幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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今更ですが、ユッキーのバイクはツェンダップKS750です。

【擬人化朧ちゃんツンデレヒロインルート概念】
最近の感想を見てたら生えていた謎概念です
ご精査ください


第154話 勉強なんかしてる場合じゃねぇ

「やっぱり、ずるい、です」

 

 いつも通りギルドホームで藜さんに勉強を教えつつ、爆弾の追加製作をしていた時だった。丁度やっていた部分がひと段落着いたところで、遂に堪えかねたようにして藜さんは言った。

 

「抜け駆けで、デートなんて」

「それはその、なんか、すみません」

 

 爆弾の作成は朧の分身体に任せて、頭を下げる。なんというか、そうしなければいけない凄みがあった。他の人には、感じられないような気がするけど。

 

「別に、ユキさんは、悪い、ですけど、悪くない、です。私と、セナさんとの、問題でした、から」

「それは、そうらしいですけど」

 

 それでも何処か、藜さんの不満気な様子は否めない。何とかしてあげたいけれど、俺に出来ることなんてそう多くない。時期が時期なだけに、というよりも一触即発な時期である以上、リアルの方で招く訳にもいかないし……

 

「じゃあ、どこか気晴らしに出かけま──」

「行きます!!」

 

 と、そんな苦し紛れの提案に、藜さんは食い気味で返事をした。提案しておいてなんだけど、いいのだろうか? それくらいのことで。

 

「なら何処にします? あまり高難度のマップだと、辿り着けないかもしれませんけど」

「えっと、なら、新大陸、行ってみたい、です。エルフが、見つかったって、聞いてて!」

「確かに、そんな噂は流れてましたね」

 

 昨日か一昨日か、なんとなく見ていたUPOの掲示板にそんな情報が出ていたような気がする。新大陸と聞いて飛びついたギルド……確か、【コンキスタドール】とか書いてあったっけ。顔面が土砂崩れを起こしているような、船の錨が武器のプレイヤーがギルドマスターと纏められていた筈だ。どうしてだろう、キャラクター性に既視感しかない。

 

「それに、ユキさんの、プレイヤーホーム、道中に、寄れます」

「俺以外が寄っても、あんまり楽しい場所じゃないですよ?」

 

 と一応言ってみるが、この程度で藜さんが折れる筈もなく。()()()当然のように持っていた渡航権利を手に、期待に満ちた目をされてしまえば……断れる筈もなかった。

 そうして、小雨が降り出した中。第6にまでは転移で向かい、障壁で風除け雨よけを作りつつ、アクセルを全開にした。移動速度重視の為に愛車(ヴァン)は単車状態である。

 

「こう、してると、なんだか、懐かしい、ですね」

「言われてみれば。最初に会った時も、こうバイクに乗りましたね。徘徊ボス相手で、必死でしたけど」

 

 天候に助けられてどうにか倒せた鹿型のボス。今ならもっと楽に倒せるだろうか。藜さんは。俺は相変わらず苦労する未来しか見えないけど。

 

「ふふ、ですね。そういえば、最後の、バトルロイヤル。あの時の、マップで、やるん、でしたっけ?」

「らしいですね。かなり広かった記憶がありますし、全プレイヤーが同接しても大丈夫なんでしょう」

 

 ……うん? あのマップが使われるってことは、普通に徘徊ボスいるんじゃ。しかも多分この運営なら、Lv80でも勝てないクラスにバージョンアップして。噂にだけ聞く天界と、懐かしい死界もそのままの筈。なんだろうか、何かこう、見えない地雷が埋まってる感じがする。

 

 なんてことを考えているうちに、街周辺のマップは抜けて、潮風の匂いがするマップへと切り替わった。本来ならここまで来るだけで多数の高レベルmobに絡まれるから、速度重視プレイヤーでもなければこうはいかない。ペット化しても愛車は優秀である。

 

「そういえば、船、乗るんですか?」

 

 上機嫌にエンジンを吹かす愛車を煽てていると、耳元で藜さんがそんな質問を投げかけてきた。ぞわぞわっと謎の感覚が走るけど、下手に動けば即クラッシュしてしまうのでなんとか抑え込む。念のため、愛車(ヴァン)をオートパイロットモードにしておく。

 

「いえ、このまま海を走って行きますね。船での行き来、結構揉めてるらしいので」

「そうなん、です、か?」

「元々運営が用意してた物だけじゃ間に合わないらしくて、幾つもギルドが乗り出してきたとか」

 

 そのせいで今は【モトラッド艦隊UPO支部】で、バイクの製造販売を行っていないとヴァンがペット化した報告をしに行った時に聞いた。曰く『交通手段として欲されるのは吝かではないが、転売屋が出たから中止した』とのこと。世知辛い物である。

 

「ギルマスがピンときた人には作ってるみたいですけどね」

 

 最近だと髪型が蟹っぽいプレイヤーの紹介で、髪型がトマト・ナス・バナナ・紫キャベツによく似た4人組に作ったらしい。全員が召喚術特化プレイヤーと聞いて、なんとなく理由は分かった。

 

「でも、私たちには、関係、ない、ですね!」

「ですね」

 

 れーちゃん以外の全員が、海を渡る手段を持っている辺り流石である。特に最近ランさんは、ASTNGエンジンと全地形対応エンジンという謎のパーツを積んだおかげで、試しに発生させた宇宙空間でも難なく強化外装で動けるようになったし。それはもう、ほぼオリジナル7なのでは。

 

「っとぉ!?」

「きゃっ!」

 

 そしてまたマップが切り替わり、一面の煌めく海が姿を現した。瞬間、目の前にポップした敵を愛車(ヴァン)が轢殺し、車体が大きく跳ねた。その弾みで藜さんが回した腕に力が入り、ギュッと強く抱き締められた。

 ……どうしよう、結構恥ずかしい。単車に相乗りしてる都合上仕方ないけど、思ったより密着度が高い。この前のセナとのアレのせいか、否応無く意識してしまう。脳内で都知事の「密です」警告が止まらない。ああ濃厚接触、Social distance……違うそうじゃない。

 

「今、セナさんのこと、考えて、ました、よね?」

「……なんでバレるんですかね」

 

「当然、です。だって、好きな人の、ことですから」

 

 誤魔化すように回していた思考が、一瞬完全な空白になった。

 

「ベタなことを聞きますけど。それは、Likeの方ではなく?」

「当たり前、です」

 

 そう、ストレートに好意をぶつけられて。何も言葉が出せなかった。覚悟を決めると決めたそばからこれだ。情け無い。

 本音を言えるのなら、嬉しいに決まっている。最低な発言ではあるけど、藜さんのことが……というより空さんのことが好きか嫌いか。そう問われたなら、好きだ。嫌える筈もない。そうでなければ、余計なお金、時間、手間、そして訴えられるリスクまで全部承知で、我が家に泊めたりするものか。

 

「正直、良くない恋だって、分かってます。

 不安な、進学の時期に、弱みを突かれた……結局、それだけかも、しれません。

 それでも、初めて、なんです。好きだなって、思ったのは。怖くないって、思ったのは。初恋、なんです。諦めたくない、諦めたくない、じゃないですか」

 

 背中から響く声は、途中から涙ぐんで。背中にはコツンと頭が当てられる感覚、ジンワリと広がる暖かくて冷たい感覚と、小さな揺れ。それだけが、海の上を走り始めた中感じられるものだった。

 

「………、俺は──」

 

 どう、答えればいいのだろうか。分かっているのは、簡単に好きと言ってしまうのは駄目だということ。そんなのは2人に対する侮辱である。もう1つは、もう否定はしまい。白旗を挙げる。俺自身は2人とも好きだ。

 だからこそ、どちらかを……いやこの言い方は烏滸がましい。どちらに答えるか、決められない。昔から隣にいてくれる沙織(セナ)か、セナ以外で初めて真っ直ぐに好意をぶつけてくれる()さんか。というか、2人とも俺には勿体無すぎる。

 

「答えは、まだ、いらないです。これは、私の、独り言、ですから」

「ですけど、」

「それに、これで、意識して、もらえたなら。それだけで、今は、満足です」

 

 聞こえてくる声からは、涙の震えは無くなっていた。そして藜さんの思惑通り、もう意識しないなんてことは出来ない。

 そんな、気恥ずかしい沈黙が満ちる中。丁度良いタイミングで、新大陸が見えてきた。旧大陸海岸から大体300km超、それを20分くらいで着くのだから早いもの……冷静に考えて、紋章の加速込みだと旅客機の速度が出てるのか。こわ。

 

「や、やっと見えてきました。あれが新大陸ですね」

「そう、ですね。あ、そうでした。エルフと言えば、ユキさんも、好き、なんですか? エルフ耳」

 

 ここで、そう話題を変えられたのは良いことだと思う。それにしても、エルフ耳かぁ……

 

「創作物としては、結構好きですね。分かりやすい特徴ですし」

「なら、やっぱり、胸は大きい、方が?」

「いや、なんでそうなるんです? ……そういうのは、好きになった人によりますね」

 

 中々に危険球なサーブはそう返しておく。本音のところはそうだし、何も嘘は言ってない。気にしてもいないし。ただ、昨今のエルフの森を焼くムーブは嫌いじゃないけど、巨乳エルフは正直如何なものかと思う。昔からエルフと言えば、金床のような胸が鉄板ではないだろうか(ドワーフ流ジョーク)

 

「なら、良かったです」

「あはは……」

「それじゃあ、最後に。少しだけ、後ろ、向けます、か?」

「それくらいなら」

 

 走ったままでも問題ないと、後ろを振り向いた直後だった。直ぐ目の前に、藜さんの顔。そして、口に柔らかな感触。時折リアルで会った時と何ら変わらない、花のような香り。そして視界に出現した、ハラスメント警告の表示。

 詰まる所、ファーストキスを奪われていた。男のそれに何の価値があるかは知らないけど。もうお嫁にいけない……? うん???

 

「ユキさんは、初めてじゃ、ない、らしいです、けど。私の、初めては、あげます」

「え、いや、その、そんな……うん? ちょっと待ってください。少なくとも、俺の知る限りこれまで、誰ともそういうことした記憶はないんですけど」

 

 驚きて思考がまとまらないし、頬を赤く染めた藜さんを否応にも意識してしまうし、いやでも、それより初めて云々の方が重要だ。どれだけ記憶を遡っても、俺からした記憶も、された記憶も……母親はノーカンとして、それ以外は無い。無いはずなのだ。まさか、いやそんなまさか。

 

「? でも、セナさんが、寝込みを、襲ったって」

「…………マジデスカ」

 

 え……? 何? 俺、寝込みを襲われてたの……?

 えっ……?

 えぇ……???

 可能性は否定しきれないと思ってたけど、マジで……?

 マジでしてたんですか沙織さん……?

 

 驚愕に包まれながら会いに行ったエルフには、まるで親の仇のような総攻撃を受け、帰り道に件の顔面土砂崩れギルドマスターと遭遇し、一応プレイヤーホームを紹介し、何故か朧に一回爆破されたが、その日は無事に幕を下ろしたのだった。

 

 翌朝、知らなかったのは俺だけであったことが判明した。

 




セナ「ムラムラしてやった。後悔はしていない」

全く関係ないですが、
ポッと出のヒロインに長年焦がれていた相手を取られて「私の方が先に好きになったのに」ってボロボロに泣いちゃう幼馴染系ヒロインっていいですよね。

そして全く同じくらい、
幼馴染が好きな相手との恋に破れて「やっぱりダメだった、勝てなかったぁ」って泣いてるのを親しい人に慰められる初恋系ヒロインもいいものですよね。
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