幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

231 / 243
PC版から何故か拙作の「ここすき」が押せないと風の噂で聞きました。不思議なこともあるものですね。
それはそうと、私の絵心は皆無かつ絵力は小学校低学年程度しかないので同人誌は描けません。画竜点睛を欠くってレベル以前なので。


第184話 大惨事正妻戦争、終結

「決着! 最後の最後、化か試合に勝利したのは《舞姫》セナ!」

「すごい、戦いでした。皆さん盛大な拍手を!」

 

 セナと藜さんの決着が付き、頭上に決着の表示が出たのに合わせ、事前に打ち合わせしていた通りに大きく拍手をした。会話が聞こえていた人たちは兎も角、そうではない人から見れば凄惨ではあったがトップのバトル。(おれ)が先陣を切ったこともあって、スタジアムは大きな拍手の渦に包まれた。

 

「会話はさておき戦いの内容としては、最終的に《舞姫》が1枚上手だったように思えるな」

「藜さんとの打ち合いの間に、攻撃を受けたと見せかけつつ完全回避。それに合わせて幻影をかけ尻尾という見やすい残機を隠したこと。確かにそれが、今回の決め手だったと思いますね」

 

 ということで、歓声がおさまった辺りで軽い感想戦。特に1番最後については、セナ自身が大博打と言っていたように幸運でなければ失敗するような作戦だった。これで(おれ)の出番は終わりだが、司会としてそこだけは解説しなければ。

 

「それについてなんだがな、爆破卿。どうして最後《舞姫》は分身出来たんだ? 例えリスポンする為の残機が残っていたところで、あの串刺し状態から脱出出来るとは思えないんだが」

「言うは易く行うは難しの典型例みたいになりますが、原理自体は簡単ですよ」

 

 そんな考えを察してくれたのだろう、わざわざ大神さんはこちらに話題を振ってくれた。有り難くその好意に甘えつつ、少なくとも俺には真似出来ないセナがやらかしたことを解説する。

 

「ペット系に限らずUPOのリスポンって、リスポン直後に無敵時間があるんですよ。0.1とか0.3秒くらい」

「それは本当の話なのか?」

「舐めないでください、(おれ)がどれだけUPOで死に続けてきたと思ってるんですか。酷い時は歩いてるだけで死ぬんですよ。最近の無敵時間はこれくらいです、間違いありません」

「えぇ……Vit幾つなんだよ爆破卿」

「ふふん、聞いて驚いてください。最近割り切って0にしました!」

「これだから極振りは……」

 

 大神さんが頭を抱えているが、その方が圧倒的に便利なのだから仕方がないだろう。なお鎧が防御につぎ込んでいたリソースは、全部Dexに移してもらった。お陰でLuk以外のステータスが20〜60しかなかったものが、Dexだけ200もある。焼け石に水だが。

 

「脱線しちゃってるので話を戻します。大前提としてリスポンには無敵時間があることまでは言いましたよね。それに加えてセナには、1回戦のイオ君戦で見せた通り視覚的なステルスという手札があります。更に皆さんご存知の《舞姫》の称号効果による分身。それを合わせて考えると、こうなります」

 

 何か視界の端でくねくねしてる知り合いらしき人型が見えたけど、完全に無視する。多分アレは、理解しない方がいいものだ。くねくねだけに……あっ、鼻血出してる。

 

「串刺し状態で死亡からリスポンする際に、無敵時間を利用してステルスを起動しながら空中を蹴って跳躍。その際の加速で生まれる分身を寸分違わぬ位置に配置したまま、自分は別の場所に着地。分身が死亡するのに合わせてアンブッシュ。探知していた限りではこんな感じの動きでした」

「……やってることが極振りじゃないか?」

(おれ)は無理ですけど、そもそも先輩方は串刺しにならないので一概には言えませんね。でもそんなレベルだと思います。空間認識能力全開にしてましたし、いやぁ……びっくりでした」

 

 本当にあればびっくりした。けれど同時に、全開にできるのならば、あの動きが出来て不思議じゃないとも考えている自分がいる。見ていた感じ、スキルの効果を使える最大値はセナが上回っていて、平均値は藜さんの方が上回ってた印象だ。

 

「ああ、確かアレはシステム限界まで引き出していたんだろう? 俺も極振り以外に出来るやつがいるとは思っていなかった」

「どうして流行らないんでしょうねぇ……空間認識能力系のスキル。ビットとか分身を使うなら必須級のスキルなんですが」

「そんなに違うのか?」

「別物ですよ。体感的には大体ビットの使用感って3種類ありまして。敵を決めて行けーっと命じたら後は自動のフルオート。その途中に自分のタイミングで何かを指示できるセミオート、銃撃つのはここからしか出来ませんね。最後に、デフォルトの待機状態以外何もかもを手動でやるフルマニュアル。セミオートからは空間認識ないと併用が難しいので、無駄弾を撃ちたくないなら取ってみるといいかもですね」

 

 俺が取得した時にはイベント限定みたいな物だったけど、最近はもう普通に買えるようになってるし。とはいえ、色々と使い道も多いスキル枠をただ『空間をよく認識できる』だけのスキルに今更割くのは難しいのかもしれない。常時ONにでもしてないと、成長して別スキルと統合されるまでは遠いし。

 

「ところで肝心のビット武器の供給はいつ頃だ?」

「今回のPvPイベントの最後にあるバトロワが第2回イベントのマップでやるらしいので、レア泥なので運が良ければ手に入るかもですね。(おれ)は頼まれても手伝いませんけど」

「随分と辛辣だな?」

「暴れ足りませんからね。それに、運が良ければザイル先輩が売りに出してくれるかもしれませんし、素材を持ち込んで代金を払えば作ってくれるかもしれませんからね」

 

 折角なので、厄介事に絡まれる前に宣伝がてら矛先を先輩に向けておく。きっとこれで悪いことは起きないだろう。なお作成に必要な素材と代金は考えないものとする。

 

「そういうことだ。ルールとマナーを守って、楽しくゲームをしよう」

「それに加えて大前提として、ちゃんとした倫理観を持ってモラルも守りましょうね。今回は私だからよかったものの、UPOはMMOなんですから」

 

 人と人との関係、とても大切。って、爆弾と毎日のビル爆破をぶっ放してる俺が言ったところで、どれだけ説得力があるんだよって話ではあるが。心の中でやっさいもっさいと叫びたい気分である。まあ、それはそれとしてだ。

 

「さて、そろそろ名残惜しい……よりかは、ちゃんと実況出来ていたか心配な方が強いですが、終わりの時間ですね」

「俺のチャンネルには名場面を切り取った動画が、爆破卿のチャンネルには無編集のアーカイブが残るから安心してほしい」

 

 因みに編集は一切しないが、ちゃんと場面ごとに飛べるような再生時間のリンクは設定しておくつもりだ。それなりに時間がかかるけど、アレあると便利だし。

 

「そんな連絡も終わったところで!」

「ああ、これ以上長引かせてもな」

 

 先に音頭をとって、大神さんに目配せ。うなずいてくれたから伝わったと信じ、即興で台本をタイピング。せーのと小声で言って息を合わせ、言った。

 

「「これにて、非公式イベントユニーク称号エキシビジョン-午前の部-を終了とします(する)!!」」

 

 瞬間、歓声が湧き上がる。よかった、拙い部分しかなかったと思うけれど、拍手をしてくれるくらいにはちゃんと出来ていたらしい。胸に手を当てて、ホッと息を吐く。何故か会場のカメラが自分のアップになってた。

 

(わたし)の出番はこれで終わりですけど、午後の部もよろしくお願いしますねー!」

「俺は午後の部も続投だ。相方として、極振りのにゃしいが来る予定なのは伝えた通りだ。恐らく午前の部よりも、激しい実況になると思うから期待しててくれ」

「以上、Vtuberの大神と」

「極振りのユキでお送りしました〜!」

 

 軽くまたねーと言いつつ手を振って、マイクをOFF。ここでの言葉がスタジアムに中継されないことを確認して、爆破されてるビルのエンドカード(ゲーム内スクリーンショットに文字を入れただけの手抜き)を画面に写す。そうしてやっと完全に気を抜くことができた。実際にはそんなことはないが、肩が凝ってる気がして思いっきり手を組んで上に伸ばす。バキバキと体が鳴る幻聴を聴きながら、情けない声が口から漏れる。

 思った以上にキッツイ。試合内容的な方でキリキリ痛む胃は置いておくとして、よくぞVの人は雑談配信なんて出来るものだ。いや、オールアドリブだった俺の方がおかしいのだろうか? いやいや、それに加えて凝ったサムネやらコメ拾いやら、配信告知に言葉を途切れさせないテクニックとか……本当にストリーマーは人間か???

 

「大神さん、今回は急なオファーだったのに受けて下さり本当にありがとうございました」

「……急にどうしたんだ、爆破卿?」

 

 そんな疑問を埋めるためにも、滅多にない機会だしレッツ行動。ちゃんと席から立ち上がって、改めて大きく大神さんに頭を下げた。

 

「いえ、こうやってみてオールアドリブに付き合わせてしまって悪いなぁと、改めて思いまして」

「それに関しては問題ない。俺は普段からアドリブで雑談枠は取ってるしな」

「それでも、改めてありがとうございました」

 

 聞こうとしていた話を先に出されてしまったので、本心をそのまま答えながらもう1度頭を下げる。本当にこういうのは、しっかりとしていないとダメなのだ。

 

「今度はちゃんと、台本でも書いてやりますかねぇ」

「俺の誘いには乗ってくれないのに、配信はするのか……」

「そんなショボンとしないで下さいよ。さっきの配信でたくさんスパチャ貰っちゃったので、そのお礼はしたいなぁって思っただけなんですから」

 

 お金関係はしっかりとしないとダメ、これ絶対。とはいえ現状の俺にお返しできるコンテンツなんて、それこそ改めて何かお礼として配信で質問を受け付けたりなんだりしかない。或いはその配信で何かお返しを決めるとか、そういうことをしないとダメだ。

 幸いにして、配信場所はUPO内にある。新大陸のマイホーム、ちょっと外がうるさいけれど人が滅多に来ないあそこなら、配信するには最適な場所だろう。別のゲームをするなら兎も角、雑談気味になるだろうし。

 

「それなら仕方ない……というか、スパチャ*1ONにしてたのか」

「この前付けられるようになったので。あ、ちゃんと許可は貰ってますので悪しからず」

 

 因みに運営からは『汝の成したいように成すがよい』『汝の望みこそ、汝の求めるべきもの』『こちらから多少の束縛はしますが、どうぞご自由に』と邪神チックな言葉で言質を取ってある。

 

「さ、ここまで告知をしたんだ。そろそろ配信を止めてもいいんじゃないか?」

「はい……?」

 

 探るような大神さんの言葉に手元画面を見れば、配信停止した筈の画面が配信中のまま映し出されていた。あとコメントが爆速で流れている。あかん、これあかんやつや(動揺)

 

「え、あー……お目汚し失礼しました」

 

 言いながら、配信停止ボタンを今度こそ押す。いやぁマジかぁ……切り忘れマジかぁ。リアル情報漏らさなかったことだけは、いや、そう大神さんが誘導してくれてたのか。

 そう気付いたからには動かねばならない。その場で片足を使い飛び上がりながら、翼を1度羽撃かせて体勢を調整。本来ならここでトリプルアクセルでも決めたいところだけれど、それをすると翼が邪魔になるので却下。それでも体勢を整えるために体を捻りつつ、宙返りの動きで3回転。回転で勢いをつけた膝を畳むことで、空中で完全に形を整える。そのまま身体を崩さずに、地面に落下、羽土下座。

 

「誠に申し訳ございませんでした」

「いや、配信ミスなんて誰でも起こすことだ。気にしないでいい、頭を上げてくれ」

 

 そう言われても頭は上げない。土下座とは神聖不可侵かつ相手の1度目の赦しで解いてはいけない、Japanese Ultimate Formationなのだから。

 

「その、なんだ。中身を知ってても、美少女を土下座させてるのは気分が悪い。どうしてもって言うなら、配信方面で今度力を貸してくれればいい」

「分かりました。そういうことでありがたく」

 

 ちゃんと代価は支払う、赦しという願いに丁度いいのかは分からないけれど。兎も角これでよし──あっ

 

「立ち絵どうしましょう。UPOならこの身体と声で出来ますけど、リアルとなると2Dすらちょっと……」

「知らないのか爆破卿。レンタル・利用料金さえ払えば、UPOのアバターはリアルの3Dモデルとして使えるぞ?」

「マジで言ってます?」

「大マジだ。だからこそ、こぞって配信者がこのゲームに来ている。当然VRギアは必要になるがな」

 

 それはそれは。企業なら何かしらのしがらみがありそうだけど、個人勢にとっては最高級のパワフルボディになるのではないだろうか? あと、アバター使用は回数申請系らしい。取り敢えず1回分を申請しておく。

 

「そういうことなら、いい加減VRギアも買い替えちゃいますかねぇ」

「最新モデルとなると10万弱はするが、大丈夫なのか?」

「というより、(おれ)のVRギアって10年くらい前のモデル*2なので……何かソフトと抱き合わせ販売だったやつだったかな。それでUPOやってるだけで熱持ってきちゃってて。流石にそろそろ買い替えないと危ないかなぁと」

 

 幸い、最近ロクに趣味のお金を使ってないから資金はある。あとさっきのスパチャ、多分初回だからだと思うけど凄い金額行ってたし。約1名の1月の限度額投げてきた人の所為(おかげ)で。

 などと思っていると、ガシッと両肩を強く掴まれた。思わずビクッと身体が反応する。この見下ろされてる感じとゴツい手に掴まれて逃げられない被征服感、TSの醍醐味では……???

 

「爆破卿。頼むから即刻ログアウトして買い替えてきた方がいい。なんだったら、今ここで俺がオススメの店に紹介状書いてもいい。いや、その前に単純な優良機種を紹介するのが先か……?」

「ええと、大神さん? 何をそんなに焦って?」

「その時代のVRギアはまだ限界出力にリミッターが設定されてなくてだな。数件しか例はないうえ、違法パッチを当てたことと外部からの干渉が原因だが、脳みそをレンチンしたような大事件が発生してた時代だぞ……?」

「えっ、こわ……」

 

 正直その頃の思い出は積極的に思い返したくない痛みの記憶だから忘れていたが、確かにあの頃そんなニュースが流れていたような気がしなくもない。一斉リコールだかなんだか……もうVRゲームに飽きて使っていなかったから、完全に忘れていたけれど。

 

「後でDMを送っておくから、さっさとログアウトすることをオススメする」

「そ、そんな風に言われるとちょっと怖いです。ですけど、心配してくださってありがとうございます」

 

 感謝の意を伝えつつ、祝勝会的なサムシングは出来ないとフレンドメッセージを送るために、メニュー画面を開く。セナと藜さんには悪いことをするなぁと思いながらフレンド欄を開くと、何故かセナも藜さんもログアウト中との表示がされていた。

 

「今日はちょっと買いに行けませんけど、その時は頼らせて貰いますね」

「ああ。登録者数を跳ね上げてくれた恩人が、VR機器の不備で死んだなんてごめんだ。存分に頼ってくれ。そしてあわよくば、またバズらせてくれ」

「炎上しなければいいんですけどね……」

 

 苦笑を浮かべながら、もう一度頭を下げる。頭が上がらないとはこのことだ。取り敢えず、ログアウトしたら2人に電話かメッセージ送ろう。そんなことを考えつつ、UPOからログアウトした。

 

*1
スーパーチャット。簡単にいうと投げ銭

*2
Switch全盛の時代に3DSで遊んでるようなもの




セナ・藜「「(声にならない叫び)〜ッッ!!!」」
叫びを受け止めた枕
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁッ!!」」
パタパタポムポム叩きつけられる足を受け止めるベッドと布団
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁッ!!」」

 感想評価&コメいつもありがとうございます! 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。