奈々は凄く優しい。
僕が奈々と暮らしてから半年、
僕の帰りが深夜になっても、
奈々はいつも料理を作って待っていて
くれる。
優し過ぎる、、、
僕がドアを開けた途端、
いつも『おかえり』って言って
抱きしめてくれる。
こんな生活が当たり前だと
感じてしまった時のこと。
僕は、持病であった喘息や
昔のタバコの吸い過ぎが
原因で、とうとう肺ガンになって
しまった。
残業中に倒れて、
救急車で運ばれた。
僕も、もう終いだなあ。
病室のベッドに横になりながら
感じた。
これ以上僕にはレールはない。
区切りのいい三十までは生きたかったなぁ。
「ヒカル!」
奈々の声だった。
病院まで一時間以上かかるのに、
どうして?
「良い子は、二時前には寝るって約束した
だろ」
僕は、いつも、遅くまで待ってくれている
奈々は大好きだったけど、
まだ将来のある奈々に、
不健康でいて欲しくなかった。
僕より、立派で誠実な、若者と共に、
一日でも長く幸せな人生を歩んで欲しかった。
「病室から電話が掛かってきて、寝れるわけ
無いじゃない!
ずっと夕飯、我慢してたのに、、、」
「ごめん、、、」
僕は俯いた。
「奈々が悪いんだ。」
「え?」
奈々は顔をしかめる。
「奈々を養う為に残業までしてくれたのに、
奈々何もできなかった」
「奈々ってヒカルの『ガン細胞』だよね。
奪うことしか脳に無くて、
何も与えてあげられないんだ」
「違う!」
僕は叫んだ。
「毎日、僕の帰りを待って、
抱いてくれる奈々がいたから、
半年間も幸せで、仕事も頑張れた。
充分与えてくれたよ」
「そうかぁ〜〜」
奈々は心か嬉しそうな声を出した。
こんな、純白な音色を聴いて、
穏やか気分にならない人はいないだろう。
奈々は僕の頭を撫でて、
まるで、自分の子を諭すかのような口調で、
話しかける。
「今まで、守ったくれてありがとう。
とっても嬉しかった。
今度は、『私があなたを守ってあげる』」
奈々は、幸せそうな表情で、
僕のおでこに『キス』をしてくれた。
いつもは恥ずかしいみたいで
大人になってからと言っていたが、
奈々の中の『何か』が変わった。
だが、一ヶ月もして僕の様態が悪化すると、
奈々も、段々元気が喪失してきてしまった。
「『来年』、奈々と誕生日祝おうね。
奈々の誕生日は、ヒカルの二日遅れだから、
二回も祝うことができるね」
奈々は涙をこらえる様子で、
必死で笑顔を『作る』。
「『来年』、
ヒカルと一緒にいろんなところ旅行したいな」
『来年』という言葉ばかり連呼する様になった。
奈々は明らかに、純粋過ぎた。
「僕は『来年』まで生きられないんだね?」
奈々の表情が一気に暗くなる。
担当医は応えてくれなかったが、
奈々は教えてくれるだろうか?
しばらくの間、奈々は沈黙していた。
「そうだよ。バレちゃたか。
奈々って嘘つくの下手?」
僕は、今まで、背負っていた重たい何かが
外れていく様な気持ちだった。
「僕は、親や親戚は誰もいないから、
『遺産』は奈々にあげる。それで、
立派な人と結婚して幸せに生きるんだぞ」
僕には『タイムマシン』と言う遺産があり、
使い方、仕組みは、
全てパソコンのメモリの中だ。
あれがあれば金には困らないだろう。
ちなみに、
パソコンの暗証番号は僕の誕生日だ。
奈々ならすぐ気が付くだろう。
その時だ
「バシン!」
奈々は、僕に強烈なビンタをお見舞した。
ビンタの音が、病室を駆け回る。
「どうして、ヒカルが居なくなった後、
奈々は幸せに生きなきゃいけないの?
ヒカルは、来年、わたしと結婚式をして、
幸せにならなきゃいけないのよ。
なんで、そんなひどいこと言うのかな」
奈々は僕の細くなってしまった手を掴むと
奈々の胸に無理やり擦りつけた。
「奈々の胸どうして柔らかくて気持ちいか
わかる?
ヒカルが触って喜ぶ為だけにあるのよ。
肉体的快楽でも愛情でも、
なんでもいいから、幸せにしたいの、、、」
奈々は突然僕に抱きついた。
「もう逃がさないわよ。
後一ヶ月しか生きられないなら、もう犯してもいいよね」
奈々は僕を押さえつける。
強い、、、、、、、
僕は間違っていた。
奈々は僕の事をお父さんの代わりと
見ているのだと思っていた。
たが、違った。
奈々は僕の事を『恋人』と思っているのだ。
違う!正確には、
僕は奈々の体の一部(例えば心臓)
だと奈々は考えている!!
なくなると生きていけない、、、
僕が勝手にきえてしまうのは、
奈々にとって『死』を意味していた。
僕は奈々にレイプされた。
奈々は凄く元気だった。
こんな奈々しばらく見ていなかったなぁ。
僕が微笑むと、奈々も微笑んでくれた。
「楽しかった。ありがとう。
また明日もお見舞いに来るね。」
奈々は
最後に、僕を包み込む様に優しく抱きしめて
キスをしてくれた。
奈々は、病室を出ようとするとき、
突然止まった。
「どうしたの」
僕は奈々に言う。
奈々は僕の方を向き語りかける。
「次に、あんな哀しい事言ったら、、、、
『許さない』からね」