幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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言ってたことはすぐやるスタイル。ハッチャケます。以上。
諸事情により少し早めに投稿


第16話 第1回イベント③

 ご飯の時間を除きあれから狩りを続けて良い時間になった頃、俺たちはギルドホームへと戻ってきていた。

 

「イベント1日目、お疲れー!」

「お疲れー!」

 

 お互いの湯呑みがカチンと音を鳴らす。別にお酒とかではないが、乾杯したかったから別に良いのだ。そして今ギルドホームには、俺とセナの2人しかいない。れーちゃんは少し前に目をこすりながらログアウトして、ランさんとつららさんは今日のうちにもう少し最前線で狩ってくるそうだ。

 それにもかかわらず俺たちがこんなことをしていられるのは、合流後に出会ったモンスターが原因だ。

 

「いやぁ、まさかこんなに早くプラチナと遭遇できるなんてね!」

「そしてそれに負けるとは思わなかったよな……」

 

 テンションの高いセナと対照的に、俺は多少沈んだ気分で答える。俺たちが今日倒した灰被り姫の数は4。内訳は金冠2体、銅冠1体、そしてプラチナが1体だ。そのお陰で60,000はポイントを稼いだのだが、最後に遭遇したプラチナの灰被り姫が問題だった。

 

「実質相打ちだからノーカンだよノーカン! 後ポイントもゲットできたんだし!」

「そう言われちゃそうだけどさ……」

 

 金冠相手に余裕余裕と言って遊んでたのが悪かったのかもしれない。キラッキラしたプラチナは、金冠なんて目じゃないほど強かった。

 金冠を即座にボロボロにしたセナと接近戦を延々と続けるし、最初の方から【潜伏】でヘイト値を下げてる俺にも稀に攻撃してくるし、AIじゃなくて中に人がいそうだったし、怯まないし、挙げ句の果てには10枚重ねの障壁を貫通してきた。俺の手持ちの回復薬が尽きて、セナのHPが2割を切ったところで漸く向こうのHPが5割を切ったほどだ。

 

「一応俺、自爆特攻したんだし? 俺の主観としては負けかなーって」

「でもユキくんノリノリだったじゃん。『ヅダはゴーストファイターではない!』って。…そういえば、ヅダって何?」

「ガンダムってアニメに出てくる、俺の好きな機体だよ。知ってる人は少ないんじゃないかなぁ…」

 

 昨今珍しくなったガンダムが好きと言う人に聞いても、知ってる人は殆どいなかった。確かに旧ザクも好きだけど!

 

 いや違う話が逸れた。

 つまり俺がやったのは、リミッター解除(バフ全開)してからの全力攻撃……簡単に言えば持ってるダメージアイテムを全部抱えての特攻……だ。そして爆発する俺ごとセナがプラチナを撃ち抜いて戦闘終了という流れだった。

 俺はアイテムが消えはしたが、敵も倒せたし、レアアイテムもドロップしたし、ポイントもゲットできたしでハッピーエンド(?)だったから問題ない。

 

「まあそんなことは良いとしてだ。明日からはどうする?」

「勿論狩るよ! 今度こそプラチナにリベンジするんだから! 油断も慢心も捨てて、最前線の気持ちで戦うよ!」

「キャ-セナサンカッコイ-」

「ものっそい棒読みだよ!?」

 

 なんとなくノリで言ってみたけど不評だったらしい。

 それはそれとして、セナは時間は大丈夫なのだろうか? メニュー開いて見たら11時をもう越えてるんだが。

 

「うぅ…そろそろ落ちないと部活と勉強に支障が……そういうユキくんは、明日からどうするの?」

「そうだな…」

 

 なんだかんだで欲しいスキル分のポイントは既に確保できている。1週間のイベント中1日目でこれなのだから、もっと頑張って何か良い感じのものが欲しい。俺自身がないない尽くしだから、探せばきっと欲しいものは見つかるだろう。いや、やっぱりここは先達に聞く方がいいか。

 

 ・

 ・

 ・

 

 夜の闇に沈んだ街中を歩く。普段はかなり静かな場所であるが、イベント中であるためか人の声が絶えない。

 と言うわけで、例の極振りが集まってるあそこで質問した結果、予想通り頭のおかしい返答を返してくれた。気まずい気分になったギルドから出て、フラフラと徘徊しながら情報を纏める。

 

「大丈夫大丈夫、俺は何も見てない。何も見てない」

 

 あの帰ってきた2人の間に仄かに漂う甘い空気、俺でなきゃ見逃しちゃうね。初めは倉庫に隠れてたけど、空気に耐えられなくて【潜伏】して逃げ出しましたはい。

 

 いや違うこうじゃない。

 

 頭のおかしい元極振りさん達が教えてくれたスキルは、どれひとつとしてポイントで取得できるようなものではなかったが、濃ゆい物のはずなのに共通点が存在していた。それは、“自分の長所をとことん伸ばす”こと。勿論デメリットはありまくりだったが。

 

 例えば、HPを1にして物理火力を馬鹿上げするスキルとか、0レンジの攻撃に限りAglの値をStrの値に加算するスキルとか、VitとMinを0まで下げる代わりに魔法の火力を跳ね上げるのとか色々あった。

 

「で、俺の長所と言えばLukのみ…」

 

 如何に素の状態での実数値が4桁に突入したとは言え、Lukは他のステータスに比べて扱いが非常に面倒だ。なにせ戦闘に及ぼす効果がクリティカル・ドロップ・出現率の3つしかない。他のステが死んでるのにどう転用しろと。

 だからこそ今まで、クリティカルダメージを刻むという戦い方をしてきたのだが…

 

「明らかに足手まといですねわかります」

 

 今日のセナとの共闘でそれがハッキリとわかった。足止めと支援をしてるとは言え、このままじゃ明らかに寄生だ。それをどうにかしたいのだが、取得できるスキルは何の役に立ってくれそうにもない。

 

 ====================

 ラッキーパンチ

 AS

 消費MP : 20

 効果時間中10回まで、確率で与ダメージを2倍か2分の1にする

 冷却時間 : 1分

 効果時間 : 40秒

 ====================

 ラッキーガード

 AS

 消費MP : 35

 効果時間中5回まで、被ダメージを確率で無効か2倍にする

 冷却時間 : 1分

 効果時間 : 40秒

 ====================

 

 例えばこんなものもあるのだが、本音を言えば全く欲しいと思わない。

 前者は周りがダメージを100出すとして、1とか5を倍にしてどうするって話だし、後者は障壁のお陰で遠距離はどうにかできる俺としては、攻撃を食らう距離に寄られたら連撃になるから無意味なうえ、範囲攻撃はほぼ全て多段ヒットするらしいから意味がない。さすがに全部無効化なんてできないだろうしね。

 

「……」

 

 ウィンドウを5枚ほど開きながら歩き続ける。イベントの交換できるスキルの情報、さっきまで見てた極振りスレ、ネットに転がってた良さげなスキル集、考えを纏めたメモに、自分の取得可能なスキル。そんなデータの海で溺れている俺に、ひとつの天啓が舞い降りた。

 

 辛いなら

 ネタに走れば

 いいじゃない

 極振りだもの

 

 そもそも俺がLuk極振りを選んだのは何でだ? 

 ガチ勢と同じ場所に立って戦うためか? いいや違う、面白おかしくゲームをやるためだ。なら、そんなに戦闘力に拘る必要があるだろうか? いや、ない(反語)

 

 そうと決まったのならば話は早い。『ハイリスク・ハイリターン』で、ポイントでゲットできるスキルにソートをかける。

 

「これでもないし、これでもこれでもないし…」

 

 夜道で立ち止まって、ブツブツ呟きながら何かをしてる青年……リアルなら通報→補導案件ですねわかります。そんな場違いなことを考えながらポイントを度外視して探すこと数分、中々に使う人が少なそうなスキルを絞り込めた。

「よし、よし。モチベ上がってきたぁ!」

 

 暗い夜道で突如奇声をあげる青年。だからこれさっきからリアルなら通報→補導案件()

 そして見つけ出したスキルは、悉くポイントが高い。具体的には1個10万pt。元々欲しかったスキルが3万ptなので、全部の取得を目指して後1週間頑張らねばなるまい。イベント終わりの交換タイムが待ち遠しい。

 

「FoFoo!」

「あの……大丈夫ですか?」

 

 錫杖を持ち出し今にも走り出しそうな俺を、幼い男の子の声が呼び止めた。何事かと振り返ってみると、そこにはらんらんと戦いに行ったときに遭遇したショタっ子が心配そうな目で俺を見ていた。

 

「ん、はい?」

「いえ、さっきから凄く変な動きをしてたので……」

「気が触れたとかそういうのじゃないので、心配はしないで大丈夫ですよ。あ、ボスの所ではすみませんでした」

 

 このショタっ子は、今はどうやら1人らしい。全く、良い子は寝る時間だというのに。俺? 二徹くらいは正気でいられるから何の問題もないね。とても悪い子ですねわかります。

 

「はぁ…それならいいんですけど」

「そういえば今日はお一人みたいですけど、どうかしたんですか?」

「僕はもうちょっと狩りたかったんですけど、みんな用事があるとかでログアウトしちゃって……強制するわけにもいかないですし」

 

 何だか恥ずかしそうに頭を掻くショタっ子。何この子優しい。絶対この子コミュ力高い。なるほどそれであんなPT組めたのか……

 でもそうか。もうちょっと狩りたかったのにPTがいないのか。

 

「……うーん、良ければ、一緒に狩りに行きます? レベル16なので、そこまで良い戦力にはならないかもですけど」

「わぁ! いいんですか? ありがとうございます。僕のレベルは15なので、十分ありがたいです!」

 

 よし言質とった。

 

「あ、でも10回に1回くらいの確率で灰被り姫と遭遇するので、気をつけてくだいね?」

「え。あ、はい? あぁ、流石に2人じゃ倒せないでしょうし逃げるんですね!」

「いや、普通に倒しますけど?」

「え」

 

 ショタっ子が見事に硬直する。まあそうだよね、普通そうなるよね。だけど俺は我が道を行く。そのために倉庫でアイテム整理をしてきたのだから。

 

「今夜中に……いや、せめてもの報酬として、あなたと一緒に狩りをしてるあいだだけで3体は倒します。さすがにプラチナは逃げますけどね?」

「当たり前ですよ! それに僕は前衛ですし、貴方は確かバッファーなんですよね? 絶対無理ですって!」

「足止めして爆破すれば問題ないですね」

「でも、」

「問題ないです」

「いやあの、」

「問題ないです」

「ですけど、」

「爆発物は全部私持ちです」

「は、はい?」

「問題ないです」

「……はい」

 

 押し切った。完 全 勝 利。

 今俺の手持ちには、ギルドの倉庫に安置させてもらっていた『フィリピン爆竹』というアイテムが1スタック99個で計3スタックほど存在している。

 作り方はいたって単純。この街に売ってるいたって普通の爆竹を3スタック購入します。ザイルさんから、最前線で供給過多になって価値が暴落した爆薬を5スタック格安で仕入れます。自前のサバイバル内のスキルで改造します。はい終了。

 お金はかかるけど改造自体は1スタック単位でやっても1分だから、大して手間でもない。それなのに火力は中型爆弾より上、大型爆弾より下程度。素晴らしいな。

 

「さてと、今夜はお祭りだ! FoFoo!」

「僕、なんでこんな人に声かけちゃったんだろう…」

 

 ボソッと聞こえた言葉は無視して、Aglに結構振ってるのか移動速度がかなり速いショタっ子に付いて走り出そうとしたところで、ふと頭に面白そうな考えがよぎった。逃さない。

 

 調べた結果、移動手段については次の街で目処がつきそうだから保留となったが、今現時点での高速移動はできないのだろうか? 結論、できないわけがない。常識なんて、枷なんて\全て壊すんだ!/

 

「《障壁》展開、《カース》《カース》《カース》《カース》《カース》」

 

 舞い降りた天啓によってネジが外れた俺に、【紋章術】はきっちりと応えてくれた。

 デフォルトだと直径200cmの円で、硬度は最低値、展開時間30秒の障壁。それをスノーボードレベルまで収縮、空間固定でなく足裏に追従するようにし、硬度と展開時間はそのままにした。そして、展開時間を極限まで短くしたことによって、自動的に暴発するようになった火力増強カースによって、俺はエド・フェニックス(動詞)する。

 

「はぁっ!?」

「イヤッッホォォォオオォオウ!」

 

 困惑したショタっ子の声とガリガリと削れていくMPゲージを尻目に、俺は街の北側。低地林から森へと繋がるフィールドに向けて飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、マップから第2の街北の森の約半分が爆炎と煙に包まれ焼滅した。

 30分くらい緊急メンテが入ったのは、多分これが原因だったのかもしれないけど、俺は悪くねぇ! 燃え易かった森が悪いんだ!(?)




 ー通知ー
 新たな称号を取得しました

 狂人 New!
 取得条件 : 発狂レベルの行為をする事
 効果 : 状態異常にかかりにくくなる

 デストロイヤー New!
 取得条件 : 一定以上の地形オブジェクトの破壊
 効果 : 地形オブジェクトを破壊しやすくなる。爆破ダメージを上昇する。

 デストロイヤー → エリミネーター New!
 取得条件 : 称号【デストロイヤー】を所持。さらに一定以上のオブジェクトの破壊
 効果 : 地形オブジェクトを更に破壊しやすくなる。爆破ダメージを更に上昇させる


【紋章術】
 自分・相手を起点に、紋章を描くスキル
 効果・時間・範囲を一定内でならば操作可能
 紋章の設定可能範囲はプレイヤーに依存する

 使用可能紋章
・基礎ステータス強化系
・基礎ステータス弱体系
・属性付与
・障壁

【召喚術】なら呼び出しや回復に寄った構成に、【呪術】ならもっと攻撃とデバフに寄って、【多重付加術】なら基礎ステータス系2種類しか使用不可。

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