幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

95 / 243
雨の音ってなんか好き


第78話 ペット②

 雑に作った昼ご飯を食べ終え、UPOに再度ログインする。というのも、ペット育成が予想以上に楽しいのがいけないのだ。いつか誰かから聞いた『ペットは本編をほっぽり出して嵌る深い沼』という言葉が身に染みる。

 

「なー」

「?」

 

 ギルドの自室で座りながら、ホバリングするマイペットの蜂をツンツンと突っつく。相変わらず掌くらいの大きさしかない黒い蜂だが、首を傾げる動作“は”慣れると可愛く見えてくる。

 

 まさかこんな小さな蜂が、開幕252体に分裂して高速で自爆攻撃(デバフばら撒き)をしてくるなんて思わないだろう。しかも20秒毎に更に増える。……まあ、あれだ。正直、既に自分でも相手にしたくないペットに仕上がってる。

 

「はいご飯」

 

 無限に湧き出す高性能火薬を食べさせつつ、これからどうしようかなとボンヤリ考える。第5の街のボス情報とかも出てないし、俺1人じゃルリエーの先のマップに行く気も特にないし……

 

「そういえば今日、まだビル爆破してなかったっけ」

 

 どこからか悲鳴が聞こえた気がするが、いつものことなので無視する。あ、それで思い出した。【アルムアイゼン】の人たちにプレゼントしたけどまだまだあるビルの残骸、あれ第4の街に投棄しに行こう。

 確か復興クエストを受けると、大容量の運搬アイテムを一時的にくれるらしいし。

 

「そうと決まれば!」

 

 花粉玉ならぬ火薬玉をつけたマイペットと共に、俺は第3の街経由で第4の街に向け出発した。

 

 

【悲報】大容量運搬アイテム、ビル1つ分しか入らない

 

 なんて悲しい事実はいいとして、行き掛けの駄賃に爆破したフレッシュなビル素材を納品したことで1つのことが判明した。

 

 このクエスト、経験値効率がめっちゃいい。

 しかも、俺にとっては街と街を移動するだけで完了するのだ。そもそも新市長と思われるNPCからの印象が最悪だったり、運搬袋を5つ欲しいとか言って訝しまれたりはしたけれど。

 お陰で今まで溜め込んでいた使い道のないビル素材の7割を消費出来たし、ペットのレベルが進化直後で1だったのが19も上がって20となった。実に素晴らしい。

 

「ユーキくん!」

 

 まだまだペットの育成が足りないしアスト周回に戻ろうか、そう思った時のことだった。聞き慣れた声とともに、とてつもない速さで何かが飛び込んできた。

 障壁と減退を使ってダメージを負わないようにしつつ、背後からの抱き締めを受け止める。

 

「あれだけ圏外での抱き着きは止めてって言ってるのに……」

「でも、ユキくんと会うの久しぶりな感じがして」

「全く……えっ?」

 

 手を解いて背中から降りてもらい、振り向いた先のセナは普段とは全く違う姿だった。ぴょこんと飛び出した髪と同色の獣の耳、重心が大丈夫なのか心配になるほどブンブン振られる白銀の尻尾。いつのまにか、幼馴染に属性が1つ追加されていた件について。

 

「びっくりした?」

「びっくりした」

 

 どことなく自慢げにそう言った後、こちらに見せつけるようにセナがクルリとその場で回った。驚いたけど、実際凄くマッチしている。

 

「可愛いでしょ」

「可愛いんじゃない?」

「えへへー!」

 

 満面の笑みで尻尾の振りが加速した。なまじAglが1000を超えているせいで、もはや風切り音が聞こえてくる速度となっていた。俺に当たったら問答無用で即死だろう。怖い。

 まあ、それはいつものことなのでこの際どうでもいい。

 

「察するに、それがセナのペット?」

「うん! コンって言うんだ」

 

 そうセナが言うのに続いて、突然湧き上がった炎が『よろしく』と文字を形作った。なるほど、これがペットが喋るってやつか。いいなぁ。

 

「そういえばユキくんは【シェパード】行った? ちょっと遠いけど、ペット貰えるし楽しかったよ!」

「俺も朝のうちに行ったよ。バイクなら結構速く移動できるし」

「そっかー。それで、ユキくんはどんな子がペットに?」

 

 ぴこぴことケモ耳を動かしながら、セナが聞いてきた。まあ沙織(セナ)なら蜂を見ても大丈夫だろうし、丁度いいから相談してみるのもありか。

 そんなことを思っている間に、火薬が敷き詰められたフードの中からマイペットが這い出てきていた。どうにも火薬があると落ち着くらしいことは、れーちゃん語翻訳の応用で薄っすらと分かる。

 

「……爆発する?」

 

 その姿を見て、セナもなにかを感じ取ったらしい。流石幼馴染、大正解だ。

 

「するね。超爆発する」

「行動参照だもんね……ユキくんの場合、爆破か紋章術関連以外ないよね……」

 

 呆れたように、セナがどことも知れない遠くを見て呟いた。実際、俺から幸運を取り上げたらそれしか残らない。あ、幸運ないから判定失敗してどっちも使えないか。

 

「それはそれとして、セナに聞きたいことがあるんだけど良い?」

「ん、いいよ? ユキくんが私を頼るなんて珍しいね」

「たしかに」

 

 けど、今は些細な問題だ。

 

「ペットってどうやったら喋るの?」

「名前付けてあげたら喋るよ?」

 

 まさかの即答だった。

 そっか……それだけか。それだけだったのか。そもそも、ペットに名前って付けられたんだ。いや、ペットとして考えるなら当然だけど。

 

「名前、かぁ」

 

 何がいいか蜂に振ってみるけど、首を傾げるだけで何も返ってこない。そりゃそうか。そう納得していると、セナが目をキラキラさせながらコートの裾を引いてきた。

 

「名前が決まってないなら、『クロ』とかどうかな!」

 

 蜂から猛烈な拒否の意思が伝わってきた。

 

「嫌だって」

「えー、残念……って、え? ねえユキくん、れーちゃんのもだけどなんで分かるの?」

「何となくというか、勘というか、そんな感じかな」

 

 正直、何で分かるのかは私にも分からん(博士風)

 一旦それは置いておくとして、最優先すべきは蜂の名前だ。自分が思いつく中で、蜂に気に入ってもらえそうなもの……それでいて特徴を捉えて……

 

「サルファ」

 

 嫌らしい。

 

「エクス」

 

 微妙に靡いたけど拒否。

 

「ナハト」

 

 あと一歩足りない感じの拒否。

 

「影」

 

 完全な拒否。

 

「朧」

 

 完全な了解の意思が伝わってきた。同時に嬉しいとか楽しいとか、そんな感じの感情も一緒だ。なんとなく思いついた名前だったのだが、お気に召してもらえたようで何よりだ。

 

『謝』

 

 そして、景気良くブンブン周りを飛ぶ朧の羽音がそんな風に聞こえた。昆虫型の喋るって、こういう風になるのか。意思疎通が出来るようになるのは良いことだ。

 

「ねぇユキくん。その朧ちゃんって、何が出来るの?」

 

 問題が解消されて気分の良い俺に、少しだけムッとしたセナが聞いてきた。今のは、俺が悪かった。ちょっと朧と話すのに時間を使い過ぎた。

 

「爆発関連を色々と、かな。セナのコンは?」

「炎とか念力とか色々ー。この子は狐だしね!」

 

 心当たりの1つとしては考えていたけれど、セナのペットは狐だったらしい。一体普段、どんなプレイスタイルでゲームをしてるのやら。俺が言えたことじゃないが。

 そう言い終わったセナは、まだ何か言いたそうな顔をしていた。これはきっと、何かあまり良くないことに繋がるに違いない。

 

「それでね、今ペットを持ってる人の中で、お互いのペットを戦わせるっていうのがあるんだけど……」

「ごめん、朧とセナのコンを戦わせたくないかな」

 

 だって朧の能力、エグいとしか言いようがないし。セナ本人なら回避できるだろうけど、ペット同士という前提が付くと無理というか、そんなエグい真似をしたくない。

 

「ぶーぶー」

『ご不満?』

「そうじゃなくて……あ、丁度いいや」

 

 どうしようかと悩んでいると、二重で不満を漏らすセナたちの向こうにモンスターが丁度よくポップした。真っ白なエミューの様なレアモンスターは、ばっちりこちらをターゲットしている。

 

「セナは手を出さないでね」

 

 そう前置きしてから、今は静かに飛ぶ朧に指示を出した。

 

「朧、Go!」

『了』

 

 次の瞬間、黒い蜂が無数に出現した。その数、本体の朧を含めて252体。1体1体の力は強くないが、《爆破卿》由来の強化が乗った結果それらは恐ろしい力を発揮する。

 

 朧を除いた分身体のステータスはあまり高くない。けれど、HPの値は最低で350。つまり700の固定ダメージということになる。それがAgl250、紋章術のバフ込みならもっと速く突っ込んでくるのだ。我ながら、恐ろしいというほかにない。

 

 更に、別のスキルで『攻撃のヒット数を3増加する(1ヒット辺りの威力は4分の1に減少』というものもあり、状態異常抵抗判定を4回行わなければいけない。そんな相手にダメージカット、もしくは一定値以下のダメージ遮断スキルもなしに挑んだらどうなるか? 結果は明白だ。

 

『終』

 

 10匹。たったそれだけの数の分身体が起こした自爆によって、エミューのHPは0になっていた。恐らくレア泥と思われる嘴を取得したが、使い道がないし後でギルドの倉庫に放り込んでおこう。

 

『休』

 

 そんな算段をつけているうちに、分身を全て消した朧はフードの中へ戻っていってしまった。ギルドのマイルームに、火薬詰めた巣でも作っておこうかなぁ。

 

「とまあ、こんな感じだから」

「飼い主に、よく似たペットだね」

『こわい』

 

 またも遠い目をされてしまったが、わかってくれたようで何よりである。

 

「あ、そうだ。ユキくんってこれから用事ある?」

 

 リアルにでも行ってしまってるんじゃないかという様子のセナだったが、すぐに正気を取り戻してそう言った。

 

「特にないけど?」

「だったらさ、この先の新しく解放されたマップに行かない? 朝は藜ちゃんと一緒だったんだけど、リアルの用事でログアウトしちゃって」

 

 なるほど、だからいるのはセナだけだったのか。それに最近、セナと一緒にどこか冒険するって無かったし良いかな。ボス周回は飽きたし。

 

「いいけど、多分俺とだとウンザリするほどレアモンスター出てくると思うよ?」

「そのくらいどんとこいだよ!」

『余裕』

 

 どんと胸を張るセナを見るに、相当自信があるようだ。一緒に行くからには、相手に何もさせるつもりもないけど。

 

「それじゃあ行きますか」

「うん!」

 

 このあと滅茶苦茶レア狩りした。

 




====================
 Name : 朧
 Race : レギオンワスプ
 Lv 20/40
 HP : 1400/1400
 MP : 1000/1000

 Str : 120 Dex : 100
 Vit : 70 Agl : 500
 Int : 30 Luk : 60
 Min : 70

《ペットスキル》
【状態異常攻撃 : 猛毒】
【状態異常攻撃 : 移動速度低下】
【状態異常攻撃 : 呪い】
 状態異常耐性低下
【状態異常攻撃 : 魅了】
 低確率行動不能・低確率自傷
【自爆】
 HPを0にし、現在のHP分の固定ダメージを与える。範囲は半径威力/100m
【レギオン】
 自身の最大MPを半分にし、自身のステータスと同等(HPMPは半分)の実態を持った分身を20体作り出す。
 効果時間 : 分身が全滅するまで

《スキル》
【真・影分身】
 自身のMPを1割消費して、自分の半分のステータス(HPMP含む)の実体がない分身を5体作り出す。
 効果時間 : 戦闘終了まで
 冷却時間 : 20秒
【ドッペルゲンガー】
 自身と同じステータスを持つ扱いの実態のある分身を作り出す。分身の維持には毎分100のMPを支払う。
 また、分身出現中に受けたダメージは全て分身が受ける。分身のHPが0になったとき、このスキルは解除される。
 冷却時間 : 20秒
【多重存在】
 攻撃のヒット数を3増加する(1ヒット辺りの威力は4分の1に減少)
【状態異常攻撃 : 裂傷】
 HPスリップダメージ
【状態異常攻撃 : 最大HP減少】
【状態異常攻撃 : 最大MP減少】
==================== 

-追記-
この蜂、SSR、SR、R、UC、Cで言ったら
(Rよりの)UC→R→SR→SSRと進化して、ここで進化は終わりです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。