幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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ハァイ、クトゥルフなんて知るかボケェ!っていう読者の皆様に、本文の前に超軽い適当気味の説明だよ。
知ってるわボケェ!って人は生暖かい目で見守るかスキップしてね。

Q.なんか地の文厨二臭えんだよオオン?
A.ぶっちゃけその通り。細かい演出というか地の分は「あっ、ふーん」と軽ーくながして、ボスの描写とかは「へー」で済ませると気が楽です。そんでもって敵は、見ただけでヤベーやつ強いやつと軽ーく思っておけばいいと思うよ。

Q.発狂とか知るかいな
A.一時的狂気っていうのは、超簡単に言うとやっべーの見ちまった(感じた)よヤベエよ……「アイエエエ!!ナンデ!?」って感じで軽くヒステリーする感じだよ。ちゃんと落ち着かせるか、荒療治で殴ったりすれば治るよ。偶に失敗するけど。

不定の狂気っていうのは上の一時的狂気のヤバイバージョンで「大きな星が点いたり消えたりしている。アハハ、大きい...彗星かな。イヤ、違う、違うな。彗星はもっとバーって動くもんな」みたいな感じだよ。精神学的なものでちゃんと治療しないと治らなくて、それでも後遺症が残るよ。

Q.結局元ネタなんだよ?
A.ある程度有名な古典SF。あと発狂の内容に関しては、ネットに転がってるクトゥルフ神話trpgのやつから引っ張ってきてるから、詳しく知りたかったらそっちを見て「そっかー」って思えばいいと思うよ。

でも、あくまでゲームなので色々スケールダウンはしてます。特に不定の狂気とか。なんせ基本的にガバガバですからね!

以上、微妙に喧嘩腰のふざけた説明でした。
それでは本編をどうぞ


第63話 激突②

 ホワイトアウト同然の吹雪の中に突入した直後、相変わらず耳を舐めていたセナがビクンと動いた。一瞬だけ動きを止め頭が離れ、即座に耳舐めが続行される。

 

「で、正気に戻ったのなら、セナにはちょっと降りてほしいんだけど?」

「ふぇー」

 

 明らかに抗議の色が強い声が耳を咥えられたまま発せられ、ゾワゾワと得体の知れない感覚が背筋に走った。しかしそれを我慢して、変な声にならないよう言葉を絞り出す。

 

「全力でバイクを走らせたら、セナか極振りしてる人以外追いつけないからさ!」

「ん、分かった! 藜ちゃん、ユキくんの後ろに乗って!」

「はい!」

 

 水っぽい音を鳴らしてバイクからセナが飛び降り、代わりに背中に別の暖かさが加わった。なんかすごい視線を感じるけど今は放置。舐められてた方は凍ったし。

 

「それでユキくん、どうするの?」

「発狂した人たちを避難させるまでの足止め」

 

 平然とAgl換算800程度で走るバイクに並走するセナに、一先ずの目標を伝える。FF(フレンドリーファイア)の可能性がなくなれば、多分【極天】の人たちが本気で動き出す。だったら、まず必要なのは時間だ。

 

「でもユキ、さん。どうやって、です?」

「戦闘機の支援もありますけど、虎の子使って脚を一本へし折ります。シャークトゥルフの脚に穴を開けるのに藜、設置が俺、直掩としてセナ!」

「うん、いいよ」

「了解、です」

 

 この吹雪は俺のMP的な問題でそこまでもたないから、今一番楽に出来る足止めがそれなのだ。2人の承諾が取れたところで、隣を走るセナを見る。

 

「ん、何? ユキくん」

「野暮だけど聞いておく。これから飛ばすけど、セナはついて来れるか?」

「ふふん、ユキくんの方こそ、クラッシュしないでついて来てよね!」

「よしきた」

 

 コートの下に隠す為に、割に続けてた魔導書への集中を解除する。それによってデフォルトの位置でクルクルと、11冊の魔導書が回転を始めた。これでもう、何かを気にする必要は無くなった。

 

「吼えろヴァン。死の世界を突き破った疾走、もう一度見せるぞ!」

 

 瞬間、エンジン音が変性する。バイクに備わった加速装置が起動したのだ。音は数秒で高音へと変化し、車輪の回転速度が馬鹿みたいに上昇。同時にギアを変更、更にバイクとセナを覆うほどの大きさの《加速》紋章を展開。マップ確認、空間認識能力全開!

 

「Go!」

 

 そうして、音の壁を軽々と突き破って俺たちは加速した。愛車の効果と物理的に発生した衝撃波が、水面を叩きつけ邪魔な吹雪を蹴散らしていく。結果、数秒もかからず目的のものと接敵した。

 人間でいう、手首あたりまでが氷漬けになった右脚。それが今目指している目的地だ。そして、待っていましたとばかりに体表と同じ色で同じ粘液を纏った触手が殺到する。

 

「邪魔はさせないんだから!」

 

 しかしその触手は、セナが抜いた金色の双剣銃から放たれた銃弾が全て撃ち落とした。正確には、銃弾が直撃したと思われる触手は痛みに悶えるかのように次々と引っ込んで行った。

 

「《障壁》」

 

 その間にいつかと同じようなスロープを作り出し、粘液を吹き飛ばし体表に裂傷を刻みながら腕を走って上昇する。肘の辺りに到達したところで後輪を滑らせ、辺り一帯の粘液を全て吹き飛ばし障壁を張って静止する。

 

「《パニッシュレイ》《ストライク、スタブ》!!」

 

 バイクから飛び降りた藜さんが放った光が、シャークトゥルフの表皮に直撃爆発を引き起こす。続く爆炎を穿つ3連突きが、大きな穴を穿ったのを確認した。

 

「ユキ、さん!」

「《障壁》」

 

 藜さんの何かを訴えかける目を信じて障壁を展開した直後、目の前がいきなり大爆発を引き起こした。その爆炎が晴れた先には、非常に生物らしくない3つの傷口が、少し想像は超えていたが目論見通り存在していた。それと同時に、何本かの触手も迫って来ていたが。

 

「やぁっ!」

「助かります」

 

 藜さんがそれを迎撃している間に、3つの穴それぞれにカラビナから取り外した『集約爆弾』を設置した。そしてそれが落ちない様に、雷管を付けたプラスチック爆弾もセットする。

 

「後ろに!」

 

 それらを撒くべく、バイクに飛び乗ってアクセルを全開にする。車輪を空転させつつ呼びかける。それから数秒後、衝撃と背中に温もりを感じた。藜さんが飛び乗ったのは、スキルでも確認した。

 

「飛び降ります、舌噛まないで下さいね!」

 

 ぎゅっと抱き着かれる感触を感じ、ブレーキを離した。強烈な加速感と共に、浮遊感が訪れる。真っ白で先が見えない場所に自由落下というのを見てしまったのか、後ろから自分を掴む力が強まった。

 

「《減退》」

 

 しかし見えなくとも、分かってはいる。着弾寸前に紋章で減速し、出来るだけ振動を小さくして着地した。それでも相当な衝撃だったが、本来のビル何階分もの衝撃にはならなかったから良しとしておく。

 

「セナ、撤退!」

 

 再びアクセルを全開にして走りながら言ったが、探知圏内にセナの反応はない。仕方がないか。1度大きく息を吸い込んで、最大限の大声で叫ぶ。

 

「セナ、ハウス!」

「わん!」

 

 次の瞬間、そんな返事と共に残像を残しながらセナが隣に現れた。しかしすぐにハッとした表情になって、慌てて訂正を始める。

 

「ち、違うよユキくん。これはそういうのじゃなくて、そ、そう! この一時的発狂ってやつのせいで!」

「はいはい、色々後でね」

 

 とりあえず軽くそう言って、紋章で加速し吹雪を抜けた。これなら、多分もう問題ないだろう。

 

「爆破!」

 

 再ターンしてシャークトゥルフの方を向き、取り出したスイッチを押し込んだ。

 

 キュガという耳馴染みのない爆発音。

 

 シャークトゥルフの半身を飲み込む大火球。

 

 吹き散らされる吹雪と水飛沫。

 

 僅かに遅れて訪れた、尋常じゃない爆発による衝撃波がバイクごと俺たちを吹き飛ばした。あ、これ死ぬやつだ。

 

「《被害をそらす》」

 

 右手を落下方向に突き出し、非常に使いたくなかった呪文を使用する。SAN値が1減少し、そこそこのMPを消費してダメージを無効化した。そのままゴロゴロと転がり、見上げた先にはこちらに向けて落下してくる愛車の姿。

 

「もう1回《被害を逸らす》!」

 

 SAN値が90になり、直撃しかけたバイクがするりと滑って近くの水面に落下する。残りMP3割しかなくなったけど、2人を巻き込んで死ぬよかマシだろう。

 

「【魔力の泉】」

 

 1度愛車を仕舞いサイドカーを装備させて取り出しつつ、シャークトゥルフのHPを見た俺は愕然とした。今の大爆発によって削れたのは10本あるHPバーの内1本目、その4割程度だけだった。いや、セナや藜さんの攻撃を含めればもっと少ないか。

 

「いたた……ユキくん、大丈夫?」

「俺はね。でも、ちょーっと不味いかなぁ」

 

 MP回復ポーションを浴び【魔力の泉】で回復しているが、猛吹雪を維持するMP消費の方が僅かに大きい。そもそもが──

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッ!!」

 

 そんな思考を断ち切る様に、名状し難い狂気の咆哮が轟いた。同時に、俺たちに向けて巨大な何かが飛来して来た。バイクでは間に合わない。多分セナ単独ならともかく、俺と姿の見えない藜さんを同行していたらさらに間に合わない。

 

「《被害をそらす》!」

 

 さらにSANを消費し、もう一度呪文を行使する。それにより、残りのMP全てを消しとばす羽目になったが飛来して来たものは近くに着水させることに成功した。

 

「セナ、藜がどこにいるかわかる?」

「んと、少なくとも周りにはいないよ?」

 

 周りに姿がないということは、可能性は1つ。MPポーションを再び浴びながら《望遠》を使って水面下を見渡す。すると、水中で邪神の尖兵と見られる敵に囲まれている藜さんの姿を深いところで発見した。

 

「《加重》《加速》!」

 

 取り出した【三日月】の刃を下に向け、ギリギリのMPを振り絞って射出する。多分あの状況じゃ、上がるに上がれないだろうし引っ張り上げる寸法だ。

 

「セナ、引っ張り上げるのお願い!」

「いいよ!」

 

 何やら騒がしくなっている作戦会議チャットから変更し、掴んでと簡潔な一文をフレンドメッセージで藜さんに送る。直後、こちらを見上げた藜さんが錨の様に垂らした【三日月】の刃を掴んだ。無論刃のない方である。

 

「せーの!」

 

 いつもより動作の遅い鎖の巻き取りと合わせて、渾身の力を込めて杖を引っ張る。俺のパワーはクソ雑魚(Str : 20)だが、セナの場合はかなりある(Str : 553)。その力があれば、人1人を引っ張り上げることなど造作もなかった。

 物凄い勢いで引っ張り上げられた藜さんが、水面に叩きつけられる前に《減退》を使ってキャッチする。バランス的に所謂お姫様抱っこになってしまった。許して。

 

「えほ、けほ」

 

 水でも飲んだのか、咳き込む藜さんを抱えたままバイクに飛び乗る。うわ槍重い、サイドカーに入れとこ。時間が惜しいし、死ぬ程疲れるけどアレで行くか。

 

「セナは後ろに、今度こそ逃げるよ!」

「合点!」

 

 ハンドル操作に2冊、ブレーキに2冊、アクセル操作に1冊魔導書を使って無理やりバイクを操作する。背中合わせにセナが座り、後ろに向けて発砲を始めた。

 

「ユキ、さん?」

「ちょっと死にそうなんで、掴まっててください!」

 

 ビチャビチャの冷えた手が首に回されゾワっとしたが、これで右手は使える様になった。適当に爆弾をばら撒きつつ、チャット画面を開く。

 

 超器用『ちょっ、今の爆破なんだ!?』

 

 超器用『いや、聞くまでもなかったな。無事か?』

 

 傀儡師『今脱出を確認した。それと、吹き飛んだシャークトゥルフの右腕もな』

 

 コバヤシ『足止めの筈が、大手柄みたいですね』

 

 戦車長『どうやら、HPの削れ具合は微妙の様だがな』

 

 爆破卿『ですので、制空支援おねがいしま』

 

 アオギ『了解した。ディアボロⅡ攻撃を開始する』

 

 超器用『大半の避難は完了した。戦闘機の攻撃が終わり次第、うちの馬鹿どもを投入する!』

 

 爆破卿『了解』

 

 コバヤシ『了解』

 

 戦車長『了解』

 

 

 雰囲気で制空支援って打っちゃったけど、同じく雰囲気で伝わったから良しとしておく。

 そうしてチャットを見終えた頃、丁度MPが尽きた。だがそれを無視して走行しつつ、後写鏡で後ろの様子を確認する。すると、吹雪の晴れた先には中々の光景が広がっていた。

 右前脚の肘から先がなくなったシャークトゥルフが、歯を鳴らして足元の氷を砕いている。怒りでこちらしか見えていなさそうなそれの後ろから、幾らか勢いを取り戻した戦闘機が迫っている。

 

「セナ、追手は?」

「んと、下からきてる!」

「了解!」

 

 爆竹をばら撒くことを続け、ものすごく近い藜さんの顔を意識から無理やり外し、後写鏡で戦況の確認を続ける。

 

 その時にはもう、戦闘機から恐らくミサイルと思われる何かが切り離され、シャークトゥルフに直撃したところだった。爆炎と轟音が発生し、ボスのHPが削れていく中戦闘機からさらに米粒の様な何かが連続して発射される。多分機銃か何かなんだろう。

 

「よし」

 

 絶叫して身を剃るシャークトゥルフのHPバーは、その攻撃で漸く1本目が消失した。爆破で負けて悔しいが、強いのはいいことだ。仕方がない。

 

 

 コバヤシ『かなりの効果を確認。残弾を撃ち尽くすまで攻撃を続行する』

 

 アオギ『個人で携行できない武装の分、これくらいじゃ終わらせられないしな』

 

 超器用『待て、こちらとしては有難いがそれは』

 

 コバヤシ『どの道、車輪を担当していたやつらをパージした今、着陸は出来ない』

 

 アオギ『1度合体を解除したら、1時間は合体できなくなるしな。時間稼ぎは俺たちが引き継ぐから、避難を優先してくれ』

 

 超器用『ちっ、仕方ない。簡単に死ぬなよ』

 

 コバヤシ『勿論だ』

 

 

 そんな熱い宣言と共に、再びミサイルが発射された。その一撃はまたもや大きくシャークトゥルフのHPを減らし、悲鳴を上げさせた。しかし、仮にもレイドボスがこの程度で終わるなんてことがあるだろうか?

 そんな俺の不安は、直後に的中した。

 

「◼️◾︎◼️◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◼️!!」

 

 身の毛もよだつ咆哮が迸り、戦闘機の進路に竜巻が発生した。否、竜巻は反対側にもう一本存在している。戦闘機はそれを避けることが出来ず、突っ込んで回転に巻き込まれてしまった。それに加え、竜巻は水を吸い上げ水竜巻となった。

 

 そして全体が水竜巻になった瞬間、竜巻に飲み込まれていた戦闘機は大爆発を引き起こした。

 




小林ぃぃぃぃ!!


藜ちゃんボーナスタイムなう

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