幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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第148話 探索!従魔大森林 -β版-⑥

 初めて配信に出演させてもらった翌日。朝から根掘り葉掘り沙織に話を聞かれ、その時にあの配信が某SNSでトレンド入りしていたことも知った。

 だがまあそれはそれ。学校で俺が話す人なんて、沙織と先生、あと文化祭以降絡んでくるようになった上級生の人程度。同級生とは事務的な会話しかしない以上、特に現実での日常に変化は起きなかった。

 

「えー、この放送が始まる前までに、皆さんが私を襲撃してきた回数は51回でした。同接4万していたらしいのに、先生は非常にがっかりです」

『開幕周回の時の先生は草』『先生ソシャゲしてるじゃねえか』『集会だったわ……』『51回とかそれはもう十分なのでは?』『今回も夕方なだけあってもうトレンド入りしてるゾ』『先生だってなぁ、エッチなランキング報酬キャラが欲しいんだよぉ!』『わかる』『ワカルマン』『えぇ……』『だが、マヌケは見つかったようだな』『嘘だろ承太郎!?』『やはりランキング報酬は悪い文明』

 

 ということで、約束通りヴォルフさんと合流して配信開始。折角なので放送が開始するまでの待機画面で、昨日からの襲撃回数について報告をしてみた。もうトレンド入りとか、時間のお陰もあるらしいけどどういうことなの……?

 

「というわけで、あー……冒頭にゲストがかましてくれたが、おはこんばんちは。昨日の続きで、突発ゲストの朧さんとダンジョンを攻略していきたいと思う」

「基本的には昨日と同じ感じで進むと思いますので、そこの所はご了承下さいね?」

『お前達を待ってたんだよ!』『まあ流石に人が増えはしないか』『1限凸体2匹だし、割と戦力的には十分やろ』

 

 困惑している中、ヴォルフさんが挨拶を始めた。どうやら画面の配信が開始したらしい。とりあえず刺されないために弁明しつつ、小さく手を振ってみる。

 朧の可愛げを見せて人気を稼ぐ。そしてなんか嫌われているらしい蟲系ペットをもう少し流行らせて、いろんなプレイヤーの個性的な爆破が見たい。心の中の野球選手も「そういうのちょうだい もっと」と言っている。間違いない。

 

「探索を再開する前に、昨日のうちに珍しくUPOの検証班が仕事をして判明した仕様があったからそこの確認だ」

 

 そう言ってヴォルフさんが説明した、本当に珍しく仕事をした検証班が明らかにした仕様は2つ。

 

・ダンジョンの階層数は難易度/2+ボス部屋

・ボスのレベルはダンジョンの難易度×10

 

 現在の時点では、全てのダンジョンが例外なくこの仕様になっているのだという。最低限それだけ判明していれば、攻略の筋道も立てやすくなるというものだった。

 

「つまりこのダンジョンは、俺たちがいる階層を含めて残り3階層とボス部屋ということになるな」

『検証班……生きていたのか!』『賢い』『あの雑な仕事しかしない検証班が……』『UPOの仕様が自由すぎるからダゾ』『どうして完璧に同一条件で同じスキルが発生しないんだ……』『相変わらずのクソ仕様やめちくり〜』『検証班は作業場に出荷よ〜』

 

 コメント欄の検証班が出荷される光景を眺めながら、改めてダンジョンの内容を確認する。

 

 《ダンジョン『徘徊する残骸の聖堂』》

 《現在のダンジョン内にいるプレイヤー : 5》

 《ダンジョン難易度 : 8/10》

 《ダンジョン踏破率 : 49%》

 《ダンジョン階層2/5》

 

 踏破率は昨日見た状態となんら変わらず、難易度も特に変動はしていない。2つほど、昨日とは違う点があった。片方はご親切に階層示してくれたこと。そしてもう片方は、

 

「あ、今俺たち以外にもここプレイヤー来てるんですね」

「なんだと!?」

『流石にバレるよな』『まさか見つけ出すリスナーがいたとは』『そもそも昨日のアレ見て入ろうと思ったのか……』『ここのコメント欄にいたりして』『ナイナイ』『たすてけ』『いたぞォ! いたぞおおぉぉ!!』『うるせぇ!』

 

 なりすましか本物か、そこの所はわからないが実際にカウンターは俺たち以外に3人のプレイヤーがいることを示している。これは、早めに進んだ方がいいか?

 

「初攻略を取られるのは癪だな……急ぐか?」

「ヴォルフさんが望むなら。俺はまったりでも良いですよ」

「なら言葉に甘えさせてもらう。少し急ぐ!」

「はいはいっと。イクゾ-!」

『デッデッデデデデン、カ-ン』『カ-ンが入ってる+114514点』『あのさぁ……』『ここ一般人もいるんだから』『大人しくして』『3人に勝てるわけないだろ』『シュバルゴ』『汚い』

 

 なんかコメント欄が汚いことになったけれど、コメントを拾うのも面倒だし無視。そのままヴォルフさんの頭あたりに着地する。そしてそのまま、鞭のようにしならせた脚で一撃。物理防御も状態異常も抜けず、意味がない一撃で敵対状態に移行した。

 

「じゃあ急ぎで分身呼び出しますね」

「えっ、ちょ、まお前そこで分身なんてするんじゃ──」

「【ドミニオン】【真・影分身】【ドッペルゲンガー】」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そして、発動条件を満たしたスキル群を一斉起動。足元から聞こえるヴォルフさんの悲鳴をバックコーラスに、最大限まで発生させた分身を一気に飛び立たせた。

 

『ひぇっ』『ほら、貴重な女の子の分身シーンだぞ』『ほら、貴重なTSっ娘の分身シーンだぞ』『ほら、貴重な極振りの分身シーンだぞ』『ネタ被りかひでえ』『親の顔より見た分身』『もっと親の分身を見ろ』『親の分身ってなんだよ……』

 

「くぅーん……きゅーん……」

「いやそんな、情けない声出してふて寝するアルマジロみたいなポーズしないでくださいよ」

 

 頭の上から飛び立ち、目の前でホバリングしつつ言う。面白いポーズだし偶にはスクショでもしておこう。

 

「冷静に考えて、自分の頭から大量の蜂がだな……いやどんなポーズだよそれ」

『すっげぇ独特な語彙』『ペロッ、これは少女漫画の味』『ユキも少女漫画を読んでいた……?』『いやこれSNSの漫画だぞ』『商業化してるぞ』『どうしてそんなに詳しいんだお前ら……』

 

 両前脚で目を隠すようにして、蹲ってしまったヴォルフさんの頭を叩く。だが悲しいかな。攻撃にも満たない判定なのか、一向に状態異常は発生しなかった。あと俺は漫画は買ってない、沙織の家では読んだだけど。

 

「雑にマッピングしつつ他のプレイヤーもしつつ、探索といきましょうか」

「まだなんか頭の上で蠢いてる気がするんだが……行くか!」

 

 立ち上がりそう言ったヴォルフさんの頭に、まだ2、3匹分身が残っていることを本人はまだ知らない……

 

『まだ付いてるぞ』『やったなヴォルフ、ハーレムだぞ』『TS複製っ娘のハーレムとか……唆るぜぇこれは』『性癖を拗らせた仙空やめて』『爆発しろ(反射)』『シャレにならない爆発で草』

 

「まだ付いてるじゃねぇか!!」

「ハッハッハ!」

 

 視聴者=サンによって企みは一瞬にしてバレてしまった。けれどまあ、やっぱりこう言う雰囲気は楽しいものだ。あっ、ボス部屋発見。それにしても、この階層1階より狭い気がする。

 

 

 《ダンジョン『徘徊する残骸の聖堂』》

 《現在のダンジョン内にいるプレイヤー : 6》

 《ダンジョン難易度 : 8/10》

 《ダンジョン踏破率 : 76%》

 《ダンジョン階層3/5》

 

 アストによく似た2階層にいたボスを、1限界突破した性能差で10分とかけずゴリ押し瞬殺して突破した後。俺たちは、明らかに1階層の半分程度しかない3階層を攻略していた。

 

 そして、そこで最大の問題に直面していた。

 

「ヴォルフさん! 6時方向から18、3時方向から5、8時と11時の方向からもそれぞれ3! 通路爆破して時間稼ぎますけど、猶予がもう無いです!」

「分かってる! だがこいつらも、一筋縄じゃ、ねぇ!!」

 

 ヴォルフさんが斬り結んでいる相手は、この狭い通路の中で器用に銃剣を咥えた狼達。10回ほど重ね掛けした獄毒のお陰で倒し、残り2匹となったヤツらの名前は【The religion's bayonet】。このモンスター達が、第3階層を牛耳るボスモンスター達だった。

 

 そう、ボスモンスター達である。徘徊するの名を持つダンジョンの例に漏れず、当然彼らも無数に存在する。第1階層の半分ほどの広さになっている、この第3階層に。それがどのような結果を招くか、それが俺たちの今直面している問題だった。

 

「だらっしゃぁぁぁ!! 後1匹、デバフ!」

 

 剣の状態に変形したヴォルフさんが、前に出張ってきていた1匹を両断する。

 

 高めの状態異常耐性、高耐久、中火力、高敏捷、全距離対応の物理型と平均的な性能のボス。ただそれが、狼の形をしているというせいか()()()()()()。今のようにたった2人のプレイヤーを追い詰める為に包囲もしてくれば、3匹で同時行動しながら深手を追えばその個体が後ろに下がり回復をはかる。

 端的に言って、死ぬ程厄介だった。コメントを読む暇もない。

 

「仕留めて下さいね!」

 

 それでも、仕留めなきゃリスポーンだ。だからこそ、なんとか捻り出した20匹の分身を突撃、自爆させる。ボスへのダメージは軽微、ただその代わりに無数の状態異常が点灯する。

 獄毒が18、移動速度低下も15、呪詛が28に、畏怖が15。最大HP・MP減少がそれぞれ20と少し、裂傷が5。状態異常重ね掛けの最大個数が400と少しなので、随分とレジストされてしまった。

 

「任せなぁ!」

 

 当然、爆発で怯んだ状態でそれほどの数のデバフを受ければ、これが3度目であろうとボスの動きを封じられる。そして動きさえ止まってくれれば、ヴォルフさんというダメージディーラーが遠慮なく動ける。

 

「ぶった斬る!」

 

 とっくにRP(ロールプレイ)など剥がれた口調で、動きの鈍ったボスにヴォルフさんが連撃する。ダメージ量は……足りている。スリップダメージ込みなら、凡そ40秒ほど時間を稼げばなんとかなる。

 

「でもそれじゃ、ちょっと時間掛かり過ぎる。分身行きます!」

「大技、溜め5秒!」

 

 追加でまた分身を20匹を捻り出しスーパーカミカゼアタック。更にほぼ同数の状態異常を重複させる。僅かに自爆の時間をずらして、ノックバックを増やしつつ数秒の時間を稼ぐ。

 同時に、迫ってくるボスに振り分けている400匹程の分身も、精密さは犠牲にして操作。通路崩壊で障害物を増やし、移動速度低下の状態異常で更に足を遅くさせる。本当ならもっと計算して綺麗な爆破にしたいのに、ああもう手も火力も足りない!

 

「インパルス、ベガッ、スラアァァァッシュ!!」

 

 だからこそ、火力に特化したヴォルフさんの存在が非常にありがたかった。光の刃を生やし、動きが非常にスロウになったボスの首を一閃。クリティカルヒット特有の大ダメージを発生させ、返す刀で素っ首を叩き落とした。

 

「よし、行きますよ!」

「ハッ、休む暇もねぇな!」

「現在進行形で足止めしてる俺に言いますそれ!?」

「違いねぇ!」

 

 そんな戦闘の名残を吹き飛ばすように、獣状態へ戻ったヴォルフさんと共に駆ける。駆ける。駆ける。既にこの階層のマップは共有済み、目指す場所は下層へ続く階段だ。

 

「階段まで行けば、偵察した限り安全地帯です!」

「間に合えばいいんだがなぁ!」

 

 この階層にはゲートキーパーとしてのボスはおらず、分身は行かせられなかったが多分次の4階層も同様だ。ボスとの連戦は流石にないだろう。つまり、実質ここと次を乗り越えればダンジョンクリア。先が見えてきた。

 今のところ、他のプレイヤーの姿もなし。追って来れるなら追って来るがいいの精神で、変形狼と蜂の姿で狼の階層を突き抜けて行くのだった。

 




毎日1個は新しいスキルが見つかるせいで、基本的に仕事をスキル名の一覧くらいしか作ってない検証班。その結果出来ている攻略サイトの一部がこれだ!

スキル名【大鎌】
《取得方法》鎌スキル+一定練度以上の長柄の武器スキル(長杖・槍・棒等)が合体して変化
《備考》自分が大鎌っぽいと思う動きで長柄武器を使っていると生えます。最短10分、最長記録は現在も更新中。
ただ、草刈りをしていたら前提条件を満たしていなくても生えた前例があるので戦闘が不要な獲得手段もあると思われる。
《注意》鎌スキルをそのまま使っていても発生しません。鎖付きブーメランなどの謎のスキルが生えます
《派生》現在調査中

 情報提供を強く望みます

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