幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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本編には関係ないけど、なにやら光堕ちなる言葉がある様で


第51話 新称号

 オークションが終わり、特に何か面白いイベントが起きることもなく1週間程が過ぎた。時期としては夏休み直前、そんな時深夜1時から朝の7時までのメンテナンスが入った。

 極振りの誰かが原因かと思いネットで漁ってみたが、サーバーの強化やバグの修正を始めとした良くあるものだった。安心である。

 

「まあ、そんなもんだよね」

 

 ログインしてみても、特に何かが大きく変わっているという事はなかった。

 予想どおりなので、諦めてそのまま最近のノルマにしている1日3本のビル爆破をし、ギルドに帰還する。そして自室で数えていたビルの爆破レコードが50本を突破したのを確認し、結果溢れた素材を整理しているときの事だった。突如、耳に聞きなれない音の響きが届いた。例えるならば、笛だろうか? どこか、何かを讃えるような響きが聞こえたのだった。

 

「うん?」

 

 気になって見渡してみるが、俺の部屋にそんな音を立てるものはない。あるのはレアアイテムと爆弾と燃料と貰ったお酒だけである。なにこれ物騒だな。

 それは諦めるとして、ならば一体どういうことか。外でもなさそうだし、残る可能性はメニュー画面だろうか。確かめるべく開いてみると、そこに表示されていたものは予想外のものだった。

 

「うわ、何この無駄に豪華な画面」

 

 運営から来ていたメールを開くと、無駄に豪華に縁取られたウィンドウが展開された。金色の綺麗な枠と、広げた翼のような飾りのある明らかに特別なウィンドウ。そこにはこんな事が書かれていた。

 

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【※重要】

 この度のアップデートにより、これまでの条件に追加で前人未到の業績を打ち立てた者10人に、実装した新たな称号を授けることが決定しました。他の称号と違い、この称号は唯一となるユニーク称号となっています。まあ、この新称号群の取得条件には、各プレイヤー間のバランスを考慮しステータスの値は含まれません。

 同等の条件の称号は、これからも逐次実装していく予定です。

 

 PN(プレイヤーネーム)ユキ様。貴方様は、全プレイヤー中最も爆破系アイテムを購入、製作、使用。また、魔法の暴発による爆破を引き起こしました。更に、多数の大型建築物オブジェクトの爆砕という実績がありやがりますので、検討の結果新称号《爆破卿》を進呈します。

 同時に配布されたユニークアイテムを使い、これからも爆破の未知なる可能性を運営に見せてください。出来れば、町の外側で。

 

 称号《爆破卿》を取得しました

 効果 : 爆破系統の攻撃威力が100%上昇

    爆破系アイテムを確率で消費無効

 報酬 :【無尽火薬(アタ・アンダイン)】を入手

               運営一同

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「えぇ……」

 

 混乱する頭で何度も見返したが、表示されている文字は一切変わることがなかった。楽しんで今まで爆破していただけなのに爵位が授与されるとは此れ如何に。いや違うそうじゃない。先ずは、まあ街の外とか書いてあるし、ビル爆破の本数は減らしてあげようと思う。うん。そして落ち着こう。

 

 一度深呼吸して、もう一度開かれたウィンドウを見る。そこには相変わらず、頭のおかしいことが記されていた。

 

「流石ユニーク称号、効果がぶっ壊れてる」

 

 元々爆破アイテムの威力は然程でもないから、称号の効果込みで普通になる……で、いいのだろうか? いや、よくないだろう。ビルの爆破解体に必要な爆弾が、単純計算で半分になるのだ。火力2倍はおかしい(確信)

 それに、確率消費無効は本当にキチガイなんじゃないだろうか。Lukが判定に関係あろうがなかろうが、ほんとおかしい。こんなのをプレゼントしてくれた運営には、後でドンパチ感謝祭をするしかない。そうだ、ビルをパーティーの蝋燭的にファイヤーしよう(手のひらドリル)

 

「残りはユニークアイテムだっけ?」

 

 【無尽火薬(アタ・アンダイン)】なるアイテム名からは果てしなく興味が唆られるが、もしかしたら実態とは違う可能性もある。ここの運営に限ってそんな事はないだろうが、一度深呼吸をし、微かに震える指を動かしてアイテムを実体化させる。

 

 それで現れたのは、不思議な形状のアイテムだった。形は3つのリングの付いた、Dっぽい形の漆黒のカラビナが一対。リングにはそれぞれ1つずつ、ミニチュアのダイナマイトの様な物体が接続されていた。

 

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無尽火薬(アタ・アンダイン)

 無尽蔵の火薬

 収束爆弾(3/3)

 集約爆弾(3/3)

 耐久値 : なし

 ※このアイテムは装備枠を消費しません

  このアイテムの譲渡は不可能です

 ====================

 

「……は?」

 

 とりあえずポーチに手を入れる邪魔にならない場所に取り付けつつ、表示されたままの画面をじっと見つめる。詳しく調べてみると、集約爆弾というのは高火力の爆弾らしく、収束爆弾というのはその名前の通りクラスター爆弾である様だ。数の表示は、そのまま1日に使える個数。24時間で使える数はリセットされるようで、使い切るアイテムではないらしい。

 

 無尽蔵の火薬は、無尽蔵に高性能の火薬を生み出せるという能力らしい。火薬を出そうと思い手を振ってみると、黒い粉が舞った。ちゃんと加工しなければロクなダメージソースにはならない様だけど、これが例の高性能火薬なんだろう。

 

「運営よ、貴方が神か」

 

 渾名が爆弾魔とかテロリストとかいう奴に、無限に作れる爆弾を与えるとかここの運営は頭がおかしい(褒め言葉)

 元々お金は特に気にしてなかったが、フィリピン爆竹を始めとした爆発物の製造が更に安価になった。それに恐らく、市販品で製造するよりも単純に爆弾の性能だって上がることだろう。加えて3回だけだが範囲爆撃が出来るようになり、反動なしの高火力も手に入った。それに加えて称号の効果で、元の火力から更に増加する。

 

 こんな至れり尽くせりのサービスをしてくれる運営は、神と言って過言ではないだろう。ヒャッホイ運営様。お礼に愛の爆破をして──

 

「これはもう、感謝の爆破案件か……?」

 

 最早それくらいしなければ釣り合いが取れない気がしてきた。気を整え、拝み、祈り、投げて、爆破する。足らなくなるであろう爆弾は、この無限に生成される爆薬を加工すればいい。

 さあ、思い立ったが吉日だ。早速実行に移さねばなるまい。そう考えて立ち上がった瞬間、ドタバタという激しい足音が聞こえ、勢いよく部屋の扉が開かれた。

 

 とても急いで来たのだろう、肩で息をするセナがそこにいた。下を向いたせいで、貞子チックになっている長い銀髪を軽く元に戻し、息を整えてセナは、顔を上げて1枚のウィンドウを突き出してきた。

 

「ユキくん見て! なんかすっごいのきた!」

「はいはい、落ち着いて落ち着いて」

 

 どうどうと宥めつつ、バッサバサになっていた髪の毛を軽く整えてあげてからその金色のウィンドウを見る。俺のものと寸分違わぬデザインの外枠のウィンドウの中には、お巫山戯もなく文面も違うが、俺のところに届いたものと大体同じ内容が記されていた。

 

「ふふん、すごいでしょ!」

 

 それを読み終えた俺の目の前で、腰に手を当ててドヤァっとしたセナが言った。明らかに褒めてというオーラが噴き出している。

 

「全プレイヤー中最もジャスト回避だし、確かに俺のとは比べ物にならないな。すごいすごい」

 

 軽く拍手をしながら、多少棒読みになってしまったが褒めてみる。

 セナの貰った称号についてだが、俺の爆発物関連とは勿論違い『全プレイヤー中最もジャスト回避をした』という事らしい。取得した称号の名前は《舞姫》、効果は反応速度の上昇と一定速度到達毎に分身可能という事だった。因みに報酬は【サウダーデ/ドミンゴ】という武器。多分これは、フリーダムな感じの金の銃剣だろう。運営め、やりおる。

 

「むぅ、それ全然すごいって思って……え?」

 

 俺の手抜きがバレたらしく、何か反論しようとしていたらしいセナの動きが止まった。そして微妙にぷるぷる震える手で、首を傾げつつこちらを指差し聞いてきた。

 

「俺のって、もしかしてユキくんも何かあったの?」

「まあ、そうだな。俺にもこんな感じのがきた」

 

 立ったまま話すのもなんだし、腰掛けていたベッドに座り直してから先程まで見ていたウィンドウを開き直す。当然のように隣に座ったセナに、それを見えるようにし手渡した。うん、手渡したが1番近い表現だろう。

 

「ねえユキくん」

 

 そして長くもないその文を読み終わったセナが、呆れたような目を向けてきた。その口調からも、心底呆れかえっている事がひしひしと伝わってくる。

 

「ユキくんの持ってるアイテムってさ、どれくらいが爆弾なの?」

「消費アイテムは9割くらいかな。他に整理してないアイテム類はあるけどまあ、大体そんな感じ」

「馬鹿なの!?」

 

 真実を包み隠さず伝えただけなのに怒られてしまった。解せぬ。

 そしてどうしようといった感じで、セナは頭を抱えてしまった。やはり解せぬ。

 

「普通回復アイテムとか、補助アイテムとかあるんだよ?」

「そもそも俺、基本即死するから回復はほぼ要らないし。補助も基本的に自前で出来るから……」

「そーだったー……」

 

 それに加え、最近は儀式魔法のお陰で回復も出来る様になった。故に実は、手持ちのアイテムからHPポーションは消えていたりする。プチ富豪なのに貧乏性とかこれもうわかんねぇな。

 1人で勝手にそう納得している間に、撃沈した感じだったセナは立ち直っていた。そして、こちらの肩に頭を寄せて言った。

 

「でも、お揃いだしやっぱりいっか」

「名前だけ見れば死ぬ程不釣り合いだけど、それでもいいの? 《舞姫》さん?」

「別にいいの! 《爆破卿》さん?」

 

 調子に乗って言ってみたが、なんだかおかしくて笑ってしまう。それはセナも同じらしく、俺の背中をバシンバシンと叩いて笑っている。ダメージ判定があれば、Vitが3しかなくなった俺は容易く砕け散るだろう。

 ……超高速で動けるのに触れられただけで砕け散るとか、俺は一体どこの白騎士なのだろうか?

 

「お話、聞かせて、もらい、ました!」

 

 そんなことを考えていると、開いたままだったドアの方からそんな声が聞こえた。顔を上げると、いつかの鷹(幻視)を背負った藜さんが仁王立ちしていた。あっ、死んだわこれ。いやちょっと待て、なんで俺は浮気がバレた夫みたいな対応をしてるんだろうか? わからん……全然わからん。

 

「どうかしたの? 藜ちゃん」

「私には、お揃いの称号は、ない、です。でも、負け、ません!」

 

 完全に俺は置いてけぼりになってしまっている。とりあえず、ドヤ顔で頭を擦りつけてきたセナには軽くチョップをしておく。

 

「あいたぁ!?」

「さて、俺もお店の手伝いに行きますかね」

 

 叩かれた頭を抑えたセナの目をなんとか無視し、俺は立ち上がってセナの手を取る。優しくではあるが、手首を掴む形でだ。

 

「え、え?」

「ここって一応俺のマイルームだし……鍵閉めたら開かないよ?」

 

 個人ルームだが、自分が中にいる時は施錠しないでいるが、基本的に鍵は閉めて閉じきっているのだ。そうなるとシステム的に俺以外じゃ開けられないし、出られない。横領ではないが、倉庫に投げてない気に入ったレアアイテムとかもあるし、それはしたくないのだ。

 

「むぅ……しょうがないなぁ」

「それに、下手したら全部誘爆するし」

「さあ出よう今すぐ出よう! ユキくん待ってるからねー!」

 

 ボソリとそう呟いたところ、手を振り切ってセナは走ってどこかへ行ってしまった。来てから居なくなるまで、ほんとセナって──

 

「嵐みたいだった……」

「お疲れ様、です?」

 

 大きく息を吐いた俺の頭を、何故か藜さんが撫でてくれた。つま先立ちでぷるぷるしてるので屈んでおく。撫でられるのは、なんかこう、悪くないし。

 




露骨にプレイヤーを強化しだす運営

水着回は書きにくくて延期中……

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