幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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(まともなクトゥルフ期待してた人は)
ここまでだ! 残念だったな(メタルマン風)
沼がフカ過ぎたんだ。本当に申し訳ない。

警告はしました、サメ始めだよジョ-ジィ……


第61話 激突

 走る場所が地面から水面に変わり、走行音が変わること数分。湖は未だに異様な静けさに包まれていた。敵もなく、妨害もなく、ただ全身を這いずり周られる様な気配だけが存在している。

 

 

 大天使『今こっちすごい大変なんですけど、前線はどうなってます?』

 

 傀儡師『ボスの姿すら見えない。前方で探ってるが、何も探知出来ていない』

 

 超器用『こちら後方、こっちも何もなしだ。誰か爆裂娘抑えるの手伝ってくれ』

 

 コバヤシ『空からも何も見えない。本当にボスはここであってるのか?』

 

 爆破卿『中間からも何も見えないですね。ボスはここであってる……はず』

 

 裁断者『とりあえず、爆雷でも投下してみてくれ』

 

 爆破卿『あいあいさー』

 

 

 そうして軽く10個ほど爆弾を湖に投げ込み起爆させてみたが、何の反応もなく数分が過ぎて今に至る。誰もが足を止めて、周囲を見回している。戦闘機は上空を旋回しているが。

 

「さて……」

 

 1人だけ即死の危険があるためヴァンに乗ったまま、軽くため息を吐いた。このままじゃ士気も下がる一方だろうし、ちょっと不味いかなぁ……

 

「あ、お久しぶりっす」

 

 突然並走してきたバイク乗りの人がそう話しかけてきた。軍服っぽい服装で、性別が判別しにくい容姿……ああ、リシテアさんか。ちょっと待て。俺の知り合い、まともな男、いない……?

 

「お久しぶりです、リシテアさん」

()の爆破卿に覚えてもらってるだなんて光栄っす」

「煽てても爆弾しか出ませんよ?」

「それは御免っすね」

 

 一頻り笑った後、声を真面目なトーンにして話しかける。

 

「リシテアさんは何か思いつきます? この状況をどうにかするのを」

「ちょっと分かんないっすね。今回のボスは、えーと、クトゥルフ神話? ってのがベースなんすよね?」

「多分そうだと言われてますね」

「何か特徴的なものはないんすか? ネットで調べても、ちょっと何書いてあんのか分かんなかったんすよ」

 

 少し悩む様にしてリシテアさんは言った。1回その点からは当たってるけど、もしかしたら何か見えてくるかもしれない。そう思って、ある程度噛み砕いて説明する。こういう時、全盛期(直喩)の知識があるのはありがたい。

 

「ほえー、よくは分かんなかったっすけど、ヤバイのは分かりました。それで、その旧支配者のキャロルって1回聞いてみたいんっすけど」

「歌えってのは無理ですよ」

 

 下手したら、耳にした全員に強制SANチェックが発生しかねない。アニソンとか鼻歌でもないと、俺の歌は酷いものだとセナからすら言われているのだ。

 

「いえ、流石にそんなことは望まないっすよ。でもオレはバイクを片手で運転は出来ないっすから」

「なるほど。じゃあ流しますねー」

 

 そういえば、片手を離して運転するのは難しいんだった。愛車が優秀過ぎて忘れていた。そんな考えを巡らせつつ、いつもゲーム内でBGMを再生しているサイトから『旧支配者のキャロル』もとい『The Carol of the Old Ones』を最大音量で再生する。

 結構な人数のプレイヤーがこちらに振り向く中、リシテアさんが神妙な面持ちでボソッと呟いた。

 

「英語で分かんねえっす」

 

 しかし次の瞬間、ハッとした顔になって慌てて弁明を始めた。

 

「い、いや、オレもアレっすよ? 最初の空を見ろくらいは聞き取れたし分かってるんすよ!?」

「空を見ろ……?」

 

 そういえばクトゥルフって正しい星辰が揃うとかあったはずだし、クエスト開始時にも夜空に変わってたっけ。そんなことを思って空を見上げて、ふと何かが引っかかった。

 

「空、何か変じゃありません?」

「え?」

 

 そんなことを言った瞬間のことだった。 

 空に浮かぶ星が不気味に光り、突然の地鳴りが発生した。

 

「全員退──」

 

 誰かがそう叫び終える前に、少し離れた場所にそれは水面を突き破って現れた。

 それを見て思った第1の印象は、鼠色の柱。同時に2つ顕現したそれは、よく見れば緑色のゼラチン状の物質を纏っている。そしてその先端には、鋭い5つの鉤爪が存在していた。

 

「《減退》《障壁》!」

 

 まだ何もない。そのことに安堵しつつ、振り下ろされる最中の両腕に対して防御を試みる。数名のプレイヤーが巻き込まれそうになっていたからだ。展開した紋章は、ボスの攻撃くらいなら余裕で弾ける防御の筈だった。だが、

 

「うっそだろおい」

 

 減退数枚、障壁10枚はそんなものはないかの如く突き破られ水面に腕が振り下ろされる。それだけで、逃げ遅れたプレイヤーのHPはゼロになった。即座に蘇生魔法が飛んで復活したが、そのアホみたいな攻撃力の高さは最早極振りでもないと耐えられないのではないだろうか?

 

 やはり出現するのは御大だったか。そう思っている間にも顕現は進行する。と、思っていたのだが、

 

「ふぁっ!?」

 

 腕が引っ張り上げる様にして出現したのは、超巨大な()()()()()()()

 異界の深淵の様な漆黒の眼に、連続した鋭い歯の並んだ口部。磨き上げられたブレードの様な背ビレが出現し、同時にその傍に存在する細長い蝙蝠の様な翼が大きく夜空に開かれた。ゴム質ではなく鮫肌の胴体がズルリと引き揚げられ、ゼラチン状の物質を纏った鉤爪のある後脚も出現し、しかと水面を踏みしめた。よく見ればそれらは人の手足を無理やり獣の手足に変形させた様な、宇宙的な悍ましさを放っている。最後に、明らかにサメのものと思われる尻尾と尾ビレが──否、触手で編まれたサメの尾と尾ビレが水中から引き抜かれた。

 

 こうして『メガロドンにクトゥルフの手足と羽根を付けた』としか言いようのない、色んな意味で名状し難い化け物が顕現したのだった。

 

 表示された名前は【Sharcthulhu】、無理やり読むならシャークトゥルフだろうか? 二重の意味で混乱する頭を、追い討ちする様に10段という恐ろしい量のボスのHPバーが真っ白にした。

 

「ばっかじゃねぇの!?」

 

 運営に向けて絶叫した俺の前で、例のシャークトゥルフが足を踏ん張り大きく息を吸い込んだ。山の様な巨体が鳴動し、明らかに咆哮の準備を行なっている。サメは吠えないとか言っちゃいけない。それよりもこれは、正直マズイ。

 

「全員! 耳を塞げぇぇっ!!」

 

 片手で高速タイピングしながら叫んだ瞬間、そんな俺の声を搔き消す様な冒涜的な大音声が轟いた。バイクの運転をヴァンに任せ耳を塞ぐ中、99あったSANの数値が一気に92まで減少し、メニュー画面が勝手に閉じた。

 

「ふ、ふふひ、爆弾って素晴らしいよな……もっと爆破しないと」

 

 自分では『俺でこれなら、他の人たちって……ヤバくね?』と言った筈だったのだが、口が勝手に動いてそんな言葉を紡いだ。本心ではあるけどこれ、俺も一時的発狂しているらしい。

 

爆破を、一心不乱の大爆破を(これは、かなりヤバイかも)!!」

 

 察するに《偏執症》でも発症したのだろう、爆破が対象の。そんな自己分析をしている間に、隣を走っていたリシテアさんが突然バランスを崩した。そして転倒し、バイクごとスピンして何処かへ吹き飛んでしまった。

 

 それを見て慌てて周りを見渡せば、色々なところで炎が上がっていた。原因はバイクや個人個人のスキルの暴発。それに加えて絹を裂くような悲鳴や、倒れて動かない人、逃げ出す人に、自分の武装で自分を貫いている人などが溢れて、阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。

 

「そおいっ!!」

 

 自分の両頬を全力で叩き爆破。精神分析(こぶし)を頼めないので、精神分析(爆破)でバグった言動を無理やり元に戻した。とりあえずこれで、チャットもきちんと使える筈だ。

 

「ユーキくん!」

「ひゃ……!?」

 

 突然、背後から抱きしめられて耳を食べられた。耳の形に沿って生暖かいものが這い回り、ピチャピチャと淫らな水音を立てている。走行中のバイクに追いついて飛び乗って耳舐めとかいう正気を疑うこと、やめてくれませんかねぇセナさん。あ、発狂中か。

 

「お、おーい、セナさん?」

「ふぇふふふぃふふぇ?」

「ひぁっ!?」

 

 耳をあむあむされながら喋られたせいで、よく分からないゾワゾワとした感覚が走った。これはダメですわ、放置してないとこっちが変になって死ぬ。

 

「被害状況は……」

 

 パーティの欄を確認すれば、全員の状態異常の欄に一時的狂気及び不定の狂気の文字が存在していた。セナは一時的発狂、藜さんがなし、つららさんが不定の狂気、れーちゃんも不定の狂気、ランさんが一時的発狂。……ガチでまずいなこれ。

 

 とりあえずセナを正気に戻すのは諦め、チャット画面を開き直す。するとそこには、散々な被害状況が報告されていた。

 

 

 超器用『うちの馬鹿どもは全員正気に戻した! 他のところの損害はどうなってる!』

 

 傀儡師『すまない、うちは殆どやられた。まともに動けるのは、俺とハセ含めた5名だけだ』

 

 戦車長『俺たちもだ。動ける戦車は……俺単騎を含め3両ってところだな』

 

 コバヤシ『こっちもだ。3人戦闘不能で、4人が身動きが取れない。残りは俺を含め3人だけだ』

 

 農民『なんなん今の声!? こっちの戦線、とんでもないことになってるんやけど!?』

 

 大天使『序でに僕の結界が全部壊れたんですけど!? というか、みんな頭おかしくなってます!!』

 

 爆破卿『うちも動けるのは3名だけです』

 

 超器用『随分やられたな……撤退も考えるか?』

 

 爆破卿『とりあえず軽く時間を稼ぐので、ダメになった人達の退避を!』

 

 コバヤシ『俺たちも支援しよう』

 

 傀儡師『というか、爆破卿が舞姫に耳を食べられてるように見えるんだが。耳舐めって実質セッ**じゃないか』

 

 

 そんな文字が見えたと同時、上空を覚束ない動きで旋回していた戦闘機がシャークトゥルフに向けて進路を取った。が、その速度は遅い。まだ攻撃まで時間がかかりそうだ。

 

 シドさんの発言は見なかったことにしておく。

 

「来て藜!」

「はい!」

 

 走るバイクに並走する形で、藜さんが隣に現れた。まさか本当に来てくれるとは思わなかったけど……これならいける。

 

「いけますか?」

「問題ない、です。でもその、セナさんは?」

 

 そう聞いた俺に、非常に訝しげな目で藜さんが問いかけてくる。目線の先には、当然俺の耳をあむあむとしているセナの姿。舐められてる耳が変わったから、凄く舐められてたほうがすーすーしますはい。

 

「にゃふふー」

「ひん……下手に動かすとクラッシュするので、正気に戻るまでこのままで」

「むぅ……分かり、ました」

「後で何か、出来る限り言うことは聞きますから」

 

 物凄く不服そうだが、後で何か埋め合わせをするということで納得してもらう。

 

「言質取った、です」

「あはは……とりあえず、猛吹雪出すのでこれ羽織って下さい」

「あ、はい」

 

 まるで第2回イベントの時の様だと思いつつ、俺自身は呪い装備の襤褸切れを装備する。流石にこの状態では射撃も斬撃も出来ないが、支援と爆撃くらいなら出来ないこともない。

 

 そして発動させた魔導書の効果で、シャークトゥルフの足を半分覆うほどの猛吹雪が現出した。HPバーの減少は見られないが、範囲内の足が凍りつき行動不能の効果が発動されているのは見える。

 

「突入します!」

 

 濃霧とは別ベクトルで真っ白に染まった空間の中に、俺たち3人は突入したのだった。

 




1d10/1d100
64中38人発狂
あ、一応呪文でSAN消費した場合は発狂なしの方で。
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