幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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ジャコウネコを惜しげも無く媚薬扱いするアニメがあるらしい


第75話 メンテ明け

 メンテナンスが終了してから1時間後。家事全般を終えてログインしたUPOは、かなりの賑わいとなっていた。というか、うちのギルドの客足が倍以上になっていた。ゲーム内時間で考えるとメンテ終了から2時間経ってるので、小腹が空いたとかそんな感じなのだろう。

 

「なにこれすっごいカオス」

 

 犬。鳥。亀。リス。そんな動物を始めとして、色々よく分からない小さな生き物が、大量に店スペースには存在していた。掌くらいの大きさなので空間の占領は起こってないが。ザッと視た限り、ほぼプレイヤーと1:1で存在しているらしい。つまりは、これがペットとやらなのだろう。でも、流石に小さすぎるから何かあるとみた。

 

「ん!」

「ああ、ごめんれーちゃん。手伝うよ」

 

 両手にお盆を持ってパタパタと走るれーちゃんを避けつつ、こっそりステルスと潜伏をしつつバックヤードに入る。

 残念だったな、これから来るプレイヤー諸君。ここからは、NPCのお姉さんが作る既製品の料理ではなく、何個に1個か俺が用意する少し美味しい料理だ……

 

 ・

 ・

 ・

 

「お疲れ」

「ん」

 

 それからお客さんを捌くこと大体30分。押しかけてきていたお客さんが一段落したので、バックヤードで休憩に入ったれーちゃんとハイタッチする。まだお客さんはいるが、もうNPCの人たちだけで対応可能な範囲だし。

 

「そういえば、れーちゃんは他のみんながどこに行ったか知ってる?」

「ん! ん」

「なるほど、セナと藜さんは第5の街に行ってから、湖の向こうに遊びに行ったと」

「ん」

 

 声とジェスチャーから察したその答えに、こくこくとれーちゃんが頷いた。最近、れーちゃん語の翻訳確度が上がってきた気がする。無論精度を上げるのを怠る気はないが。

 それにしても、2人とも随分速い。多分メンテ直後からずっとヒャッハーしてるのだろう。いや、藜さんはそんなタイプには見えないし……テンションはセナに引き摺られる感じとみた。

 

「それで、ランさんとつららさんは」

「ん」

「お出かけ……リアルかな?」

「ん!」

「じゃあ邪魔は出来ないね」

「ん」

 

 あの2人のリアルのことは知らないからなんとも判断できないが、下世話な想像をすればデートか何かなのかもしれない。ランさんにしては珍しいことだと思うが、VR空間があるおかげでれーちゃんがあんまり寂しくないのは良いことだと思う。

 

「ざっけんなてめぇ!!」

 

 そんなことを考えていると、ガシャンという何かの砕ける音ともに、そんな野太い大声が聞こえてきた。

 それに驚いたのか、れーちゃんは目をギュッと瞑って耳を塞ぎ、座り込んでしまった。僅かに涙を浮かべるれーちゃんの頭を優しく撫でつつ、店の方に耳を傾ける。

 

「この皿とその皿、明らかに俺の方だけ味が悪いじゃねぇか!」

「そんなことはありません。当店でお出しする料理は、全て同一の素材から作られております。以上」

 

 ああ、NPCの人対応してくれたんだ。有難い。

 

「なら食ってみろよ!」

「一度提供したお客様のものに手を出すことは、提供者としてあり得ません。以上」

 

 プレイヤー名はLion。スクショ撮って、今はいないけどランさんに『れーちゃんを泣かせた奴。すごく怖がってました』として送信っと。これでよし。

 近くのNPCさんを呼び止めてれーちゃんを任せつつ、俺も店スペースへ出る。

 

「何でもかんでも以上じゃねえんだよ!!」

「これは、ここで働くNPC全員に設定されている共通の仕様上、仕方のないことです。以上」

「他の人の迷惑なんで、静かにしてもらえません?」

 

 ぎゃーぎゃー怒鳴り散らす赤髪の男プレイヤーに、さも何事もないかの様に気配を消して俺は言った。すると振り返った赤髪は、髪と対照的に顔を真っ青にして後ずさった。

 

「なっ、ひっ、極振り!?」

「それに、なにうちのれーちゃん泣かしてくれてやがるんですか。爆破しますよ?」

 

 一応接客用スマイルで言ったのだが、恐怖以外の効果はなかったらしい。けれどわざわざ残っているプレイヤーに聞こえるように言ったお陰で、一気に店内の雰囲気がLion批難に傾いた。

 多分俺が作ったやつが原因だし、俺が収めないといけないだろう。ったく、普通にNPCの人が作ったやつも十分美味しいってのに。というか、50%の料理スキルじゃ味の違いなんて誤差だっての。

 

「はっ、爆破が怖くてクレームが付けられるか! そっちが謝るまで、何されても頭なんて下げねぇかんな!」

「へぇ」

 

 そうは言いつつ、足がブルブル震えてる件について。全く情けない。それはそうと、NPCの人は他の接客に回ってもらう。もうコイツに構う必要はないしね。俺1人で十分である。

 

「それじゃあ爆破してもいいんですね」

「あ、いや、それは、ちょっ」

「《加重》」

 

 逃げようとしたLionに向けて、杖の一撃と共に紋章を叩き込む。序でに障壁で進路も妨害しておいたせいで、俺の遅い一撃でも十分に当てることができた。無論当てなくても紋章は使えるのだが。

 そして倍になった重量のせいか、Lionの移動速度が目に見えて遅くなった。

 

「斬り付けたものの重さを倍にする」

 

 再び紋章を叩き込む。

 

「二度斬れば更に倍、三度斬ればそのまた倍。そして斬られた相手は重みに耐えかね、必ず地に這いつくばり、詫びるかのように頭を差し出す」

 

 途中から飽きて普通に紋章を計20枚程叩き込んだところ、見事記憶にある台詞と同じことが起こった。開発初期に想定していた使い方ができて、俺としては非常に満足だ。

 

「故に侘助」

 

 こんなことなら、れーちゃんから侘助風の剣を貰ってくればよかった。と、時間制限付きなんだった。【空間認識能力】様々の紋章精密展開で、コイツの上顎と下顎に同じ極の磁力の紋章を付与する。

 

「それじゃあお言葉に甘えて、宣言通り爆破しますね?」

「ふ、ふぁが!?」

 

 反発してこじ開けられたその口に、4本程フィリピン爆竹を捻じ込んだ。ついでに顎とは違う極の磁力を付与させてるから抜けることはない。更に追加で雷管付けたC4も隙間に埋め込んでおこう。無論、爆竹は全部点火済みだ。

 

「まあ、今から謝ってくれたら許さないこともないですけど……」

「ふぁが! あがぁ!?」

「まあ、喋れないから無理ですよね」

 

 そう、笑顔で宣告する。泣きながら謝ろうとしているが、口に爆竹を突っ込まれているから喋れるわけがない。吐き出せないから謝れない。窒息しないから死ぬこともない。つまりは詰みだ。

 

「それに、もしここで爆発なんてさせようものならさっきの皿代に加えて……どうなるか、分かりますよね?」

 

 指で金のマークを作って、笑顔で見せつけた。

 泣きながら必死に首を縦に振る姿は、実に実に愉悦味を感じる。脳が震えますわこれ。爆破で被害者の脳が震えて、爆破で加害者の脳も震えて実に勤勉。……完璧じゃああらせんか。どこの方言だこれ。

 ここで《加重》の紋章の効果が切れ、Lionは涙を流して逃げて行った。その後ろ姿に、声を掛ける。

 

「10」

 

「9」

 

「8」

 

「7」

 

 おお、速い速い。もう結構遠くまで行ってるじゃないですか。これなら、もういいだろう。

 

「ヒャア我慢できねぇ、ゼロだ!」

 

 取り出したスイッチを握り込むと、遠くで大きな爆発が起こった。残ってるお客さんと今から来ようとしていたお客さん、更にはNPCまでもがドン引きしてる気がするけど気にしない。俺は悪くねぇ。

 

「いやぁ、ここにいたのが俺でよかったですね皆さん。もし俺じゃなくてれーちゃんのお兄さんが居たら、こんなんじゃすみませんよ? きっと」

 

 実際、俺のこれよりランさんなら色々凄いことやりそうだし。多分あのLionも、ランさんがログインしたら悲しいことになる気がする。まあ、うん。アレはれーちゃん泣かせたからギルティ。

 

「当店では、同一の材料から料理は作られています。作る人によって僅かに出来の個人差はありますが、ほぼほぼ誤差です。それじゃあ、皆さんマナーを守ってお楽しみくださいね。ああなりたくなければ

 

 笑顔で言ったお陰か、全員猛烈に首を縦に振ってくれた。いやぁ、極振りのネームバリューの力は凄いなぁ。

 

「これは最早脅迫だと判断──いいえ、なんでもありません。以上」

 

 うっかり口を滑らしかけたNPCの人を睨んだ途端、意見が変わった。いやぁ、極振りのネームバリューの力は凄いなぁ。あくまで極振りの力であって、爆破の力なんて関係ない(大本営発表)

 

「っとと」

 

 なんか流れでギルドから出てしまったから、一応れーちゃんに連絡しておこう。さっきれーちゃんも休む感じだったし、一応お疲れ様的な風にして送信っと。

 

 そうして戻したメニュー画面の広告バナーに、例の追加された課金要素が流れていた。

 ペットガチャ……は、まだ使えないらしい。多分第5の街までお預けか。ペット用アイテムは、装備もあるが装飾品も結構混ざってるようだ。まだお預けだが。

 そしてプレイヤー用アイテムだが、不思議と装備は存在していなかった。ベッドやソファーなどを始めとした家具、取得経験値を上げる消費アイテム、デスペナ時間軽減アイテムetc……あったらかなり役に立つけど、課金しなければ絶対に課金プレイヤーに追いつけないというアイテムは存在していなかった。

 

 まあ課金をする気が一切ない俺には関係のないことだ。課金アイテムに興味をそそるアイテムが一切ないのだから仕方がない。そんなどうでもいいことは忘れるとして、お陰で次に目指す場所が決まった。

 

「行くか、第5の街」

 

 ひっそりと取り出した愛車(ヴァン)に乗り込みつつ、左手でまとめサイトを開く。セナたちがあっさりやってるから心配はないけど、一応山越えだしね。運転をほぼヴァンに任せながらバイクを走らせつつ探せば、案の定もう既に第5の街関連の情報は纏められていた。

 

「ふぅん、王国領って、敵の強さはそんなでもないんだ」

 

 レアモンスターに関しては不明としか書かれていないが、ほかのモンスターは基本的に第1〜第3の街付近までの強さらしい。ロブスター倒したら行けるって話だったはずだし、残当と言えよう。

 

「山越えのルートは大きく分けて2つ」

 

 1つは第1の街からまっすぐ東に進み、森を掻き分けて進むルート。行軍が楽でモンスターが弱いが、代わりに敵がワラワラ湧くルート。

 

 もう1つが第2の街から東に進み、岩壁を登り高い山を越えて進み風雷轟く山越えルート。こちらは敵はあまりでないが、かなり強いモンスターが湧くらしい。

 

 因みに後者は、よくAgl極振りのレンが目撃されるルートなんだとか。敵の出現率が少ないのは、出現するそばからレンに狩られてるからと推測されていた。……案外当たってそうだ。

 

「行くなら後者かなっと」

 

 アクセルを全開にして街から飛び出す。愛車(ヴァン)でなら崖を駆け上がれるし、上手くいけばレンさんにも挨拶できるかもしれないし。極振りの中で唯一接点ないから、挨拶はしておきたいんだよね。

 

 それに、山の上からなら……街にエド式イヤッッホォォォオオォオウ突撃か、カイト式ハルトォォォォォォォォ突撃出来そうじゃない?

 




極振り生息地
アキ : ダンジョン
デュアル : 不明
センタ : フルトゥーク湖 : 湖底
レン : 王国領までの山脈 : 頂上
翡翠 : 不明
にゃしい : 森
ザイード : 不明
ザイル : 〃ギルド本部
ユキ : すてら☆あーくギルド本部・第3の街
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