幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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Twitter見てると、他の作者さんって結構自作品の告知してることを知ってビビる作者。私更新予定と報告しかしてねぇ


第79話 運営からのお誘い

 メンテが開け、セナと新マップを冒険した翌日。

 偶然遭遇したアキさんと朝っぱらから【機天・アスト】TA(タイムアタック)勝負を繰り広げたことで、俺の朧とアキさんのペットである付喪神(刀)のエスペラントのレベルがカンストした。

 因みに俺の最高タイムは1分48秒で、アキさんが1分30秒だった。悔しい。それはそうと、突入時間のズレでほぼ毎分ワンパンキルされてたボスには黙祷を捧げておく。

 

 そんなこともあり、ご褒美的な感じで巣の作製が決定したのだった。

 

「朧はどんな感じが良い?」

『告。六角』

「はいはいっと」

 

 ギルドの自室で朧の巣を作っている昼下がり。紋章で鑑定系のものが作れなかったので、第1の街で買った【鑑定】と【看破】のスキルを使い続けている時のことだった。何かのメッセージを受信した音が鳴った。

 

「朧、ちょっと巣作り任せる」

『了』

 

 21匹の朧が飛び回って巣を作る横で、受信したメッセージを確認する。するとそこには、想像を遥かに超えた情報が記されていた。

 

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 【運営よりお知らせ】

 このメールは、PN アキ、センタ、デュアル、にゃしい、翡翠、レン、ザイード、ザイル、ユキの9名のプレイヤーにのみ送信されています。

 通称極振りと呼ばれるあなた方には、9月上旬に開催を予定している高難度イベント『十の王冠、不敗の巨塔』におけるダンジョンボスを依頼したいと考えております。

 無論、現実世界での都合が悪い場合は無理にログインする必要はありません。非ログイン時はボスルームを閉鎖するか、代役を配置する予定となっております。

 もし引き受けてくださる場合は、運営にメールを折り返してください。

 

 

 引き受けてくださることが決定した場合、全10階層からなるダンジョンを、割り当てられたリソースの限りで自由に作り上げることが可能となります。但し、常人にもクリア可能かどうか、運営がテストプレイを行います。クリア不可能と判断された場合、再構成して頂きます。

 ダンジョンの構成は、サンプルをそのまま使用、プレイヤーの特色を反映してランダム設定なども可能です。

 ボスを引き受けた場合、イベント期間中はボス部屋・各街内のみ移動が可能となります。

 ボスルームにおける戦闘では、ボス側にデスペナルティは発生せず、戦闘後全て、使用したアイテムを含め戦闘開始直前の値まで回復します。但し、HP・MP回復アイテムの使用は禁止となります。存分に戦闘を楽しんでください。

 通常プレイヤーと違い、ボスを担当するプレイヤーのイベント報酬はポイント制となります。ダンジョンを通しての、通常プレイヤーの滞在時間、撃退数などがポイントとなります。

 

【最重要】

 この情報を他プレイヤーに漏洩しないで下さい

 この時期に連絡したのは、あくまでダンジョン製作の時間を確保するためであって、一般プレイヤーへの公開はまだ先を予定しています。もし情報漏洩が起きた場合、厳罰となりますのでご注意ください。

 

 PS.幸運担当

 お前らやり過ぎなんだよ……

 朝っぱらからアスト1分周回なんてしやがりまして……アスト作った担当の人泣いてましたよ!?

 あとユキ、あなた今全プレイヤー中ぶっちぎりでナンバーワンの死亡数ですからね。例のスキルがあるとは言え死に過ぎです。それと、ボス担当になった場合復活は12回までとなりますのでご注意を。

 7時半に空手の稽古があるの! 付き合えないわ。

 どうせ受けるんでしょうけどね!

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「これは……」

 

 追伸の部分が遂にはっちゃけたのは、普段の対応してくれてる人が出てきただけだから良いとして、結構な厄ネタがきたものだ。極振りとしてダンジョンボスかぁ……これはちょっと予想外だ。

 まあ受けるんだけど。そう思って極振りの先輩が集まっているスレを開けば、受けるともう受けたの2個しか報告はなかった。やっぱりダンジョンを好きに弄れるってのは魅力的なんだろう。かくいう俺も物凄く楽しみだ。

 

『疑』

「うん? いや、なんか……ほら、こう書いてある通りの感じ」

 

 うっかり口に出そうとしてしまったが、途中で見せる方向に変えたからセーフセーフ。そう思ったのだが、朧は首を傾げてしまった。理解出来なかったらしい。

 

「まあ、強い人と戦えるってことだよ」

『喜』

 

 嬉しいらしい。意味はわかるけど、自分のペットの考えが理解できないのは少しだけ悔しいと思った。

 というか、【鑑定】はともかくさっきから使ってる【看破】が【空間認識能力】の下位互換で辛い。なんか落ちてるアイテムや罠が分かるとか書いてあったけど、ぶっちゃけ近場なら全部見えるし。

 

『急』

「まあ、いっか。続き続き」

 

 部屋全体を鑑定しつつ看破しながら作業をしているから、きっと熟練度はすぐに溜まるだろうし。良い感じに進化してくれることに期待しておこう。

 

 そうやって朧が満足する巣を作っていること大体1時間。極めて高速で部屋に接近してくる反応を感じた。そして、バンと勢いよく扉が開け放たれた。

 

「とーくん! あの、あのね! やっばいクエスト見つけちゃった!!」

『ほんとすごい』

「《障壁》!!」

 

 慌てて駆け込んできたセナに、リアルのあだ名で呼ぶことの注意をするより、早く対応しなければならないことがあった。それは、セナの首元にいる銀の狐が発した炎の文字。

 

 忘れているかもしれないが、俺の部屋は()()()()なのだ。急いでMP消費を度外視した障壁で封じ込めたから良いものの、あと少しでも遅れたら部屋が爆発して吹き飛ぶところだった。

 

「セナ、リアルのあだ名で呼んだことは何も言わないから、もうコンには喋らせないで……ギルドが吹っ飛ぶ」

「あ、え、あ! そだね……ごめん」

 

 そこで漸く、現状がいかに危険だったから理解してくれたようだ。今俺の部屋に引火でもしたら、誇張なしにギルドが吹き飛ぶ。それだけの量、爆薬と花火とその他諸々爆発物が俺の部屋にはあるのだ。

 セナがコンを白銀の石に戻して、今度こそ話し始めた。

 

「あのね、さっきまで藜ちゃんと湖の向こう探索してて、なんかすっごいクエスト見つけたの!」

「どんなやつ?」

「クリア報酬が、スキル枠1拡張だったの! 初回クリア限定だけど」

「それって、どっちの?」

「使える方!」

 

 それは、本日2度目の特報だった。

 使用可能スキルが1つ増えるクエストとか、ちょっとどころじゃない重要情報だ。例え難易度が高くても、このクエストは誰もがこぞってクリアしたがるはずだ。

 まあ、ここから店スペースに音は聞こえないから良いとして、開けていた窓からは聞こえてしまったかもしれない。焦ってたのは分かるけど……

 

「凄い情報だけど、多分今ので思いっきり外に聞こえたよ?」

「別に良いもん、もうちょっとしたら公開する予定だし」

「そっか」

 

 じゃあ俺も、もうちょっとしたら極振りの先輩方に教えることにしよう。……更に手がつけられなくなるだろうけど、頑張れ運営。

 

「クエストの内容は?」

「えっとね、なんか自分と戦うんだって。同じレベル、アイテム、スキル、ステータスの」

「うわぁ」

 

 脳内に思い浮かんだ数名の極振りが通い詰める姿が容易に想像できた。自分と戦うとか、自分が強くなればなるほど相手も強くなるし絶好の修行場じゃないか。

 

「それでね、折角だしみんなでPT組んで挑もうと思ってるんだけど……」

「先に言っておくと、俺はいない方がいいね。絶対」

「えー!」

 

 そんなセナから「超不満」といった感じの気配とともに、そんな声が挙げられた。これまで何回もギルドで一緒に何かをやる機会を逃しているから、それは分からないでもないのだが……

 

「だってセナ、よく考えて見てよ。俺が、全力で妨害してくるってことだよ?」

「あっ……」

 

 セナが、何かを察したように固まった。それはそうだろう、なにせセナと藜さんの2人は、あのレイドボス戦で俺がやってたことを全部間近で見ていたのだ。あの防御力でこちらを邪魔してくるとなると、考えたくもないだろう。それに爆弾が加わるとなると、俺はもうクソゲーとして投げたくなる。

 

「だから、一緒には行くけど挑むのは1人の方がいい気がする」

「そうだね……ぐぬぬ。でも次のイベントではやろうね!」

「あはは……そうだね」

 

 残念ながら、俺はまた参加できないが。それはそうと、極振りにパーティ単位で挑むとか勝てるのだろうか? ザイルさん相手なら、まあ何とかなる気がするけど……

 だからきっと、またパーティ単位で挑めるボスは【第5の街】のボスになるんじゃないだろうか。随分と遠い話だ。

 

「むぅ、なんかユキくん乗り気じゃない?」

 

 そんなことを考えていたからか、セナに内心を見透かされてしまったようだ。流石に付き合いが長いしバレるか。ツーカーで話が通じる(こともある)のは、やっぱり隠し事には不向きだ。

 

「いや、そうじゃないけど。パーティで挑むと、なんか俺だけ何もしてない感じがして……痛っ」

 

 本音を言っただけなのに、ペシリとデコピンをされてしまった。この衝撃、街の外だったら確実に即死してたね。

 

「あのね、ユキくん。私とか藜ちゃんみたいな紙装甲アタッカーにとって、ユキくんの防御方法って喉から手が出るほど欲しいものなんだよ?」

「うっそだー」

「ユキくんは自分のこと過小評価し過ぎ! あの障壁って、もう頭がおかしいというか、変態的な技量なんだからね!」

「そっかー……」

 

 幼馴染にまで変態扱いされてしまった。自覚がなければ確実に凹んでいただろう。

 それはそうと、俺以外にも誰か1人くらいはあの防御術を使えるとは思うのだが。たかだか0.3秒しか展開しない障壁を相手の攻撃に合わせて割り込ませるというだけなのに。

 

「あ、でもユキくんが変態ってわけじゃなくて、でももしそうでも私はいいかなって思ってたりもして……」

「セナー、脱線してる」

「はっ、確かに!」

 

 危うく変なことを口走ろうとしていたセナを止める。ちょっとヤバめな本心が漏れてた気がするけど、今回は気にしない気にしない。

 

「それで、そのクエストにはいつ出発する?」

 

 私も同行しよう。

 

「んー、あと少ししたらみんな集まるみたいだから、先に行って待ってたいかな?」

「了解」

 

 そうして俺たちは【第4の街(復興中)】のポータルに飛び、クエスト開始地点へと向かった。

 




NPC極振りを試験するなら、ここしかないと思った

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