幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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どうでもいいけど書いてきたキャラで聖杯戦争が出来そうな事に気付いた。一応キャラ被りなしで、バーサーカーはいないけど。


第34話 第2回イベント3日目③

 藜さんに例の要望を伝え、このなんちゃってカーチェイスに意識を引き戻す。頭上に燦然と輝く太陽のお陰でボスクラスの敵しか近寄ってこないけれど、それはそれで辛いのだ。高難度の弾幕ゲーの様な物だと思ってくれれば良い。]-[|/34<#!とかの弾壁よりはマシだが。

 

『叩キ潰シナサイ!』

 

 晴天を突き破る様に、幾本もの巨大な人の腕が、勿論骨だけで形作られているが落下してくる。地を揺らす振動がバイクの走行を妨害し、必然的に蛇行を要求され距離を詰められる。やってられないったらありゃしない。

 

『突キ刺シ、穿チナサイ!』

 

 次に襲って来たのは、地面を穿ってせり上がって来た骨の槍。超高速再生した竹林の様に続々と生える骨の槍は、勿論モロに食らったら死亡必至である。けれど、一度出てきて攻撃判定が無くなりさえすれば!

 

「そらっ!」

 

 大口を開けて俺たちを食い殺さんと前から迫る腐ったワームを、骨の槍をジャンプ台に見立ててそのまま飛び上がる。けれどそれを狙っていたのだろう、自称姫の号令が響いた。

 

『焼キ尽クシナサイ!』

「《障壁》!」

 

 前方上空に爆弾を投げ、バイクを中心に追随設定で障壁を展開、爆破の衝撃でバイクを地面に叩き落とす。その衝撃に耐えている数秒の間に、直前まで俺たちがいた空間は青い炎に焼き尽くされていた。

 乱暴すぎる運転で本当に申し訳ない。けど逆さ大樹との距離が詰まっていくにつれて、攻撃が凄く激しくなってきてまして。

 

『◼︎ァ◼︎◼︎ェ◼︎ッ!』

「【生命転換】《障壁》《エンチャントライト》!」

 

 この攻撃だってそうだ。視界を埋め尽くすほどの、瘴気を纏った蝿の大群とかほんとどうかしてるとしか思えない。けれど突破しない訳にはいかないので、車体と手に持つ5つのパイプ爆弾に光属性を付与、宙に放り投げ爆破。焼き払い浄化しながら突っ切っていく。

 バイクの残りの耐久値は6,000程度、これは些か以上に不味い。気を抜いたら最後、空中分解して事故死する事になる。運転を任せてもらってる者として、それは最低としか言いようがない。

 

『堕チナサイ!』

「《障壁》!」

 

 迫る黒いビームを感知し、身体ごと大きく倒しターンする。次々と背後の空間を黒が貫いていき、回避しきれなかった最後の一本を障壁で防ぎ、時間を稼いでどうにか逃げ切った。

 そして体勢を立て直して走る事数秒、待ちに待った時が漸く訪れた。

 

「出来、ました!」

「ナイスタイミング!」

 

 随分と久しぶりに思える自分のウィンドウには、認証という文字が書かれた新たな紋章が描かれていた。

 その効果は移動速度+150%、効果時間は1秒、条件は紋章を通過、消費MPは紋章の大きさによる、そしてキーワードは……

 

「《加速》!」

 

 バイクの目の前に直径1m程の紋章を手始めに展開する。円の中にと達筆で描かれている。そして『これでまあ大丈夫だろう』そんな甘い予想をぶち壊すかのように、バイクごと俺たちは発射された。

 

「ぐっ……殺人的な加速だ!」

 

 モンスターに衝突する事で普段の速度まですぐに低下したが、予想以上の大加速に驚かされた。抱きつく藜さんの手も、心なしか握る強さが強まってる様に感じる。これならニトロと合わせれば逃げきれる。そう思った矢先の事だった。

 

『逃サヌ、最早妾ガ直々ニ討チ取ッテクレル!』

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ッ!!」

 

 目の前を大きな影が通り過ぎ、次の瞬間その全容が露わになった。進路を妨害され、必然的にバイクを停止させられた。

 所々が腐り落ち骨を露出させた、1枚だけの翼を持った巨大なクサリヘビの様な化物。それが目の前に降り立ち、身の毛もよだつ悍ましい咆哮を発する。名前は【Hunter Farewell】いかにもこちらのSAN値を削ってきそうな見た目だ。

 

 けれどそれよりも目を引くのは、その頭部に存在するあの姫の成れの果てと思しき化物の姿だった。

 遭遇した時は整っていたその顔は正中線から右はグズグズに溶け落ち、左は完全に白骨化している。右の眼は獣の様な黄色に染まりギョロギョロと動き回り、左はポッカリと眼窩に黒い穴が空いているのみで元の名残は存在しない。綺麗だった和服もボロ切れの様になり、手の先から得体の知れない液体をボタボタと落としている。堪えようのない腐臭が漂ってくるし、はっきり言って吐き気を催すボスだ。

 名前も???から【伊邪那美之姫】に変わっており、表示されたHPバーは10段。あ、これあかん奴や。

 

「うっ……」

「多分、藜はこれは見ない方が……遅かったみたいですね」

「いえ、大丈夫、です…」

 

 背後で藜さんが深呼吸している音が聞こえる。火薬か腐臭だったら、火薬の臭いの方が圧倒的にマシだろうしね。

 目の前には最上位(推定)のボスが2体、背後及び周囲には大量のF.O.E級の敵&雑魚モブ。逆さ大樹までの距離はあと僅か、無茶をすればここを脱出する事は出来るだろう。

 

「藜、絶対振り落とされない様に、捕まってて下さい」

 

 そう言って俺は大きく深呼吸をし、意識を限界まで集中させる。周りの音が遠くなり、感覚が鋭敏化していく。ボス共が何かを言ってくるけど聞こえない、目指す場所は地上。天を貫くドリルはないけど、運と速さは持っている。

 

「3、2、1……」

 

 エンジンが唸りを上げる。HPMP共に満タン。バイクの残存耐久値は6,000。準備は、整った。

 

「Go!」

 

 アクセルを全開、最高速に達したと同時に障壁で大ジャンプをかます。攻撃を感知。方向は6時、4時、7時。加速の紋章を展開、空中で加速しバイクごと自分達を射出する。

 

 伊邪那美之姫の騎乗する化物の尻尾が迫っていることを確認。

 車体を倒し、尻尾を一時的な壁面として走行し再加速。

 車体の傾きをカースの暴発で調整……躱した尻尾とは逆側面からの攻撃を確認。

 車体の傾きを変更し、迫る巨大な骨腕を壁面走行を応用し再加速の踏み台とする。

 回避を確認、衝撃を伴い地面に着地する。未だに頭上の晴天が健在な事を確認、ニトロのスイッチを入れる。

 

「【生命転換】《加速》!」

「くぅっ」

 

 後ろから微妙に辛そうな声が聞こえたが、それもそうだろう。倍速中に更に加速を重ねている現状、感じるGは体感だが旅客機の離陸時を超えている。操縦士保護機能がなければ、とっくに吹き飛ばされている事だろう。

 俺と同レベル帯の極振りすら超えた速度にボス共との距離が急激に開いていき、対照的に逆さ大樹との距離はあり得ない速さで短くなっていく。

 

 ボス共からの攻撃が届いてない今こそが好機。数秒毎に加速の紋章を必要最小範囲で展開し際限なく加速、障壁でよくアニメとかに出てくるマスドライバーの様な()()()を形成する。

 

「このまま振り切って、脱出します!」

 

 そしてそのまま、勢いよく俺たちは射出された。空中での加速も忘れない。

 その軌道は、大樹に対する漸近線の様なものが1番近いだろうか? 俺はそこまで数学に詳しい訳でもなく、そもそも大樹の幹に着地するのだから間違いだが多分これが1番適切だろう。

 

「ぐ、ぬっ……」

 

 そして、着地した大樹の幹を地上と何ら変わりない速度で駆け上って行く。所々にある節くれを避けながら進んで行くが、正直もう集中が限界だ。2度とあんなスレッスレの走行なんかするもんか。

 

『巫山戯ルナァ!』

 

 最後の足掻きかバリバリと幹が捲れ上がり、こちらの走行を妨害しようとしてくるけど甘い。練乳にグラニュー糖を混ぜたレベルで甘い。この程度の道を抜ける事程度、さっきまでと比べたら児戯にも等しいわ!

 

「ユキ、さん!」

 

 幹を駆け上がって行く最中、ふと藜さんが声をかけてきた。一体なんだろうか? 何か落としたとか?

 

「もっと、速くが、いいです!」

「了解です!」

 

 そんな事を言われたらもっと先に、もっと速く、もっともっと加速するしかない。恐らく境界だと思われる、少し先にある空間を隔てる様に揺らめく幕。全開でそこまでぶっ飛ばして上げようじゃないか。

 

 紋章を0.5秒毎に突き抜け、加速中に更に加速を重ねに重ねていく。

 速度上昇、速度上昇、速度上昇──音速突破(オーバーヒート)

 いつの間にかタイヤは地面を掴まず、車体は空中を宛ら1つの弾丸の様に飛翔していた。私は1発の銃弾……と、どっかの決め台詞でも言いたい気分だ。

 そして飛翔する事数秒、揺らめく幕を俺たちはなんの抵抗も無く貫いた。けれど、妙に加速した認識の中で目の前に1つのウィンドウが開かれた。

 

====================

【警告】

 貴方達は、正規の脱出方法以外での脱出を試みています。

 賞賛すべき事ではありますが、フィールドボス【伊邪那美之姫】を説得or撃破していない為、ギミックとして幾つかのデメリットが発生します。

 ex)

 現在の装備中の装備を、デメリット付き装備に強制変更(イベント終了時まで変更不可)

 極大のデメリットがあるスキルの強制取得(イベント終了時まで強制装備)

 イベント終了時まで獲得経験値1/10

 

 複数人で引き受けた場合、デメリットの内容は分割されます。このデメリットはどちらか1人が引き受ける事で、もう1人は回避する事ができます。

 また、このデメリットを引き受けた者は、フィールド【死界】から脱出した報酬は消滅します。しかし脱出に成功した実績を加味し、配布される装備の性能は専用に調整されます。

====================

 

 ふむふむ。とりあえず、こんなのを女の子に背負わせる訳にいかないでしょう!

 

「デメリットは、俺が全部持っていく!」

 

 ー了承ー

 

 藜さんの驚く雰囲気を感じながら、閃光に包まれ──気がついたら、狂った様な雨の中に飛び出していた。

 

「うっそん」

「ッ!」

 

 眼下に見えるのは、一面ぐじゃぐじゃの地面。バイクの加速は未だ衰える気配もなく、耐久値は2,000まで落ちている。このまま着地したらバイクも俺も藜さんも纏めてお陀仏だろう。

 

「まだだァ!」

 

 残りのMPは200程度。再び集中した意識の中、あの紋章作成画面を開く。そしてベースに藜さん作の加速を設定、そして全パラメーターを反転させ決定ボタンを押す。即座にその紋章は認証された。

 その効果は、移動速度-150%な事以外は元にした加速と同じ。発動キーワードは……

 

「《減退》!」

 

 減速じゃないのかと思いつつも、大破寸前のバイクを収納して相変わらず達筆なの文字を突き抜け減速していく。そして、十二分に減速したところで気づいた。装備が変わっている。これが多分デメリットなんだろう。

 

 体装備はコズミック変質者が着ていた様なボロ切れ。一応、何かを下に着てる感覚はあるからセーフだ。手装備は右手にだけ禍々しい気配を発する黒い数珠。足装備は……多分このコートの中を見えない様にしている黒い闇だろう。靴装備は……名前的に、足首に巻かれた藁の残骸か。そして頭装備は、多分お札っぽい感触の小さな耳飾り。この分だと、長杖の方も変えられているだろう。

 

「すみま、せん!」

 

 そして、減速は完了した筈なのに、後ろから藜さんがぶつかった事により、俺のHPはあっけなく0になった。

 

 見た目はこの際いい。装備する事でのデメリットも、望んで引き受けた物だから許容するつもりだった。スキルのデメリットも、効果相当だと黙認したかった。

 

 だけどさ、運営さんよ。後1日は残ってるのに、合計で()()()()()()()()ってどうなのよ?




現在のユッキーの状態
・極振り
・被ダメージ25倍
・スキル効果でLuk以外のステータス-50%
・獲得経験値1/10
・残機 0

-追記-
主人公の難易度変化を分かりやすく。
虫姫さま→]-[|/34<#!

加速は、某カーレースゲームの赤キノコ。効果時間後の減速的な意味も。
減退は、もう少し対応範囲が広くなって消費が重くなってるが、上記の効果が反転したもの。

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