「もう、こんな時間か〜」
奈々はため息をひとつ吐くと、
「もう、寝ないと体に悪いよ」
と僕の頭を撫でる。
「泊まっていいかな〜」
奈々は哀しそうにつぶやく。
外が真っ暗なのに『帰れ!』とは流石に言えない。
「ありがとう」
奈々は
僕自身を包み込むかのように抱いた。
自分の苦しみや哀しみが浄化されていくような
気がした。
「もう、照れてるのがバレバレなんだから」
自分でもわかった。
手を伸ばせば、いや、手を伸ばさずとも
寄って来てくれくれる女性がいる。
僕の顔が真っ赤になったのがすぐにわかったのだろう。
「ヒカルは二階で寝るの?」
興味津々で聞いて来た。
「そうだよ。奈々は広いから一階で寝るといいよ」
「お姉さんがいなくても寝れる?
寂しくな〜い?」
奈々は幼児をあやす様に僕に僕に甘い言葉をふりかける。
「寝れるに決まってるだろ」
僕は率直に言い返し二階に行こうとした。
だがそれは許されざる行為だった。
「ごめんなさい。本当はヒカルじゃなくて
『私』が眠れないの。見栄張ってごめんなさい。
でも、優しいヒカルだったら許してくれるよね〜。
ただ一緒にヒカルと寝たいだけなの」
奈々は僕の左手を両手で握っている。
しかも、奈々の目は僕を必死で見つめ、
今にも泣きそうだった。
「わ、わかったよ」
「あ、ありがとう。今、布団、敷くから、
いなくならないでね」
僕の気が変わらない様に不器用ながら言葉を選んでいる
様だった。
僕はただ奈々が布団を敷くのを傍観している
だけであった。
奈々は布団を二つ敷き終えると、忘れ物を
取りに来たかの様にこっちに来た。
「待っててくれたんだ。一緒に寝ようね」
僕の背後に回り一歩ずつ僕を押して
行った。
僕はすぐに布団に入って寝ようとした。
「奈々のこと『嫌い』?」
今まで聴いたことのない程の重たい声
「なんで、向かい合って、奈々の方を
見て寝てくれないの。酷いよ。」
僕は恐る恐る奈々の方に寝返りする。
「おやすみ」
そう言うと、奈々は目を閉じた。
なんでいきなりこの人は押し寄せたのだろう、
まだあって半日もしてないのに、
まるで僕の全てを知ってる様な様子だった。
数時間経ったであろうか、僕は得体の知れない女性、奈々
に対して緊張して寝れずにただ目を閉じているだけだった。
「くす、もう寝ちゃたのかな」
奈々の声がいきなり聴こえたので驚き目を開けた。
だが、暗いだけで、奈々の存在は視覚以外で、
感知するしかなかった。
「もう寝ちゃうなんてやっぱり『子供』だね」
僕は身動き一つしなかった。
「素直でかわいいな〜」
奈々がとでも嬉しそうなのは、見えなくても分かった。
「でもそんなんだと、『悪いお姉さん』にイタズラ
されちゃうよ」
ゾッとした。悪寒がした。いったい、奈々は、
僕に何をするつもりだろう。
奈々は僕の布団に勝手に入ってくる。
「つーかまーえた」
奈々は僕に言っているのだろうか。それとも、独り言?
でも、それ以上に、僕と奈々の距離の近さの方が衝撃で
あった。
おでこがほぼくっ付くくらいの近さ。呼吸しているのが
わかるくらいの近さ。
夢でも女の子が自分を抱いてくれるなんて思わなかった。
「もう寝たんだから何しても良いよね。」
奈々は僕の頭を抱いた。
さっきまでとは違い、彼女の胸が顔面に触れる。
「もしヒカルが起きていたら興奮するだろうな〜
こんな事された事今までなさそうだし」
事実彼女の独り言は正しい。
「でもごめんね。起きてる時にいきなりこんな事
して拒絶されたら嫌だったから」
彼女は僕の頭を撫つつ、
僕の顔を彼女の柔らかな胸にもっと当たるように
位置を微調整した。
「ん〜〜〜〜〜〜」
彼女は、艶かしい声を発した。
まるで僕の体に染み渡るかのような声
偽りの無く心の底から幸せそな声。
「さてと、この辺で『アレ』をやろうかな」
彼女は僕の顔を自分の顔に近づける。
彼女の長い髪の毛が僕の顔にかかった。
ヤバイ、良い匂い。 寝てないのがバレる
必死で押し隠す。
すると、彼女はすぐ次の行動にでた。
僕の唇に生暖かい何かが触れている。
これはもしや!!!
「これで、あなたの『ファーストキス』
は私のもの......だーれも奪えない。だから、、、
『ヒカルは奈々の物だよ』」
暗くて見えないが、奈々の満足感、愉悦がひしひしと
伝わってくる。
「これでやっとあなたを守れる.........」
「ごめんね。もっと早く守ってあげられなくて」
「だから〜、全部、ヒカルが辛いのは私のせい。
だから、ヒカルは何にも悪くない。
全部ヒカルが
正しいんだよ〜」
僕の頭を丁寧に撫でながら、諭す。
奈々の接し方は僕が奈々の子供であるかのような接し方であった。