幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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こっそり新連載(ダイマ)


第35話 第2回イベント3日目④

《コンティニューしますか?》

 回数 残り0回

 Yes/No

 

 ため息を吐きながらYesのボタンを叩きつけるように押し、最後のリスポン権を行使する。どっかの語り部キャスター並に慎重を期しても、多分これ生き残れないよなぁ……

 

 さっきからずっと何かの受信音が止まらないけど、一先ずそれは意識の外に置いておく。怖いし。

 

「すみま、せん」

「いえ、元々俺の耐久なんてこんなものなので。藜が気にする必要はありませんよ?」

 

 なんだか申し訳なさそうにしょんぼりしてる藜さんの頭を、ポンポンと優しく撫でる。……あっ。やらかした。というか雨うざったいし障壁張っておこうそうしよう。

 

「デメリットも、全部、なのに……ふわっ!?」

 

 流れが良くない方向に傾きそうだったので、多少乱暴に頭を撫でる。折角通常フィールドに戻ってきたんだし、そういう話題は無しだ無し。

 それによくよく考えれば、デメリットはあまり意味をなしてないし。被ダメは元々当たる=死ぬだし、Lukが生きてるから行動は特に問題がない。経験値は普段からデスペナ中に行動してるくらい、ハッキリ言って気にしてない。いつかなるのが確定していた残機0以外、普段と何も変わらない。

 

「そんな事より、どこか落ち着ける場所でも見つけてご飯にしましょうよ。折角、あんな場所から脱出できた事ですし」

「むぅ……ユキさん、ずるい、です」

 

 両手で頭を押さえてこちらをキッと睨んでくるけど、身長の関係上上目遣いになってるし全く怖くない。寧ろ、可愛いといって憚ることはないだろう。

 

「ずるくて結構ですよ」

「うぅ……」

 

 頭を撫でてから周りを見渡してみるけど、今度は本当に何も見つからない。視界は相変わらず強すぎる雨で遮られ、この天候の場所に初めて降り立った時とは違い確認できるものは何もない。指輪での天候書き換えも範囲が足りないし、望遠の紋章とか作れないだろうか? 望遠したとしても見えないじゃん。馬鹿かよ俺……疲れてるんだなきっと。

 

 目頭を押さえて目と頭を軽く休ませていると、この頭のおかしい豪雨の中でもよく通る爆音が耳に届いた。

 

「暴走族、です?」

「いや、多分この音は……」

 

 目を凝らして周囲を探していると、多少遠くではあるが光の群れ……バイクのライトの光を視認することが出来た。その数14、これはもう確実にあの人達である。

 

「あっちですね。運が良ければ知り合いですけど、行きます?」

「仕方、ないですね。行きます」

「了解です」

 

 そう言って俺は藜さんの手を握る。バイクは大破しかねないから出さないけれど、使い勝手の良い紋章を2つも先程手に入れている。要するに、移動手段がないなら脚で稼げばよかろうという事だ。

 普段そんな高速移動をすることの無い俺は兎も角、藜さんの戦闘スタイルからして高速移動はきっと問題ない筈だ。

 

「えっ?」

「それじゃあ行きますよ。《加速》!」

 

 全力で踏み切り、加速の紋章を潜る。グッと加速による圧を感じ、俺たちは雨の中を鉄砲玉の様に飛び出した。尚、俺の全力の踏み切りと藜さんの戸惑い気味の一歩が同速だった事はここに記しておく。

 

 ・

 ・

 ・

 

「なるほど、そういう経緯で俺たちを頼ったという訳か。新手のモンスターかと思ったぞ」

 

 あれから数十分。シドさん率いるバイク艦隊に合流した俺たちは、拠点にしているらしい洞窟に招待してもらっていた。散々カスタムされて、最早中身は洞窟とは言えないレベルではあるが。

 ちなみにシドさんはバイクから分離している。流石にあのままだとご飯が食べにくくてしょうがないとの事だった。

 

「俺じゃなきゃ死んでましたよほんと。まあ、いきなり押しかけたこっちが悪いってのはわかりますけど」

 

 合流する時は、無事とは言えない接触だった。今シドさんが言ってた通りモンスターと思われ、銃やら魔法やらがかなりの量飛んできたのだ。減退と障壁で全部すり抜けたけれど。

 

「それにしても、人間とは思えない回避方法だったな。お前、ちゃんと人間だよな……?」

「失礼な。あれくらい誰にでも出来ますよ」

「はぁ……」

 

 化け物扱いされた挙句、ダメだこいつと言わんばかりの大きな溜息が返ってきた。解せぬ。

 

「スキルの補助込みで、銃弾を弾いて魔法を減退させて回避しただけじゃないですか」

「うちにも紋章術を使う奴がいるから聞くがな……その減退ってのは知らないが、障壁の設定を言ってみろ」

「展開時間1秒、直径30cm以下ですけど?」

 

 そうでもしないと硬さが足りないんだから仕方がないだろう。

 

「普通は、基準値から減らすなんてねーから! 減らしても展開時間だけで、それでも30秒くらいまでだ!」

「そんな怒らないでくださいよ。あのシドさんのロボットアームを防いで、無傷でやり過ごしただけじゃないですか」

 

 そう、遭遇時俺たちはシドさんにも攻撃されている。剣の装着された宙に浮かぶロボットアーム……具体的に言えばワイゼルアタック3で、思いっきり刺突されたのだ。ボスより火力が低いので障壁だけで軽く防御できた。流石に弾幕も、リーダーに超接近してればないしね。

 

「はぁ……あの一撃は、俺の最大火力に近いんだぞ?」

「レイドボスよりは火力低いじゃないですか」

「基準が狂ってんだよお前は……」

 

 色々情報を交換した結果、どうやら【The Shield Criminal】も【伊邪那美之姫】も所謂レイドボスに分類されるボスだったらしい。レイドボスを2人で撃破とか笑える話だ。

 

 そして、客人である俺とサブマスのシドさんがこうして話していられるのには幾つかの理由がある。1つ目は、この集団にいた女性陣が何故かある風呂に入っていること。藜さんも入ってるそうだ。2つ目は、残りの男手の半分くらいがバイクの修理を行なっていること。俺のバイクも混ぜてもらった。3つ目が、普通に索敵。そして最後が……

 

「Luk以外のステータスがマイナスな上、被ダメージが25倍なんだろ? それでまだ生きてるとか、化け物だろお前」

「普段から極振りですから」

 

 普通に憐れんで保護してもらった。

 とか言いつつも、一応保険はかかっている。装備の方はデメリット以外が???なので説明できないが、狂ったスキルの効果のお陰であと1回は確実に死ねるのだ。そのスキルの効果がこれだ。

 

 

【常世ノ呪イ】

 隠世から齎される無限の咒

 自身のHPが0になった時、確率で10%の値でHPを回復させ復活する。復活する度、蘇生確率は減少する

 復活後、自身に腐蝕・獄毒・祟り・汚染の状態異常を付与する。また、復活の度に移動速度を10%ずつ低下させる。この効果で移動不能にはならない

 

 Str -50% Vit -50%

 Int -50% Min -50%

 Agl -50% Dex -50%

 

 効果時間 : 戦闘終了まで/時間が30分経過

 

 

 復活後はあの【死界】の環境に置かれる訳だが、確実に狂っている。復活効果とか聞いた事もないし。だから、一応デメリットしか説明してない。

 

「それより、そろそろ俺は休ませてもらっていいですかね? 正直に言うと、集中のし過ぎで頭が痛いんですけど」

「ああ。俺たちはまた出撃するが、ここの一角を貸し出そう。ゆっくり休むといい」

「ありがとうございます」

 

 そう言われ俺は、ちょっとした個室に案内された。大きなベッドが1つあるだけの、特に何もない場所だ。

 

「さて、後は……返信だ」

 

 溜息を吐きながら、俺はウィンドウを開き続いてフレンドメッセージの部分を開く。そこには、25件の未開封メッセージがありますという表示。因みに、全て発信元はセナだ。

 

 大丈夫? という質問から、もしかしてもう脱落しちゃった? とかいう心配になり、ユキくん、ちょっと掲示板の事について聞きたいな? ちょっとユキくんとお話ししたいなー、と段々悪化していっている。コワイ!

 何もアクションを起こさず再会した場合、確実にアンブッシュからのインタビューを食らいしめやかに爆発四散する未来が見えている。

 

「えーと、とりあえず『今まで返信できなくてごめん。あと1日だし、帰ってからゆっくり話そう』って返しておけばいいか」

 

 何この完全に浮気がバレた夫の文面。そんな考えが頭に浮かぶが、先程言った通り過度の集中を続けたせいか疲れが酷い。気を緩めたからか、疲労がどっと押し寄せてきた。

 

「偶には、昼寝もいい文明……」

 

 メッセージの送信を確認後、ボフンとベッドにダイブする。ゲームだから気分以外に風呂に入る意味もないし、装備も乾いてるからなんの問題もないだろう……zzz

 

 

【雑談】イベントリタイアした奴が集まるスレ

 

 1.名無しさん

 さて、イベントも結構な時間が経ったしそろそろ脱落者も増えてきただろう。どうせ暇だろうし、死因上げていこうぜ!

 因みに俺は、でかい鹿に挑んですぐ死んだ

 

 2.名無しさん

 >1

 おまおれ

 

 3.名無しさん

 俺は蛇に丸呑みされたなぁ……

 

 4.名無しさん

 蝙蝠にバラバラにされました

 

 5.名無しさん

 火山で焼け死んだ

 

 6.名無しさん

 氷山でブリザード、吹き飛ばされてクレバスへ

 まさかの餓死

 

 7.名無しさん

 虫に負けて虫だらけの場所に連れ込まれて捕食された

 R指定がなかったら苗床エンド

 

 8.名無しさん

 >7

 うわえぐ

 

 9.名無しさん

 お前らはいいよな……俺なんて、ロクに冒険すら出来ずにリタイアだぜ?

 

 10.名無しさん

 >9

 kwsk

 

 11.名無しさん

 天候効果か? でも知ってる限り、即リタイアレベルの天候なんてほとんどないぞ?

 

 12.名無しさん

 嵐天での戦闘とかは遠慮したいな。あれは死ぬ

 

 13.名無しさん

 ブリザード舐めんなよてめえ

 

 14.名無しさん

 火山だっておかしいからな!

 

 15.名無しさん

 どこも死界よりマシだろ……開始10分で4killされたんだぞ俺

 

 16.名無しさん

 勿体ぶってないではよ、はよ

 

 17.名無しさん

 あくしろよ

 

 18.名無しさん

 かしこまり!

 まず転移完了前に『あなたは特別なフィールドに転送されようとしています。転送先のフィールドの難易度は極めて高いです。通常フィールドに変更しますか?』ってメッセージが来たんよ

 勿論こんなん俺TUEEEEE展開かと思ってNo押すじゃん?

 転移すんじゃん?

 死ぬじゃん?

 死ぬじゃん?

 死ぬじゃん?

 死ぬじゃん?

 リタイアじゃん?

 

 19.名無しさん

 おいちょっと待て何があった

 

 20.名無しさん

 今明かされる、衝撃の真実ゥ〜

 

 21.名無しさん

 転移直後から獄毒でHPがガリガリ削れるじゃん?

 腐食で装備の耐久値がゴリゴリ削れるじゃん?

 祟りがそういう耐性を削ってくるじゃん?

 汚染のせいで状態異常の効果が倍じゃん?

 出てくる敵は、ほぼボス級じゃん?

 じゃんじゃじゃーん!(死亡)

 

 22.名無しさん

 うわキツ

 

 23.名無しさん

 プレイヤー殺す気しかなくてワロタ

 

 24.名無しさん

 忠告無視したお前が悪いな

 

 25.名無しさん

 俺がいた天上とは全く逆の環境だな

 なんでここにいるのかって? ボスに鏖殺されたんだよ察しろ

 

 26.名無しさん

 地上・天上・死界……色々あったんだなぁ……どれも堪能できなかったよちくしょう……

 

 27.名無しさん

 フィールドにいる普通のモンスターがあのレベルとか聞いてないっつーの。戦闘中に乱入してきやがるし。クソかよ。バランス調整してねえだろここの運営

 

 28.名無しさん

 >27

 世界○の迷宮シリーズをご存知でない?

 準備も出来ずに戦いに挑んで死ぬのは恒例行事として、それを罵倒するのはなんかなぁ

 

 29.名無しさん

 そもそもイベント関連のページを読めって事だよな

 読んでおけばやべーやつがいるってのはわかったし

 

 30.名無しさん

 普通にパーティ単位で挑めば勝てないこともないしな(鹿は)

 

 31.名無しさん

 俺は極振りが一撃で蒸発させてるのをみたんだが

 

 32.名無しさん

 >31

 あいつらは変態だから

 

 33.名無しさん

 >31

 キチガイを引き合いに出しちゃダメです

 

 34.名無しさん

 >31

 山を斬るような奴らは比べたらダメよ

 

 35.名無しさん

 >31

 ダンジョンを1つ丸ごと消しとばす輩を出すのは、申し訳ないがNG

 

 俺も、極振りにしてみようかなぁ……

 

 36.名無しさん

 >35

 やめとけ

 

 37.名無しさん

 >35

 最近の極振りスレ見てこい。

 Luk極振りがやってる事が出来るんなら、やってみるんだな

 

 38.名無しさん

 諦めた

 

 39.名無しさん

 >38

 速えwww懸命だな

 

 40.名無しさん

 >38

 あいつら真性の変態共ですら、純正の極振りは幸運と……ちょっと前に戻ったIntの魔法使いだけだしな。

 

 41.名無しさん

 こうして俺たちは、変態に吊られてゲームを引退する奴を1人助けたのであった……

 

(以下雑談)




移動手段がない=アシがない って表現、差別用語らしいですね。同じ理由で、片手落ちとかもダメなんだとか。言葉狩りみたい
確かにほぼほぼ見ないと思ってたけど、中々面倒だなぁ…

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