幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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投稿遅れてすみません。許してくださいなんでも…これ以上いけない

まさか、バレーで満身創痍になるとは思わなんだ(右足首軽捻挫・左膝激痛・肩の痛み・筋肉痛)


第13話 すてら☆あーく②

 ① ログインする。

 ② ギルドホームから外に出撃する。

 ③ 死に戻る。

 ④ ドロップしたレアアイテムをギルドの倉庫に放り込む。

(因みに倉庫というのは、ギルドに存在するアイテムを大量に保管できる場所の事)

 ⑤ 通常素材を売り払う。

 ⑥ 外に出撃する。

 ⑦ ③に戻り以後ループ

 ⑧ 時間をみてログアウト

 

 俺がギルドに加入してから4日、何をして過ごしていたのかを纏めると大体こうなる。多少色んな人と話したりもしたが、殆どやっていたのはこの作業だけだ。

 なんでレアアイテムをギルドに放り込んでいるか? 手持ちのアイテム欄の枠を爆弾やら状態異常誘発アイテムに食われてる以上、折角のレア泥も枠を圧迫する邪魔物でしかないからだ。

 

「ふぅ…」

 

 売り子のNPCさんしか気配のないギルドホーム、そこで俺はため息とともに腰を下ろした。さっき考えてたようなことを、基本的には一人でずっとこなしていたのだ。偶につららさんが手伝ってくれたけど、それでも疲れもする。

 

 因みに、そうまでして集めたお金はもう2,000Dしか残ってない。スキルは高いし、アイテムないと戦えないし……難儀なものである。セナや最後のギルメンさんと協力できればもっと楽なのだろうが、ログイン時間と狩場が噛み合ってないため、最後のギルメンさんに至ってはゲーム内で会ったことすらない。

 

「ん」

「ありがとう、れーちゃん」

「ん」

 

 立ち去る小柄な姿にお礼を言い、俺は持ってきてくれたお茶に口をつける。

 数日このギルドで過ごし、れーちゃんについて俺がわかったことは殆どない。セナより小さく髪も瞳も黒く、服装まで白黒ドレスのこの子は、なにせ「ん」としか喋ってくれないのだ。幸い表情の変化もジェスチャーもあるからできないことはないけれど、意思疎通が非常にし辛い。

 

 故にわかったことは「呼び方はれーちゃんじゃないと不機嫌になる」くらいのものだ。教えてもらったことを含めると「お兄さんと一緒にギルドに入った」のと「生産職系のプレイヤー」というのもあるけれど。

 

「さてっと。それじゃあ行きますか!」

 

 湯呑みをNPCのお姉さんに渡し、長杖を手に立ち上がる。そうして外へ踏み出そうとしたとき、じっとこちらを見つめる視線を感じた。何かと思い振り返ると、れーちゃんがジッと俺のことを見ていた。

 

「えっと、何かしちゃったかな…?」

「ん」

 

 れーちゃんは首を振り、俺の持ってる杖を指差す。

 

「この杖?」

「ん」

 

 コクコクと頷き、後ろを指差し、ついでに手をバタバタさせる。そしてゴトリと、カウンターの上にハンマーが置かれた。

 

「もしかして、作ってくれる…ってこと?」

「ん」

 

 またしても正解らしく、首が縦に振られる。そして背後にある倉庫を指差し、次いで手が大きく円を描くように動かされる。

 

「沢山素材…多分レア素材? がある……いや、持ってきてくれたから?」

「ん!」

 

 どうにか読み取れたことは合っていたらしく、頷きながらとてもキラキラした目を俺に向けてくる。いや、そんな期待した目を向けられても、俺はそんなに正確には読み取れないからね…?

 そんな俺の気持ちは伝わらず、何かをジッと目で訴えてきながら必死に倉庫の方向を指差している。これは……

 

「素材を、どれくらい使っていいかってこと?」

「ん!」

 

 凄いぞ俺の想像力。なんて冗談は置いておくとして。

 どれくらいかと聞かれても、実際どれくらい使うのかを俺は知らない。【レアハンター】なんて称号をゲットする程色々集めてきたけれど、それらの使い道が売却くらいしかないのもまた事実。

 

「折角だし、俺が持ってきたヤツなら全部使っていいよ?」

「ん!!」

 

 結果、全部好きに使っていいよと言うことにした。

 森の中を散策してるときに拾ったなんか良さげな木(神秘の木材)とか、嵌め殺したデカイ蜂の針(女王蜂の猛毒針)とか、ヤバげな蛇の寝ぐらからの盗品(蟒蛇の酒)とかetcetc… そんなアイテム群を売るなんて勿体無い。活用してくれるに越したことはないだろう。

 そんな思考を巡らす俺の前から、嬉しそうな様子で倉庫の方向へれーちゃんはとててーと走っていってしまった。なんだろう……れーちゃんの俺への評価が、凄い高くなってる気がする。

 

「まあ、悪いことではない…のかな?」

 

 杖を作ってくれるっていうのは嬉しいことに違いないし、仲良くなるのも悪いことなわけがない。

 

 そう思いながらギルドを出た瞬間、チャキッという音とともにこめかみに何か冷たい物が押し付けられた。えぇ…今度は何さ。

 

「新しくギルドに加入した奴というのは、お前か?」

 

 視線を動かし確認すると、初めに見えたのは刀が納められていそうな柄。だけど俺の体と平行になっていることから、用途が通常とは異なっているのが分かる。そして次に見えたのが、白を基調とした和服。そして、悪そうな目つきと1つにまとめられた長い白髪。

 事前情報と合致。誰だかわかったけど、理由は全くわからない。

 

「そうですけど……何か御用ですか? れーちゃんのお兄さん?」

「ほう、そこまでわかっているのか」

 

 あ、やっぱり心当たりが1つあった。つららさんが言っていたれーちゃんのお兄さん…ランさんの特徴はもう1つ『シスコン』らしいという事もあった。もしかしたら、俺の行動の何かがそこに引っかかったのかもしれない。

 奇妙な硬直が続くこと数瞬、スッとこめかみに当てられていた何かの感触がなくなった。

 

「何、最近リアルでれーがよく話すからな。いったいどんな奴なのかと気になって見に来ただけだ」

「なるほど、そういうことですか。なんで銃を向けられたのかは知りませんが」

 

 どうにもれーちゃんが会話してる状況を思い浮かべられないが、自称兄がそう言うのならばきっとそうなのだろう。そんな風に考えつつ、俺は若干の不満を乗せて返答する。街中だからダメージは発生しないとは言え、銃を突きつけられていい気分がする人はいないだろう。

 

「すまないな。半分RPで、半分お前を試した」

「何を試したんですか……」

 

 はぁ…と溜息を吐き、俺は頭を切り替える。イベントまで日がもうないというのに、実はまだ欲しいスキルが買いきれていないのだ。レア素材を売却してないぶん、非効率ここに極まれりである。

 つまり、今ここでぼんやりしていたら、間に合わない可能性が極めて高いということだ。

 

「レベル上げか?」

「ええまあ。皆さんレベル高いですし、少し欲しいスキルもありますし」

 

 そういう面もあるので、特に否定もせずに頷く。

 第2の街であるメフテルの敵の強さの分布は、始まりの街とは多少異なる。簡単に表すなら、西>北>東>南となっている。それぞれ街の周囲の草原を抜けた先は、湿地帯、低い木の森、荒野、草原となっており、普段俺が狩りに行ってるのは森だ。湿地帯は足場が悪くて、動き辛いし気持ち悪いしで嫌いだからね。

 

「茶番に付き合ってくれた礼だ。俺も付き合おうか?」

「いいんですか? それじゃよろしくお願いします」

 

 ランさんは銃がメイン武器らしいし、そういうことなら湿地帯へ行くしかないだろう。1人で行くよりも、かなり心強い。

 結論だけ言えば、俺は最低でも普段の10倍は早く狩りをすることができたのだった。銃の掃射で敵が全滅って何さ…

 

 

「ん」

 

 イベント前日となった翌日、団子(有料)とお茶(無料)で寛いでいると、そんな一言と共にれーちゃんがひとつのものを渡してくれた。

 黒っぽい木製の長い柄の頭には宝珠を象った金色の輪形の構造物が存在し、そこに6つの輪が通されている。それの長さは大体170cmほどで、先端の部分以外は特にこれといった装飾がないシンプルな錫杖だった。素材が99%レア素材ということを除けば、であるが。

 

「ありがとう、れーちゃん」

 

 そう言っていつものように頭を撫でてから気がついた。セナにはいつもこうしてるけれど、たとえ小さい子相手であっても普通は失礼かもしれない。

 

「ん!」

 

 もしそうなら兄さんに撃ち殺されかねないと内心戦々恐々としていると、最悪の予想に反してれーちゃんは、そのまま嬉しそうな雰囲気を出しつつカウンターの奥へと向かっていってしまった。これは……セーフ、だったのかな?

 

「あれ? ユキさん、いつの間にれーちゃんと仲良くなったんですか?」

「昨日ちょっと話す機会がありまして。この杖も、そのときにお願いした感じですね。溜め込んでたレア素材全部放出して」

 

 俺の返答に驚いたような、呆れたような顔をしてるつららさんを横目に、受け取ったばかりの錫杖を軽く振ってみる。ちゃんと俺にも装備できる重さだし、地面に突くとシャランと良い音が鳴る。加えて属性と状態異常も設定されている。

 パーフェクトだ、れーちゃん。

 

「私、ふっかーつ!」

 

 カウンターの向こう側にいるれーちゃんにサムズアップをしていると、すぐ近くでそんな聞き慣れた大声が聞こえた。つららさんが大きくため息を吐くのが見え、ギルド内の空気が切り替わった。

 

「元気なのは良いけど、流石にうるさいよ…セナちゃん」

「えー…久しぶりにみんなと同じ時間に遊べるんだし、テンション上げていきたかったのにー」

 

 振り向いたら、捕まる。

 今まで積み重ねてきた俺の経験が、全力でそんな警鐘を鳴らした。今セナに捕まったら、恐らくきっと面倒な事が起きる。ならば逃げるべし。

 

 即座にそう判断し、買い集めたスキルのひとつである【潜伏】のスキルを使う。これは名前の通りのスキルで、敵からのヘイト値を抑えたり姿を隠したりするスキルだ。街中の、明るい建物内ということで効果は微妙だけど、少しで良いから保って――

 

「あ、折角だしユキくんも一緒に行こうよ!」

 

 くれなかった。こうもあっさり見つかるとか……働いてくださいよ【潜伏】さん。熟練度が足りない? あっはい。

 

「バレちゃったんなら仕方ないか。どこに行くんだ? セナ」

 

 諦めて振り向くと、そこには目をキラッキラさせたセナと、同類を見つめる目をしているつららさんがいた。うん、これはもう逃げられませんわ。

 

「んー…ウォーミングアップだし、湿地帯で!」

 

 ウォーミングアップとか言ってるくせに、この街基準で一番敵が強い場所を選ぶとか……流石としか言いようがない。

 

「分かったわ。でもあそこ、ジメジメしてて嫌いなのよね…」

「了解。でも出発前にひとつだけ」

「何かあるの?」

 

 そんなセナの疑問に答えるように、俺はひとつのアイテムを実体化させる。見栄を捨てて、便利さを追求したならこれに辿り着くのだ!

 

「また雑巾掛けされるのはごめんだから、全力で移動するなら俺のことはこれで運搬してくれると助かる」

「……絵面がとんでもないことになりそうですね」

 

 つららさんがそういうのも理解できる。なにせ俺が取り出したアイテムは、なんの改造もされていない、ただのリアカーだったのだから。

 

 イベント開始まで、あと十数時間。

 




主人公のイメージ図→旧キノ(古いキノの旅の方)
ランのイメージ図→兄さん!(ガン×ソード)

Name : ユキ
 称号 : 詐欺師 ▽
 Lv 14
 HP 700/700
 MP 675/675

 Str : 0(35) Dex : 0(8)
 Vit : 0(19) Agl : 0(10)
 Int : 0(57)Luk : 330(956)
 Min :0(25)

《スキル》
【幸運強化(中)】【長杖術(中)】
【投擲】【付与魔法】【愚者の幸運】
【サバイバル】
【ドリームキャッチャー】(チケット)
 AS(アクティブスキル)
 自身の組んでいるPTメンバーの弱体効果を全て吸収する
 Luk上昇 5% ×(吸収した弱体効果の数)
 戦闘中一回まで発動可能
 効果時間 : 戦闘終了まで
【潜伏】(購入)
 潜伏する。敵からターゲットされにくくなる
【固定ダメージ強化(大)】(購入)
 固定ダメージを強化する
【ノックバック強化(中)】(購入)
 ノックバックを強化する

 -控え-
 なし

【錫杖〈夜天〉】
 Str +35  Min +17
 Int +57
 属性 : 闇
 状態異常 : 毒
 耐久値 480/480

 レア素材の暴力()

 称号《レアハンター》
 取得条件 : レアドロップ150回
 効果 : レアドロップの確率が僅かに上昇する。レアモンスターとの遭遇率が僅かに上昇する。

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