-追記-
位置をずらしました
やあ。ようこそ、季節イベント短編へ。
この番外編はサービスだから、まず読んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、このタイトルを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この項目を作ったんだ。
じゃあ、クリスマスの話をするとしよう。
けれど今回ばかりは、宗教が絡む以上『俺が調べられた範囲での話』と最初に断りを入れておきたい。
クリスマスという行事は、12月25日に行われる言わずもがなな行事である。一般的にはキリストの誕生日として認識されていて、プレゼントの交換を行ったり、ケーキを食べたり、クリスマスソングを歌ったりする日だ。子どもにとっては、自分の欲しいものをサンタさんからプレゼントしてもらえるのがメインになるだろうか。
基本的に現代の暦であるグレゴリオ暦では12月25日にクリスマスを祝うけれど、ユリウス暦を使用している場所ではグレゴリオ暦でいう1月7日に該当する日に祝うんだとか。
ただし、正確にはクリスマスはキリストの誕生祭ではない。
なにせ新約聖書には、イエス・キリストの誕生日を特定する記述は存在しないのだから。キリスト教においてもクリスマスは「降誕を記念する祭日」と位置付けられている。けれどローマで行われていた最も大きなお祭りが冬至に行われていた為、この日に祝うことになったそうな。
それよりも個人的に面白かったのは、サンタクロースについてである。
クリスマスイブの夜に煙突から家に潜入し、子供の欲する物を枕元に置いて脱出するという、完璧なスニーキングミッションをこなす超人。しかしその詳細が、各国でかなり違うのだ。
例えば、イギリスではサンタの服の色は緑色であり(近年は赤が主流らしいけど)、ロシアでは青い服を着て孫娘を連れており、オランダではそもそもクリスマスが2回あり、イタリアではクリスマスの期間が長く訪れるのは魔女だという。ドイツには悪い子を罰するブラックサンタが居て、有名な話だがオーストラリアではサンタはサーファーである。きっと鮫が襲ってきても安心なようにとの計らいだろう。
サンタクロースの起源は、聖者ニコラウス(言語によって名はブレる)の伝説が起源である。
その伝承というのが「貧しさのあまり三人の娘を身売りしなければならなくなる家族の存在を知ったニコラウスは、真夜中にその家を訪れ、窓から金貨を投げ入れた。このとき暖炉には靴下が下げられていており、金貨はその靴下の中に入ったという。この金貨のおかげで家族は娘の身売りを避けられた」というものである。これはネットからの引用であるが。
ちなみに、サンタクロースの一般的なイメージとして、トナカイが引くソリに乗って空を飛ぶ、白い大きな袋を背負った、赤い服とナイトキャップを被った恰幅のいいおじいさんというものがある。
そのソリを引く8頭のトナカイに、それぞれ名前があるのは知っていただろうか。ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、ダンナー、ブリッツェン、キューピッド、コメット……どれも、なんとなく強そうなイメージのある名前である。赤鼻のトナカイで有名な9頭目の先導役、ルドルフもその例にもれない。
さて、ここまで書いたならわかるだろう。
UPOの運営は、またやらかした。
◇
「追えー! ヤツが逃げたぞー!!」
「バイクがトナカイなんかに負けるはずがないんだ!!」
「アイエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」
「お前は誰だ!」
クリスマスイブ、街の様子は極めて賑やかな様相を呈していた。その原因は当然、運営が実装した期間限定のイベント。リア充vs独り身のPvPイベントかと思われていたそれは、予想外の形として実装された。
イベント名【聖夜の果てに】
その内容は、レイドボスの期間限定実装である。レイドボスだ。唐突に運営は、馬鹿げた強さのレイドボスを突っ込んできた。
HPが3000万もある9頭のトナカイと、4000万のソリ、5000万のサンタクロース本体に、2000万の巨大な袋からなる空を飛ぶレイドボス。飛行できるプレイヤーがいないと詰むクソ野郎である。
「いやぁ、賑やか賑やか」
そう俺が呟くギルドの中も結構な賑わいである。今日は貸し切りとはいえ、少し前までレイドボスをリスキルしていたトップギルドの面々が集まっているのだから。
【極天】からは常連の翡翠さん、コタツに埋まりに来たアキさん、ストッパーとしてザイルさんが。【すてら☆あーく】は全員。【モトラッド艦隊UPO支部】からはトップ3のイリアステル組が。【空色の雨】からは足場の構築と逃亡妨害で活躍した、イオくんとアークさんが。
そんな人数で打ち上げが始まったのだから、飲めや騒げやの大騒ぎである。
「それにしても、また倉庫が変なので埋まったよほんと」
即死耐性が甘かった故にリスキルされた哀れなレイドボスは、様々な物を落としていった。イベント限定武器防具から、蘇生用アイテム、自動で
「ねえ、ユキくん」
無駄に満腹になったので外を見ていた俺に、同じく抜け出してきたらしいセナが話しかけてきた。
「今日の夜、時間空いてる?」
「毎年の如く空いてるよ。ケーキも用意してある」
うちの両親は、いつもよりも増して家に帰ってこない。クリスマス商戦にお正月商戦、制作に会議にバグの修正にでほぼ泊まり込みになるのだ。それで小さな頃から、俺はセナと一緒にクリスマスを過ごすことが大半だった。
「そう対応されると、ちょっと勇気出してみた私の立場がないんだけど」
「ほぼ毎年一緒だから……」
泊まりに行ったり泊まりに来たりはまちまちだったけど、それでいてプレゼントは毎年律儀に枕元にあるのだから不思議である。徹夜してみた時にも、トイレに行った隙に気がつけば置いてあった。
うちの両親は、暗黒メガコーポ勤めのニンジャではないかと疑い始めたのはその時からである。
「でもいっか! 今年もユキくんと一緒だし」
そう話す俺たちの言葉は、喧騒に紛れてどこに届くこともなかった。
「「メリークリスマス!」」
「そろそろ戻ろうか」
「そだね!」
何度目かの乾杯にあわせて、俺たちは再び宴会の席に戻っていった。
◇
そして時間は変わり、現実の我が家。
ゲーム内と比べれば随分と質素だけど、ここでも2人だけのクリスマスパーティーが開かれていた。正確にはもう終わったので、過去形になるのだろうけど。
「ふわぁ……」
「眠いなら、ちゃんとベッド行ってからにしろよなー」
「ふわぁい」
2人して引っ張り出して来たコタツに潜り、ダラダラとクリスマス特番を見る。いつもの年末の光景だけど、今年はUPOではしゃいだこともあってか既に沙織はうとうととし始めていた。
「んー……とーくん、はこんでー」
もう寝るつもりなのか、コタツから出た沙織は両手をこちらに向けてそんなことを言ってきた。その目は半分以上閉じられていて、今にも寝そうな感じである。
「はいはい」
「ん、えへへぇ」
ため息1つ吐いてから、仕方ないと沙織を抱き上げた。ふわりと香る甘い匂い、暖かい体温に、触れれば折れてしまいそうな華奢さと、それに相反するような柔らかさ。
それは、嫌じゃない。寧ろその逆なのだが……そのまま抱きつかれると、少し落ち着かない。手を出すことは死んでもしないけれど、これでも一応年頃の男子なのだから。
「ベッド着いたぞー」
「ふぁーい」
「おやすみ」
寝惚けた沙織をベッドに寝かせて、冷えないようにちゃんと毛布と掛け布団を掛ける。癖で沙織の頭を撫でた後、誤魔化すようにそう言って俺は部屋を出た。
「さて、洗い物しますか」
テレビでも世間でも、性なる夜とか言ってるけど知ったことか。
実質一人暮らしな以上、やることは山積みなのである。