幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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第64話 激突③

 

 超器用『おい、どうなった!? いったい何が起こってる!?』

 

 アオギ『鮫だ。鮫がいる。そこいらじゅうにびっしりと……』

 

 大工場『あ、生きてたんですね』

 

 戦車長『とにかく、状況を説明してくれないか?』

 

 爆破卿『爆破要ります?』

 

 コバヤシ『要らんわ!』

 

 アオギ『水の竜巻の中に、鮫の群れがいる。しかも一匹一匹がmobとして成立してやがる……』

 

 裁断者『無事なのか?』

 

 コバヤシ『一応、全員蘇生は出来た。だが、合体は解除されたから暫く出来ないな』

 

 爆破卿『シャークネードは爆破しないと……クラスター爆弾要ります?』

 

 約全員『要らんわ!!』

 

 

 戦闘機が大爆発を引き起こした直後、チャットに文字が打ち込まれた。どうやら、アオギさんは死んではいなかったらしい。いや、復活したのか。

 

「くしゅっ」

 

 そんな事を考えていると、すぐ近くでそんな音が聞こえた。後方の確認を中断して下を向けば、赤い顔の藜さんと目がバッチリ合ってしまった。

 

「あぅ……」

「なんか、すみません」

 

 一先ず謝って、妙な恥ずかしさのせいで集中が緩んでバイクの速度が若干低下した。その直後、両耳の脇を銃弾が爆音と共に通過した。そのまま、背中側から銃剣が突きつけられた。

 

「人が頑張ってる間に、なぁにラブコメしてるのかなぁ? ユ キ く ん ?」

「ごめん、許して。わざとじゃないから。死んじゃう、死んじゃうから。ほんと許して」

 

 グリグリと押し付けられる銃剣に、スキルの効果で僅かにしか残っていないHPがガリガリと削られていく様に慌てて謝る。ちょっと待って、なんでヴァンさん効果発揮してないんです? あれか、もしやFFは対象外なのかこの効果。

 

「ええー? ほんとにござるかぁ?」

「ほんと。本気と書いてマジになるくらいほんと」

「なら許してあげる」

 

 バックミラーから見るセナの顔は、普通に許してくれそうな顔だった。しかしその後、耳元でボソッと「後で何か付き合ってもらうから」と言われた。まあいいかと頷いてしまったけど、確か俺ってそんな約束藜さんともしてなかったっけ? 俺のプライベートどこ……ここ?

 

「というか、多分そろそろ止まっても問題ないよユキくん。追手とかもうきてないし」

「ん、了解」

 

 そう軽く返事をして、魔導書を操作してバイクを停止させた。確かに言われてみれば発砲音はもう止んでおり、追撃ももう来ていなかった。

 

「藜ちゃんも、いつまでもユキくんに抱っこされてるのは迷惑だよ?」

「むぅ……」

 

 そうセナに諭され、藜さんが悔しそうに一度頬を膨らせ手から地面に降りた。とっくに限界が来て魔導書で支えていた俺にとっては、嬉しい様な残念な様な、まあアレである。なんか名残惜しい気がする。

 

 そんな事を思っていると、藜さんが膝から崩れ落ちてペタンと座った。そして、縋るような目をして言ってきた。

 

「わざとじゃ、なくて……腰が、抜けて、立てない、です」

 

 ジッと目を合わせていると、もう一度小さなくしゃみをして藜さんは目を逸らしてしまった。とりあえず、嘘はついてない気がする。バイクで飛び降りたの辺りが原因だろうか? いやでも、アレより高い場所から、第2回イベントの時に飛び降りてるし……まあいいか。

 だから弱々しく伸ばされた手を取ろうとして──

 

「だからラブコメ禁止ー!」

 

 その手をセナが横から掻っ攫って、あっという間に藜さんをサイドカーに座らせてしまった。恐ろしく速い行動……俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

「それでユキくん、これからどうするの?」

 

 有無を言わせぬ笑みを浮かべて言うセナのはるか後方では、2つの灰色の竜巻を従えたシャークトゥルフが何をするわけでもなく突っ立っている。いや、吹き飛ばしたはずの腕に粘液が集められていっているから、何もしていないというわけではなさそうだ。

 

「ちょっと待って、チャットが来てる」

 

 いっそ爆破するのもありだと思うのだが、それを口にする前に来たチャットに中断させられた。チャットはなにやら、結構切羽詰まった感じの様相だし。

 

 

 剣魚『なんか忙しそうなところ悪いが、救援をくれ。正直もう保たない』

 

 大天使『ボスが強すぎて無理です!』

 

 提督『言いにくいですがこちらも。私と数名で支えている状況ですが、いつ突破されて拠点を落とされてもおかしくありません』

 

 超器用『ああもうあちこちで!』

 

 農民『うちらも頑張ってるんやけど、流石に無理っぽいわ。頼むわ』

 

 超器用『分かった、Agl極振りを1人ずつ向かわせる。こっちも壊滅寸前だから許してくれ』

 

 剣魚『了解』

 

 提督『なるべく早くお願いします』

 

 爆破卿『あ、なら街に行く方の人俺のところまで来てくれませんか? 渡したいものがあります』

 

 超器用『ロクでもない物な気しかしないんだが』

 

 爆破卿『HAHAHA! まさか。ちゃんと役に立つ物ですよ』

 

 超器用『……心配だが、了解した』

 

 

 まあこの目で見れないのは残念極まりないが、非常事態だし仕方がない。後でもう一回やり直せばいい訳だし。

 チャットを打ち終わりそんな事を考えた、たった数秒後の事だった。

 

「写術のハサン、参上しました」

 

 それは突然現れた。黒いボロボロのマント、白い髑髏の仮面、そして恐ろしいまでの静音性能と速度。表示された名前はザイード。間違いなく極振りの1人だ。

 

「して、ユキ殿。渡したい物というのは?」

「これです」

 

 そう言って、取り出した1つのアイテムを手渡した。それの見た目は、某ロボットアニメのGコンが一番近いだろうか。しかしその実態は、数日前からコツコツと頑張った俺の集大成。

 

「俺が街に仕掛けた、戦勝祝い用爆弾群の起爆スイッチです。広場のブツだけは発動しない設定にすれば、街ごと敵を一掃できる筈です。……出来れば爆破した写真下さい」

「忝い。ユニーク称号の名にかけて、写真もお約束しましょう」

 

 そう言ってザイードさんは、まるで初めからそこに居なかったかのように消え失せた。速すぎて、空間認識能力ですら捉えきれなかった。……つくづく、極振りは化物だなぁ。俺? 俺は常人だから。

 

 まあそんなどうでもいい話題は置いておいて。

 

「藜さんは休んでてもらうとして……セナ、ちょっと警護お願い。多分、暫く俺完全に無防備になるから」

「うん、いいよ!」

 

 そんな快い返事を貰ってから、意を決して俺は流れ続けるチャットに文字を打ち込んだ。

 

 

 コバヤシ『そういえば、避難状況はどうなっている?』

 

 裁断者『漸く完了したところだ。だがこれからどうする、ここの組にはロクな回復役はいないぞ?』

 

 戦車長『1度殺して復活させるのが速いんじゃないか?』

 

 アオギ『いや、それは流石に効率が悪いだろう』

 

 砲撃長『ですが、それ以外に方法はないのでは?』

 

 爆破卿『いるじゃないですかここに……支援特化の極振りが』

 

 戦車長『えっ』

 

 砲撃長『えっ』

 

 コバヤシ『えっ』

 

 アオギ『えっ』

 

 シド『えっ』

 

 超器用『今しがた、街を吹き飛ばす爆弾を設置してた事を暴露して、そのスイッチを持たせた癖して何言ってるんだ?』

 

 爆破卿『ああ、分かったよ! 連れてってやるよ! 連れてきゃいいんだろ!! お前を、お前らを俺が連れてってやるよ!!(意訳 : 場所教えてくれたら範囲回復します)』

 

 シド『なんでオルガなんだ……』

 

 コバヤシ『また懐かしいものを……』

 

 超器用『場所はマップに映ってる筈だ、頼んだぞ』

 

 砲撃長『……なんで、極振りって濃い人多いんでしょう』

 

 裁断者『性分だ』

 

 

「さて」

 

 チャットを打ち終わり、1度大きく深呼吸をした。魔導書は全て健在、敵影はなし、身体の調子も万全。これで失敗したら、練習の成果がないし何より恥ずかしい。

 

「一丁、本気でやりますか」

 

 【空間認識能力】最大出力。爆弾は両手に持った。準備完了、後はぶちかますのみ!

 

「♪〜」

 

 足で陣を刻み、投げた爆弾で陣を打ち込み、歌でバフを奏で、魔導書でも紋章を描く。並列発動している儀式魔法は、その数15。目視していると陣が狂うため目を瞑り、その状態で全力で儀式を遂行する。

 発動している魔法は、歌・足・爆弾で4つの効果範囲拡大。残りの11個で回復効果。イオ君には速度で負けるけど、範囲と回復なら俺だってそこそこのものなのだ。

 

「ジャスト1分だ」

 

 いい夢は見れなかったが、儀式魔法は全て順当に起動させることに成功した。

 

 それぞれ発動された儀式魔法の陣が浮かび上がり、上空で正十角形に並び新たな精緻な紋様の刻まれた紋章を紡ぎ出す。これがこの前スキルが融合した事により可能になった、儀式魔法を踏み台にして発動する儀式魔法。名付けて大儀式魔……やっぱりやめておく。ぶっつけ本番だが、案外上手くいったものだ。

 合体した陣は素の大きさよりも2回りは巨大化し、戦場の半分程を覆い尽くす。そして効果範囲内のプレイヤー全てに、等しく淡い光を灯した。

 

 1人ジーンとその成果を噛み締めていると、幾つかの激音が空気を震わせた。何事かと振り向けば、シャークトゥルフの側面から黒煙が上がっていた。逆側面もそちらはそちらで、シドさんとハセさんからの砲撃がされたようだ。

 

「◼️◼️◾︎◾︎◾︎◾︎◼️██!!」

 

 叫び声を上げるシャークトゥルフが背の翼を羽ばたかせ、2つの竜巻を差し向けたが全員危なげなく回避していた。

 

 

 コバヤシ『……すげぇ、実は爆弾だと思ってたのに、本当に回復してやがる』

 

 超器用『……すまん。俺も爆弾で解決すると思ってた』

 

 戦車長『同じく。だが、お陰でうちのメンバーが回復した。これより火力支援に入る』

 

 砲撃長『戦車の火力、見せてあげます』

 

 アオギ『信じられなくて悪かった』

 

 シド『……ウチのギルドも、全力で支援させてもらう』

 

 爆破卿『俺って信用ないんだ……』

 

 超器用『普段の行いだな』

 

 爆破卿『そんなー(´・ω・`)』

 

 

 頭の休憩の為に文字を打ち込んでいると、なんとも言い難い視線が2つ俺に突き刺さっていた。

 

「……なに?」

「ううん、ユキくんもこうしてみると、極振りなんだなって」

「極振りをキチガイの代名詞にするのはやめてくれませんかねぇ……」

 

 セナにはそう返事をしたが、実際9割キチガイに半身突っ込んでる様な人たちだから完全否定は出来ないのが悔しい。

 

「その、流石に、これは……」

 

 藜さんもそんなことを呟いて、中空を見ている。……方向から察するに、多分バフの内容でも見ているのだろう。

 

「別に、それほど大したものでもないと思うんだけど……」

「ユキくん、1回ちゃんとやらかしたこと見よ?」

「ふぁい」

 

 セナに両頬を引っ張られながら、既に効果は知っている儀式魔法の内容を改めて確認する。

 HPを1,000即時回復し、状態異常もある程度回復。その後紋章の範囲内の味方プレイヤーに200/5sのリジェネ。効果時間は……30分か。ほうら大したことない。

 

「なんでもない様な顔してるけど、今までの全体回復スキルを根底から覆してるんだからね?」

「いやぁ、その分難易度超高いし?」

「だったら、こんな簡単に出さないでよぉ……」

 

 半分ほど泣き言になっているセナの声を聞きつつ、軽く叩きつけられる手を障壁で防御する。こんなところで死ねないし。

 

「██████◾︎◾︎◼️◾︎◾︎!!」

 

 そんな緩みきっていた空気を、劈く悍ましい咆哮が断ち切った。見れば、吹き飛んだ足の部分に粘液が集まり腕を象っている。どうやら完成してしまったらしい。

 

「セナ、さっきと同じで。いつでも離脱していいけど」

「りょーかい!」

 

 意識を切り替えバイクに跨り、エンジンを再始動させる。それに合わせて背中にセナがピタリと張り付いた。断じてダジャレではない。

 

「藜さんは……」

「大丈夫、です!」

 

 そんな返事を聞いてサイドカーの方向を見れば、そこには予想外の光景が展開されていた。

 本来銃座がある場所には藜さんの槍が固定され、バウの様に突き出ている。加えて藜さんの周囲には、見覚えのある6つの銃剣が浮かんでいる。セナの持つタイプとは違いマスケット銃に着☆剣されているそれは、間違いなく第2回イベントの時に見たものだ。

 

「これなら、動けなくても、戦え、ます」

「ですね。頼もしいです」

 

 藜さんも、アレをいつの間にか使える様になっていたらしい。俺も精進しないと。

 

「それじゃあ、行きます!」

 

 こうして、全体から見れば初の大規模戦闘。俺たちにとっては2回戦が始まった。

 




超器用『今こっちにかかってる回復、そんな感じらしいぞ』
大天使『僕の、僕の十八番の筈なのに……やっぱり極振りなんて、なんて……』
剣魚『キチガ*に関わるとこれだから……』
裁断者『おい、なんでこっちに飛び火した』
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