ラ「レイドボスだな」
つ「なら私も、レイドボスとかな」
れ「ん(同意の意)」
藜「レイドボス、です」
ユ「なら俺も」
セ「じゃあ総員一致でレイドボスで!! 解散!」
ストーリークエストが配信されるなんてことがあった為、海水浴(湖)は皆満足していたこともあり終了した。ウチのギルドの方針としては、やっぱりレイドボスと直接戦うらしい。
因みに
「ま、それはいいとして」
セナがやるぞーと大号令をかけたせいで、今ギルドはれーちゃんくらいしかいないNPCのみの寂しい空間となっている。そのれーちゃんも時間が時間の為ログアウトしており、爆弾の精製に邪魔が入ることはない。最近あまり残弾の補充が出来てなかった為、静かに出来るこの時間は本当にありがたかったりする。
「……?」
どこかの危険なゾンビなやべー社長の様な笑い声を上げつつ爆弾を合成している時、ふと耳にメッセージが届いた音が聞こえた。時間は既に23:54を回っている。この時間だと、時折
「ザイルさん?」
片手で爆弾を作り続けながらメニューを開いてみると、メッセージの送信主はそんな予想外の人物だった。不思議に思い開いてみれば、内容もとても珍しいと思えるものだった。曰く『お前が好みそうな珍しいアイテムが入荷した。少し話したいこともあるから、今から序でに会えないか?』とのこと。
「まあ、いっか。ヴァンには乗れなそうだけど」
昼間リアルで色々あったから眠いが、まだ意識は問題なく保てている。事故る可能性しかない
そう判断して、爆弾精製の手を止めて立ち上がる。そして【火気厳禁】と赤い文字で張り紙をした自室の扉を閉めたところで、スキルが人を感知した。
「ぁふ……ユキさん?」
「こんばんは藜」
目元を擦る藜さんは、これまで何かをしていたのかとても眠そうに見える。また無防備な……
「夜更かしは良くないですよ?」
なんとなく、そう言ってみる。今日はもう沙織だって寝てるし、多分もう寝た方がいいんじゃないかと思う。余計なお世話かもしれないけれど。
「です、ね。おやすみ、なさい、です」
「おやすみです」
多分、俺も寝惚けているのだろう。そんな適当なやり取りで会話は終わり、藜さんはログアウトしていった。
「……よし」
このままでは多分、ザイルさんの所に行ってもこの調子になり兼ねない。と言うことでギルドを出て、出来立てホヤホヤのフィリピン爆竹改をタバコの様に咥えた。そして流れる様に着火して起爆した。
夜の街に轟く炸裂音。
地面に大の字に倒れ、意識が衝撃から立ち直った時には先程までの眠気は吹き飛んでいた。ダイナミック目覚ましがよく効いた。通行人からチベットスナギツネめいた乾いた目を向けられているが、知らぬ知らぬ聞こえぬ見えん!
「さて、行きますかぁ!」
念のため頬を叩き、俺は【極天】のギルドがある【ギアーズ】へと歩き出した。正確には、そこに転移できる街の中心部へ。
◇
「なあ」
【極天】のギルド内、正座する俺の前で、明らかに苛立ちが含まれた言葉が発せられた。
「確かに俺は、お前のことを呼び出した。その事に少しは罪悪感を抱いてもいたんだ」
そこでザイルさんは一度溜めを作った。そして次の瞬間、片方だけ見える金色の獣眼を見開いて叫んだ。
「だがなぁ、ギルドの扉が開かないからって、何故また貴様はビルを爆破したぁッ!!」
バァンと大破しそうな勢いでザイルさんがテーブルに手を叩きつける。理由としてはまあ、フレンドメッセージに返信せずに来てしまったとか、連絡が面倒だったとかはあるのだが、本音は全く別だ、
「だって久しぶりに来てみたら、前爆破したビルがまた生えてきてるじゃないですか。ならもう、分かりません?」
「分かるわけあるかぁッ!!」
「ならアレですよ。そこにビルがあったから」
「名言風に言っても駄目に決まってるだろうがぁッ!!」
「ほらでも、最近は爆破解体の技術も上がってきてるんですよ?」
「何故そこに情熱を向けたぁッ!?」
「【儀式魔法】を使って、瓦礫も全て敷地内に落としてるんですよ?」
「よくやるなぁお前も!!」
「いやぁ、それほどでも……」
「褒めてねぇよッ!?」
ぜえはあと荒くなった息をザイルさんが整えてるうちに、俺は最後の手札を切る。
「それに最近は、楽しみに待ってる人が結構いるんですよ?」
俺がそう言った瞬間、演劇めいたタイミングでギルドの扉が開かれた。風もないのに翻るマント。顔に当てられた厨二ポーズの左手。そして魔女帽を被ったその姿は、分かりやす過ぎる程にその正体を示している。
フィールドに《爆破卿》と《爆裂娘》が揃った……来るぞ! 何がかは知らない。
「そしてそう! 本日の火付け役はこの私です!!」
「ふざけるなテメェら!!」
我慢の限界がきたらしいザイルさんの振るった剣鞭が俺たちを等しく直撃し、2人共空中へと吹き飛ばした。中を舞う中にゃしぃさんと顔を見合わせてサムズアップし、揃って床に叩きつけられた。
大きな音を立てて床を転がり、テーブルなどを巻き込んで吹き飛んでいく中、どこか清々しい爽快感を感じた。このネタを入れればツッコミが返ってくる感じ……素晴らしい。
「さ、流石ザイル。今日もその、【なんたらカラミティ】のキレは最高ですね……ガクッ」
「それに加え、充実したファンサービス。ザイルさんは実質Ⅳだった可能性が微レ存……? カフッ」
「そう思うなら、豪華特典も食らってけぇぇッ!!」
「「アバーッ!」」
激昂するザイルさんの振るった剣鞭が再び俺たちを強かに打ち、俺たちは再度ギルド内を吹き飛んだ。その際目で合図し、俺は簡易ポーチから旧フィリピン爆竹を2つ取り出した。そして着火してにゃしぃさんに手渡した。
ならばやることは残り1つ!
「「サヨナラー!」」
調度品を巻き込まない程度の爆発が起き、双方の称号にあるように爆発した。決まった感動をジーンと噛み締め、倒れたままにゃしぃさんと拳を突き合わせる。
そんな俺たちの姿を見て、ザイルさんはとても大きなため息を吐いた。そして武器を収め、冷え切った目でこちらを見ながら呟いた。
「で、話は進めていいのか?」
「あ、どうぞどうぞ」
「私は別にいいですよ? ユッキーとは外で偶然合流しただけなので。では、アデュー!」
そう言ってにゃしぃさんは、背中からロボットのスラスターの様に炎を吹かしてギルドの外へと滑って行った。合流した流れで誘っただけだったけど、いつの間にか狂気度が増してやがる……
「さて、今回俺がお前を呼び出した理由だが──」
それをガン無視して、ザイルさんは話を進めようとする。ああうん、分かった。今のここではこれがもう日常と。
「ん? どうかしたか?」
「いえ、なんでも。続けてください」
「そうか。呼び出した理由はアレだ、少し頼まれごとをしてほしくてな」
妙に勿体ぶってザイルさんが言ったのは、そんな事だった。いや、内容次第ではそんな事ではないのかもしれないが。
「その頼みごとっていうのは?」
「俺たちの【極天】、【すてら☆あーく】、【モトラッド艦隊UPO支部】……お前は色々なギルドと繋がりを持っているからな。端的に言えば、大手ギルドのパイプ役になってくれ」
「いいですよ」
まあ、ある程度のギルドと繋がりがあることは事実だ。個人的にも、ギルドのお店に来てくれてる人的にも。だからまあ、特に苦でもないし断る理由にはならない。
「そうか、助かる。ご覧の通り、うちの奴らは制御なんて効かないからな。その分強いのは確かだが、確実に誰かに迷惑をかけるのは目に見えてる。当たり前の様にレイドボスとの直接対決だしな。その予防線くらいは張っておきたい」
「なるほど。凄い苦労してるんですね……」
思わず同情してしまった。要するに、大量のにゃしぃさんが別ベクトルで騒いでるということだろう。100%胃が死ぬのが、容易に想像できる。
「全くだ。ここ最近、運営から苦情と感謝と労いが一緒くたになったメッセージが毎日届いてな……お陰でオペレーターの人と仲良くなった」
「うわぁ……ご愁傷様です」
「そう思うなら、お前もビル爆破をヤメロォ!」
怒られそうだからナイスゥ!と言うのは心の中だけに留めておく。明らかに疲れ切ってる人にトドメを刺す程、爆破後の俺は悪ではないのだ。
「前向きに検討して善処します」
「はぁ……まあいい。こちらの連絡が後になるから、報酬は前払いで渡しておく。ほら」
そう言って渡されたのは、真紅とスカイブルー色の菱形の結晶が存在する魔導書。効果はどうやら、俺の装備している魔導書の別天候verの様だ。効果は火山と高山……後で調べよう。
「で、ここからは頼みごとじゃなく商談だ」
ザイルさんの目が光り、着席してゲンドウポーズを取った。
「その魔導書、お前の装備に加えたくはないか?」
「そりゃまあ、出来ることならしたいですよ」
「だろうな。そこでだ。魔導書1冊につき、こちらが素材を持った場合は10万、そちらが素材を提供するなら1万でお前のビット装備に追加してやろうではないか」
「阿漕な商売してますねぇ……」
どっちにしろ俺の財布には響かないから、実際どちらでも問題はないのだが。それにドロップ品なら確保できる可能性が高いから、これは実質ファンサービス。
「で、その素材ってなんなんです?」
「この前お前が持ってきてくれた【機天の光輪】だ。あれ1つで、装備にビット系の能力を追加できる」
「なら、俺もちょっと頼みごとがあるんですけどいいですか?」
素材を聞いてから、俺は質問を投げかけた。あのアイテム1つ程度で追加できるなら、もしかしたらあれも出来るかもしれない。
「なんだ?」
「俺も個人的に3冊ほど魔導書を手に入れたので、それも加えられます? 素材は今から全部持ってきますし」
いっそのこと、クトゥルフ系の魔導書も全部突っ込んでしまえということだ。デメリットはまた背負うことになるけど、その分の楽しさは確保できそうだし。
「ああ、それなら問題ないぞ。殆ど性能は変わらないだろうが、それでもいいか?」
「ええ。装備できなくなったら、それこそ本末転倒ですし」
「商談成立だな」
「ですね」
そうして、俺たちは握手を交わしたのだった。
大規模レイド戦までまだ1週間……出来る限りの準備は重ねないとな。
【浮遊魔導書 拾壱式】
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