幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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高機動試験型ヅダFB(フルバーニアン)みたいな、操縦者の安全性とか完璧に無視した、馬鹿げた機体見てみたい。

あ、本日2回目です。0時にバレンタインSSを1話に投下しております。


第72話 一方その頃④

 時はシャークトゥルフ討伐より少しだけ遡る。

 平原の防衛戦線でも、たった5人でのボス討伐が再開されようとしていた。

 

「じゃ、私は先行して速度を貯めるから少し宜しくな!」

 

 そう言うなり、全速で移動したレンの姿が風雷と共に掻き消える。宣言通り速度を上げながら、勝手にボスを掠める軌道で移動し出したレンにハーシルが頭を抱えた。

 

「誰やねん、こんな頭のおかしい奴寄越したんは。こんなのの手綱を握るなんて、無理ゲーに決まっとるやないか……」

「すみません……僕の、せいで」

「ええよええよ、あんたは何も悪くあらへん。悪いんは、悪いんはあのキチガイやから」

 

 そう言ってハーシルは、申し訳なさそうにしていたイオの頭をポンポンと優しく撫でた。疲労の影こそ抜けていないが、ハーシルのその陽気なニカッとした笑みは、イオを安心させるのに十分な働きをしていた。撫でられて頬を染めているが、少しは気が楽になった様だ。

 何処と無く立ち位置が逆な気がするが、あまり気にするものでもない。

 

「これは、そういう雰囲気と見て良いのでしょうか?」

「とりあえず、僕たちは準備だけしておきましょう。もしそうだとしたら、申し訳ないですし」

 

 アークとツヴェルフは、いつでも戦闘を再開できる準備を整えながら2人から距離をとった。その後たっぷり数秒も時間をかけて、ようやく4人が行動を再開した。

 

「イオはあの貧乳とうちらに回復とバフ! アークはあの鮫蛸に牽制がてら銃撃しといてくれ! ヴェルはうちと一緒にとっておきの準備して支援砲撃や!」

「とっておきとは?」

「もう銃弾も砲弾もないんやから、弩砲(バリスタ)に決まっとるやないか! 肥やしになってる武装、撃ち続けるで!」

「了解した」

 

 それからたった数秒で、傷だらけの地面に巨大な弩が固定された。そして大槍を始めとした武装が次々と射出されていく。

 

「俺たちも、負けてられないな!」

「そう、だね!」

 

 大天使専用装備の最後のバフが使用され、イオ本人からも多数のバフが5人に掛けられる。それにより火力と防御力が底上げされ、4人の援護射撃は確実にボスのHPを削っていく。

 

 最前線のシャークトゥルフと比べると、このオクトシャークはかなり弱いのだ。具体的には、十分な力を持った、所謂回避盾と呼ばれる戦闘スタイルのプレイヤーが1人いれば、このボスとは渡り合える。何せ行動が、鮫の群体である身体を使った肉弾戦と、対遠距離の鮫射出程度しかないのだから。

 例えば【すてら☆あーく】のセナがいたのなら、楽勝とまでは行かずとも容易に辛勝までは持っていくことが出来ただろう。だが悲しいかな、この場に集まった盾役は名前の通り大きな盾を担いだ者ばかりだった。で、あればこそ、前衛の敗北は必然であった。

 

「クソ平坦! 範囲攻撃行くから回避しいや!」

「否。配慮不要。命中不可能」

「はっ、言いよる。全員、放て!」

 

 バリスタから放たれた大槍が空中で分裂、無数の矢となってボスに降り注ぎ、括り付けられていた爆弾が炸裂する。

 

「《トライショット》!」

「《ホーリーレイ》!」

 

 弧を描く様な弾道の銃3連射がボスを穿ち、鋭い光の雨が魔法としてボスを射抜く。

 

「実行《(ピアス)》」

「BoAAAAA!?」

 

 それらの攻撃全てを掻い潜り、一陣の風がボスを貫いた。外皮は攻撃に焼かれ、内側から風と雷に焼かれボスが絶叫する。HPを0に落とすには至らないが、それでも削り続けていることは確実だった。

 

 そしてちょこまか動くレンをターゲットしたことで、先ほどのたらればが少々歪んだ形だが実現する。前衛の距離で暴れまわるレンに翻弄されオクトシャークは後衛にまで手が十分に届かず、しかしプレイヤー側の攻撃は一方的に届く。

 

「GURAAAAAA!」

「《ビッグシールド》《受け流し》!」

 

 何故か吠える遠距離鮫砲弾も、直衛として待機していたイオが盾で受け流して回避することができる。暴れまわるレンに攻撃は届かない。ここに、前衛が生存する限り続く、はめ殺しの様な状況が成立していた。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッ!!!」

「発狂来るで! 気いつけや!」

「認識済。忠告不要」

 

 それは、瀕死のボスが発狂モードになっても変わらない。発狂モードに入ったことによって行動全般が加速・強化されたオクトシャークだが、Agl換算5桁の最高速度に到達したレンに攻撃が届かない。

 さらに後方から、オクトシャークに安定した攻撃が降り注ぐ。システム的にヘイトが溜まりに溜まったレンからターゲットを移すことも出来ず、レンに引きつけられる。

 

 そして、順当に結末は訪れる。

 

「終幕宣言。累積解放(チャージバースト)。実行《(ストライク)》」

「とっておきを食らえダボが!」

「終わりです」

「《ショットランサー》!」

「《スナイプショット》!」

 

 超高速の風雷を纏った蹴撃が、

 攻城兵器級の二連装の大槍が、

 回転しながら飛翔する長槍が、

 ジグザグの弾道を描く銃撃が、

 

 殆ど同時に、残りHPが僅かだったオクトシャークに殺到した。そして呆気なく、オクトシャークのHPは0になった。何故か群体化は解除されず、一般的なボスの様に消え去ることもなくオクトシャークは倒れ伏した。

 

「だー、つっかれた。もうこんな戦いやりとうないわ」

「同意です。私たち生産職は、前線に出て戦うべきではありません」

 

 疲れ切ったと言わんばかりに、弩砲にハーシルとツヴェルフがもたれかかる。それによって、どことは言わないが2人の豊満な部分がむにゅんと変形する。

 

「チッ」

 

 その光景を見、自分と見比べてレンが思いっきり舌打ちをした。しかしすぐに切り替えて、同様に互いに寄りかかり背中合わせに座っているイオとアークの元に歩いて行った。

 

「お疲れさん。回復とかバフ、ありがとな」

「いえ、僕に出来るのはそれくらいですから」

「援護射撃もな」

「僕のレベルで助けになれたなら幸いです」

 

 HPを削りながら笑顔で2人とハイタッチし、無言で嫌々ながらもう2人ともハイタッチする。

 

「にしても、他のところはどうなってんだろうな」

 

 勝利を告げるウィンドウが現れたのは、その数分後のことだった。

 

 

 一方、街で行われていた対ショゴスの戦闘は最も地味に、簡単に決着がついた。

 

「他愛なし」

 

 ショゴスといえば、倒す方法は封印。

 封印といえば、神楽舞。

 神楽舞ならダンスでも平気だろという、少々おかしな理論によって実行された封印作戦。それは、予想を上回る効果を発揮していた。

 

 特設空中ステージ(糸)の上でダンスを踊りきり、ザイードにより魔法としての封印が発動される。生き残っているプレイヤーの総攻撃を受け止め移動が出来ないでいるショゴスに、虚空から射出された銀の鎖が絡み付いていく。

 

 魔法発動封印。スキル発動封印。移動封印。三重で発動された魔法により、ショゴスに3つの状態異常が追加される。効果時間は60秒と長めで、それにより行動の大半が封印される。

 

「テケリ・リ!」

 

 しかし、それでも諦めないとばかりに巨大な触手がハンマーの様に振り下ろされる。そして不幸なことに、今この街中というマップに18歳以下のプレイヤーは存在していない。故に、普段は削除されている多少グロい表現が解禁されていた。

 

 触手ハンマーが直撃したプレイヤーは、盾ごとその粘液の中に取り込まれた。そして消化の為か少し透けた触手内部で、段々と溶けて消化されていく光景を数人のプレイヤーが目撃してしまった。早回しで身体が溶け、骨になって分解されていく光景は、ラインギリギリを攻めていた。

 

「うっ……おぇ」

「マジかよ……」

 

 その表現はあくまでCERO : C〜D、SAN値チェックでも0/1d3相当。しかしそれでも、突如目の前で見せつけられた惨劇にプレイヤーの動きが乱れた。そして、それはボスの付け入る格好の隙になる。

 

「あっ──」

「させません」

 

 再度振り下ろされる触手、そこに拳大の浮遊するパーツが割り込んだ。それはZFの操る特殊装備の一部、これ以上数を減らさせてたまるかと壁になったそれは確かな防御力を以って触手を弾いた。

 しかし完全に防ぐことは出来ず、ZFに触手の一部が直撃した。オウムガイ型の特殊装備が弾き飛ばされ、回転しながらギリギリ残っていた建物の残骸に衝突する。その際顔を覆っていたバイザーが砕け、片眼だけが露出する。

 

「終わらせはしません」

 

 その青い瞳がショゴスを居抜き、数多の魔法がショゴスに殺到する。移動したことによりバフが解除され火力は下がったが、それでも一線級のプレイヤー。周囲のプレイヤー数人分の火力でショゴスを押し留める。

 

「まだまだ行きますぞ」

 

 追加で鎖が射出され、新たに状態異常が追加される。物理攻撃封印。特殊攻撃封印。計5つの封印を付けられ、さあ後はダンジョンである街下に叩き落とすのみとなった時のことだった。

 

 ジャラリ、と黒く禍々しい鎖がショゴスに巻きついた。

 

 ZFがザイードの方を振り向くが、ふるふると横に首が振られた。

 

「ならば、これは一体誰が……」

 

 参戦しているプレイヤーの誰もがそう思う中、鎖の数は際限なく増殖していく。そうして鎖で雁字搦めにされたショゴスは地面から引き剥がされ、いつのまにか出現した街の廃材で組み上がった棺桶の様な箱に吸い込まれていった。

 そして棺桶は、重力に従って下へ下へ落ちていく。そして、今まで表示されていたショゴスの名前とHPバーが消滅する。

 

 3体のレイドボスの中で、最もあっけない終わりだった。

 

「「「おおおぉぉぉぉ!!」」」

 

 暫しの静寂の後勝利を告げるウィンドウが現れ、歓声が上がった。しかし、記されていた文字を読んでいくたびその歓声は静まっていく。

 

「ちょっと待て……俺たち、ここからどう脱出すればいいんだ?」

 

 誰かが呟いたそんな言葉から、ざわつきが広がっていく。そう、現状この第4の街跡は、ユキの爆破によって完全な陸の孤島となっている。今ここから脱出出来るプレイヤーは、ZFとザイードの2人くらいしかいなかった。

 

 そんな時、低くくぐもったズズンという音が響いた。

 

 すわユキの爆破かと身構えた大半のプレイヤーの予想を裏切り、起こったのは街の外周の土砂崩れだった。それにより沼地が決壊、水と土砂、木や人工的な石畳などがダンジョンの上になだれ込む。

 

 そうして完成したのは、浮遊物が大量にある底なし沼。正確には底はダンジョンなのだが、あまり関係はないだろう。この運営の自棄っぱちの計らいにより、脱出路は確保されたのだった。

 

 余談だが、この運営の自棄がメンテ時間延長を呼んだことをここに記しておく。

 




被害状況
シャークトゥルフ戦
約60%生存
オクトシャーク戦
99%死亡
ショゴス戦
約20%生存(発狂中含む)

……オクトシャーク戦だけ一般プレイヤーが楽しめなかったことが判明。
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