幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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シンゴジラ、思った以上にB級映画だったけど、サメ映画で鍛えられていたお陰で普通に楽しめました。あぁ、早くシャークネード5観たいなぁ…


第50話 オークション

 水着選びの数日後。相変わらず連続クエストが開始する兆候が見えない為、ギルドでお茶をすすっている時の事だった。

 

「ん」

 

 ぼけーっとしていた俺のコートを、くいくいとれーちゃんが引っ張ってきた。ここ最近、俺がいても放置だったのに何だろうか?

 

「ん」

「うん?」

 

 湯呑みを置いてれーちゃんの方を見れば、れーちゃんはこちらに向けて1枚のウィンドウを開いていた。えーと、何々? 運営からのメッセージらしいけどこれは……

 

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 全職人プレイヤーの皆様へ

 仲夏のみぎり、皆様におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

 この度、今週末の土曜日正午から、小イベントとして運営主催『第4回オークション大会』が第4の街『ルリエー』にて開催されます。参加は各自ご自由ですが、自らのこれはというものを競う場でありたいと考えております。

 自らの作品を出展するもよし、自慢のドロップ品を出展するもよし、欲する物を買い求めるも良し。皆様のご参加を心待ちにしております。

 ※同行者は1人のみとなります

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 ここの運営にしては、えらく丁寧なメールだった。内容についてはそのままだから言うまでもない。それを見せながら、れーちゃんは何かを伝えるためにかパタパタとジェスチャーを続ける。そしてどこか誇らしげな顔で一言。

 

「ん」

「えーと……俺に一緒に来て欲しい?」

「ん!」

 

 コクコクと頷かれた。別に俺としては一向に構わないけど、なんでランさんじゃなくて俺なのだろうか。ああ、なるほど。多分アレだ。

 

「ランさんはヨロイ作りに忙しいから、俺が代わりに翻訳役って事? いっつも頼ってるから?」

「ん」

 

 この前俺がシドさんに紹介した結果、ランさんは巨大ロボという点で意気投合したらしい。正確にはヨロイだが。そしてそれは、残念ながらまだ設計図段階らしいけど、どうにか製作する目処がたったらしくて何よりだ。

 それに俺は、何故かれーちゃんの言葉の翻訳をランさんに次いで出来るから、そういう理由であるのならば納得だ。

 

「資金も腐るほど持ってるしね」

「んーん!」

 

 そう俺が言うと、全然違うと言わんばかりにれーちゃんは首を横に振った。

 

「資金は自分でって事?」

「ん!」

 

 自慢気にれーちゃんが見せてくれた画面には、どうやって集めたのか1,500万Dの文字が。確かにこれなら、きっと問題ないだろう。自分の画面を見ると資金額が未だに3,000万をオーバーしているのは気にしないでおく。

 

「なら、どうしてもって時は頼ってくれていいからね」

「ん!」

 

 るんるんという擬音が似合う様な雰囲気で、スキップしながられーちゃんは厨房的な方へ戻っていった。やっぱり、れーちゃんは素直で可愛いなぁ……ハッ、殺気!?

 

 

 ギルド内でヘッドショットを食らうとかいう稀有な経験をした後、時間は過ぎて土曜日。俺はれーちゃんの付き添いとしてルリエーへ来ていた。未だに連続クエストが再開する兆しもないし、気は楽なものだ。

 

「ん! ん!」

「ごめんごめん」

 

 先を行くれーちゃんに咎められ、加速を入れて追いつく。歩幅では俺が大幅に優っているというのに、れーちゃんと並走しようとすると追いつけずに遅れてしまう。Agl0の辛いところだ。

 

 そんな事もあったが、なんとか到着した会場。そこの見た目は背景の一部の様な、なんとも残念な感じの場所だった。だが入り口にカジノでも見たガードマンがいる為、ただの背景ではないということは明らかだ。

 

「品物は?」

 

 会場に入ろうとすると、ガードマンの人が道を塞ぎバリトンボイスでそう問いかけてきた。俺でも見上げる様な高身長で、禿頭黒スーツにサングラスの色黒マッチョマンが、だ。恐らくれーちゃんにとっては、相当怖い人物となるだろう。間違いなくセナなら俺に隠れるか抱き着いてくるし。

 

「ん!」

「承りました」

 

 が、れーちゃんは強かった。そんなガードマン達に怯えることなく、自分の作品と俺のレアドロをガードマンに渡した。セナというか、沙織の方が正常だよ……な? うん。

 

「おぉ……これは凄い」

 

 そうして入場したオークション会場は、思いの外賑わっていた。ざっとみるだけで100人くらいはいる気がする。そしてその全員が、同心円状に配置された番号の書かれた席に座っている。

 

「ん、ん!」

「ん、ああ、俺たちはそこなのね」

 

 手を引かれるままに、463番と書かれた場所に座った。463番……想像以上に人数は集まってるらしい。忘れがちだけど、一応俺も生産職に片足突っ込んでるんだし、そんな人数が集まっている光景は壮観だ。

 

「ん」

「欲しいものがあったら、手を挙げてレイズしていくってこと?」

「ん!」

「大丈夫だよ。俺もそこまで荒らすつもりはないから」

「ん?」

「きっといいものが見つかる? それならいいなぁ……」

 

 周囲のなんだこいつという視線を受けながら、話しつつ待つこと10分弱。がやがやざわざわと騒がしかった会場が、暗転と同時にシンと静まり返った。

 そしてスポットライトに照らされて、トマトの様なカラーリングの髪型でゴーグルを付けた少年が、マイクを持って現れた。

 

「Ladies and Gentlemen! それではみなさん、長らくお待たせ致しました‼︎──まもなく、第4回運営主催ミニイベント、ルリエー大オークション大会を開催したいと思います‼︎ 司会は勿論この私‼︎ 振り子メンタル、さぁかきぃぃぃ、ゆぅぅぅやぁぁぁ!!」

「「「「「Foooo‼︎」」」」」

 

 予想を遥かに上回る人気に、俺は驚かざるを得なかった。歓声に紛れてくたばれやら引っ込めやら、違うだろー!という罵声もあるが、まあご愛嬌なのだろう。実際名前はただの榊の様だし。

 

「今回は、第2回イベント後に開催されていなかった為、良き商品を大量に取り揃える事が出来ました‼︎ お好みのアイテムをお持ち帰り頂けます事を、心よりお祈りしております‼︎」

 

 そう言って司会者は、深いお辞儀をした。興奮収まらない様な観客の中、隣を見ればれーちゃんは至って冷静に司会者を見ていた。俺が見習うべき姿勢は、恐らくこっちだろう。

 

「それでは、早速オークションを始めましょう〜〜!!」

 

 司会者が指をパチンと鳴らすと、暗転が解かれ台が引かれてきた。台の上に載せられているのは、長弓と矢筒のセット。普通に強そうだが、俺には関係ないものだし興味ないや。

 

「エントリーNo1! ギルド『源氏バンザイ』出品、【与一っぽい弓セット】名前はアレですが、かなり高精度の命中補正と矢の回収能力の付いた、名品です! 先ずは5万Dから‼︎ 購入したい方は、手元のプレートを挙げて意思表示を‼︎」

 

 因みに性能は、商品の背後にあるスクリーンにデカデカと表示されるシステムの様だ。

 どうやられーちゃんもこのセットには興味がないらしいため、俺も周りの観察に留めることにする。だが不思議なことに、6万、8万と値段が釣りあがっていく。そして値段の上昇は9万5千で止まり落札された。

 

「そういえば、このオークションってどういうシステムなの? れーちゃん」

「ん?」

「いや、お金の支払い方法とか、品物の受け渡しとかはどうなってるんだろうなって」

 

 そう話している間に新しい品物が運ばれてきたが、なんらかのレアドロップ品と言っていたので後から俺が取ってくれば良いだろう。

 

「ん、ん。んー、ん!」

 

 れーちゃんの手が忙しなく動いて、俺に何かを伝えようとしてくる。唸れ俺の想像力、今回ばかりはちゃんと想像して答えを見つけないと問題だし。

 

「……なるほど。お金の支払いは出品した人に直接入って、品物の受け渡しは落札したのと同時に行われると。ありがとう」

「ん!」

 

 れーちゃんの笑顔が眩しい。思わずなんでも買ってあげたくなるくらいに。決して不健全な意味じゃないから鬼いさんとか憲兵=サンは呼ばないで欲しい。

 そんなこんなでオークションは、れーちゃんも俺も興味が引かれるものがないまま進んでいき、遂に50番代を突破した。そろそろ暇が顔を出してきたその時、大袈裟なリアクションで宣言した。

 

「ではここからが本番、目玉商品達のお披露目となります‼︎ エントリーNo60! 匿名希望、HN(ハンドルネーム)ノアさん出品、なんとも珍しいプレイヤーメイドの対物ライフル【フラウロス】です!」

 

 そうして現れたのは、どこか非常に見覚えのある様な気がするピンク色の一丁のライフルだった。なんとなく隣を見てみれば、れーちゃんが僅かに笑みを浮かべていた。

 

「では特別価格、50万Dからとさせていただきます!!」

 

 思った以上の高額に俺が驚いている間に、ドンドンと値段は釣りあがっていく。60万、70万……そして80万を軽く超え、100万もオーバーした。なるほど、れーちゃんの資金源はこれだったらしい。そして結果、この対物ライフルは136万Dで落札された。一瞬、なんだその程度かと思ってしまった自分に微妙な気分になる。

 

「では次に参りましょう。エントリーNo61! ギルド『メガネ、グッジョ部』出品、【メガネリオン】です!」

 

 そうして現れた装備は、俺の度肝を抜く物だった。

 形状としては片眼鏡(モノクル)、細い鎖が垂れている点がとてもグッドだ。しかもコスプレ用のブリッジ付きではなく、謎の技術でのっぺりとした頭のモデルの眼の前に固定されている本格?仕様。その効果は──

 

「しかもなんと、この片眼鏡は素晴らしい効果を持っています!! 自身のVitとMinを30%下げてしまう代わりに、Lukを50%も上昇させるのです‼︎ 更に更にぃ、攻撃の命中精度を上げる能力も付与されております‼︎」

 

 背後のスクリーンに表示されている性能はこうだ。

 

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【メガネリオン】

 Vit -30% Min -30%

 Luk +50%

 命中補正(中)

 耐久値 500/500

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 これは、この頭装備は、買うしかないだろう。性能が破格だ。俺のゴーストがそう囁いている。

 

「これは再び特別価格、50万Dからとさせていただきます!!」

 

 50、55、58万と段々と上昇していく値段を見ながら、俺は内心でほくそ笑む。行くぞ他プレイヤー、資金の貯蔵は十分か?

 

「100万」

「おぉーとぉぉお! ここでいきなり100万が出ました! これを超える値段は出るのでしょうかぁぁ!?」

 

 いきなり40万は飛ばして、俺は100万Dを宣言した。もし1,000万を超える様な金額になった場合はまあ、譲ってあげようじゃないか。

 

「105万!」

 

 そして数秒後、そんな値段が宣言された。誰だろうかと見れば、プレートを挙げているのはどこか見覚えのある金髪くんだった。まあ、その程度しか記憶にないのなら取るに足らない人だったのだろう。

 

「110万」

「115万!」

「120万」

「130万!」

「1つのアイテムを巡って、熱いデットヒートが繰り広げられるぅぅ!!」

 

 実況する司会者をよそに、視線を感じたれーちゃんの方を見れば、呆れた様な目で俺を見ていた。俺の資金残高を知ってるから、とっとと決めろという事だろう。だが俺は、某漫画の天竜人みたいにはなりたくないのだ。故に地味に負かすのみ。

 

「150万!」

「160万」

「くっ、162万!」

 

 相手の勢いが、微妙に弱まってきた。なんだ……案外速かったじゃないか。

 

「165万」

「ちくしょう……180万でどうだぁ!」

「200万」

 

 相手方が血走った目をこちらに向けてきたが、知ったことかと笑って返す。俺を相手にしたのが運の尽きだ。

 

「200万D‼︎ それ以上の方は!?」

 

 司会者の人がそう問いかけるが、誰もプレートを挙げる人はいなかった。

 

「どうやらいない様ですね。それではこの頭部装備【メガネリオン】は、463番の方が落札となります!」

 

 カンカンカンとハンマーが鳴り、競争は終了した。支払われた資金の代わりに届いたメガネリオンを装備し、無性に見覚えのある金髪くんに見せて自慢しておく。しなきゃいけない気がしたし。

 

「ん!」

「ああ、ごめんねれーちゃん。でもまあ、良い買い物だったよ」

「ん!」

 

 その後は特に白熱した競りもなく、オークションは進んで行った。しいて言えば、俺が提出した【機天・アスト】のレアドロセットが200万で売れたこと、なんだかんだれーちゃんが色々なものを買い漁り500万は軽く消費したくらいだろうか。

 

 こうして、初めてのオークションは平和に幕を閉じたのだった。ザイルさんの出品物は無かったようだが、個人的にはとても満足がいくものだった。

 




ユッキーの現Luk 4116
平均的な同レベルPLの40倍くらい

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