幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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勿論アニメでもない(ZZ並感)


第57話 こんなのデュエルじゃない!

 突然だが、UPOには複数人のプレイヤーがリアルタイムで文字を交わす機能……所謂チャット機能が存在する。あくまでそれはフレンド間のみの機能だが、話す内容はそのスレッド?内で完結する為守秘性もある便利なものだ。

 

 詰まるところ、俺が橋渡し役としてやったのはそれの形成である。先にザイルさんが、直接のボス戦と一部の湖〜街間の防衛戦に参加表明しているギルドの情報を集める。次に、俺がそこに出向いてチャットに参加してくれるようにお願いする。大半が顔見知りではあったし、結構楽な作業ではあった。

 

 因みに、他の極振り勢に頼まない理由は『門前払いされるから』というのと、『確実に何か厄介ごとを抱えてくる』と、『若しくは絶対に喧嘩を売ってくる』の3つだったらしい。正鵠を射るとはこの事だと思う。

 

「さて、後はイオくんのところだけか」

 

 地図を表示してバイクを走らせながら、俺は独りそんな事を呟く。イオくんのギルドは初心者支援ギルドというだけあって第1の街にあり、ぶっちゃけかなり遠いのだ。俺が普段拠点にしてる第2や、最近よくいる第3の街からは、愛車でも10〜20分はかかる。

 紋章込みなら数分になるけれど、今回は使ってない。序でに転移すれば一瞬だが、走りたいから許して欲しい。

 

「えーと、問題なしと」

 

 風を浴びながら爆走する中、数分前にイオくんに送ったメッセージが返ってきた。曰く、今から会うのは問題ないとの事。アポイントメントを取るのは当然である。

 

「確かに、他の極振りしてる人達には頼めなさそうだよなぁ」

 

 多分にゃしぃさんはとりあえず爆裂しそうだし。この前遭遇した翡翠さんにはまず交渉は出来なそうだった。ザイルさんはそこら辺を纏める必要があるから動けないし、俺が適役なんだろう。

 

「残り1つ、頑張りますか」

 

 そう言って俺は、バイクを加速させるのだった。

 

 

「「「きゃぁぁぁぁっ!!??」」」

 

 それは、突然の出来事だった。

 俺が始まりの街にバイクで突入し、マナーとして速度を下げて数秒後突如悲鳴が上がった。何事かと爆弾を抜いてバイクから降りると、疎らに見えていたプレイヤーが蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。

 

「……え?」

 

 よくよく耳を澄ませば、何か逃げながら喋っている。その内容といえば──

 

「いやぁぁ、爆弾魔ぁぁッ!!」

「キチガイが、キチガイが出たゾォォッ!!」

「アイツは極振りだ!! みんな逃げろ! 爆破されるぞぉぉっ!!」

「誰か、誰か助けを呼べ!!」

「怖いわー、テロリストよー!」

 

 いや、あの、俺はそんなに正気削れてる訳じゃないんだけど……

 

「動け、動けってんだよこのポンコツが!!」

「イタゾォォ、イタゾォォォォ!!」

「何でもするから、命だけはぁ!」

「ミンナシンデシマウゾ-!」

「う、腕の骨が折れた……」

 

 ……

 

「そんな、嘘だぁぁぁっ!!」

 

 そう叫ぶも時すでに遅し。俺の周りには、人っ子一人居なくなっていた。慰めるかのように愛車(ヴァン)がエンジンを鳴らしてくれたけれど、それは気休めにしかならない。

 

「あの、大丈夫ですか? ユキさん」

「絶賛傷心中ですが何か」

 

 体育座りでバイクに寄りかかっていた俺に、聞き覚えのある声がかけられた。恨めしげに顔を上げると、そこにはメイドがいた。誇張でも何でもなく、メイド服を纏ったプレイヤーがいた。

 どこからどう見てもメイド服を纏った男性プレイヤー。恐らく盾なのだろう食器の並んだ銀のトレイ、槍と思われるモップを背負ったプレイヤーなんて俺は1人しか知らない。

 

「えっと、その」

 

 困惑顔で待たせるのも悪いので、一度頬を叩いて気を取り直す。軽く爆発したけどまあ無問題。逆に気が引き締まった。

 

「まあ、お久しぶりです」

「僕は会いたくなかったんですけどね……」

 

 こうしてドン引きしているイオくんと、俺は久し振りに会うことができたのだった。

 

「とりあえず、要件は聞きました。ギルドに帰るとみんなが五月蝿いので、適当に歩きながら話しましょう」

「お互い苦労してるんですね……」

「ええ、ほんともう……」 

 

 そう言うイオくんの顔には、濃い疲労の影が一瞬だけ浮かんだ。とりあえず、触れないであげよう。そろそろ愛車(ヴァン)にはアイテム欄に戻っておいてもらう。

 

「そういえば、片手剣使ってるって聞いてましたけど、変えたんです?」

「ええ、この前ちょっと惨敗しちゃって……やっぱりリーチがあった方がいいなって思いまして」

 

 そうして互いの苦労話を続けているうちに、街の中心である噴水広場にまで来てしまっていた。そこで先を歩いていたイオくんが振り返り、槍を手に持って言った。

 

「さて、お互いの苦労話はここまでにしましょう」

 

 そうして和かに笑いながらイオくんはウィンドウを操作し、俺の前にも文字の書かれたウィンドウが展開される。それは見慣れないものではあったが、ぱっと見で内容はよく分かるものだった。

 

 ====================

 決闘(デュエル)申請

 PN : イオ → PN : ユキ

 形式 : 全損決着

 制限時間 : なし

 範囲 : 半径10m球

 Yes / No

 ====================

 

 それは、今まで俺が無理だと避けてきたPvPの申請画面だった。まさかこんなタイミングで来るとは……

 

「これはつまり、受けろと?」

「まあ、そうなりますね」

 

 微妙に申しわけなさそうな顔をして、イオくんは続ける。

 

「ギルドの面子の問題らしいです。僕としてはユキさんのキチガイ具合は知ってるので、参戦も会議?の参加も気にしないんですけどね。ギルドのみんなが『そんなギルマスでもないキチガイに任せられるか』とか『来るなら発案者が来い』って言って聞かなくて」

「あー、そういう」

 

 何となく事情は読めた。

 ははーん、そいつら極振りのことを露ほども理解してないな? ストッパーなしの極振りを野に解き放ったら、サーバーがダウンすることになるぞ。

 俺は……うん、始まりの街って爆破してもつまらなそうだし無しで。第2はギルドのある場所だし無し。第3はお祭り会場。第4は……レイド戦終わったら爆破するかな。俺でさえこんな思考回路になってるのだから、他がいかに解き放ったらマズイかよく分かる。

 

「因みに、もし俺が受けなかったら?」

「意気地なしと見なして参加しない、だそうです。でも、勝ち負けはどうでもいいそうですよ。それに、受けてくれなくても僕は参加します」

「なるほど」

 

 随分と面倒な人達でギルドが固まっているらしい。周囲の建物の窓から覗き見してる人たちが、きっとそれなのだろう。でもまあ、勝ち負けが関係ないならいいか。

 

 それに、断られたとなると信用的な問題が起きかねないし。折角【アルムアイゼン】の人たちにビルの残骸(コンクリート・鉄筋・ガラス等)を渡したり、シドさんのところでお金を落として取り付けた協力が無駄になりかねない。

 

「いいですよ。やりましょう」

「すみません、うちの人達のわがままに付き合わせちゃって」

「いえいえ」

 

 そう話している途中で、俺はYesのボタンを押した。すると、半透明の壁が形成され俺とイオくんの間にカウントダウンの数字が現れた。序でに、頭上に互いのHP・MPゲージも表示されている。

 

「ああ、そうだ。始める前に1つだけ言っておきますね」

 

 開始5秒前。俺は【三日月】を取り出しつつ、ふとそんな事を呟く。

 

「はい?」

「俺、PvP初めてなんで。非礼があっても許してくださいね」

 

 そしてそう言い切った瞬間、カウントが0になった。

 初めてのPvPだけど、まあいつも通りやればなんとかなる筈!

 

「《ジェットスラス──うわぁっ!?」

「《加速》《障壁》《減退》」

 

 なんらかのスキルの発動と思われた槍を引く動作を、紋章3枚分で加速。槍をすっぽ抜かせてスキルの発動をキャンセルする。

 同時にバランスを崩しかけている足元に障壁を展開。それに引っかかり、躓いてイオくんはバランスを崩した。

 それと更に同時進行で、後ろに流れた右腕の動きを減退。実際にあったら大いに肩を痛める体勢で、イオくんを転倒させる。

 

「【潜伏】」

 

 そしてその隙にスキルを発動。序でにフードも被りステルス状態に移行。同時進行で、1冊の魔導書を起動する。

 

「あいたぁっ!?」

 

 立ち上がろうとしたイオくんの後頭部付近に障壁を展開。動きを止めて立ち上がる行為を妨害する。

 そしてそんな事をしている間に、周囲に霧が立ち込めてきた。その霧はみるみるうちに濃度を増し、フィールド全域を包み込んだ。装備で効果を無効化している俺と違い、イオくんのMPはジワリジワリと減少している。天候が【濃霧】に変わった証拠である。

 

「ふわっ!?」

 

 立ち上がり槍のある方向に歩き出したイオくんの、足が後方に送られる動きを加速。もう一度転倒させる。

 

「《加速》」

 

 その間に、俺は加速を使い大きく距離を取る。この天候下では、システム的に1m以上の距離は見通せないのだ。5mも離れてしまえば、【空間認識能力】でも持っていない限り相手の位置は把握出来ない。

 

「さて」

 

 念のため噴水の影に身を隠し、装備を【三日月】から【新月】へと変更する。そして銃杖を噴水の……なんて言うのだろうか、噴水の水が溢れないようにしている淵? まあそこに乗せて支えた。その銃口の向く先は、色々な方向を見渡しながら警戒し続けるイオくんだ。

 

「ちょっと計算っと」

 

 さっき確認したイオくんのレベルは43。と言うことは、HPは最低でも2,200。俺と違ってStrやVitにもちゃんとステータスを振ってるだろうから、多めに見積もって2,500〜700くらいとしておく。

 

 対して、俺がこの銃杖を使って与えられる素のダメージは、極振りのデメリットもあり大体20。懐かしいうさぎ1匹を倒せる程度のダメージだ。けれどそこに、武器自体のダメージボーナスである200と、通常弾のボーナスである50が追加される。単純ダメージは、計270という訳だ。

 

「弾種変更」

 

 それでは、幾らボーナスがあっても多分ダメージが足りない。

 故に弾を、通常弾から特注の徹甲榴弾(1発5,000D)へと変更する。こちらのダメージボーナスは250、追加効果で防御貫通30%と爆発ダメージが存在している。爆発抜きで、大体ダメージは500付近とみた。

 

「《クリティカルアップ》《フルカース》《ディフェンスカース》」

 

 自身のクリティカル威力を上昇し、イオくんの防御を60%ダウンさせた。これで準備は整った。

 

 クリティカルでダメージが2.6倍。紋章20枚で加速する事により50倍の速度となる弾丸は、ダメージボーナスが多分4倍。心臓狙いで更に倍。

 ライフル弾の速度ってマッハ2〜3らしいから……マッハ150とか。物理法則大丈夫?な感じの速度だけど、まあ気にしない気にしない。何せ、速すぎて空気摩擦とか知ったことかって感じで処理されるからね!

 

 話が逸れたが結論は、想定ダメージ3,500〜3,800。なんらかのスキルを使っているとしても、イオくんのHP吹き飛ばして余りあるダメージだ。そこから更に爆発するんだから万々歳。

 

「Feuer!」

 

 そして減退で反動を殺しつつ放った弾丸は、俺がそうと認識する前にイオくんに命中していた。頭上のHPが急激に減少を始め、それに遅れて銃声が鳴る。最後に、着弾したイオくんが爆発を引き起こした。

 その隙に装備を元に戻しておく。『PvPするなら、あんまり手の内を見せない方が多分良い』ってセナとかにも言われてるし。そうして開始時となんら変わらない状態に戻った後、魔導書の効果を解除した。

 

「いえーい」

 

 こうして俺は、初めてのPvPに圧勝したのだった。

 




敵の動きを妨害して、ステルスして、煙幕を張って、物理法則ぶっちした速度の弾を撃ち込んでくるキチガイ。ただしワンパンで死ぬ。下手したら銃の反動で死ぬ。
どうしてこうなった……
なお銃のキリングレンジは10mくらいだそう。
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