幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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日本人と違って外国の人って、平均体温が1℃くらい高いらしいですね。


第73話 決着の後は

 戦闘が終了したことにより、【ドリームキャッチャー】で引き受けていたものを含め、大量のデバフが消滅した。これなら大丈夫だろうと、つららさんとれーちゃんに続いてランさんの肩から飛び降りる。

 

「《障壁》」

 

 無論そのままではダメージを受けるのは必至なので、一旦障壁を挟んで水面に着地した。うん、まだ水面に立つことは出来るらしい。

 

「やったねユキくん! 勝っ……とと」

 

 凄い勢いで戻ってきたセナが、ハイタッチのポーズのまま目の前で急停止した。バランスを崩したセナを、抱きしめて受け止める。

 

「あれ、ユキくん、砕けない?」

「まあ、戦闘が終わったからデバフ解除されたしね」

 

 安心したようにセナが力を抜いてもたれ掛かってきた。後は銃剣を仕舞ってくれれば、俺としては安心できるんだけどなぁ……

 

「リアルと違って、そんなに支えられないから立って立って」

「しょうがないにゃあ」

 

 だらーんとしているセナを(無理して)持ち上げしゃんとさせていると、なんだか妙にソワソワしている藜さんの姿が目に入った。セナがちゃんと立っていることを確認し、そちらに向けあるいていく。

 

「えいっ!」

 

 ハイタッチしようポーズだった俺に、意を決したように藜さんが飛びついてきた。正確には抱きつこうとする動きだったのだが、貧弱ステータスで耐えきれず倒れてしまった。おぅふ、残りHP5%……

 

「あぅ、ごめん、なさい?」

「いえ、支えきれなかった俺も悪いですし」

 

 必然的に押し倒される形になり、物理的な距離が極めて接近した。そのせいで熱くなった頬を冷ますために、取り出したHP回復ポーションを頭にドバドバとかける。キンキンに冷えてて気持ち良い……

 

「ラブコメ禁止!」

「むぅ」

 

 そうしているうちにセナが藜さんを退かし、色々な意味での危機を脱することができた。水滴を払って立ち上がると、片腕でれーちゃんを抱っこしたランさんがいた。いつのまにか、特殊装備(ヴォルケイン)は解除され生身になっている。

 

「お疲れ様、だな」

「ええ、本当に。ヴォルケイン、見事でした」

「お前の障壁もな。正直人外だろ」

「ははは」

 

 拳を合わせて笑い合い、人外発言は誤魔化しておく。ぶっちゃけシャークトゥルフに負けてたから、誇れるようなものでもないしね。

 

「ん」

「れーちゃんもありがとう」

 

 普段とは逆に、れーちゃんに頭を撫でられた。思った以上に擽ったいんだね、頭撫でられるのって。でも、悪い気分はしない。ランさんの射殺さんばかりの視線を除けば。

 

「それで、素材の採取ってどうすれば良いんですかね?」

 

 つららさんが、ランさんと手を繋ぎながらそんなことを言った。ぽわぽわとした幸せの波動が、溢れんばかりに伝わってくる。こういうのを見ると彼女は羨ましくなるけど……まあ、うん。俺の場合は、ね。

 

「某狩りゲーみたいに、ナイフか何かで剥ぎ取るんじゃないか?」

「ん!」

「でもランにれーちゃん、それじゃあ入手できる素材に問題が起きない? 一部がいいとこ取りとか」

「んー、私はもっと簡単に、特定の行動をしたらランダムで取得だと思うなー。ユキくんは?」

「ランさんとセナの意見を合わせた感じかな。剥ぎ取ってランダム取得」

「私は、触れたらランダム、かなって、思い、ます」

 

 そんなことを話していると、ワァと歓声が上がった。どうやら、素材の採取に成功した人が現れたらしい。プレイヤーが群がるシャークトゥルフに近づき話を聞いてみれば、何かしらの手段で剥ぎ取るとアイテム取得になるらしい。ランダム性はわからないとのこと。

 

「みんな剥ぎ取るぞー!」

「「「おー!」」」

「ん!」

 

 意気揚々と突撃して行ったセナ達はいいとして、俺のステータスじゃ人混みに揉まれただけで死にかねない。であれば、目指す場所は1つだ。

 

「《障壁》」

 

 いつぞやのロブスター戦の時の如く、障壁で階段を生み出しシャークトゥルフの背に登っていく。流石にここまで登ってくる酔狂は殆どいない様で、殆ど人は居らず安全に作業が出来そうだ。

 

「さて」

 

 下で聞いた通りなら、何らかの手段でシャークトゥルフから剥ぎ取りをするとアイテムを取得できるらしい。例となるものを見てないから何とも言えないけど、とりあえず切除すれば何とかなるだろう。そう思って《三日月》で切り取り採取した瞬間のことだった。

 

「えぇ……」

 

 キュイーンという謎の音と閃光が発生し、切り取った肉片が別のアイテムに変化していた。見た目は、子供の頭ほどの大きさのある球形のアメジスト塊。しかし、内側に宇宙が見える。奇妙な星辰の並びが入り乱れる宇宙だ。煌めく宇宙と奥から溢れ出る漆黒の光は、こちらを奥に奥に引きずり込む様な魅力を放っている。

 

「明らかにアウト案件じゃんこれ」

 

 念のため確認して見たSANの値は、1減少して37になっていた。アイテム名は【特級邪神の神核】、これ明らかにダメなアイテムだわ。レア度は最高級なんだろうけど。

 

 2回目の剥ぎ取りも【特級邪神の神核】

 

 3回目、4回目、5回目も【特級邪神の神核】だった。おいちょっと待て。なんで某狩ゲーで例えるなら、〜〜の碧玉とかに相当するだろうアイテムがこんなにポンポン出てくるのさ。

 そのあんまりな結果に頭を抱えていると、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。

 

「きゃっ」

「ん」

 

 振り返って見てみれば、れーちゃんと翡翠さんがぶつかって尻餅をついていた。

 

「大丈夫ですか?」

「ん!」

「ん。ん?」

「ん?」

「ん」

「ん?」

「ん。ん?」

「ん?」

「ん」

「「ん!」」

 

 そして、まさかの「ん」1文字だけで意気投合していた。まさかれーちゃんと初見で会話できるなんて……流石極振りの先輩だ。

 

「なあユキ、あれ何がどうなったのか分かるか?」

「ザイルさん。まあ、一応は分かりますよ」

 

 どこか遠い目をしたザイルさんがそんな事を聞いてきたが、れーちゃんの言葉をランさんの次くらいに読み取れる俺には、ある程度は容易い事だ。

 

「最初に翡翠さんが『大丈夫ですか』って聞いて、れーちゃんが『大丈夫』って感じで答えました。ここまではまあ、分かりますよね」

「それくらいならな」

「その後翡翠さんが『それなら良かったです。ところで、私はこのボスをどう食べればいいのでしょう?』と言って、料理……いや、この場合は『お刺身とか?』ってニュアンスでれーちゃんが答えました」

 

 ここのれーちゃんの答えにはちょっと自信がない。多分ランさんなら完璧に訳せたんだろうけど。

 

「それで翡翠さんが『それはさっき食べました。お醤油が欲しかったですね。美味しかったです』って答えて、『食べてみたいかも?』ってれーちゃんが答えて、翡翠さんが『それはいいですね。一緒に食べましょう。ところでどう食べればいいのでしょう?』、れーちゃんが『私のギルドに来てくれたら料理するよ?』、翡翠さんが『それじゃあお邪魔しますね』って答えて、意気投合してました」

「悔しいが、殆ど正解だな」

 

 いつのまにか背後に立っていたランさんが、感心する様に言った。良かった、一応ちゃんと訳せてたらしい。

 

「なんでお前ら、あれだけからそこまで分かるんだよ……変態か」

 

 ホッとする俺と仁王立ちのランさんを見て、ザイルさんがドン引きしていた。心外な。俺は普段よく話してるからだし、ランさんは兄だからに決まってるじゃないか。

 

「ん!」

「ん」

 

 半保護者側がそんな事をしている間に、れーちゃんと翡翠さんは更に仲良くなっていた。何か通じるものがあったのだろう。お互いやっぱり「ん」の一音だけだが、今では手と手を繋いで歩いている。非常に優しい光景だ。

 

「まさか、正気で翡翠と親しくなれる奴がいるとはな……」

「うちの自慢の妹だ」

「あー、ちょっといいですか?」

 

 れーちゃんたちが歩いていくのを感動するように見ている2人に話しかけた。お願いするなら今しかないだろうしね。

 

「なんだ?」

「2人って、剥ぎ取ったアイテムどんな感じでした?」

「鮫肌、目、翼、鱗、粘液だったぞ」

「フカヒレ、爪、尾、翼、鱗だな」

 

 前者がランさん、後者がザイルさんだ。案の定、あの神核なるアイテムは最高レア度のものだったらしい。そう確信して、無駄に手持ちにある神核の1つを取り出した。

 

「多分これ最高レアのドロップ品なんですけど、フカヒレと交換してもらうのって出来ますか?」

「ッ、お前! そう易々とそんなもの──」

「剥ぎ取ったら全部これだったので」

「あ、うん。なんかごめんな」

 

 同じ極振りだからか、一瞬でこちらの心境を察してくれたようだ。多分これは、極振りした人たち共通の悩みだろう。方向性は違うだろうけど。

 ランさんは笑顔のれーちゃんに見惚れている。多分スクショが連射されているだろう。

 

「だが、本当にいいのか? 5つしかないうちの1つだろう?」

「ええ、別に。だって、多分これを使った改造を頼むことになりますから。先行投資的な感じですよ」

「ふ、了解だ」

 

 固く握手を交わして、トレードが成立する。予約も取り付けられたし、これはいい交渉だった。トレードしたアイテム名は【特級邪神の背ビレ】、素材にするとしても食べるとしても良い物だろう。

 

「ん」

「ん!」

 

 そんなことを話しているうちに、仲良く散歩していたれーちゃんたちが帰ってきた。そして手を振って、それぞれの保護者的な立場の2人の元に戻ってきた。

 

「ん」

「ああ、分かってる」

 

 れーちゃんが両手を広げランさんに抱っこをせがみ、片腕で抱き上げられていた。向こうはどうかと見ていれば、もぎゅもぎゅと口を動かす翡翠さんをザイルさんが手を繋いで引っ張っていた。うん、平和そうで何より。

 

「帰りますか」

「ん」

「そうだな」

 

 途中数回着地しながらランさんは降りて行ったが、俺がそれをやったら死ぬのでまた障壁で階段を生み出し降りて行く。死なない為にやってることなんだから、『うわ、爆破卿がラスボスムーブしてやがる。逃げろ』とか言わないで欲しい。爆破するぞおめー。

 

「そういえば、お前幸運値どれくらいになったんだ?」

 

 水面に降り立った時、ふとランさんがそんなことを聞いてきた。そういえば、最後変化したスキルで少し上がったんだったっけ。

 

「えーと、5124ですね」

「他はどうなんだ?」

「最低3、最高が57ですね」

「頭おかしいステータスしてるな」

 

 否定はしない。けど確かアキさんのStrは9000超えてる筈だし、にゃしぃさんに至っては万に届いていたはずだ。それに比べると、俺なんてまだまだである。それに、

 

「そんなこと言うなら、ここでヴォルケインを完全再現しようとしてるランさんだって十分アレですよ」

「そうか? 好きなものを再現しようとするのは普通だろう」

「ですね。だから極振りの人たちも、自分がやりたいRPしてるんでしょうし」

「正気を疑うがな」

 

 そんなことを話している間に、人混みの中からセナたちが生還してきた。そしてそのまま俺たちは移動して【Charitas OktoShark】の素材も採取して、そのままメンテナンス兼アップデートと相成った。

 

 因みに、そっちの素材も【ヌークリア・シャークコア】なる最高レア度のアイテム5個であった。解せぬ。

 

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