幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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 煉獄さんが命を燃やせって言ってたので初投稿です(一昨日、昨日も投稿してます)


第189話 Vertex③

〈残プレイヤー数25%〉

〈生存領域を縮小しました〉

〈次のフィールド縮小は7分後です〉

 

 その表示が見えている、そのこと自体が異常だった。何せ自分は、あのアキさんの刃に断たれたのだ。あの残機にまで威力が届く刃でだ。ならば何故、自分はまだバトロワのフィールド内にいる。

 

「一体、何で……?」

「そうか、これを耐えるか」

 

 こっちが驚きで思考停止している間に、アキさんの頭上に浮かんでいた数字が0に落ちる。時間切れ、逃げ切り勝利。負けたと思っていたのに生きていたお陰で勝つという、余りにも不本意極まりない決着だった。

 

「この戦いが終わったら、ぜひ仕組みを教えて貰いたいものだ。──次は、狼の冬(フィンブルヴェトル)でも用意しておくとしよう」

「え、あ、はい。お手伝いします?」

 

 アキさんが頷き、その全身が炎に包また。これまでの勢いが、まるで太陽を目指した蝋翼(イカロス)の飛翔であったように。僅か一瞬で呆気なく燃え尽きた。

 

「えー……」

 

 何とも言えない後味の悪さが口の中に広がる。いや、俺の負けで良かっただろうコレは。とは言え生き残ってしまった以上、このままぽっくりと死ぬのはアキさんに申し訳が立たないし……

 取り敢えず、戦闘が終わったことでどうしようもない復活のデメリットをどうにかする為に、装備を呪い装備のセットに変更。なけなしのMPを使い地面に軟着陸した時に、異常に見当がついた。

 

〈【常世ノ呪イ】が【常世ノ呪イⅡ】にアップデートされました〉

 

 先ほど叩き斬られる前に見たあのシステムメッセージ。どう考えてもアレが原因としか考えようがない。そう思いメニュー画面を開いてみれば、思っていた以上に何もかもがアップデートされていた。

 

【常世ノ呪イⅡ】

 口惜しや、あな口惜しや……この怨みはらさでおくべきか

 自身のHPが0になった時、確率で10%の値でHPを回復させ復活する。復活する度、蘇生確率は減少する。復活確率はLukの値に依存する。

 復活後、自身に腐蝕・獄毒・祟り・汚染の状態異常を付与する。また、復活の度に移動速度を10%ずつ低下させる。この効果で移動不能にはならない。

 また、復活効果を貫通してダメージを与える攻撃を受けた場合1度だけ、死界の展開をリセットし全基礎ステータスを0にすることで復活する。この効果で復活後死亡した場合、デスペナルティの時間が通常の5倍となり、直近5レベル分の経験値を失う(レベルダウンが発生する場合もある)

 

 Luk以外の全ステータス-80%

 

 効果時間 : 戦闘終了

     /最後の発動から時間が30分経過

==============================

【穢土ノ呼ビ声】(長杖)

 Luk +200

 属性:闇

 状態異常:死界

 状態異常付与/被付与確定

 逆十字(任意トリガー:一定範囲内の全てに状態異常を分配する)

 被ダメージ7倍

 耐久値 : なし

【穢土ノ鴉】(サブ装備)

 Luk +200

 属性:闇

 状態異常:死界

 飛行 思考操作 視覚同期

 ペット/テイムモンスターへの特殊効果無効

 被ダメージ6倍

 耐久値:なし

============================== 

【咒ノ耳飾リ】(頭)

 Luk +100

 自動MP回復(極大)

 空間認識能力補助(極大)

 被ダメージ5倍

 耐久値 : なし

【常世ノ襤褸切レ】(胴)

 Luk +250

 属性耐性が減少(耐性-500%)

 回復効果反転

 闇属性吸収

 被ダメージ6倍

 耐久値 : なし

【怨霊ノ数珠】(手)

 Luk +150

 状態異常範囲拡大(極)

 範囲状態異常吸収

 被ダメージ5倍

 耐久値 : なし

【朽チタ闇】(脚)

 Luk +150

 状態異常効果反転

 被視認時相手に幻惑を付与

 被ダメージ6倍

 耐久値 : なし

【擦リ切レタ草鞋】(靴)

 Luk +150

 天候制圧 : 死界

 魔法詠唱時間-100%

 被ダメージ5倍

 耐久値 : なし

 ※セット効果(常世)

  被ダメージ10倍(累計50倍)

  状態異常重複/回復不可

  非戦闘時HP全損無効

============================== 

 

 装備の見た目は変わらずだ。お札っぽい感触の小さな耳飾りに、全身を覆い隠すような闇色のボロ切れと、右手にだけ存在する禍々しい気配を発する黒い数珠。コートの下をゲームのCEROレーティング的に満たす闇に、素足の足首に巻かれた藁の残骸。そしてかなり広がっていた筈の死界の展開領域は、表皮一枚分程度の最低限にまで戻っている。

 

 詰まるところ、なんだ。簡単に纏めるならば、アキさんの攻撃でも1回だけは死なないようになって、これまであまり使う機会のなかった呪いの備品も強化パッチが当てられたと。そういう認識でいいのだろうか? 取り敢えず鴉は飛ばして警戒に出しておく。

 

「不本意とはいえなんという、なんというナチュラル(クソ)野郎……!!」

 

 握った拳を地面に叩きつけようとして、多分それをしたら死ぬので動きを止める。これでは感動の勝利を迎えた後、敵が相手を褒めながらぬけぬけと蘇生するのと同じようなものだ。無粋の極みでしかない。

 

「スキル説明を見た感じ、あんな感じに撃退したのが理由なんだろうけど……」

 

 よくもまあ、あの勝負に水を刺してくれたものだ。熱狂が一気に冷めてしまった。また死界に乗り込んで大暴れでもしてやろうか。いやでも、まだ流石にリポップしてないだろうなぁ。

 

「……取り敢えず、最後までやろう。朧、ヴァンー」

《呼?》

 

 幸いにして装備がアップデートされていたお陰で、これまで装備との相性が最悪だったペットが召喚できるようになっている。普段装備に取り憑いている付喪神系列の子たちと影の中にいる朔月は巻き込まれてしまっていたが、退避してもらっていた朧と召喚していない愛車(ヴァン)は生きていた。

 ステータスは固定値のLuk以外0に固定されているけど、これならそうそう死ぬことはないだろう。特に立ってるだけで死ぬことがなくなったのがあまりにもえらい。戦闘は駄目みたいだが。

 

「久し振りにソロだし、適当にぶらつこっか」

《喜》

 

 馬がいななく様にエンジン音を響かせる愛車に跨がれば、初めてこの世界(サーバー)に来た時を思い出すスタイルだ。サイドカーは……今回はいいか。

 さて次はどうしようとマップを開けば、かなり最初に見た時と地形が変わっていた。特に爆裂痕核爆発痕ズレた山と大地の裂け目が極めて目立っている。ひどい……い、一体誰がこんなことを……!!

 

 冗談はさておき、ユニーク称号持ちと極振り全員についていた筈のビーコンは大きくその数を減少させていた。全員参加していれば29個ある筈のビーコンはすでに11個。極振りで残っているのは、俺、センタさん、デュアルさん、翡翠さんにザイル先輩。ユニーク持ちは【舞姫】【マナマスター】【オーバーロード】【ナイトシーカー】【牧場主】だけだった。ユニーク称号1期組の低生存率よ。

 

「えっと? 翡翠さんとしぐれさん(【牧場主】)は揃って天界にいて、セナと藜さんはこっちに向かって来てる最中。カオルさん(【ナイトシーカー】)はほぼ一箇所から動いてないから、多分ダンジョンアタック中。デュアルさんと【マナマスター】の人たちは……」

 

 マップ上、激しく交錯するビーコンの位置が見える高さに鴉を移動させ、《望遠》の紋章を展開させつつお試しで視覚を同期。片目を閉じることで、ハッキリと鴉の視界で世界が見える。前は杖が変形する形だったのに便利になったなぁと感心しながら、併せた紋章のお陰で見えたのは──

 

「何か凄い戦いしてる」

 

 絶対現実では実現することのできないUFO軌道を描いて飛翔するF-15イーグルっぽい戦闘機と、地上から上空に射出→上空から地上へ射出というジグザグ軌道で突進攻撃を繰り返し、時には∞のような軌道も描いて動くデュアルさんの姿。

 足元にまだポリゴン化してない戦車やバイク、戦闘機の破片が散らばってるあたり、いつもの機械化ギルド組で挑んでいたっぽい。そしてよく見てみれば、デュアルさんも相当ボロボロだ。HP4割は確実に切ってるんじゃないだろうか、アレ。

 

 愛車を転がしながらそんな決戦を見守ること数分。遂にデュアルさんの突進攻撃が戦闘機を捉えた。結果、弾薬にでも引火したのか発生する盛大な爆発。相当量の弾薬を消費した後だったのだろう、残念ながら24爆破ポイント。

 

〈残プレイヤー数14%〉

〈生存領域を縮小しました〉

〈次のフィールド縮小は4分後です〉

 

 などとボーッと見ていた時だった。視界に映るシステムアナウンス、そしてデュアルさんのいた場所を紅色の光が飲み込んだ。しかしあの場にいるのはデュアルさんだ、ボロボロだったとは言えすぐに生存圏内に戻ってくるだろう。

 

「はい……?」

 

 そんなこちらの予測を裏切って、赤い光の中に溶けるようにしてデュアルさんのアバターは消えていった。そして同時に、マップ上に存在していたビーコンも消える。それはつまり、この生存領域縮小は問答無用の即死ギミックであることを明瞭に示していた。

 

「やっと見つけたぞ《爆破卿》!」

 

 思った以上に厳しくなりそうな生存競争の予想に頬を引き攣らせていると、前方からそんな言葉が投げつけられた。全く聞き覚えのないその声代わり前の女性の声にあたりを見回すが、声の主の姿はない。

 

「ここであったが百年目! 食らうがいい我最強奥義!」

 

 ならばと空間認識能力の深度を上げれば、自分たちのすぐ隣。何処か走り方が男っぽい女性3人による騎馬の上に乗った、背の低い女の子としか言えない姿のプレイヤーがいた。

 その手に構えられているのは、これまで見たことがないほど文字が重なり、最早魔法陣の様相を呈している紋章。直前のセリフと使うこの状況から考えて、それは間違いなく致命的な何か。紋章術には暴発以外のダメージソースはないとは言え、今の俺は新呪いの装備により状態異常の付与/被付与が確定している状況。対抗するための武器もなく、爆弾も1つたりとも残っていない。つまり受けるしかない。

 

 そこで問題だ! この限られた手札の中でどうやってあの攻撃をかわすか?

 3(たく)―ひとつだけ選びなさい

 (こた)え①賢い可愛いしらゆきちゃんに成り突如反撃のアイデアがひらめく

 (こた)え②仲間がきて助けてくれる

 (こた)え③かわせない。現実は非情である。

 

 どうせなら答え②に丸をつけたいところだけど、さっきマップ上で見たセナと藜さんの場所はまだ遠い。加速紋章か極振り並みの足があるならば別の話になるが、漫画のように間一髪助けてくれる訳にはいかない。やはり答えは、①しかない!

 

「ヴァンッ!」

 

 前輪のブレーキを全力で掛けながらハンドルを切り、前方に重心を寄せて身体を横にバンク。愛車の意思による助けと紋章のレールを辿らせることで、無理矢理後輪を浮かせて旋回。フルスイングしたバットのように、並走していた騎馬に向けて攻撃を放つ──

 

「「「《障壁》!!!」」」

 

 が、ダメだ。一手遅い。俺のような異常な使用方法ではない、至って普通の障壁。騎馬となっている3人によって張られた防壁が、完全に後輪によるフルスイングを防いでしまった。

 

 絶望! 突きつけられた答えは③ッ! 現実は非情なりッ!!

 

「必殺!『萌え♡萌え♡美少女化ビーム』!!」

 

 そして技名が絶望的にダサい、しかし意味だけは端的に示している桃色の光線が放たれた。どういう原理か一瞬だけこちらの動きが止まり、行動ができなくなる。

 そんなショッキングピンクの光の中、自分の体が愛車から投げ出される感覚を感じた。そんな落下事故死なんて無様な死に方はしたくないので、翼を展開して飛行を開始する。

 

「各員散開! 必ずスクショを収めろ!」

 

 その隙に騎馬を組んでいた3人とトップの少女が、バラバラの4方向に向けて離脱。スクショタイムとはこれ如何に? ショッキングピンクのフラッシュが晴れたと同時、そんな俺の疑問は晴れることになった。

 

「よくもやってく、れ──え……?」

 

 装備は全てそのままに、何故か俺はユキの姿からTS体のしらゆきの姿に変更させられていた。無論装備はそのままの、女性アバターで装備していると破廉恥ルックとしか言いようのない格好で。

 

「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」

「ひっ」

 

 沸き起こる大歓声。

 巻き起こるスクショの嵐。

 そんな圧倒的な"力"を感じる迫力に、反射的に喉が閉まったような声が出た。そして心は屈しておらずとも身体は正直なようで、()()()()()()()()()()脚は内股になり両手はボロ切れを抑え込んでいた。視界がリンクしている鴉の視線から見るに、(おれ)は顔どころか耳まで真っ赤に染まってしまっている。

 くそッ、『萌え♡萌え♡美少女化ビーム』と謎の状態異常『美少女化』。なんて恐ろしい効果の必殺技なんだ……ッ!!!

 

ふ、ふふ、ふふふ……みんなぶち殺してあげる!!」

 

 またしても、意思に反して口から言葉が吐き出された。言おうとした言葉は『ぶっ殺す。でも写真は後で買わせてもらう』だった筈なのに、謎の翻訳機を通されている感じだ。面白いが気持ち良くはない。

 取り敢えず、4人全員に200枚ずつ障壁を輪切りにする形で展開することで、無理やり拘束。さてこれからどっやって調理してやろう、そんなことを考え始めた時だった。

 

「ストップ、ご主人」

 

 全く聞き覚えのない、けれどよく知っているような声が耳朶を打った。今度は誰だと空間認識を最大展開しながら振り返った先にいたのは、全く見覚えのない少女。いや、しらゆきボディの自分よりも小さいのだから幼女と言うべきか。

 黒髪に黒い目、まるで喪服のように黒一色に統一され、部分部分に蜂の巣柄が存在する和服と洋服の良いとこ取りをしたような……所謂和装ロリータと言われる衣装の幼女。

 

「殺すの、駄目」

「ご主人……え、待って。貴女は誰?」

 

 拘束している4人に対する殺意も忘れて、自分の隣に浮いている幼女に問いかける。いや、聞いてみはしたものの予想はついてる。何せ反応が同じなのだ、だがしかし聞かずにはいられない。そんなことがあっていいのかと、ペットシステム的に思ってしまうから。

 

「? 朧は、朧」

「やっぱりかぁ……」

 

 コテンと首を傾げて言う朧の言葉に言葉が漏れた。いや、見かけた瞬間鑑定と看破の複合スキルは使ったから分かってはいたのだ。いたのだが……いや、うん、現実として受け止めるしかなさそうだ。

 

「なら、ヴァンは何処に?」

「そこ」

 

 もしかしたら同じようなことになってしまっているのかも。そんな最悪のケースを想像して聞いた疑問に、擬人化した朧が指差した。その先にあったのは、萌え♡萌え♡美少女化ビームを喰らって尚バイクの形態を保っている愛車(ヴァン)の姿。ただしそのハンドル中央のライト部分には、大きな白いリボンの付いた同じく白いストローハットが被さっていた。

 

「ッスゥゥゥゥ……」

 

 ちょっと、一旦落ち着こう。

 深呼吸ー深呼吸ー、よし落ち着いた。

 そう、うん。凄まじい執念だった。深くは考えないことにしておこう。そうしよう!!

 

「それで、殺しちゃ駄目って言うのはなんで?」

「屈辱が足りない」

 

 それもそっか。最近の流行はそういう復讐タイプだもんな。通学途中とかに偶にAR広告出てるから知ってる。OK、把握したよ相棒。こちらと同じように、こんなことをしでかしてきた相手にも屈辱を与えてからぶち殺せと。やってやろうじゃないか。

 先ずはいまだにステルスしている4人に鑑定と看破をかけ、Lukの暴力によって()()()()相手の情報防御を突破。明かされたプレイヤーネームとレベルをメモして……あの騎馬の上にいた人、獣耳尻尾を生やす紋章の開発者じゃん。フレンド申請しておこう。

 

「《紋章改変》」

 

 ならばこそ、仮にも紋章系トップクラスの意地を見せよう。1回喰らった以上、紋章であればアーカイブに記録されている。それを閲覧して自分のところにまずは落とし込む。そしてその中から、美少女化に値する部分を見つけ出して……うっわ設定項目死ぬ程多い。

 まずは髪の毛の数値を0に、ボディサイズをいい感じに調整しつつ、筋肉モリモリマッチョマンになるように書き換え。例え元グリーンベレー相手でもこれなら大丈夫な筈だ。

 

「改変完了! 

 喰らえ必殺!『ムキムキマッチョマンビーム』!!」

「「「「うわあぁぁぁぁぁっ!!」」」」

 

 響き渡る野太い悲鳴の四重奏。なんということでしょう、つい数瞬前まで可憐な美少女であった筈の4人が、匠の手によって装備はそのままに筋肉モリモリマッチョマンに変化したことで、女性装備をパッツンパッツンに着こなす変態に破滅的ビフォーアフターを遂げているではありませんか。

 

「序でに死ね! 《逆十字》!」

 

 装備効果によってペットとテイミングしてあるモンスター以外に、今俺が負っているバッドステータスを分配する必殺技が発動した。具体的には全ステータスマイナスと死界関連のデバフを無限に分配、その他諸々引き受けていた無数のデバフを更に叩きつければあら不思議。

 あっという間に4人のプレイヤーは、スリップダメージを受けて爆散した。カシャンと呆気なくポリゴンの砕ける音が鳴り、復活した2名も再度デバフを詰め込んで確殺した。

 

「ふぅ……」

「満足」

 

 よく考えてみるとこの《逆十字》なる武器固有の技、効果範囲が無色透明だから死ぬ程強いのでは。そんなことを考えながら地面に着地したのに合わせて、擬人化したままの朧に左腕に抱きつかれた。

 いや、確かに普段の待機位置はそこにして貰ってるけども。まあ、うん、満足そうな笑顔だしいいか。深くは考えない考えない。

 

「同性だとハラスメントコード出る時間、異性同士より遅いんだ……」

 

 そんなことをしているうちに、全く役に立たなそうな発見をしてしまった。この知識を使うことがないことを祈る。

 それにしてもこの『美少女化』の状態異常、効果終了が死亡時とかいうえげつない効果時間をしている。言われてみれば、さっきの改変ビーム1回で6000くらいMP消費したような……やはり、正しく執念の産物か。

 

「撫でて」

「はいはい」

 

 普段から偶にそうしているように朧の頭を撫でる。けれど擬人化状態のため、何とも言えない不思議な感じだった。なんというかこう、丁度れーちゃんくらいの子の頭を撫でてるような感覚。

 

「ふふ……」

 

 こうもご満悦な笑みを浮かべられると、もっと撫でてたくなる。髪の毛ふわっふわだなぁと思いつつ、しかし今はバトロワ中。残ってるアイテムの整理でもしようとメニューを開いてみれば、どうやらこのフィールド内からでも獲得ポイントの交換はできるらしい。欲しいアイテムはもう獲得済みだし、あとは全部核に変えておこう。

 

「さて、あとは最後まで生き残れるよう頑張りますか」

「手伝う」

 

 愛車に跨り、どうせなのでライトに被さってる帽子を被り、朧を後ろに乗せる。……これ、どうせならフィールド中を駆け回って『萌え♡萌え♡美少女化ビーム』を撒き散らすテロ行為しても面白そうだ。

 

「ヒェッ」

 

 そんな風に考えつつ、愛車のエンジンを吹かして発進した、数秒後だった。バイクの進行を妨害するように銃弾の雨が前方に降り、後方にはあまりにも見覚えのある槍が地面に突き刺さった。そうですか……追いつかれちゃいましたか……

 

「ねえユキくん、その子誰?」

「また、知らない女の人……!」

「落ち着いて、落ち着いて鑑定して欲しい。して下さい。お願いだから! やましいことは何にもないから!」

 

 ゆらりと幽鬼のような動きで迫ってきたセナと、背後で不動明王のように仁王立ちする藜さんに向けて、両手を上げて言った。そう、今回は誓って俺は何も悪くない。つまり無罪、潔白、シロなのだ。

 

「私、鑑定系のスキル持ってないよユキくん」

「同じく、です」

 

 あっ、終わった。

 

「自爆するしかねぇ!」

 

 流れるように核を取り出して起爆した。

 

〈YOU LOSE〉

〈残プレイヤー数3%〉

〈生存領域を縮小しました〉

〈次のフィールド縮小は5分後です〉




 爆発オチなんてサイテー!

 感想評価&コメいつもありがとうございます! 

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