次の日、いつもの様に
奈々はお見舞いに来てくれた。
「ヒカル、家の掃除してたら、
高そうな箱見つけちゃった。
中身何入ってるの?」
「開けてないのかい」
「うん」
奈々は、
『昔の奈々の手紙』の入った箱
を差し出す。
「それは、『昔の恋人』から
もらった手紙」
僕はふと『奈々』の事を思い出す。
僕の事、守ってくれたんだっけ。
曖昧な記憶を想い出す。
敢えて忘れようとしていた。
もう二度と、会えない。
いや、会えても、
こんな約束破った姿、、、見せられない。
「そうなんだ、いつ出会ったの」
「僕が高校三年の誕生日の
ときに出会ったんだ」
「へー、それじゃあ、
恋人がいなかったヒカルに、
神様がプレゼントをあげたんだね」
奈々は、とても嬉しそうだ。
普通、最愛の昔の恋人の話なんか、
こんな楽しそうに聴けるのだろうか。
奈々は、『自分の感情』より『僕の幸せ』を
優先するのだ。
「そう、だと良いけど....」
「どうしたの?」
奈々が心配そうで問いかける。
僕は、続けて話す。
「その人とは、二日しか会ってなくて、
突然どっか行っちゃったんだ。
悲しかった。
『さようなら』の一言さえ、
どうして発してくれなかったんだ」
僕は、下を向く。
「ひどいよそんなの」
奈々は、とても重たい口調で言う。
僕は、少し驚き、奈々に目を移す。
「そんな手紙、大事にする必要ないよ。
裏切られたんだよ。もっといい男がいたから、
きっとヒカルは棄てられたんだ、、、、、、」
奈々は、僕を見ながら、涙を落としている。
自分が泣いているのに、
気付いてさえいないらしい。
「そんな人、どうして好きなの?」
「どうしてって、、、」
僕は十五年以上も
昔に奈々と二日だけ会った、
『記憶』を想い出そうとする。
「僕を二日だけ愛してくれたから、、、」
奈々と僕はしばらく沈黙する。
「もう、会えないからか、、、。
だから
あんな物発明したんだね」
「なんのことだい」
「タイムマシン」
僕はぞっとする。
どうして、
奈々には一言もその存在について
言及してすらいないのに、
知っているんだ。
奈々は僕にそっと近づく。
「私、不思議だったんだ。
どうして、ヒカルが車も、
免許証も持ってるのに、
ヒカル、
車使わないのかしりたくて、
無断で
車の中入っちゃったの。
埃臭かったけど、中に
『遺書』がしまってあってね」
奈々が微笑みながら言う。
そういえば、
奈々と暮らしてからしばらくして、
僕は、遺書を書いたんだっけ。
僕が死んでも、生きていけるように。
遺書は、なかなか見つからないところに
隠しておいた。
そう、今となっては埃臭いオンボロ車
全く使っていない。
ここに隠したんだ。
「奈々へ
もし、奈々がこれを読んでいる頃
には、僕は、もう、
この世にいないのかもしれません。
迷惑かけてごめんなさい。
もし、お金に困ったなら、
この車を利用して下さい。
この車は、タイムマシンです。
操作した人の生年月日より、
前の年代より前ならどんな年代
にも飛ぶことができます。
世の中には、昔は、
信じられない程、
安価だった物が、
今では、希少すぎて、
信じられない程、
高価な物が沢山あります。
例えば、切手や小銭などです。
それを、タイムスリップして、
持って来れば、
何とか生きていける分のお金にはなるでしょう。
これを遺産だと思って下さい。
それと、
タイムマシンの存在を誰かに教えたり、
大儲けしようとしてはいけません。
きっと悪い人間に見つかって、
タイムマシンを取られて、
くだらない金儲けに使われて
しまうでしょう。
最後までいれなくてごめんなさい
ヒカルより」
僕は、遺書の内容を思い出した。
奈々は僕の頰を撫で、
優しい声で諭す。
「ヒカル、、、。
そんなに『昔の恋人』をに会いたいなら、
会わせてあげる。
私が、17年前の8月10日、
ヒカルの高校三年の誕生日にタイムスリップして、
ヒカルの恋人に会ってきてあげる。
そして、奈々お願いしてきてあげるよ。
『ヒカルのそばにいつまでも居て』って。」
奈々は僕にキスをする。
「そしたら、三人家族になるね。
ヒカルがパパで、ヒカルの彼女がママで。
奈々が娘になるの」
奈々はとっても幸せそうだ。
その時、悲劇が起こった。
「ゴホ、ゴホ、ウェ〜〜」
僕は、多量の血を吐いた。
「ヒカル、大丈夫、ヒカル!
死んじゃや〜〜だ!
死んじゃや〜〜だ!」
奈々が必死で叫ぶが僕の意識は、
どんどん遠ざかる。
一時間後、、
(ここからは、奈々目線で話が続きます)
ヒカルは今、
集中治療室で治療を受けているみたい。
どうやら、一命は取りとめたみたい。
でも、もう永くないらしい。
奈々にやれる事は、
『アレ』しかない。
まず、昔にタイムスリップして、
ヒカルの恋人に別れないように
説得する。
そして、
ヒカルに、
健康な生活を送るように、
説教する。
タバコなんて吸わせない。
そうすれば、
現代に帰ってきたとき、
三人でずっと
仲良く暮らしていけるよね。
ヒカルと彼女が会った時が、
高校三年の誕生日、8月10日。
奈々が産まれたのは、
同じ年の8月12日。
つまり、奈々は、
昔に二日しか行けない。
それ以上いてしまうと、
奈々の存在が喪失してしまうのだ。
でも、嬉しい。前は、
ヒカルと同じ誕生日でないことを
恨んだけど、
その、二日というズレ、『差違』
のおかげで、ヒカルは救われる、、、。
奈々は家に帰って、
タイムマシンを動かした。
埃まみれでも、動作して来れた。
「ヒカル、今、助けに行くからね」
奈々は過去へ出発した。