幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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観客席
彼女(彼)百合ではない(無言の腹パン)
vs
男だろうが女の子として扱えば女のコになる
ふぁいッ!

あと今回は、時たま感想欄で見た『極振りが普通のステータスでプレイするとどうなる?』の解答です。PSおばけめ……


第156話 百合(造花) vs 百合(SM)

 期せずして進んでしまったパーティ部門決勝戦。

 出来る限り(おれ)を演じながら、数回繰り返した舞台へと登っていく。周囲より一段だけ高くなっているそこは、さっきから何度となくPvPを繰り返した場所。

 脳内が宇宙猫している中、思い返すのはこれまで連続して勝ってきた5回戦。本当に、何でここまで勝ち進めてしまったのだろうか。

 

 1回戦目は、レベル70程度の4人組が相手だった。構成は剣を持ったパワーアタッカー前衛1、短剣持ちのスピードアタッカー前衛1、魔法アタッカー1、ヒーラー1のバランスが良い編成。

 前衛2人をバフを掛けたイオ君が足止めしている間に、魔法アタッカーとヒーラーをヘッドショット。消化試合だった。

 

 2回戦目は、レベル80の6人組。4人が前衛のアタッカー、2人が魔法アタッカーのフルアタ編成だった。

 バフ全開のイオ君が足止めしている間に、狂気系の魔法を発動。相手が対策をしておらず抵抗に失敗したお陰で、ズタボロになったところをイオ君が殲滅した。

 

 3回戦目は、同じくレベル80の6人組。回避盾1、パワーアタッカー1、スピードアタッカー1、ヒーラー、魔法アタッカー、サポーター完備の完璧な編成。

 当然イオ君や自分自身へのバフは全開、デバフや妨害系のクトゥルフな魔法も連発しながら、狙撃するという凄まじい手間を要した。今にして思えば、多分ここで負けておくのが正解だった気がする。

 

 そして4戦目が今だ。

 ため息を吐くなんてことはせず、気を引き締めて反対側から入場してきた相手を見る。大鎌を担いだメイドと、メカメカしい装備を着込んだ弓使い。……そういえば、塔イベントの時に戦った記憶があるような。

 

「しらゆきちゃん、先に謝っておきます。今回ばかりは僕、あの人を足止めしきれる自信がありません」

 

 これまでの戦績と言動からして分かる通り、イオ君はUPOに於いて絶滅危惧種どころかほぼ絶滅した能力構成(ビルド)をしている。

 即ち、直受け盾役(タンク)。高火力が溢れて防御貫通がそれなりにある高レベル帯だと、多分セナの影響も大なり小なりあり回避盾が優遇されている環境なのにだ。下手に攻撃を受ければ即死する可能性が秘められている環境上、直受け型のタンクは一部の変人か極まったプレイヤーにしか許されていない。

 

 防具やスキルによる補正限界であるダメージ70%カットに加え、槍と盾の(アーツ)を交互に使うことにより被ダメ90%カットを常態に。それでいて、ただの案山子にならないよう、攻撃に対応する為の速度(あし)も十分にある。無論それだけでは不十分だが、HPMP共に莫大なリジェネを誇っているため問題ない。

 

「大丈夫ですよ。ここまで来れただけでも、十分ですから」

 

 そんな、こちらが後衛に徹するには有り難すぎる前衛であるのだが。当人が止められないかも、と言った理由は相手にある。

 確か大鎌持ちの方は、被ダメージ毎にバフが掛かるスキルと、リジェネタイプの回復をしつつクリティカルでダメージを加速するタイプ。しかも大鎌という武器を使うからか、即死攻撃持ちだ。とことんイオ君との相性は最悪である。

 

 加えて後ろの弓使いは、マルチロックオンが可能な精密射撃をそれなりの火力でしつつ、水とか氷系の魔法を使うプレイヤーだった筈。即ち、(ユキ)の天敵だ。もぅマヂ無理、自爆しょ……

 確かに効果的なのだ、自爆って。とりわけ残機がほぼ無限にあれば。それこそやりたい放題である。今回は正体バレするから使えないが。

 

「全くもう、冗談言わないで下さいよしらゆきちゃん」

 

 そんな過去を思い出していると、そんな言葉とともにイオ君にガッチリと肩を掴まれた。どうしよう、全ステータスが平均化するデバフが掛かってるはずなのに動けない。パワー負けしてる。それにこの目は、イオ君のこの目はやばい。光が完全にない。

 

貴女が僕を巻き込んだんですよ? あの時みたいに。そうあの時みたいに。忘れてないですよね、ねぇ? 僕がこうなったの、貴女のせいなんですよ貴女の。なのに今更降りるってやめて下さいよ。ねぇ、しらゆきちゃん。冗談よね? ねぇ? ねぇ?

 

 正直セナと藜さんに比べれば劣るが、圧が、“圧”が凄い。こんなもの、耐えられるわけがないじゃないか。断れない。そしてそんな内心の動揺を読み取ったのか、なんか涙まで出てきた。

 

『おおっとここでチーム【百合花ァ!】にヤンデレ属性が追加だぁぁぁ!! 新進気鋭のプレイヤーしらゆきは押しに弱いと見た!』

『あれがヤンデレかは審議に値すると思いますが?』

「「そうだそうだー!!」」

 

 どうしてギャラリーは盛り上がっているのか(宇宙猫)

 どうしてイオ君は顔を赤くしているのか(ツインドライブ)

 そしてどうして、こんなにも背筋が凍るような感覚がしているのか。えっ、これもしかしなくても、セナと藜さんに見られてる? ま? ……この寒気、本当っぽい。

 

「ひっ、ぁ、はい。頑張ります」

「わかってくれればいいんです、理解(わか)ってくれれば」

 

 一体天使だったイオ君に一体何が。真相を確かめるべく、我々はアマゾンの奥地に……向かわなくても何となくわかる気がする。

 火薬と爆発の気配を感じながら、気を引き締める。無様な戦いはもう出来ない、ならば本当に優勝を目指して頑張るのみ。そんなことを考えながら、バトルフィールドに足を踏み入れた。

 

『それではこれより、決勝戦の開始を宣言する!』

 

 そんな思いを内に秘めながら、決勝戦の幕が上がる。

 まあ、あれだ。2人に見られているのなら、無様に負けることは論外だ。俺だって、情けない所とかっこいい所のどちらを見てもらいたいかと聞かれれば後者だし。

 

「《フルカース》《フルエンハンス》んー……今作りましょう。《デスレジスト》《ヒットレートダウン》」

 

 だからこそ、戦端が開かれた直後に仕掛けた。

 即座にバベルとNekoに掛かってしまえば全ステータス-40%という、驚異の弱体紋章を叩きつける。まあこれ【コート・オブ・アームズ】のデフォルトだけど。

 対しイオ君と自分には全ステータス40%上昇という規格外の強化。こちらもデフォルトだけど。

 更にイオ君には即死耐性を付与する即席紋章を、バベルには即死成功率低下の紋章をカップ麺感覚で作って投げつける。

 

「弾かれましたね……なら、掛かるまでいきましょう」

 

 当然彼らとて、最前線で戦うプレイヤー。デバフには全て抵抗し、10%程度の低下やそもそも完全抵抗にすら成功されてしまった。

 が、それくらいは想定済みだ。即座に追撃のデバフを連射。一瞬で己がMPを空にするまで連打するという普段なら絶対にしない暴挙で、全ステータス30%ダウン程度にまでは無理矢理持ち込んだ。

 

「にゃぁぁ! ストレス発散斬り!」

「《ファランクス》!」

 

 大鎌を持った刺青メイドであるバベルと、銀トレイと水モップを構えたメイドのイオ君が激突する。片やパッシブスキル全開の、クリティカル威力と即死攻撃特化型。片やアーツとスキル全開の、常時被ダメ9割カット&超耐性&再生の堅実なタンク型。

 

 その第1合の優劣の天秤は、当たり前にイオ君に傾いた。

 

「即死がなければ、この程度の威力は怖くない!」

「何をこのぉッ!?」

 

 大鎌の一撃を、モロに直撃して不動。余裕を持って一撃を受け止め、特にバランスを崩すことなく反撃の槍撃が突き出される。そしてその攻撃までの間に、9割カット状態で受けた僅かなダメージは完治している。

 しかしそれだけの堅牢さを誇る反面、イオ君の攻撃能力は低いとしか言いようがない。現に、バベルへ与えたダメージは精々300かそこら。回復速度的に多分同じリジェネスキルによって、その程度であれば3秒あれば完治するのがメイドの真骨頂らしい。メイドとは。

 

「……よし、鑑定完了」

 

 バベルとNeko双方のスキルとステータスを、耐性を突破して把握。なるほど、Nekoの方はダメージを負えば負うほど【被虐体質】のスキルで全能力が上昇すると。

 

「ボイスメッセ起動。『イオ君、その人持久戦特化型みたいです。被ダメ回数毎に全ステが5%上昇します』」

「了解です」

「この程度で、私を止められなんて──ぶっ」

「思ってませんよ、だからこうするんです。《ディスペル》《光牢》」

 

 我が意を得たりと、バベルが奮起した瞬間にイオ君が割り込んだ。出鼻をくじく為に顔をモップで打ち、バフを消去し、封印スキルにより移動を妨害する。

 

「《メイドによる別れの挨拶》《4連突き》」

「うわ、きゃっ!? しかもまた移動速度デバフじゃん!」

 

 その上で足払いを敢行し転倒させ、正確に四肢全てに槍撃を撃ち込んだ。その結果、低下を重ねる移動速度。こちらのデバフを込みで、通常時の30%にまで低下した速度で、無慈悲に打ち込まれるモップを避けられるはずもなく。

 

「こんのッ、《死閃──」

「《武器払い》《鹿威し》はい。嵌め殺しです」

 

 乾坤一擲で振るった大鎌は、モップに絡め取られるようにしてステージの端にまで吹き飛ばされた。おまけとばかりに大回転したモップがその左手までをも欠損させる。

 結果、残るのはDPS的に死ぬことがないだけのプレイヤー。回復アイテムがあれば別だが、残念ながら今は使用不可能である。不死身なんてもの、一定以上に実力が開けばサンドバックにしかならないということを、嫌という程に証明していた。

 

バベル(タタラ)!」

 

 無論そんな相方を前に、後衛の弓使いの……Nekoも何もしていなかった訳ではない。魔法で氷霧の煙幕を張り、自身と相方のデバフの消去を試みつつ、多重照準による連射で援護射撃を行いつつ敵対者を狙い、時には類稀なる強弓で(おれ)ごと撃ち抜かんと矢が走る。

 

 その対応に間違いはない。初動が僅かに遅れたことを除けば、正しいことを正しい時に、正しいままに行なっていた。(おれ)は後衛としては3流だから、正確に判断できていない気もするけど。

 

「まあ、対処できますけど」

 

 3点バーストで連射される大型ライフル。技系スキルによる補正はない。普段であれば使う紋章の補助すら最低限だ。ただそれでも、8割型の矢は撃ち落とせていた。

 範囲魔法に対しては《被害を逸らす》という狂気系の魔法で5指に入る使いやすい防御魔法で防ぎきり、お返しに《破壊》という大ダメージ&詠唱妨害の魔法を叩き込む。

 おまけとして、手慰みにディスペルされた直後に紋章によるバフとデバフを更新。これくらいなら標準的標準的。普段俺に接触してくる紋章術師も、大体これくらいは出来る出来る。

 

 なんてことを考えながら、淡々と。

 実況を聞かないくらい集中して、粛々と。

 普段はステータスの縛りでできないことを満喫しながら、精密に。

 イオ君の足止めと、攻撃を庇ってもらう事による安全性を最大限に活かしながら、いつもとは違う愛銃で撃ち抜き続けた。

 

 第1回PvPイベント

 初回パーティ部門優勝パーティ【百合花ァ!】

 メンバー : イオ(リーダー)

      しらゆき

 




しらゆきちゃん状態だとユッキーは常時、楽しいRPをしつつ『正義の逆位置』下にありますよ!

【運命のタロット】
 鑑定&看破能力
 必要MP10 リキャストタイム5s
 全てがランダムに選択されて判断され、全てに抵抗判定が存在する。そして、宙から舞い降りたカードをアバターのどこかで触れることで発動する。同じ効果を重ねがけは不可。
 ただ、流石にLuk3万もあれば自由選択。
 基本的に効果は、死亡するまで続く

正位置/逆位置
0愚者
戦闘終了まで自分のスキル枠1つ追加(相手任意)
戦闘終了まで相手のスキル枠1つ消失(相手任意)
剣  武器スキル1つ選択
聖杯 防御スキル1つ選択
杖  魔法スキル1つ選択
硬化 補助スキル1つ選択

1魔術師
相手のMPに魔法ダメージ
自分のMPに魔法ダメージ

2女教皇
味方の属性攻撃・スキル強化30%(重複不可)
相手の属性攻撃・スキル強化30%(重複不可)

3女帝
戦闘終了まで対象の攻撃のヒット数減少(1/3)
戦闘終了まで対象の攻撃のヒット数上昇(3倍)

4皇帝
所属PTメンバー全員のHPMPを回復
敵対PTメンバー全員のHPMPを回復

5教皇
味方の属性防御・状態異常耐性強化30%(重複不可)
相手の属性攻撃・状態異常耐性強化30%(重複不可)

6恋人
自身の攻撃に1分間10回の追撃効果
相手の攻撃に1分間10回の追撃効果

7戦車
発動後30秒間HPが0にならない
30秒間被ダメージ&ヘイトが極めて上昇

8力
相手のVit・Minを0にしStr・Intに加算する
自身のVit・Minを0にしStr・Intに加算する
※0にするのは基礎能力

9隠者
相手にスーパーアーマー(10秒)
自身にスーパーアーマー(10秒)

10運命の輪
自分のスキル発動までの時間加速(10回)
相手のスキル発動までの時間加速(10回)

11正義
相手のステータスを平準化
自分のステータスを平準化

12吊るされた男
相手に掛けられたバフ/デバフを全反転
自分に掛けられたバフ/デバフを全反転

13死神
相手に即死効果
自分に即死効果

14節正
相手の行動を5秒間全封印
自分の行動を5秒間全封印

15悪魔
相手のHPとMPを反転させる
自身のHPとMPを反転させる

16塔
相手のHPに魔法ダメージ
自分のHPに魔法ダメージ

17星
10秒間相手のStr・Intを0にしVit・Minに加算する
10秒間自分のStr・Intを0にしVit・Minに加算する
※0にするのは基礎能力

18月
効果発動から時間経過で全ステータスバフ
効果発動から時間経過で全ステータスデバフ

19太陽
30秒間真紅の太陽を発生させ、その光を浴びている間HPMP回復1%/1s
30秒間漆黒の太陽を発生させ、その光を浴びている間HPMP減少1%/1s

20審判
相手のスキル発動ストップ(1回10秒)
自分のスキル発動ストップ(1回10秒)

21世界
30秒相手のリキャストタイムが1/2
30秒自分のリキャストタイム1/2

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