速度差分
通常ユキ<(超えられない壁)<うさぎ<<<平均プレイヤー<<イヤッッホォォォオオォオウ!≦速度重視型<<<<速度特化<(超えられない壁)<極振り
俺がショタっ子(名前はイオというらしい)を引き連れて300個のフィリピン爆竹を北の森でばら撒き、あそこを焼却というか徹底的に破壊し尽くしてから6……いや、やり遂げた時刻から考えれば5日。
イベントの期限が迫ってる中俺は……
「ヒヒィーン!」
「ガボボボボ」
大きな川に繋がってるのを発見した例の湿地帯で、絶賛溺死中だった。出力50%の水泳スキルじゃ、軽い大波(?)に巻き込まれただけで終わりらしい。
さて。俺がこんな事をしている理由は、ここ数日狩りに来ているモンスターと関連がある。そいつは鳴き声からしてわかる通り馬、しかし下半身が魚な神話ではヒッポカンポスとかそんな感じで呼ばれるモンスターだ。この敵も灰と名の付く限定モンスターなのだが、森を1つ焼き落としてポイントに余裕がある為それが理由ではない……って、あっ
暗転
「げほっ、酷い目にあった。もう飽きたけど」
先ほどまで溺れてた名残で咳払いをし、濡れてもいない頭を振って幻想の水滴を振り払う。うん、ギルド内が無人で良かった。
話を戻そう。
俺がヒッポカンポス…正式名称《灰馬魚》を倒してる理由は、1つのレア泥にある。薄々察せるかもしれないが、俺が求めてるアイテムの名は【幸運の蹄鉄】。今俺が装備している【うさぎのしっぽ】の上位互換アイテムだ。具体的には性能がLuk上昇性能が1%上でVitも+1される。
「目標まで残り2つか」
何日もやってるのに少ないと思うかもしれないが、これでもかなり頑張った結果なのだと理解してほしい。だってこの馬逃げるし。セナが寝てから狩ってるし。しかも途中途中、武闘派シンデレラさんが殴り込みをかけてくるのだ。そっちにかまけてると、馬に確実に逃げられるかそもそも俺が死ぬ。しかもレア泥はイベント由来の物が優先されるらしく、中々落ちてくれない。そんな中8個も集められたのだから、誰か褒めてほしいものだ。そんな人居ませんね知ってます、俺は詳しいんだ。
「正直、また森を燃やせば1発なんだけどなぁ……」
例の俺とショタっ子で焼却した森。あのとき森を焼いた炎は、俺が《エンチャントファイア》で着火したからか、俺が使った炎という判定になっていた。燃えろよ燃えろと目の死んだショタっ子とマイムマイムしてる中、グングン増えるポイントと足元に溢れていくアイテムを見たときは笑いが止まらなかった記憶がある。そのとき残念なことに経験値はなかったけれど、その中に【幸運の蹄鉄】が含まれていたのだ。
因みに翌日、ログインしたら運営様からメールが届いていた。意訳すれば『もうあんなことはしないでください。直すの面倒なんです。後、昨日の森への放火行為で得たポイントは、他ギルドとのバランス調整のため半減させていただきます。ドロップ品はそのままにしてあげるから許してね。これだから極振りしてる奴は嫌なのよ……頭沸いてるんじゃないのかしら? あ、これまだ繋がってる!? やっぱこれ無』とのこと。送った人はドジっ娘かな?
「まあ、ぼちぼちやるしかないか」
要するに、貴方はやり過ぎたということだ。次やったらスローネが飛んできてアカウントを消し飛ばしていくことだろう(偏見)とか言いつつ、いらない素材を売っ払って5ダースほどフィリピン爆竹は作ってあるんだけどネ!
そして今更だけど、よく付いてきてくれたよねイオ君。あんなヨグ様かクトゥルフ辺りの電波を受信して発狂モード入ってた俺に。これは絶対将来大物になりますわ。
「《障壁》《カース》」
そんなことを思い返しながら、ギルドを出て例のエド航法で街の外を目指す。狩場に着くまでにMPはそこそこ回復するだろうし、あの夜のイヤッッホォォォオオォオウ!で尋常じゃなく有名になっちゃったからね!
結局『なんだ極振りか』で終わってくれたからいいけど。森のことを見てた人もいたらしく、緊急メンテとの繋がりがあるんじゃないか、あることないこと噂されてたりもした『まあ待て。あいつは、極振りだ』の一言で解散したからいいけど。ラッキーだね。それらを含めるとまあ、黒歴史とまでは行かないが少し自戒しなければいけないと思う。
そしてそこまでして確立したこの移動方法。目立つのとクソみたいな燃費以外にももう1つ、落下ダメージという欠点を持っている。そこまで高い高度でもないし速度でもないのだが、上手く受け身をとって3割、取れないと5割はHPが削れてしまう。だけど、一応対策がないわけでもない。
街からフィールドへと出陣し、即座にモンスターを探す。……名前的にとてもやりたくないが、仕方ないか。発見した
「《障壁》《フルカース》《吸撃》!」
そしてそのまま、杖を持ってライダーキックする。落下ダメージと速度と加速とゴミ以下の攻撃力とが相まって、なんと一撃でスライムが爆散する。ぱっかーんと、セル○アンのように。
そして勿論俺へのダメージは0。色んなダメージを攻撃にして全部敵に押し付けようってことらしいけど、よくこんなの思いついたよね俺。こんな意味不明な理屈がまかり通ったシステムもシステムだけど。
「まあ、やってやるさ! 存分に!」
どうせ明日、学校に行ったら自動的にイベント終了になるのだ。なら、若さに任せた2徹で最後のスパートをかける他ないだろう。学校を休めばいい? 流石にそれはちょっと。俺、授業は寝てばっかりだけど休んだことは無いし。
◇
学校帰りに眠気覚ましを兼ねたランニングをした後、ギルド内は既にお祭り騒ぎと化していた。
「みんなイベントお疲れ! と言うわけで祝勝会だー!」
「「いえーい!」」
「ん!」
まあ、何があったのか聞いてみるしか無いだろう。そう思いハイテンションで騒いでる女子3人組から一先ず目を逸らし、比較的落ち着いた様子で壁に寄りかかって立っていたランさんに話しかける。
「なんでこんな大騒ぎになってるんですか?」
「ポイントと順位を見れば分かるさ。俺もこれでかなり嬉しい結果だったしな」
言われてみれば、確かにランさんも口角が上がってる気がする。徹夜のせいで洞察力が鈍ってる気がする。そんなことを考えつつ開いたイベントページを見て、俺も俺で固まってしまった。
====================
《!終了!『灰の魔物と失われた王冠』》
最終ポイント
個人 : 753,950
ギルド :1,803,910
順位 : 1位
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ちょっと待って何この数字頭おかしいんじゃないだろうか? アレか、半減食らったとはいえ森か。原因は森なのか。森だな(確信)
「見て分かる通り頭のおかしいポイントで1位だ。これでも2位との差が僅かって辺りが狂ってると思うが、ポイントの大部分はお前だろう? 感謝する」
「いえいえ、セナがいないと成り立ちませんでしたし。このギルドにお世話になれたからの結果ですぐふっ」
言葉を言い終わる前に、突然の衝撃に襲われて俺は吹き飛んでしまった。そしてそのまま後頭部を何かにぶつけて停止する。ほぼ痛くないはずなのに、地味に痛い。
「現実では何でもなくても、ゲーム内じゃ身体能力が天と地ほど差があるからこうなるの、分からなかったんですかねぇ……」
「あ、そうだった!」
俺に乗っかったまま、セナはしまったという顔をする。いつものようにしたかったんだろうが、残念ながらもう手遅れだ。
別に、現実ならいいんだよ現実なら。抱きつかれて尻餅をつくなんて非常にカッコ悪いことにならないように少しは鍛えてるし。だけどゲーム内じゃ、人間と乗用車並のパワー差があるから無理ですはい。
ちょっと辺りの雰囲気が萎えちゃったし、流石に俺も怒った。折角の雰囲気をぶち壊した責任は取ってもらおうじゃないか。
「《フィジカルエンハンス》」
そうボソッと言った俺の背中に、見えてないけど丸の中にプラスの描かれた紋章が展開された(はず)。名前がちょっと変わってるけど、効果は要はStr、Vit、Aglの三種同時バフだ。今からやることには、どうしてもパワーが必要だからね!
「ふふふ、その歳になってたかいたかいは辛い辛かろう!」
ゆらりと幽鬼のように立ち上がり、容赦無くセナの脇を抱えたかいたかいへ移行する。因みにバフが切れたら俺は支えられず潰れることになる。ははっ、貧弱貧弱ゥ!
「え、ちょ、ユキくん!? これダメ、恥ずかしいって!」
「ははは、答えは聞いてない!」
バフが切れて崩れるまでの30秒とまでは言わずとも、できる限りくるくるしてたかいたかいして遊ぶに決まってる。徹夜明けの奇行を舐めるでないわぁッ!
「うぅ、あぅ、うぅぅ…」
「たかいたかーい、たかいたかーい!」
段々と朱に染まっていくセナをたかいたかいしつつ、スキルをフル活用して誰にも何にもぶつからないようくるくる回転する。いやぁ照明に銀髪がキラキラ光って綺麗だなー()
「ハッ! ダメですよユキさん! いくらセナちゃんが小さいからってそんな扱いは……あれ、満更でもなさそう?」
「ち、違うから! すっごい恥ずかしいし嫌だから!」
ジタバタし始めてしまったのと、明確に拒否されてしまったので仕方なくセナを地面に降ろす。後10秒は残ってたのに……無念。セナがポカポカと俺を叩く手から鈍い打撃音が響いてくるけど、これくらいは踏ん張れば耐えられるしセーフセーフ。
「いくら仲が良くても、同意もなしにああいうのはダメですよユキさん! 雰囲気をどうにかしてくれようとしてたのは分かりますけど」
「なんでわかったんです? エスパーですか」
いえ、なんとなくですって返されたけど、実はつららさんって凄い人なのかもしれない。
「それで、幸い第2の街には美味しい食べ物屋さんも多いですし、祝勝会もそこでしようと思ってたんですが、その前に」
「その前に?」
何かしないといけないことはあっただろうか。少し考えてみるけれど、特に何も思いつくことはない。大事な事を忘れてる気もするけど。
「ユキさんはこれからどうするんですか? 他のギルドにお邪魔するなら、派手に活躍されてたようなので引く手数多だと思いますけど」
…………完璧に忘れてた。そういえば、まだ仮所属だったんだった。他に行きたいギルドって言われても、ギリギリ極振りが集まってるところしか掠らない。そこから拡大解釈すれば、イオ君の所も入るけど。
「このままここにお邪魔してても、いいですか?」
拒否されたらしょうがないけど、やっぱりここが一番いい。今更他のギルドに移っても、極振りのところ以外つまらないだろう。よく考えたら、選択肢が今回のイベントの1位2位と、とんで8位のところな件。何この贅沢な考え。
なんとなく審判を受けるような心境で答えを待っていると、まだ顔を赤くしたままのセナが立ち上がり手を突き上げて言った。
「それじゃあ、祝勝会はユキくんの歓迎会も合同っていうことでー!」
「それがいい感じですね! あ、ユキさん何か食べたいものとかあります?」
意外とアッサリ受け入れてくれた。やっぱりこのギルドを選んで正解だったと思う。
「あ、いえ特に。普段自分で作ってると、誰かが作ってくれた料理って凄く美味しいので」
いやほんと、毎日作ってたら飽きるのを実感した。自分しか食べないから適当で良いものの、それでも飽きるっていうんだから献立考えてる人はほんとすごいと思う。
「それじゃあれっつごー!」
「おー!」
そんなことを思いつつみんなが移動するようなので続こうとすると、コートをくいくいと引っ張られる感覚があった。何事かと思い下を向いてみると、そこには何かとても期待してるような目のれーちゃんがいた。
「ん」
そしてこちらが気づいたことが分かると、こちらに両手をピンと伸ばして何かを主張してくる。くっ、唸れ俺の読解力、天地天空大回転。いや違うそれ虹霓剣。
「……もしかして、さっきセナにやったたかいたかい?」
「ん!」
コクコクと激しく頷かれる。最悪の事態が起きないようランさんに目を向けると、小さい頷きとともにいいからやれという意思がハッキリと伝わってきた。アッハイ、ヨロコンデー!
この後、滅茶苦茶れーちゃんをたかいたかいした。
イベント結果
1位 : すてら☆あーく
構成員 : 5/20
総合pt :1,803,910
2位 : 極天
構成員 : 8/20
総合pt : 1,683,520
3位 : モトラッド艦隊UPO支部
構成員 : 20/20
総合pt : 1,050,710