを含めた数値
小数点以下は切り捨て
【古木の杖】
Str +7
Int +15
耐久値 100/100
【試作トラベルコート 改二】
Vit +10
Min +7
全天候ダメージ無効
耐久値 500/500
【試作トラベルブーツ 改二】
Vit +7
Agl +10
全地形ダメージ無効
耐久値 500/500
【試作トラベルパンツ 改二】
Vit +5
Min +1
状態異常耐性上昇
耐久値 500/500
【試作トラベルグローブ 改二】
Vit +2
Dex +8
弱体耐性上昇
耐久値 500/500
【幸運の耳飾り】
Luk +15
耐久値 50/50
【うさぎのしっぽ ×10】
Luk +30%
獲得経験値 +30%