幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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おまけなので短め。
あと前回うっかり翡翠の描写を忘れてたので追記しておきました


閑話 運営サイド小話

 これは、プレイヤーがやりたい放題やっているボス戦の裏側であった出来事だ。

 今回のイベント管理側は第2回イベントでの反省を生かし、プレイヤーよりも何倍も時間を加速して運営されていた。

 

「極振りを封じ分散させるための、完璧な仕掛けだ。

 シャークトゥルフのHPは1億、シャークトパス亜種のHPは3000万、ショゴスには容易に倒すことの出来ない異常な再生能力。それぞれのボスには即死を無効化し、即死するダメージは0にする機能も設定した。準備は完璧だ、この極振り対策チームの作り上げたボス討伐イベント、とっくり味わっていくがいい」

「何言ってるんですかチーフ。そんなゲンドウポーズして言う暇あるなら、こっち手伝ってくださいよ」

 

 しかも、監視する人員は奇跡的に前回イベントの時から変更が成されていなかったのだ。あんな醜態を晒そうが、ショタコンやロリコンが多かろうが、男の娘スキーだろうが、対極振りとしては限りなく経験を積んだプロフェッショナルなのだ。

 

「残念ながら、こっちもこっちでGMコールに対応があってな……」

「そうですか、じゃあ頑張ってください」

 

 そうして作業に戻る運営Aくらいの職員。そちらはそちらでコンソールに向かって、逐一送られてくる映像のチェックを続けていた。

 

「そういえばチーフ、使えるプレイヤーを選別はしましたけど、蘇生魔法なんてチート使わせて良かったんです? GMコールにも、何件かこんなのありかって来てましたけど」

「ああ、問題ない。寧ろ、無い場合は勝てない調整になっている。何せどのボスも、対極振りとして調整されているからな!! ダァぁぁぁッはっはっはぁぁぁ!!」

「それ、倒せるんです?」

「極振りがいれば、な」

 

 高笑いの後白い歯をきらりと光らせてチーフが言った。しかしそのすぐ後、極めて真面目な顔になって話を始めた。

 

「オフレコで頼むが、実は運営側の方から『もう極振りはこっちから頼んでボスになって貰った方が良くね?』とかいう意見も出て来ててな。このボスたちをあっさり倒したら、それがかなりの確率で通ることになる。次回か次々回かは知らないが」

 

 その言葉に、ざわざわとした空気が流れた。それもその筈だ、プレイヤーをボスとして設定するなんて前代未聞過ぎる。それに、ある意味極振りとこの対策室の面々は親しいのだ。少しは不満の声が上がるのは当然だった。

 しかしそれを制したのは、チーフの声だった。

 

「だが、よく考えても見ろ。『街はどれくらい爆破してもクエスト失敗になりませんか?』とか、『ボスは一撃で死なないんだろうな』とか、『超全力で爆裂しても怒りませんよね!よね!』とか、『対応の速さが足りない』とか、『資金繰りに困ったから市場操作していいか?』とかその他諸々。そんな事を平然と言ってくる輩だぞ? それにほぼ全員1つとはいえ4000オーバー、にゃしぃに至っては万越えのステータスを持っている。これを一般プレイヤーと同じ括りには、流石に入れられないだろう。入れたのが今の状況だしな」

 

 納得するしかない情報だった。要するに、やり過ぎたのである。空から擬似太陽炉を積んだガンダムが来て、連結ビームをぶちかますくらいには。

 

「さて、ゆっくり話せるのはここまでだ。ボスが出るぞ!」

 

 その宣言の元、対策室に緊迫感が取り戻された。

 

「チィィィフ!! 猛吹雪が発生したと思ったら、シャークトゥルフが爆破されて足が吹き飛びましたぁ!」

「想定内だ! 少し行動再開まで時間はかかるだろうが、それくらいじゃアイツはビクともしない!」

「チーフ、ユキがラブコメしてます! 爆ぜやがれクソが!」

「ようし、後で何秒かだけユキにターゲットを集中させる権利をやる!」

「ヒャッハー!!」

 

 極振りも極振りだが、運営も運営だった。その間にあった戦闘機云々も、ユキの大儀式魔法も、最早運営の眼中にないようだ。

 しかし、前回イベントの時と比べて遥かに異常行動が少ない。大規模な戦闘なくせにやらかしが少ないのは、運営としても暇で仕方がなかった。 

 

「なんか、つまらないですね」

「まあ、足枷としての意味もあるレイド戦だからな。それに、本来俺たちが走り回る方がおかしいんだ。だから──」

「極振り散開、行動を開始します!!」

 

 瞬間、モニターの中でシャークトゥルフが爆炎に包まれ、極振りの攻勢が始まった。

 

「……爆裂、綺麗ですね」

「ああ、そうだな。普段より、加減がないようで何よりだ」

 

 普段、にゃしい担当の職員2名は、その普段よりも生き生きとしたにゃしいの、幸せの頂点にいそうな笑顔と爆裂の輝きに目を奪われた。ハイライトごと。

 

「お、やるなぁ」

「思ったより派手に活躍しましたね、彼」

 

 デュアル担当の職員2名も、普段目立った動きをしない担当者の貢献に何か暖かい物が目から流れ落ちた。ハイライトごと。

 

「兄貴のRPしてるだけあって完成度高いなぁ……蹴りボルグの」

「あれ、本人はいいんですか?」

「ああ、どうしようもないからな」

 

 センタ担当の職員2名も、普段通りの超火力を穏やかな心で見つめていた。山を切断したりアトゴウラするよりマシなのだが、ハイライトは既にない。

 

「お、流石爆破卿。チーフ自慢の防御壁、一瞬で消しとばしてら」

「そうですね……私たちは、後は爆破を警戒してましょ」

 

 なんだそれだけかと、ユキ担当の職員2名はハイライトのない目で見つめていた。

 

「キャー! 閣下ー!」

「落ち着け馬鹿」

 

 アキ担当の職員2名は、冷え切った目とハートにでもなっていそうな目で英雄の活躍を見つめていた。

 

「馬鹿な、ゔぁかなぁぁぁぁ!!?」

 

 そんな中、いつかの焼き直しの様にチーフだけが発狂していた。見事にSANチェックに失敗している。手塩にかけたボスのHPが尋常ならざる勢いで削れると共に、チーフの残り少ない髪が張り付いた頭部に搔きむしりの痕が走り毛が散っていく。

 その様は、まるで起源弾を撃ち込まれたケイネスの様。自信満々にボスの解説をするからこうなるのだ。

 

「あ、レンちゃん決めポーズ決まってるなぁ」

「おっ、そうだな。序でにボスのHPを味方ごと消しとばしてる。手が早い」

 

 レン担当の職員2名も、その活躍を微笑ましいものを見る図で眺めていた。ハイライトはサラマンダーよりずっと早くどこかへ消えている。

 

「あー、他愛なし」

「他愛なし」

「「ユウジョウ!」」

 

 ザイード担当の職員2名も、始まった謎のダンスを楽しげに鑑賞していた。ハイライトは街と共に爆破されている。

 

「おお、芸術(爆破)でロールしたみたいな爆破」

「流石俺たちの爆破卿。期待を裏切らない」

 

 えらく気合の入った爆破に、爆破卿担当者もご満悦だった。一から爆破卿の暴走を見てきたせいか、妙な嬉しさまで浮かんでいる。何を隠そう、この2人こそ第2回イベントの時、ユキに大量の爆弾所持を許可した張本人だった。

 

「あ゜あ゜あ゜あ゜あ゜あ゜あ゜あ゜!!」

 

 対照的に予告はあったとはいえ、破壊不能と設定してあるはずの街壁が吹き飛んだ事の修正にチーフは奇声を上げながら取り組んでいた。またもSANチェック失敗である。

 ツチノコのフレンズの様な叫び声を上げながら、搔きむしりは喉辺りに移行した。視線だけでコンソールを操作しているのは流石としか言いようがない。

 

「翡翠射出、汚染が開始されました!」

「おい待て、今日は修正する必要ないんだぞ?」

「あっ、そっかぁ」

「そうだぞぉ」

「りんごたべる?」

「ばなな」

 

 人としての姿から、“あたまのわるいひと”の様な線で構成された人型になった翡翠担当の職員2名。ハイライトなんて既にドットになって消え去っている。

 

「……俺たち、ザイル担当でよかったな」

「ああ、本当に。市場崩壊にさえ気を付けていれば、あいつらと違って1番楽に違いない」

 

 そして、そんなプレイヤーよりも発狂している運営群を見つめるザイル担当の職員2名。この対策室で極振りによる強制SANチェックを逃れたのは、この2名だけだった。

 

 だが、誰も彼も手だけはまるで別の生き物の様に稼働していた。エラーや細々としたバグの消滅を目指し、全力全開でコンソールを操作し続ける。

 

「 おっほー!! 」

 

 それは、発狂したチーフにも言えることだった。否、寧ろチーフこそが1番よく働いている。最早正気の世界には(このイベント中は)帰ってこれまい。肌色の頭でスピンアヘッドスピンアヘッドスピンスピンスピンしているチーフだが、その状態で四肢と目線でコンソールを操作している。

 

「ふえーやぁぁぁ!!」

 

 異常な技量、狂った行動、インパクト。どれを取っても、今のチーフは極振りに比類するキチガイだった。業務はちゃんと、必要以上の速度と精度でこなしている以上、ここにいるメンバーにとってはある種見慣れている光景なので何事もなく流されていく。

 

「チーフ、俺らの中でも1番心が弱いもんな……可哀想に」

「実は、部署変更を上司に頼み込んでたらしいぜ。お前しかいないって突っ撥ねられたらしいけど」

「社会って、残酷だな……」

「ショッギョ、ムッジョ」

「案外、極振りボス化計画って正しいのかもしれないな。倒せるかはともかくとして」

「俺たちの負担、減るもんな」

 

 ポツリポツリと、微妙に悲しそうな職員の声が続く。

 

「でもそうだとしたら、これが極振りのプレイヤー側で参戦する最後のイベントか?」

「有終の美を飾るしかない」

「ワカリミニアフレル」

「あ、翡翠がシャークトゥルフ食べてる」

「ふぁっ!?」

「今『タコみたいな食感の、モロみたいな味と匂いで美味しいです。醤油下さい』ってメールが。モロって?」

「ああ!」

「栃木とかで食べられてるサメのことだよ」

「そっかぁ」

「醤油って?」

「ああ!」

「送るのは無理だなぁ……」

 

 段々と別の方向へ逸れていく職員の会話。そのお陰か、先程までの深刻な話題の形は影も形も無くなっていた。

 

「というか、誰だよシャークトゥルフに味の設定とかした奴。容量重くなるのにバカ?」

「あんたバカァ? ショゴスにメロンソーダ味を、オクトシャークにフライドチキン味を付与した以上、やるしかないじゃない!」

「馬鹿みたいな味付けしてやがる……」

「神話生物に味付けとか此れ如何に」

「ショゴスがプレイヤーを食べながら、プレイヤーがショゴスを食べる……此れ則ち生命循環のウロボロス。始まりと終わりの同居する究極生命体」

「何言ってんだこいつ」

「ああ、こいつ丸呑み系好きなんだよ」

「うっわ深い沼」

「食生活の螺旋で無理と道理を蹴っ飛ばすんだよ!」

「アンチスパイラル不可避」

「翡翠がシャークトゥルフ口いっぱいに頬張りながら、満足そうな笑顔で燃え盛る触手に包まれて逝った」

「どうしよう……エロさを欠片も感じない」

「禿同」

「今『とても美味しかったです』とかメッセージ来たんだけど」

「確かバフだったかステータス上げの効果もあったし、実は無意味じゃないよな」

「ほんそれ」

「正確には……シャークトゥルフなら、この戦闘中だけの超バフだな」

「オクトシャークは、スキル熟練度上昇だったっけ」

「ショゴスはあれ、難易度高いから地味に強いんだよな。StrとVitに+1、自己再生スキルが手に入るっていう。生きてる間に食わなきゃだし」

「おい、そんなこと言うと食われるぞ」

「やっべフラグ立てちまった。わりい」

 

 ……

 

「よし、俺はここでユキに対する強権を使用するぜ!」

「何!? 5秒まて録画準備だ!」

「行くがいい、深きものども。喰らえ我が宝具、カズィクル・ベイ!」

「ヴラドなのかプレラーティなのか」

「あー……ユキが串刺しに」

「やったぜ狂い咲きィ!!」

「あっ、【死界】」

「あっ」

「よっしゃ、喋れないから意思が伝えられなん……だと?」

「うっそだろ、ハイパーモードのシャークトゥルフの防壁、ユキが相殺しやがった」

「序でにヴォルケインの攻撃地味に痛え。誰だよ特殊装備実装したやつ」

「企画を通したのは私だ」

「お前だったのか」

「RP不足を感じた」

「運営の」

「「遊び」」

「「「「「Foooooooem!!!」」」」」

 

 不定の狂気に陥ったチーフの発狂ボイス、正気の担当職員たちの会話と操作音が対策室に響く。

 

「誰か反応しろよ!」

 

 そう叫んだチーフは、チベットスナギツネの様に乾いた目で見られたことをここに記しておく。

 

 今日も極振り対策室は平和だった。

 平和だった。

 平和だった!!

 




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